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第三章 「好転」と「安らぎ」
第二話
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それでもどうにも納得できず、堪え切れずに乾いた笑いが漏れてしまう。
マンションの一室一つでもひぃひぃ言っている自分とはあまりにも身分が違いすぎだ。
「ははっ……本気ですか? あまりに俺の常識からかけ離れています」
「本気ですよ。ふふっ、主人公にはそういう存在が付き物でしょう?」
無邪気に笑う。後ろ腰に手を回し、前かがみに笑みを向ける。
まだ照れくささがある、それでも視線は逸らすことはない。モノクロームを真っすぐ見ることができる。
「モノクロームは全員の役割を引き受けてくれるつもりですか」
「ええ、そのつもりです」
「ありがとうございます。とはいえ、俺もおんぶに抱っことはいかないように努力しますよ」
こう全てをやってくれる存在がいると、後ろめたさというものも出てくる。
任せきりにしていては軽く自己嫌悪にでも陥りそうだ。多少なりとも、俺もモノクロームのために貢献しなくてはいけない。
人生などどうでもいい、そう思っていた自分が嘘のようだ。自分はこんなにも、誰かのために動きたいと思っている。
人というのは……きっかけ一つで思ったよりも簡単に変わっていくのかもしれない。
そうしてモノクロームとやり取りを交わしていれば、未だに機械の元にいる甫突店長がついに声を上げた。
操縦席のドア元、店長はその機械に寄りかかり続けている。しかし彼は、そのままこちらに来ることなくその操縦席の扉を再び開いた。
「うまくやっていけそうだな。そうなれば俺はここらでお暇をいただくか」
「店長はここに泊まらないんですか?」
「あたぼうよ。俺にも愛しき妻がいるんでね、第一、モノクローム嬢もお望みだろう?」
するとモノクロームが浮かべるは怪訝な表情。
「何ですか、その呼び方。勘違いで変な印象が付きそうなのでやめてくださいよ……」
「ははっ、それはそうだな。いつからか知らないが、一途野郎にこの勘違いは最悪だ。訂正するよ」
笑い、操縦席に乗り込む。そしてその扉を閉めようと手を伸ばしたところで、俺はつい店長を引き留めた。
「待ってください」
止まる腕、機械の操縦席から声がする。
「どうかしたか?」
用件など本当はなかった、おそらく聞きたい話のほとんどがモノクロームに聞けば済む話だ。しかし、ちょっとした物寂しさがあったのだ。
「店長の目指すべきところについて、聞いておきたいんです」
すると店長は「面白いことを聞く」と感心したように呟いた。そしてドアから覗かせる手で払うような素振りを見せれば、「そもそもだが……」と話を続けた。
「『能力なんてあるべきではない』、その言葉が全てだよ。これまでの能力者から能力を消し去り、これから出現する能力者の能力も消し続ける。これから増えるやつから能力を消すのは容易い。能力慣れしていないからな。問題はこれまでの能力者集団だ。それを叩かないといけないのが厄介だ」
既に形成された能力者集団、その体制は盤石のようだ。
数が違う、それだけでも圧倒的な差になる。加えて質のいい能力者も多いのだろう。正々堂々勝負するわけにもいかない。
崩すには、何とか少人数と対峙するように動くしかないだろうか。
マンションの一室一つでもひぃひぃ言っている自分とはあまりにも身分が違いすぎだ。
「ははっ……本気ですか? あまりに俺の常識からかけ離れています」
「本気ですよ。ふふっ、主人公にはそういう存在が付き物でしょう?」
無邪気に笑う。後ろ腰に手を回し、前かがみに笑みを向ける。
まだ照れくささがある、それでも視線は逸らすことはない。モノクロームを真っすぐ見ることができる。
「モノクロームは全員の役割を引き受けてくれるつもりですか」
「ええ、そのつもりです」
「ありがとうございます。とはいえ、俺もおんぶに抱っことはいかないように努力しますよ」
こう全てをやってくれる存在がいると、後ろめたさというものも出てくる。
任せきりにしていては軽く自己嫌悪にでも陥りそうだ。多少なりとも、俺もモノクロームのために貢献しなくてはいけない。
人生などどうでもいい、そう思っていた自分が嘘のようだ。自分はこんなにも、誰かのために動きたいと思っている。
人というのは……きっかけ一つで思ったよりも簡単に変わっていくのかもしれない。
そうしてモノクロームとやり取りを交わしていれば、未だに機械の元にいる甫突店長がついに声を上げた。
操縦席のドア元、店長はその機械に寄りかかり続けている。しかし彼は、そのままこちらに来ることなくその操縦席の扉を再び開いた。
「うまくやっていけそうだな。そうなれば俺はここらでお暇をいただくか」
「店長はここに泊まらないんですか?」
「あたぼうよ。俺にも愛しき妻がいるんでね、第一、モノクローム嬢もお望みだろう?」
するとモノクロームが浮かべるは怪訝な表情。
「何ですか、その呼び方。勘違いで変な印象が付きそうなのでやめてくださいよ……」
「ははっ、それはそうだな。いつからか知らないが、一途野郎にこの勘違いは最悪だ。訂正するよ」
笑い、操縦席に乗り込む。そしてその扉を閉めようと手を伸ばしたところで、俺はつい店長を引き留めた。
「待ってください」
止まる腕、機械の操縦席から声がする。
「どうかしたか?」
用件など本当はなかった、おそらく聞きたい話のほとんどがモノクロームに聞けば済む話だ。しかし、ちょっとした物寂しさがあったのだ。
「店長の目指すべきところについて、聞いておきたいんです」
すると店長は「面白いことを聞く」と感心したように呟いた。そしてドアから覗かせる手で払うような素振りを見せれば、「そもそもだが……」と話を続けた。
「『能力なんてあるべきではない』、その言葉が全てだよ。これまでの能力者から能力を消し去り、これから出現する能力者の能力も消し続ける。これから増えるやつから能力を消すのは容易い。能力慣れしていないからな。問題はこれまでの能力者集団だ。それを叩かないといけないのが厄介だ」
既に形成された能力者集団、その体制は盤石のようだ。
数が違う、それだけでも圧倒的な差になる。加えて質のいい能力者も多いのだろう。正々堂々勝負するわけにもいかない。
崩すには、何とか少人数と対峙するように動くしかないだろうか。
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