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第三章 「好転」と「安らぎ」
第三話
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「それでも今ならば君には仲間がいる。開花の可能性も残っている。いつか能力者が衰退することを期待するよ。そして当然僕も……仲間の一人だ」
親指を立てる。そして座席から顔を出したかと思えば、「なんて、カッコつけてみたよ」と歯を見せて笑った。
そんな店長に「台無しですよ」と心の底からの笑顔を向ければ、「はははっ」と笑い、ばんっと操縦席の扉を閉める。
「甫突さん、いつでも遊びに来て下さい」
「ああ。まぁ能力がない以上、俺から出向くことはそうそうできなくなるが……」
「甫突さんの能力はここにあります」
モノクロームが見せたのは左手首。腕を伸ばすようにして内側の手首を見せれば、指さしたのは灰色のブレスレット。
光沢のある金属性のものだ、『機械の生成』にはふさわしい。
それを店長が窓からチラと見れば、「ああ」と小さく笑う。
「そうだったそうだった。こりゃあ早いうち帰ってくるよ。まだやりたいことが山ほどあったんだ。こんな能力を持った以上、巨大人型ロボットの作成は使命みたいなものだ。近いうちに設計図でも描いてくる。男のロマンだろ?」
ウインク交じりにそう告げる。そうして推進部の甲高い音が次第に強まれば、吹き出したのは鋭い炎。
その反作用で機体は勢いよく地をかけ、離陸をすれば空へと向かって行く。
いつかまた会う日があるのだろうか? 今の自分には未来の一つもわからない。
いや、店長ならばしれっと帰ってきそうなものだ。明日、朝起きたら「やっほー」と手を振っていたとしても驚かないだろう。
それこそ、漫画に出てくる人型機械にでも乗ってきても不思議ではない。
空を見上げる。
雪だ、空から降り注いでいる。灰色の空から、純白の雪粒がふらふらとこちらに向かってくる。
それが向かう先は柔らかなクッションの上だ、白いじゅうたんの上。この雪には支えてくれるものがある。
「私達も行きましょう。せっかく暖かい家があるのですから」
頷く。モノクロームから家の方へ振り返れば、雪に埋もれた足を引き抜き、家の方へと足を進めていく。
何年と使い古した運動靴に積雪はあまりにも不向きだ。足が凍え、もはや感覚すら奪われそうだ。壊死してしまうのではないか、そうとさえ思える。
それでも、今は向かう先がある。だから進むことができる。
「あの家、罠かもしれないなんて思っていますか?」
背後から聞こえる声、モノクロームの声だ。俺の後方から雪を踏みしめ、俺の数センチメートル後ろをついてきている。
少しばかり距離を感じる。しかしこれがおそらく彼女らしさなのだろう。彼女らしいアプローチなのだ。
礼儀という正しさに固執している、モノクロームは『完璧』であることにアイデンティティを見出しているのかもしれない。
「思っていませんよ。これも罠ならあきらめる」
「信じてくれているのですね」
「もはや選択肢はありませんから。けれど最悪の選択肢が用意されるくらいならば、そこそこの一手だけが用意されている方がずっといい」
するととんとんと軽く背を叩かれる。そして次にぽんっと、背に軽く走った衝撃。振り返れば、俺の背には頭が押し当てられていた。
「これは『最善の一手』ですよ」
「ああいや、例え話です。この機会をそこそこと評したわけではなくて」
どうやら『そこそこ』という言葉がお気に召さなかったらしい。随分と可愛らしい表現をしてくれる。
本当に不思議な人だ。
親指を立てる。そして座席から顔を出したかと思えば、「なんて、カッコつけてみたよ」と歯を見せて笑った。
そんな店長に「台無しですよ」と心の底からの笑顔を向ければ、「はははっ」と笑い、ばんっと操縦席の扉を閉める。
「甫突さん、いつでも遊びに来て下さい」
「ああ。まぁ能力がない以上、俺から出向くことはそうそうできなくなるが……」
「甫突さんの能力はここにあります」
モノクロームが見せたのは左手首。腕を伸ばすようにして内側の手首を見せれば、指さしたのは灰色のブレスレット。
光沢のある金属性のものだ、『機械の生成』にはふさわしい。
それを店長が窓からチラと見れば、「ああ」と小さく笑う。
「そうだったそうだった。こりゃあ早いうち帰ってくるよ。まだやりたいことが山ほどあったんだ。こんな能力を持った以上、巨大人型ロボットの作成は使命みたいなものだ。近いうちに設計図でも描いてくる。男のロマンだろ?」
ウインク交じりにそう告げる。そうして推進部の甲高い音が次第に強まれば、吹き出したのは鋭い炎。
その反作用で機体は勢いよく地をかけ、離陸をすれば空へと向かって行く。
いつかまた会う日があるのだろうか? 今の自分には未来の一つもわからない。
いや、店長ならばしれっと帰ってきそうなものだ。明日、朝起きたら「やっほー」と手を振っていたとしても驚かないだろう。
それこそ、漫画に出てくる人型機械にでも乗ってきても不思議ではない。
空を見上げる。
雪だ、空から降り注いでいる。灰色の空から、純白の雪粒がふらふらとこちらに向かってくる。
それが向かう先は柔らかなクッションの上だ、白いじゅうたんの上。この雪には支えてくれるものがある。
「私達も行きましょう。せっかく暖かい家があるのですから」
頷く。モノクロームから家の方へ振り返れば、雪に埋もれた足を引き抜き、家の方へと足を進めていく。
何年と使い古した運動靴に積雪はあまりにも不向きだ。足が凍え、もはや感覚すら奪われそうだ。壊死してしまうのではないか、そうとさえ思える。
それでも、今は向かう先がある。だから進むことができる。
「あの家、罠かもしれないなんて思っていますか?」
背後から聞こえる声、モノクロームの声だ。俺の後方から雪を踏みしめ、俺の数センチメートル後ろをついてきている。
少しばかり距離を感じる。しかしこれがおそらく彼女らしさなのだろう。彼女らしいアプローチなのだ。
礼儀という正しさに固執している、モノクロームは『完璧』であることにアイデンティティを見出しているのかもしれない。
「思っていませんよ。これも罠ならあきらめる」
「信じてくれているのですね」
「もはや選択肢はありませんから。けれど最悪の選択肢が用意されるくらいならば、そこそこの一手だけが用意されている方がずっといい」
するととんとんと軽く背を叩かれる。そして次にぽんっと、背に軽く走った衝撃。振り返れば、俺の背には頭が押し当てられていた。
「これは『最善の一手』ですよ」
「ああいや、例え話です。この機会をそこそこと評したわけではなくて」
どうやら『そこそこ』という言葉がお気に召さなかったらしい。随分と可愛らしい表現をしてくれる。
本当に不思議な人だ。
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