聖女(仮)になりまひた

Miki

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召喚されたようです

分からない

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 この鐘を鳴らすべきか。

 少し前に目が覚めた。少しだけまだ気持ちが悪い。あの美人メイド様が置いていった、枕元に置かれた小さな金色のソレを睨みながら、どうするべきか考えていた。
 ベット横の窓から月明かりが、鐘を照らしている。そして、やはり、というべきか。見えるもの全てが2次元という光景になんとも言えない違和感を感じている。

「テレビに思いっきり近づいて、アニメを見たらこんな感じになるかな」

 …何を言ってるんだ、私は。

 コンコン

 つまらないことを考えていると、扉がノックされた。少しの間、沈黙が続いた後に、扉がゆっくり開かれた。

「失礼いたします」

 メイド様は、左手のランプで照らしながら、私の方へ近づいてきた。さすがに寝たままの態勢では、失礼な気がして起き上がる。

「お目覚めになられたのですね。
 転がったままで大丈夫ですよ。
 顔色もまだ良くないです」

 そう言うと、優しく私の背中に手をそえて、先程と同じようにベットに寝かされそうになる。

「まっ、待ってください!」

 転がされないように踏ん張る。

「私、今なにが起こってるのか全然分からなくて、どうしたらいいのかも分からなくて…とにかく、分からないことばかりなのです!」

 思わず後半は声が大きくなる。メイド様は、そんな私を背中をゆっくりさすり始めた。

「申し訳ございません。私の口からお話しできる内容ではないのです。明日、聖女様の体調を見ながら、現状の説明をできるお方の元へ行きましょう。おそらくそこで詳しいことが分かるかと」

 すると、再び背中から優しい温かいものが、体に染みてきた。
「治癒魔法をかけております。朝には今よりも楽になると思いますので、今は、お休みくださいませ」

 

 そういえば、この人、また私のこと聖女って…魔法って。ああああ…どうか、どうか、私の予想がはずれてますように。神様、仏様。


 目が覚めたら、
 今度こそちゃんと話しを聞かないと。

「朝、に、は、ちゃんと、オキマ、ス」 

 最後の力を振り絞り、なんとかそれだけは伝えることが出来た。
 
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