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竜に願い、叶えられた少年の夢
竜のしもべとなってから6年経った。気がつけば、「私」は19歳になっていた。
竜の手先となって、悩む人々に救いを与える仕事は最高だった。ま、15の時に嫌になって彼女をとっかえひっかえしたこともあったけど、若気の至りだ。
今はこの仕事にやりがいを感じている。色々な人々に会い、竜が「私」に代わって願いと意向を確認。大抵は「金持ちになりたい」「彼女(もしくは彼氏)が欲しい」「有名になりたい」という他愛もない願い。そんな願いを竜の力によって叶えてあげる。
新たな指令が入った。目的地に向かうために電車に乗った。疲れたせいか、見慣れたビル街が荒涼したように見えた。頑張ろう。死ぬまで。それが「私」の務めだから。滅私せよ。
「私」は立ち上がり電車から降りた。頭の中がぐちゃぐちゃだけど、行こう。
今度のターゲットは12歳の男の子。竜のナビに従い、カードショップの前で少年を待ち伏せする。やがて、厨二病のようなデザインのエコバックを持った少年が出てきた。ダッセぇ。とにかく、後は竜に委ねよう。
ふっと意識が軽くなった。竜による「私」の体の操縦が始まった。「私」は竜を通して、テレビでも見るように少年とのやり取りを眺めた。
「央輔くん、君の願いは何だい?」と、竜は甘い声で語りかけた。正直、竜のねっとりした添加物もりもりジャムみたいな囁き声には未だになれない。
央輔くんは「何コイツ?」という目で竜を見ている。でもノリがいいのか、「能力者になりたい」と答えた。
「何の能力者だい?」
「炎か稲妻」
「君にはその力を得るチャンスがある。そのチャンスを掴んでみないかい?」
当然だが央輔くんは訝しげに竜を見ている。でも、キラキラした羨望も入り混じっているような目だ。そのキラキラが強くなったり、理性の色が強くなったりを2、3度繰り返した。央輔くんは竜の手を取った。
竜はニヤリと笑った。
*
稲妻・炎使いとなった央輔少年はあちこちのテレビ局や配信者から出演交渉があり、少年は一躍時の人となった。引っ張りだこになりながらも少年は「タレントになる」という夢を得た。少年は幸せだった。多くの人々が少年に注目し、称賛していた。そして多くの医学検証も受けたが、少年は口を割らなかった。どうやってこの素晴らしい力を得たのかを。
だが「人々の夢を叶える力を持つ青年」が世に現れ、注目され崇拝される存在となり、少年は活躍の場を失った。青年は、少年が如何にして力を得たのかを口外した。
少年は困惑した。「なんであのお兄さんが?」と、何度も考えた。自分に力と夢を与えてくれたはずの人が、何で僕から全てを奪うんだ?
ネットには少年に対する誹謗中傷が溢れた。そのことに気付いて1週間経った頃、少年はエゴサを止めた。とは言え、エゴサを止めても想像してしまう。
自分がこうして学校をサボっている間にも誰かが「僕」が死ぬことを望んでいる。僕が寝ている間にも誰かが僕に失望し、呆れ続けている。
2ヶ月経ち、少年は出奔した。既に少年に対する誹謗中傷は廃れていたが、少年は気付いていなかった。
*
夜中、「私」は目を覚ました。とりあえずスマホを見て、ネットニュースを見てみると、厨二病少年が行方不明になったと報じられていた。
「この子も心が弱かったんだな」と思いながらまた眠りに就こうとした。
誰かの、嵐のような声がどこからか絶え間なく聞こえ続けていた。
竜の手先となって、悩む人々に救いを与える仕事は最高だった。ま、15の時に嫌になって彼女をとっかえひっかえしたこともあったけど、若気の至りだ。
今はこの仕事にやりがいを感じている。色々な人々に会い、竜が「私」に代わって願いと意向を確認。大抵は「金持ちになりたい」「彼女(もしくは彼氏)が欲しい」「有名になりたい」という他愛もない願い。そんな願いを竜の力によって叶えてあげる。
新たな指令が入った。目的地に向かうために電車に乗った。疲れたせいか、見慣れたビル街が荒涼したように見えた。頑張ろう。死ぬまで。それが「私」の務めだから。滅私せよ。
「私」は立ち上がり電車から降りた。頭の中がぐちゃぐちゃだけど、行こう。
今度のターゲットは12歳の男の子。竜のナビに従い、カードショップの前で少年を待ち伏せする。やがて、厨二病のようなデザインのエコバックを持った少年が出てきた。ダッセぇ。とにかく、後は竜に委ねよう。
ふっと意識が軽くなった。竜による「私」の体の操縦が始まった。「私」は竜を通して、テレビでも見るように少年とのやり取りを眺めた。
「央輔くん、君の願いは何だい?」と、竜は甘い声で語りかけた。正直、竜のねっとりした添加物もりもりジャムみたいな囁き声には未だになれない。
央輔くんは「何コイツ?」という目で竜を見ている。でもノリがいいのか、「能力者になりたい」と答えた。
「何の能力者だい?」
「炎か稲妻」
「君にはその力を得るチャンスがある。そのチャンスを掴んでみないかい?」
当然だが央輔くんは訝しげに竜を見ている。でも、キラキラした羨望も入り混じっているような目だ。そのキラキラが強くなったり、理性の色が強くなったりを2、3度繰り返した。央輔くんは竜の手を取った。
竜はニヤリと笑った。
*
稲妻・炎使いとなった央輔少年はあちこちのテレビ局や配信者から出演交渉があり、少年は一躍時の人となった。引っ張りだこになりながらも少年は「タレントになる」という夢を得た。少年は幸せだった。多くの人々が少年に注目し、称賛していた。そして多くの医学検証も受けたが、少年は口を割らなかった。どうやってこの素晴らしい力を得たのかを。
だが「人々の夢を叶える力を持つ青年」が世に現れ、注目され崇拝される存在となり、少年は活躍の場を失った。青年は、少年が如何にして力を得たのかを口外した。
少年は困惑した。「なんであのお兄さんが?」と、何度も考えた。自分に力と夢を与えてくれたはずの人が、何で僕から全てを奪うんだ?
ネットには少年に対する誹謗中傷が溢れた。そのことに気付いて1週間経った頃、少年はエゴサを止めた。とは言え、エゴサを止めても想像してしまう。
自分がこうして学校をサボっている間にも誰かが「僕」が死ぬことを望んでいる。僕が寝ている間にも誰かが僕に失望し、呆れ続けている。
2ヶ月経ち、少年は出奔した。既に少年に対する誹謗中傷は廃れていたが、少年は気付いていなかった。
*
夜中、「私」は目を覚ました。とりあえずスマホを見て、ネットニュースを見てみると、厨二病少年が行方不明になったと報じられていた。
「この子も心が弱かったんだな」と思いながらまた眠りに就こうとした。
誰かの、嵐のような声がどこからか絶え間なく聞こえ続けていた。
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