海の嘘と空の真実

魔瑠琥&紗悠理

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第一章

第三話「牡丹は、心花の色。」その弐

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市場から帰ってきた私達は、早速開店のための準備をする。

「綾瀬ちゃん、今日は眠そうな顔してるね。大丈夫?まだ若いんだから、ちゃんと寝なきゃだめだよ?」

そう言った恭華さんの言葉を聞いていたのか、恭司君が私の代わりに言葉を発した。

「綾瀬は今日、車の中でも寝てたんだぜ。随分疲れてるんだよ。姉貴が話しかけると余計疲れるだろうから、そこら辺にしておけっ……痛てててっ!!」

容赦無く拳骨を振りかざす恭華さんを見ると、恭華さんは全然凶暴じゃないな、なんてことを思った。だってあの拳骨には愛がある。それは二人の表情から分かることだし、本当に凶暴な人は、手を出さなくても凶暴なのだ。そう、あの先生が私達を見捨てた時みたいに。

「綾瀬ちゃん、毎日疲れてるのにごめんね!!」

我に返ると、申し訳なさそうに両手を合わせて謝る恭華さんが目に入った。隣では恭司君が頭に手を乗せ、呆れたようにため息をついている。

「全然大丈夫ですよ!恭華さんが話しかけてくれるおかげで、いつも元気になれるんです!」

「ほらね、恭司。綾瀬ちゃんは優しいんだから」

「悪かったよ、姉貴」

バツの悪そうな顔をしながらも謝る恭司君は、きっと素直な人なんだろうと思った。

「お喋りばっかしてるけど、準備は進んでる?」

声がした方へ振り向くと、店長が苦笑いをしながら立っていた。

「おはようございます、店長。実は今、恭司が一人前の板前になれるように指導していたところなんです。そんな心配そうな顔しなくても大丈夫ですから」

「は!?」

恭華さんが冗談めかして言うと、恭司君がすかさず顔をしかめる。

「それはとても良い事だけど、手も動かしてね」

店長はまたもや恭華さんと恭司君が言い争っていたことを察したようだ。きっとよくあることなんだろう。

「手も動かしてたんだけどなぁ」

「拳骨は例外だっつの!」

そんな姉弟のやり取りを微笑ましく感じた。

無事に準備を済ませて開店時間になると、さっきまでふざけていたのが嘘のように、皆が真剣になる。と言っても、堅苦しいわけでは無い。

「ご注文をお伺いします!」

恭華さんの元気な声や、

「ごゆっくりどうぞ」

店長の優しい笑顔。真剣な眼差しで料理を作っている玄さんと恭司君。
そして、私も皆に負けないくらいバイトに励んでいる。

「いらっしゃいませ!!」

と、胸のバッジを輝かせて。

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