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第一章
第二話「赭は、再会の色。」 その漆
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私達は家の中に入ると、机を挟んで向かい合うように座った。京子先生の話を、私はこれでもかというくらい熱心に聞いていた。早坂京子の存在は私の人生には邪魔だった。こうやって目を見て話そうと思ったのは、京子先生にピアノを指導してもらっていた頃以来だ。
「そういうわけで……今話した高校と、その他にもいくつかパンフレットを渡しておくから、また自分で目を通してみてね。」
「分かりました。でも、京子先生。どうして私にこんな話を持ち掛けて来たんですか?」
京子先生は何だか、懐かしいものを見るような目で言葉を発した。
「綾瀬さん、だって貴女は私の生徒だったんだもの。生徒がどんな未来を歩んでいくのか、見守りたいと思うのは可笑しいことかしら。」
私は何も答えることが出来なかった。その意見は、教え子を持つ人ならば誰もが思っていることかもしれない。ただし、裏を返せばそれは模範解答。早坂京子、この女への信頼はとうに無くしてしまったのだから、私はこの人を信じる術が無かったのだ。しかし、自分から聞いておいて無反応なのもどうかと思った私は、
「……そうなんですか」
と声に出した。
「貴女のお祖母さん達、素敵な人ね」
「何ですか、いきなり」
「泊めてもらったのもそうだけれど、人柄が良いの。私には無いものを持ってる。武彦君にとって、勿論貴女にとっても、ここで暮らすのは正解だと思う」
「当たり前じゃないですか。あんなことがあって、のうのうと名古屋で暮らしていけると思いますか。此処へ引っ越してきたのは武彦のためでもありますが、私が自分らしくいられるようにでもあるんです」
「綾瀬さんらしいわね」
京子先生はそう言うと、机に置いてあるお茶に手を伸ばした。さっき、お祖母ちゃんが持ってきてくれたお茶だ。
「それじゃ、私はそろそろ」
「帰るんですか?」
「いつまでも泊めさせてもらうわけにはいかないでしょう。せっかくだから暫くは宮崎にいるつもりよ。今日泊まる場所も探さなくちゃね。」
京子先生はそう言うと、楽しそうに笑った。
「随分満喫してますね」
「折角休みが取れたんだもの」
この日向市の自然で、京子先生の歪んだ性格も少しは改善されるといいな、と願ったことは、私だけの秘密だ。
第二話「赭は、再会の色。」完
「そういうわけで……今話した高校と、その他にもいくつかパンフレットを渡しておくから、また自分で目を通してみてね。」
「分かりました。でも、京子先生。どうして私にこんな話を持ち掛けて来たんですか?」
京子先生は何だか、懐かしいものを見るような目で言葉を発した。
「綾瀬さん、だって貴女は私の生徒だったんだもの。生徒がどんな未来を歩んでいくのか、見守りたいと思うのは可笑しいことかしら。」
私は何も答えることが出来なかった。その意見は、教え子を持つ人ならば誰もが思っていることかもしれない。ただし、裏を返せばそれは模範解答。早坂京子、この女への信頼はとうに無くしてしまったのだから、私はこの人を信じる術が無かったのだ。しかし、自分から聞いておいて無反応なのもどうかと思った私は、
「……そうなんですか」
と声に出した。
「貴女のお祖母さん達、素敵な人ね」
「何ですか、いきなり」
「泊めてもらったのもそうだけれど、人柄が良いの。私には無いものを持ってる。武彦君にとって、勿論貴女にとっても、ここで暮らすのは正解だと思う」
「当たり前じゃないですか。あんなことがあって、のうのうと名古屋で暮らしていけると思いますか。此処へ引っ越してきたのは武彦のためでもありますが、私が自分らしくいられるようにでもあるんです」
「綾瀬さんらしいわね」
京子先生はそう言うと、机に置いてあるお茶に手を伸ばした。さっき、お祖母ちゃんが持ってきてくれたお茶だ。
「それじゃ、私はそろそろ」
「帰るんですか?」
「いつまでも泊めさせてもらうわけにはいかないでしょう。せっかくだから暫くは宮崎にいるつもりよ。今日泊まる場所も探さなくちゃね。」
京子先生はそう言うと、楽しそうに笑った。
「随分満喫してますね」
「折角休みが取れたんだもの」
この日向市の自然で、京子先生の歪んだ性格も少しは改善されるといいな、と願ったことは、私だけの秘密だ。
第二話「赭は、再会の色。」完
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