オセロ

田畑ちひろ

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夕方の豪雨

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「掃除の時間サボっている子がいました。先生は見ていましたよ」
 終わりの会が先生の説教で始まるのは長引くパターンだ。もうすぐ帰れると思っていたのに。
「来年は中学生になるんだから、もっと低学年の子たちの手本になるような行動を、」
 先生の話は、溜まっていた事を全て吐き出したいのか、次から次へどんどん変わって行く。
 僕は、真剣に聞いているように見せてほとんど聞いていない。晩ご飯の予想をしたり、帰ってからする事を真剣に考えている。
 何処かで教室の扉が開いた音がして、隣のクラスの子たちが廊下を通って行くのが見えた。隣は時間通りに終わったようだが、こっちは延長戦だ。
「という事で、困っている人が見かけたら助けてあげましょう。分かりましたか。それでは気を付けて帰りなさい。」
 掃除をサボっていたと言う話はどうなったんだろう。

 さあ帰ろうと昇降口を出たところで、突然すごい雨が降ってきた。こう言う雨をバケツをひっくり返したような雨と表現するのだろうか。
 しかーし、今朝は天気予報を見て傘を持ってきたから問題ない。でも、すごい雨で、しばらく歩いたら長ズボンの裾はもちろん、靴の中まで濡れて靴下はびしょびしょ。こんなに濡れたらもう一緒だろうと、水たまりにわざと足をつっこみつつ家に帰ることにした。

 家に着く頃には、さっきの豪雨が嘘のように、雨は止んでいた。
 僕の家は団地の最上階5階だ。毎日上り下りする階段にうんざりしている。エレベータを付けてくれないだろうか。
 そんな事を考えながら、階段の最後の踊り場に来たところで見上げると、ずぶ濡れのナツミが突っ立っているのが目に入った。ナツミは向かいの家に住む同級生だ。

「ナツミ!」
「コウくん!」
「なんでそんなにずぶ濡れなんだよ」
「朝、遅刻しそうであわてて家出たら傘忘れて」
「家入らないのかよ」
「あわててたから、鍵も持って出るの忘れた」
「お前の母さん帰ってくるの6時ごろだったっけ」
「うん」
「じゃあ、とりあえず俺んち入れよ」

「ただいまー」
「お邪魔します」
と言っても返事する人は誰もいない。
 僕の家もナツミの家も両親は共働きだ。僕の母はだいたい7時頃に帰ってくる、それまでは毎日一人で留守番だ。

「シャワー貸してくれる?」
「いいよ。バスタオルはここの使って。」
「あと洗濯機借りてもいい?服乾燥させてみる。」
「使い方分かる?」
「たぶん大丈夫」

 ナツミがシャワーを浴びている間に、自分の部屋で濡れたズボンと脱いでお気に入りのショートパンツに履き替えた。涼しくて動きやすいので気に入っている。僕の母は、カッコよくしないと女の子にモテないと言い、長ズボンを履かせたがる。半ズボンは子供っぽいらしい。お気に入りのショートパンツも「体操服みたい」だの「トランクスがはみ出てる」だのと文句を言うが、買ってきたのは母だし、家の中でしか履かないからいいじゃないか。
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