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第二章 「主人公」と「憧れ」
第九話
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「約一週間おきに数人と増える能力者、このまま抗争を続けるつもりか? そろそろ世間も黙っていないだろうね。確かに、君たちが心酔している鼓くんはきっと特別だ。この『能力』という存在との共存の道を、うまいこと切り開くかもしれない。しかし僕からしてみれば、そもそも能力などあまり残すべきものではないと思う。世の中が殺伐とするだけだ」
演説のように、ジェスチャーを交えて店長はそう言い放つ。しかしその目の奥、曇りはない。未来を見据えている、世界が崩壊しない未来を。
「言いたいことは、それだけか?」
サングラスの男が口を開く。同時に店長の周囲に透明な壁ができる。
俺の周囲にあるものと同じものだ。隔離するための壁。その中ではうまく身動きが取れず、その浮遊感に身を任せるだけだ。
しかし店長は平然と笑うばかりだ。
「歯向かうかい?」
「フォーチュンを裏切るならば、俺はあなたを上司と認めない」
ドスの利いた声。それを聞いて「おお怖い」と呟けば、店長はチラとこちらを横目に見る。
「……力を借りるよ。この場を乗り切るには開花が必要だ」
振り返った店長、その首元には当然のように描かれた花。その花の入れ墨が輝けば、次第にそのつぼみは花となる。
レンギョウ、その花を偶然に俺は知っていた。小さな花が並んだ花。
花言葉は……『期待』。
同時に店長の目の前から男に向かって放たれた鉄球。半径二メートルもありそうなその鉄球は、勢いに任せて隔離の能力者へと向かって行く。
被弾は確認できない。しかし男に辿り着くや否や、隔離していた障壁は確かに消えていった。
体の重さにバランスを崩しそうになるも、何とか地面に着地すれば店長からは「衝撃に備えてほしい」と声が掛かる。
その直後、ゴンッ、と重々しい音が店内に響く。同時に建物に衝撃が走った。衝撃にしても大きい。
それこそ、建物を取り壊すための鉄球が降ってきたかのような振動だ。同時に正面から来る衝撃波、砂埃と商品が飛び散ってくる。
振動に対し体のバランスを取る。同時に正面から迫りくる砂埃に目を細めた。
そして数秒後、その目を開いてみれば、これまで見てきた店内から様相が変わり果てていた。
演説のように、ジェスチャーを交えて店長はそう言い放つ。しかしその目の奥、曇りはない。未来を見据えている、世界が崩壊しない未来を。
「言いたいことは、それだけか?」
サングラスの男が口を開く。同時に店長の周囲に透明な壁ができる。
俺の周囲にあるものと同じものだ。隔離するための壁。その中ではうまく身動きが取れず、その浮遊感に身を任せるだけだ。
しかし店長は平然と笑うばかりだ。
「歯向かうかい?」
「フォーチュンを裏切るならば、俺はあなたを上司と認めない」
ドスの利いた声。それを聞いて「おお怖い」と呟けば、店長はチラとこちらを横目に見る。
「……力を借りるよ。この場を乗り切るには開花が必要だ」
振り返った店長、その首元には当然のように描かれた花。その花の入れ墨が輝けば、次第にそのつぼみは花となる。
レンギョウ、その花を偶然に俺は知っていた。小さな花が並んだ花。
花言葉は……『期待』。
同時に店長の目の前から男に向かって放たれた鉄球。半径二メートルもありそうなその鉄球は、勢いに任せて隔離の能力者へと向かって行く。
被弾は確認できない。しかし男に辿り着くや否や、隔離していた障壁は確かに消えていった。
体の重さにバランスを崩しそうになるも、何とか地面に着地すれば店長からは「衝撃に備えてほしい」と声が掛かる。
その直後、ゴンッ、と重々しい音が店内に響く。同時に建物に衝撃が走った。衝撃にしても大きい。
それこそ、建物を取り壊すための鉄球が降ってきたかのような振動だ。同時に正面から来る衝撃波、砂埃と商品が飛び散ってくる。
振動に対し体のバランスを取る。同時に正面から迫りくる砂埃に目を細めた。
そして数秒後、その目を開いてみれば、これまで見てきた店内から様相が変わり果てていた。
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