聖女(仮)になりまひた

Miki

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召喚されたようです

メイド様と執事様と

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 私達は、広く長い廊下を歩いている。今までたくさんファンタジーモノのアニメや漫画、ゲームを見てきたが、まさにソレに似た内装だ。きっと外観も同じに違いない。
 白を基調とした壁、大理石仕様の床には、赤い絨毯が引かれている。大金持ちが持っているような、置物などは無いようで、スッキリしている。

 スチル背景に使えそうね。
 久しぶりに乙女ゲームがやりたくなるわ。

「もう少しで目的の部屋につきますよ」

 そう言ったのは私の前を歩く、あの美人メイド様だ。

 昨晩、メイド様より受けた治癒魔法と深い眠りによって、朝には私の体調はある程度回復した。
 彼女は、私の様子を確認した後、「朝の支度を」と言い、風呂から着替え、朝食、化粧とお世話をしてくれた。私はもうどうしたら良いのか分からず、されるがままになっていた。
 そうして、やっと、私がなぜここにいるのか問題について、話しを聞かせてもらえるということで、今はそちらの部屋に向かっている。

「はい、分かりまひた」

 いきなり話しかけられたが、きちんと返した。少し噛んでいたかもしれないが、許容範囲のものだろう。多分。

 廊下の末端にある、扉の前に来たところで、メイド様が止まった。

 あれ、この城の主みたいな人のところかと思ったのだけれど…こんな建物の隅に、簡素な扉ってことは、違うのかもしれない。

 コンコン

 メイド様が扉をノックした。部屋の主であろう男性の声が返ってくる。

「入ってきなさい」

 彼女が扉を開けてくれ、「どうぞ中へ」と言われたので、私も入る。

「失礼しま、、、」

 あぁどうしよう。ここにも美人がいるよー!!

 後ろで小さく一つ結びされている黒髪、メイド様と似た切れ長の目、その目に合うように整った鼻と口、さらに美貌を完璧にした銀縁の眼鏡。

 なになになに?!?
 この乙女ゲーに出てきそうな好青年は!!

 あ?え、燕尾服、だと。

 これはアレか、アレなのか。

「お会い出来て光栄です。聖女様。私はこちらの城の主に仕えております、ノアと言うものです。以後お見知りおきを」

 右手を胸にそえ、綺麗な礼をされた。

 執事だ!!

 誰か、誰かカメラくだしゃい。

「お兄様、聖女様はまだ体調が完全には戻っておりません。あまりご無理をさせないように」
「ユリの魔法でもまだ完治しないのか?中々手強いな。分かった、話はなるべく長くならないよう致しましょう。しかし、途中で気分など悪くなるようなら、早めに教えくださいね」

 兄?!ユリ様?!

 一度に複数の情報が入ってきた。尚且つ、それがまたオイシイ設定となれば、私の興奮はさらに大きくなっていく。
 ノア様というユリ様のお兄様が、何か私に話しかけていたような気がする。けれど、私の頭の中はそれどころではない。

 あぁ、いけない!駄目よ、サク!!
 今日はちゃんと話を聞かないといけないのよ!

 なんとか気持ちを落ち着かせた。

「心配かけてしまいすみません。まだ混乱してて、色々お話しを聞かせて頂けると助かります。よろしくお願いします」

 噛まずに言えた!よくやったわ、サク!

 ノア様からソファーに座るよう勧められたので、素直に従った。二人がけのソファーに私が座り、前に置かれたテーブルを挟んだところに、置かれているこちらと同じデザインのソファーに、ノア様が座った。ユリ様は、私とノア様の紅茶を用意した後、私の後ろに立つ。

「ゆ、ユリ様。後ろに立たれると、なんだか落ち着かないので、隣に座ってもらえませんか?」

 彼女は驚いたようで、少し固まってしまった。しかしすぐに返答してくれた。

「私は、聖女様の専属侍女でございます。いついかなる場合も対応できるよう、こちらで待機させてくださいませ。あと、私のことはユリと呼び捨てください」

 うーーーわーーーーー!!
 それ、それですよ、もう無理無理!
 問題のソレ!!

「私は!聖女では、ありません!!」

 思わず声を荒らげてしまった。でも、これだけは言っておかないといけない。

「ユリ様方は、私のことを聖女といいますが、私は生まれてこの方、ずっと、聖女と呼ばれるような事などしていません。何故、お二人がそのように呼んでくださるのか…。
 後ですね、ここは何処ですか?私が暮らしていた場所とはまるで違う!何もかも違うのです!気がついたらアソコで寝かされてて、なにがなんだか私には全然、分からない、の、です。」

 一気に話きった私の息は、途切れ途切れになっていた。だけど、そうしないと、私は泣いてしまって、最後まで言えなかったと思う。
 現に今、涙が溜まり始めており、視界が揺れている。

 色々と読んで、見て、なりきってゲームしてみたりして、何度も夢みた、憧れていた2次元の世界。

 おそらくココは知らない世界、知らない場所、知らない人ばかり。私が分かるもの、私のことを分かってくれていた人などいない。
 慣れた世界が変わってしまう事が、こんなに不安になると思わなかった。

 とうとう涙は堪える事が出来ず、次から次へと溢れ出す。

 私はいったいこれからどうすればいいの?
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