永久に響くは復讐の唄

一章

八話 苦して奪うは儚い命

　「アアアｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ」
　大きな叫び声が足元から聞こえた。
　「避けろ！」
　ライトから指示が飛ぶ。とっさにバックステップをとると俺のもと居た場所から人獣型のリベンジャーが現れた。大きさは5mはあるだろう。
　「カエせ。おレのイバしョを、かぞクヲ。イのちをををヲをを！」
　「……しゃべるのね。」
　中々に驚いたが、まぁ良いだろう。
　リベンジャーにもリベンジャーなりの事情があるだろう。辛い記憶もあるだろう。でもなぁ
　「こっちだって守るために必死なんだよ。」
俺はライトの後ろに立つ。
　「作戦通り頼んだぞ。マサト。」
　「了解。」
　ライトは一歩踏み出す。
　「なぁリベンジャー辛いよな。そこにあった幸せが理不尽に奪われるなんて。わかるよ。けど復讐だけはしてはいけない。あんたの家族も悲しむんじゃないか？」
　「うるサイ！ウルさい！ウるさイ！同情なンテ、いラねぇんダヨ！」
　「説得も無視。……しょうがねぇなぁ。」
　そう言って日本刀の切っ先をりべんじゃーの喉に向ける。










　「…お前の命を洗ってやる。」
　そう呟いたライトの笑顔を見て俺は恐怖を覚えた。








　「ほら、こっちだよ。」
　そう叫びライトは走る。作戦としてはライトが囮となり、俺が狙撃。アサミがサポート。という感じだ。作戦事態は悪くない。だが…。
　(固すぎるだろ。)
　何度も首筋に銃弾を撃ち込み、何度も首筋に刀を当てても傷一つつかない。さらに問題はそこだけではない。
　ライト：7536／15000
　「……やるじゃん。」
　そう言うライトの顔に余裕はない。相手の攻撃力が思ったよりも高く、俺が食らえば瀕死、アサミが食らえば即死するほどだ。
　(このままじゃジリ貧だな…。時間が立つほど不利になる。どうする？)
　「マサト！」
　いきなり呼ばれびびってしまった。
　「こいつの首は貫通力の高い攻撃じゃないと通さない。お前の銃で決めろ。」
　「銃弾が弾かれてしまうのだが？」
　「……まだ言ってんのか？撃つのは銃じゃねぇ。自分の心だ。復讐の心が力を与えるなら逆もまたしかり。お前の慈愛で決めちまえ。」
　そう言った瞬間にライトは吹っ飛ばされていた。
　「急げ！」
　ライト：87／15000
　「ライト！」
　アサミの悲鳴がこだまする。けれども急がないといけない。
　(慈愛ね…。)
　俺は今までで一番集中していた。手が震えないよう銃を抑え、静かに首へと銃口を向ける。
　「…………あなたに永久なる静寂を。」
　そして銃弾は飛び出した。リベンジャーの首を貫く。
　「ウアアアアアア。」
　それでもリベンジャーは崩れない。体を起こし、俺に致命的な攻撃。
　「よくやった。マサト。」
　を受け止めたのはライト。
　ライト：5000／15000
　アサミのおかげで回復もしている。
　「リベンジャーよ。静かに眠れ。」
　そう言ってライトは日本刀で首をはねた。リベンジャーは少し不服そうに、でも満足そうに消えていった。
　「勝ったのか。」
　「そうだ。みんな無事でよかったな。」
　「よかったな、じゃない！ライトは大ダメージ受けてたんだから5日間は絶対安静ね。」
　「わかったから泣くなよ。」
　ひとまず一件落着かな？
　「あ、そうだマサト。」
　「何だ？」
　「もうすぐ中間テストだけどダイジョブか？」
　「…。」
　テスト免除してくれ。頼むから。













　「何とかなったな。」
　夜の帰り道。少年は一人で歩く。
　「3回は多いな。」
　そう言ってダメージを受けた場所を見る。
　「次は何回でクリアできるかな？」
　彼の傷はどこにもなかった。