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第一章 「花の入れ墨」と「開花」
第十四話
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顔をしかめ、跪く那附。女性はあっけらかんと、笑みと共にふらふらと手をふるう。
「あらごめんなさいねぇ。当てる気はなかったのよ、さっきの攻撃も私が死なないようにしてくれてたしぃ。けどほら、地面を貫通させるからうまく狙いが定まらなくってねぇ」
「地面からだと? 開花前と同じならば、物質がある場所からは光球は出せないはずだ。ある程度密度がある場所からは……」
「そこに穴ぼこがあるじゃない」
女性がちらりと見たのはその後方だった。先ほど、俺に放った光線で形成された空洞。
その内部に光球を作り、女性は光線を発射した。
「前の戦闘のものか。分かるはずもない」
参ったというように呟く。声には若干の笑みを感じる吐息が混じっていた。自分を嘲るような息が。
「そういうこと。理解が早くて助かるわ」
手をかざす。浮かぶ光球。そして聞こえるのは驕った声。
「今度はどっちからでしょうね」
放たれた光線。途中で断絶する光。
瞬く間に向かってくる次弾。地からせりあがるものだ。
それにも那附は対応して見せる。手前二メートルから湧き出る光線を、無理やりにかき消す。跪いたままでも、能力を駆使して戦闘を継続している。
そんな姿を見て、ただただ俺は呆然とするばかりだ。
なすすべなどない、自身の能力すらわからないのだから。
「無力だ、俺は……」
攻撃は激しくなる。地に空いた空洞は光線が放たれるたびに広がり、その空洞から光線の起点が作られる。
射角は増え、那附の消滅が遅れてくる。光線が断絶する距離は次第に近づいている、それは素人目にもわかった。
二メートル、一メートル五十、一メートル。距離が次第に近くなれば、自ずと熱が伝わってきた。
万事休すだ、もはや逆転の一手は見えない。
――しかしどうしたことか、その光線の嵐はあるタイミングではたと止む。
最後の光線を境に、幾度となく響いていた重低音はなりを潜め、夜には不相応な光は消える。
伝わってきていた熱も澄んだ空気に溶け込んでいき、アスファルトやらの焼けた匂いばかりがこの空間を支配している。
地から湧き出る煙の先、こちらに手をかざしたままに栖止した女性がいる。
外傷はない、ただただ信じられないとでも言うように目を見開いている。その視線の先、見ているのはおそらく俺たちではない。
揺らぐ瞳、震える唇。溢したのは消えてしまいそうな声だった。
「出ない……」
白い煙に隠れていた女性の左半身が、風が吹き込むことで露になる。
肌だ、化粧っ気の強い肌。かざした左手はか細く、女性らしい白い肌に包まれている。
そこに「花の入れ墨」などどこにもない。
「どうして……。あんたの『花』もないっ! なんで、どうしてッ!」
取り乱す。那附はそれに黙って目を伏せた。
「何とか言いなさいよッ! あんたの仕業でしょう!」
すると那附は首を振った。
「違う。俺の仕業ではないんだよ」
「じゃあ何っ、こいつのせいだって!?」
指さしたのは俺の方だ。
そして那附はそれを否定しなかった。
「あらごめんなさいねぇ。当てる気はなかったのよ、さっきの攻撃も私が死なないようにしてくれてたしぃ。けどほら、地面を貫通させるからうまく狙いが定まらなくってねぇ」
「地面からだと? 開花前と同じならば、物質がある場所からは光球は出せないはずだ。ある程度密度がある場所からは……」
「そこに穴ぼこがあるじゃない」
女性がちらりと見たのはその後方だった。先ほど、俺に放った光線で形成された空洞。
その内部に光球を作り、女性は光線を発射した。
「前の戦闘のものか。分かるはずもない」
参ったというように呟く。声には若干の笑みを感じる吐息が混じっていた。自分を嘲るような息が。
「そういうこと。理解が早くて助かるわ」
手をかざす。浮かぶ光球。そして聞こえるのは驕った声。
「今度はどっちからでしょうね」
放たれた光線。途中で断絶する光。
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それにも那附は対応して見せる。手前二メートルから湧き出る光線を、無理やりにかき消す。跪いたままでも、能力を駆使して戦闘を継続している。
そんな姿を見て、ただただ俺は呆然とするばかりだ。
なすすべなどない、自身の能力すらわからないのだから。
「無力だ、俺は……」
攻撃は激しくなる。地に空いた空洞は光線が放たれるたびに広がり、その空洞から光線の起点が作られる。
射角は増え、那附の消滅が遅れてくる。光線が断絶する距離は次第に近づいている、それは素人目にもわかった。
二メートル、一メートル五十、一メートル。距離が次第に近くなれば、自ずと熱が伝わってきた。
万事休すだ、もはや逆転の一手は見えない。
――しかしどうしたことか、その光線の嵐はあるタイミングではたと止む。
最後の光線を境に、幾度となく響いていた重低音はなりを潜め、夜には不相応な光は消える。
伝わってきていた熱も澄んだ空気に溶け込んでいき、アスファルトやらの焼けた匂いばかりがこの空間を支配している。
地から湧き出る煙の先、こちらに手をかざしたままに栖止した女性がいる。
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