21 / 123
第一章 「花の入れ墨」と「開花」
第十五話
しおりを挟む
「じり貧だ。私の能力の範囲内には近づくに近づけないのが現状だろう。対してこちらはこんな芸当も出来る」
腕を横に振るう。しかし一見して何も起こりはしていない。
ところが数秒経過すれば、女性は突如として腕を抑えて見せた。
その抑えた手の指の隙間からは血が零れて落ちている。
「……何をした? いや、わかるわ。消滅による遠距離射撃ね。真似事を、攻撃が見えない分あんたの方が厄介だわ」
「場数が違う。開花したての人間には負けやしない」
余裕のある笑みを浮かべる那附。女性はそれに対し、やるせなそうに空を見た。
はぁと息を吐き捨て、一理あるとでもいうように「そうね」と口にする。
「確かに、こういうのは場数が大事ね」
一瞬流れる不自然な間。流れたのは夜の栖寂。星や月が見下ろす住宅地の路地、よくある道だ。
その一般的な光景こそ、地に不自然に空いた空洞の異常さを際立たせている。
空気は乾き、寒さは時間を重ねるごとに厳しくなっている。丑三つ時にも近くなっているのだろう。
その間を切り裂いたのは女性だった。キッとこちらを睨みつけ、鋭い口調でこういった。
「けどね、開花したてだからこそバレないことっていうのもあるのよ。情報は大きなアドバンテージ、それに気が付くべきだったわね」
再び女性の周囲に次々と浮かんでいく光球。それは光線と代わりこちらに向かってくる。
もう幾度と見た芸当だ。那附もそれへの対応は容易く行っている。
光で視界こそ遮られるものの、手前で消滅させている以上は光線がここまで届くことはない。
「こうしていても埒が明かないな。悪いがこちらも手を出すぞ」
那附かそう告げ、右手のひらを正面に向けたその時だった。
地から貫通して走る一筋の光。地を削り、空へと向かう光線が那附をとらえた。
那附から二メートルと離れていない地面から、光線が湧き上がってきたのだ。
正面方向の光線を見ていれば自ずと視界は狭くなる。暗闇になれた目で長く光を見るだけでも、目がおかしくなりそうだった。ましてや地面から出る光線になど、気が付くはずもない。
突然の奇襲に左半身を引く那附。しかしその光線をよけるすべなどない。
那附の左腕を掠め、その光は上空へと走っていく。真っすぐに、減衰などすることもなく。
咄嗟に抑えた左腕、見るも無残な有様だ。無理やりに削り取られたコート、掠めた範囲に対してその焼け方は甚だしい。
左腕の一部は喪失し、離れていた左頬まで皮膚がただれている。直撃せずともこれなのだ、容易く落命しかねない。
容赦などない、これは命の奪い合いだ。
異常性を実感する。これまでは加減があったのだ、あくまでも「組織に入れる」という意思が。
先ほどもそうだ、那附は女性を殺めようと思えば殺められたはず。それでもあえて致命傷を避ける攻撃をしていた。しかし……今はもうその加減などない。
腕を横に振るう。しかし一見して何も起こりはしていない。
ところが数秒経過すれば、女性は突如として腕を抑えて見せた。
その抑えた手の指の隙間からは血が零れて落ちている。
「……何をした? いや、わかるわ。消滅による遠距離射撃ね。真似事を、攻撃が見えない分あんたの方が厄介だわ」
「場数が違う。開花したての人間には負けやしない」
余裕のある笑みを浮かべる那附。女性はそれに対し、やるせなそうに空を見た。
はぁと息を吐き捨て、一理あるとでもいうように「そうね」と口にする。
「確かに、こういうのは場数が大事ね」
一瞬流れる不自然な間。流れたのは夜の栖寂。星や月が見下ろす住宅地の路地、よくある道だ。
その一般的な光景こそ、地に不自然に空いた空洞の異常さを際立たせている。
空気は乾き、寒さは時間を重ねるごとに厳しくなっている。丑三つ時にも近くなっているのだろう。
その間を切り裂いたのは女性だった。キッとこちらを睨みつけ、鋭い口調でこういった。
「けどね、開花したてだからこそバレないことっていうのもあるのよ。情報は大きなアドバンテージ、それに気が付くべきだったわね」
再び女性の周囲に次々と浮かんでいく光球。それは光線と代わりこちらに向かってくる。
もう幾度と見た芸当だ。那附もそれへの対応は容易く行っている。
光で視界こそ遮られるものの、手前で消滅させている以上は光線がここまで届くことはない。
「こうしていても埒が明かないな。悪いがこちらも手を出すぞ」
那附かそう告げ、右手のひらを正面に向けたその時だった。
地から貫通して走る一筋の光。地を削り、空へと向かう光線が那附をとらえた。
那附から二メートルと離れていない地面から、光線が湧き上がってきたのだ。
正面方向の光線を見ていれば自ずと視界は狭くなる。暗闇になれた目で長く光を見るだけでも、目がおかしくなりそうだった。ましてや地面から出る光線になど、気が付くはずもない。
突然の奇襲に左半身を引く那附。しかしその光線をよけるすべなどない。
那附の左腕を掠め、その光は上空へと走っていく。真っすぐに、減衰などすることもなく。
咄嗟に抑えた左腕、見るも無残な有様だ。無理やりに削り取られたコート、掠めた範囲に対してその焼け方は甚だしい。
左腕の一部は喪失し、離れていた左頬まで皮膚がただれている。直撃せずともこれなのだ、容易く落命しかねない。
容赦などない、これは命の奪い合いだ。
異常性を実感する。これまでは加減があったのだ、あくまでも「組織に入れる」という意思が。
先ほどもそうだ、那附は女性を殺めようと思えば殺められたはず。それでもあえて致命傷を避ける攻撃をしていた。しかし……今はもうその加減などない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
花鳥見聞録
木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神楽坂gimmick
涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。
侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり……
若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる