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第五章 「結末」
第二十四話
しおりを挟む「あなたのことだよ、モノクロームっ!」
左の首元の入れ墨が花開く。そしてもう一つ、右半身にも宿っていた花の入れ墨。それも開花する。
ヘメロカリス、右半身に宿った花。これまでの全てを終焉に迎えるための花だ。
「なり下がらないのね」
「ああ。そもそも俺が主人公になったとしても、ズタボロで足掻き果てる泥臭い主人公だ。一生泥すすって生きるか、モノクロームと添い遂げるか。そんなもの、比較対象にもなりやしない」
どうしてこんなことで悩んでいたのか、今になってみればバカバカしい。
過去なんてそんなものだ。必死になって生きていても、振り返ってみればくだらない。
人生が失敗しているのなら『どうしてあの時は』と思い、人生が成功しているのなら『あの時はバカだった』と笑い話にする。
俺は一生、『どうしてあの時は』と後悔し続けたくはない。
「そうね、主人公なんてくだらない。作られた主人公ならばなおさらね」
空へと舞ったミーファ。それを見上げた鼓と言えば、やるせなく叫びをあげるばかりだ。
「ミーファ! 俺たちも……っ!」
聞こえてきたのは、うんざりというようなため息。
「はぁ」と息をつき、そして鼓に向かって吐き捨てたのは嫌味。口撃で、彼女は鼓にとどめを刺す。
「邪魔よ、鼓。私はこの二人と戦いにきた。そもそもあなたじゃ相手にならない」
動きを止めることはない。淡々と空へと登り続ける。それを腋目にモノクロームの元を振り返ると、そこには「いたた」と左腕の擦り傷を擦るモノクロームの姿。
大きな外傷はなく、かすり傷程度で収まっている。
そしてこちらの姿を見れば、自身の傷さえ忘れたように目を見開いた。
「シオン、あなた右首にも……っ!」
二つの能力を持った人間など、モノクロームさえ見ないケースだったようだ。
能力者が生まれて以来、初めてなのかもしれない。ミーファの能力に掛けたのであれば、史上空前の出来事なのかもしれない。
「『再』の能力です。これを使えば俺が消してきた能力を使える。傷も癒すことができる」
そして今、俺には回帰の能力もある。今、俺には二つの能力が宿っていた。
一つは『再』。消滅させてきた、光線、消滅、機械生成などの能力を引き出せる。ケガをした際には傷の再生も可能となる。本来は能力の消失とセットだったのかもしれない、そうとさえ感じる能力。
二つ目は『回帰』だ。無効と似通った能力だ。しかしこちらは既に生成され終わった機械など、『本来あるべきでないもの』を消滅させることができる。
能力による変化を消し去る力。例えば近くにいる能力者の能力を封じるわけではなく、放たれた能力で生成された銃弾を消滅させるための力、というべきか。
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