152 / 202
第4章 たいせつな人を守りたい
144 ヴァンを楽にしたいのに ※
しおりを挟むゆっくりと、腰を動かし始める。
入り口から遠い……半分くらいの場所まで浅く抜いて深くまで、引いて、深くまで。自分から動くって、こんなに難しいものだと思わなかった。
いつもヴァンに気持ちよくされたら、自然に腰が動いていたはずなのに、どんな動きだったのか思い出せない。
「ふぁ……ぁ、ぅ……」
あまり抜き過ぎると、そのまま抜け落ちるんじゃないかと怖くなる。
けれど入り口のすこし上あたりに一番気持ちのいい場所があって、自然とそこにこすりつけたくなる。今は……今日は……ヴァンを気持ちよくさせるのが優先なのに。自分が、気持ちよくなるためじゃないのに。
「リク……」
「……まって、もぅ、すこし……」
ぎこちない動きで身体を揺らして、ヴァンの快感を探る。
口じゃ全部咥えきれないならこちらで包むしかない。ヴァンだって俺の中でイキたいって言ってくれたんだ。願いに応えたい。
そう思うのに、なんだか上手くできない。
「……リク……」
ヴァンの熱い手のひらが俺の頬を撫でる。
俺は抜き差しの間隔を速め、それでも抜け落ちないように気を使いながら揺らしていく。呼吸が徐々に小刻みになっていて、繋がった場所から押し出された潤滑液が卑猥な水音になって響く。
ぞく……と、甘い痺れが背筋を伝った。
「……ぅあ、ぁ……」
「リク」
「う、ごめ……ん、ヴァ、ン……」
気持ちよくさせたい。
なのに、自分の方が気持ちよくなり始めている。
ヴァンと繋がっていられる。それだけで嬉しくて、自分の気持ちいい場所にこすりつけようと身体が泳ぐ。
また瞼の奥が、じんと熱くなった。
ヴァンが俺の名を呼ぶ。
「リク……リクの気持ちいいを、さがし……て」
思いもしない言葉に顔を上げた。
ヴァンが切ない顔で俺に頬を撫でている。その顔が歪んで見えるのに気がついて、はじめて俺ば自分が泣いていたのだと気づいた。
「……僕は、嬉しいから……リク、こんな姿」
「ヴァン……」
「僕のために……」
俺の頭を抱きよせる。
その力に抵抗せず、俺はそのままヴァンと唇を合わせた。舌を絡め合って、互いの咥内を味わっていく。
「……ん、んぅ……はぁ……ぁ」
「たまらない……」
唇を離して、ヴァンが囁く。
「リクのこんな姿……たまらなく、可愛くて……」
「……ヴァ、ン……んっ……」
「だから……」
俺の背筋に熱い手のひらを這わせた。
「――っあ!」
きゅ、と後孔を締める。
一番感じる。気持ちいい背骨を撫でる指先に、俺は声を上げてのけ反った。ヴァンが熱い息を漏らす。
「だから……リクが気持ちよく、なるように……」
「……だって……っあ」
「リクが気持ちよくなるのが、嬉しい……から……」
快楽を誘う動きより、俺の気持ちいいを探してと、荒い息の切れ切れの声で言う。
どこまでも俺のことを一番に思うヴァンに、胸がズキズキと痛む。
「だって……ヴァンを、楽に……したいのに……」
ヴァンを楽にしたい。
悦ばせたい。
ジャスパーのように癒すことなんかできないから、だから、俺に出来ることでヴァンの苦しみを取り除きたい。
「楽に……した、い……」
抜き差しするように腰を揺らしながら、呟き返す。
熱にうかされるヴァンを見るのが辛い。ガチガチになりながら吐き出せないで喘いでいる、そんな姿を見るのが辛い。
俺が気持ちよくなるためにやっているんじゃない……のに……。
「……リクは、優しい、ね」
こんな状態なのに労わりの言葉をかけられて、ぱたり、とまた涙が落ちた。
ヴァンが俺にしてくれたことを思えば、こんなの何十分の一……いや、何百分の一にもならない。だから……。
「僕は……リクの、気持ちいい姿や、嬉しい顔が、好きだから……」
「ヴァン」
「僕ので、気持ちよく……なってくれないか?」
それがヴァンの願いだからと繰り返し口にする。
「……無理に深く、じゃなくて……気持ちよく、なって……」
「ん……」
こくり、と頷いて、俺は軽く身体を浮かせる。
ゆったりと腰を揺らしながら、俺は喉を反らした。
……前立腺とか聞いた、すごく気持ちいい場所にヴァンの一番太い部分をこすりつけていく。声が抑えられないほどの快感に、呼吸が乱れていく。
「……はぁあ、ぁ、あっ……ぁ……」
いい。
ここ……ここが、すごく、気持ちいい。
ヴァンのものを使って自慰をしているような背徳感を覚えながらも、それが見たい、嬉しいと言われたらもう、止められない。
きもちいい……。
「ひぁ……ぁ、ヴァン……ん、ここ……」
「うん、ここが気持ちいい……ね」
「……ぁ、きもちいい、い、いい……い……」
かくかくと腰を上下左右に揺らし、痴態を見せつける。
恥ずかしさと快楽に飲み込まれて……頭が、おかしくなりそうだ。俺の先端からも、滴が溢れてヴァンの下腹を汚していく。
「ふぁ……ぁ、きもちいい……ぃ……よぉ」
「かわいい……」
たまらないという顔で、ヴァンが囁いた。
「……かわいい、リク……僕の……可愛い、子……」
「ヴァン……んっ……ぁ、ふぁ、あ!」
両腕で上半身を支えるのが精一杯のまま、ヴァンの胸の上でよがり狂う。
声をあげる。
頭が真っ白になって星が飛ぶ。
心も身体も満たされて、何度も軽くイっているのが分かる。その度にヴァンを絞めつけて、その締め付けのまま擦って、俺はまたイく。
気持ちよくて壊れそうだ。
ヴァンが俺の上半身を支えるように手を添える。
「……リク」
「ひぃん……ぃ、ぁぁ……い、なに、こ……れ……」
身体の中で何かが動き始めている。
快感を伴うこれは……魔力、だろうか……。全身が痺れる。
「っあ! ぁぁ、ぁ」
魔力が快感を伴ってまざり合う。微笑みながらヴァンが答える。
「……すごい、ね。僕とリクとで……めぐり、始め……た」
ヴァンの表情が明るくなってきた。
滞っていた魔力が、ちゃんと巡り始めたのか、荒い息でも、苦しそう……という感じが無い。全身に光る汗を滲ませながらも、俺の顔を見つめ、微笑む。
「このまま……イかせて、リク」
そう言うと、しっかりと俺の腰を掴んだ。
10
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。
巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。
かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──
やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる