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5話 領主様の視線
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拝啓母さん
俺は今、領主様と魔法の訓練デートをしています。
【ルース領主の屋敷 防魔室】
「そうだ、もう少し腕を上げて……そう、そのまま放て」
「ファイア!」
俺が魔道書を片手にそう唱えると、大きな炎が勢い良く的へと飛んでいった。
「わぁ、できました!」
魔法なんて頭の良い人しか撃てないと思ってたけど、この世界は魔道書という素晴らしいものがあるのだよ。
ただやっぱある程度訓練はした方が上手に撃てるからってことで、オスカー様に言われて一緒に訓練をしている。
オスカー様に手取り足取り教えてもらって、彼の手が俺の腕や背中に触れる度に俺はドキッとする。
こればっかりはどれだけ一緒にいても慣れそうにない。
俺は自分の顔が赤くなってるんじゃないかと思ってすぐに視線を下げる。
そうやってすぐに視線を下げちゃうから全然気付かなかったのかもしれないけど、最近、オスカー様の視線を感じる気がする。
よく目が合うんだ。
目が合って、俺が照れ隠しにニコっと笑うと、オスカー様も微笑み返してくれる。
あれ、両想いなんじゃね。とかいう錯覚に陥ることもある。
俺は、最推しとかって言ってるけど、ファン目線じゃなくて、本気でオスカー様を1人の男として好きになってる。
憧れだった彼はいつしか毎日隣にいるようになり、今ではそれだけじゃなくて、俺の心の支えにもなっている。
オスカー様は自分の話し相手になってほしくて俺を雇ったみたいだけど、正直話し相手になってもらってるのは俺の方な気がする。
だって、いっつも気にかけてくれるし、心配してくれるし、俺の細かいところまでよく見てくれてる。
それで的確なアドバイスをくれたり、俺の好きな話をしてくれたり……。
こんなの好きにならない訳がない。
でも、最近思うんだ。
俺は、オスカー様の話し相手としてちゃんと職務を全うできているのかって。
正直仕事という感覚はまるでない。
ただただ好きな人の家に居候をしているだけだ。
オスカー様は俺のことどう思ってるんだろう?
オスカー様の本音が聞きたい。
そう思ってるとまた、オスカー様の視線を感じる。
パッと彼の方を見ると、目が合い、彼が口を開く。
「フィル、お前何か悩んでいるのか?」
「えっ?」
もうオスカー様ホント鋭い。
あなたのことで悩んでますよ、なんて絶対言えない。
「最近、ボーッとしていることが多い気がするが……」
「そうですか? 特に何も悩みなんてないですよ。こんな良いお屋敷に住ませてもらって、オスカー様と毎日楽しく暮らせるんですから、悩みなんてある訳ないじゃないですか」
その幸せすぎるのが悩みです。なんつって。
「そうか……お前はいつもそうやって俺の嬉しいことを言ってくれる。だが俺は、たまにはお前の本音が聞いてみたいとも思っているのだぞ……」
「え、ええ!?」
まさかの発言に俺がびっくりすると、オスカー様はハッと我に返ったような反応をする。
「す……すまん! 俺は一体何を……。少し、疲れているようだ。悪いが今日は休ませてもらう」
「え、オスカー様!? 大丈夫ですか!?」
「あぁ、少し休めばすぐに良くなる。お前も程々に切り上げてゆっくり休むのだぞ」
オスカー様はそう言って急ぎ足で防魔室から出ていった。
何今の……。本音って……そりゃ、俺の本気の愛を全部ぶつけたらオスカー様はドン引きするだろうから、多少は抑えてるけど、それでも俺は、さっきの一言も割と本音だったんだけどな。
オスカー様は、俺が社交辞令で言ってると思ってるのかな……。
それにオスカー様……顔が赤かったような……?
え、どゆこと?
オスカー様?
本音が聞きたいのは俺の方なんですけど?
ふぅ、そろそろあの魔道書を使うときが来たか……。
状態異常の魔道書……。オスカー様に内緒でこっそり買っちゃったのだ。
俺は自分の部屋に戻ってその魔道書を手に取ると、隣のオスカー様の部屋をノックした。
俺は今、領主様と魔法の訓練デートをしています。
【ルース領主の屋敷 防魔室】
「そうだ、もう少し腕を上げて……そう、そのまま放て」
「ファイア!」
俺が魔道書を片手にそう唱えると、大きな炎が勢い良く的へと飛んでいった。
「わぁ、できました!」
魔法なんて頭の良い人しか撃てないと思ってたけど、この世界は魔道書という素晴らしいものがあるのだよ。
ただやっぱある程度訓練はした方が上手に撃てるからってことで、オスカー様に言われて一緒に訓練をしている。
オスカー様に手取り足取り教えてもらって、彼の手が俺の腕や背中に触れる度に俺はドキッとする。
こればっかりはどれだけ一緒にいても慣れそうにない。
俺は自分の顔が赤くなってるんじゃないかと思ってすぐに視線を下げる。
そうやってすぐに視線を下げちゃうから全然気付かなかったのかもしれないけど、最近、オスカー様の視線を感じる気がする。
よく目が合うんだ。
目が合って、俺が照れ隠しにニコっと笑うと、オスカー様も微笑み返してくれる。
あれ、両想いなんじゃね。とかいう錯覚に陥ることもある。
俺は、最推しとかって言ってるけど、ファン目線じゃなくて、本気でオスカー様を1人の男として好きになってる。
憧れだった彼はいつしか毎日隣にいるようになり、今ではそれだけじゃなくて、俺の心の支えにもなっている。
オスカー様は自分の話し相手になってほしくて俺を雇ったみたいだけど、正直話し相手になってもらってるのは俺の方な気がする。
だって、いっつも気にかけてくれるし、心配してくれるし、俺の細かいところまでよく見てくれてる。
それで的確なアドバイスをくれたり、俺の好きな話をしてくれたり……。
こんなの好きにならない訳がない。
でも、最近思うんだ。
俺は、オスカー様の話し相手としてちゃんと職務を全うできているのかって。
正直仕事という感覚はまるでない。
ただただ好きな人の家に居候をしているだけだ。
オスカー様は俺のことどう思ってるんだろう?
オスカー様の本音が聞きたい。
そう思ってるとまた、オスカー様の視線を感じる。
パッと彼の方を見ると、目が合い、彼が口を開く。
「フィル、お前何か悩んでいるのか?」
「えっ?」
もうオスカー様ホント鋭い。
あなたのことで悩んでますよ、なんて絶対言えない。
「最近、ボーッとしていることが多い気がするが……」
「そうですか? 特に何も悩みなんてないですよ。こんな良いお屋敷に住ませてもらって、オスカー様と毎日楽しく暮らせるんですから、悩みなんてある訳ないじゃないですか」
その幸せすぎるのが悩みです。なんつって。
「そうか……お前はいつもそうやって俺の嬉しいことを言ってくれる。だが俺は、たまにはお前の本音が聞いてみたいとも思っているのだぞ……」
「え、ええ!?」
まさかの発言に俺がびっくりすると、オスカー様はハッと我に返ったような反応をする。
「す……すまん! 俺は一体何を……。少し、疲れているようだ。悪いが今日は休ませてもらう」
「え、オスカー様!? 大丈夫ですか!?」
「あぁ、少し休めばすぐに良くなる。お前も程々に切り上げてゆっくり休むのだぞ」
オスカー様はそう言って急ぎ足で防魔室から出ていった。
何今の……。本音って……そりゃ、俺の本気の愛を全部ぶつけたらオスカー様はドン引きするだろうから、多少は抑えてるけど、それでも俺は、さっきの一言も割と本音だったんだけどな。
オスカー様は、俺が社交辞令で言ってると思ってるのかな……。
それにオスカー様……顔が赤かったような……?
え、どゆこと?
オスカー様?
本音が聞きたいのは俺の方なんですけど?
ふぅ、そろそろあの魔道書を使うときが来たか……。
状態異常の魔道書……。オスカー様に内緒でこっそり買っちゃったのだ。
俺は自分の部屋に戻ってその魔道書を手に取ると、隣のオスカー様の部屋をノックした。
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