はずれものの恋、ユーラシアのはぐれ島で

アイザッカ

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最初の3ヶ月:新婚時代

結婚式と、

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 2022年6月8日。今、私はヴェールを被った。これから私は結婚式を挙げる。
 
 今、私はどう感じているのか分からない。それでもやらなきゃいけないことはやる。
 いつも以上にボリュームのあるスカートは持ち上げるにも重い。長い長いヴェールはおでこにだけ掛かるタイプだったから少し楽、閣下に頂いたティアラから垂れ下がるサファイアがよく映える。緩やかな三つ編みで構成されたシニヨンは可愛い。
 ドレスやヴェールごと押し込まれるように馬車に乗り込む。たくさんの護衛に囲まれながら馬車は進み教会に着いた。私の前に到着していた女の子たちを見送ってから、馬車を降りゆっくりと教会への階段を登る。ふとヴェールはちゃんと馬車から出て来ているのかが気になって振り返ると大丈夫だった、ちゃんとヴェールもついて来ている。ゆっくりと階段を登り教会に入る。教会には20人くらいの人、恐らくかなり身分の高い方々がご臨席で視線にたじろぎそうになる。けれど、ここで怖気付いてはいられない。半分とは言え私には大和撫子の血が、もう半分……一部はゲルマン人の血が流れている。
 キッと顎を持ち上げと、にこやかなアラサーくらいの貴族が近づき腕を差し出した。養父なのか、関係のないテロリストなのか分からない。

「フェルディナンド・ド・ボーヴァーです。どうか手を取って下さい」と貴族男性は小さく口を動かした。
 私は「失礼いたしました。よろしくお願いいたします、養父様」とボーヴァー伯爵の腕に手を掛けた。

 表面はお上品にゆっくりと前を向き養父のエスコートを伴に、頭の中では某海賊映画のbgnをお伴に、私は歩き始める。
 ハイド伯爵の前に着くと、ボーヴァー伯爵は私のエスコートをハイド伯爵に譲る。ハイド伯爵はじっと私の頭の上から裳裾まで見つめた。

「美しいな、よく似合っておる」

 花婿にそう言われて嬉しくない花嫁はきっといない。ちょっと嬉しい。だから私は微笑んだ。ハイド伯爵は私に手を差し出した。私はそっと閣下の手を取り、しずしずと祭壇の前に進む。聖歌隊の合唱と牧師の聖書朗読が終わった。牧師がハイド伯爵の方を見た。

「新郎ヨハネス・ド・ハイド様。あなたはエリザベス・ド・ボーヴァー様を妻とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲みの時も、富める時も貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い、共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 パッと何の迷いもなく答えたハイド伯爵、すごいなと私は彼を見つめた。牧師は私を見た。

「新婦エリザベス・ド・ボーヴァー様。あなたはヨハネス・ド・ハイド様を夫とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲みの時も、富める時も貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い、共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 私はハイド伯爵の目を見つめた。ハイド伯爵は促すように頷いた。私は目を瞑った。小さかった頃からの思い出が走馬灯のように脳裏をよぎった。腹を括り息を吸った。

「はい、誓います」と結婚が成立したことを牧師が朗々と宣言した。

 *

 祝宴も終わり、これから寝室に行こうと思ったら生理が来てしまった。私はサァと青ざめた。

「フリーダ、どうしよう」
「エルサ様、一旦落ち着いてください。閣下に初夜の延期を伝えましょう」

 フリーダはさっさと私の部屋を出ていった。私は残念に思いながら鏡を見つめた。
 緩やかにコテが入り、リボンで結ばれた髪。保湿のために塗られた口紅。胸元がレースで覆われたネグリジェ。脱ぎやすそうなデザインだ。何もかもが普段とは違う。何のためなのか知っている。
 ぽとりと涙が落ちた。何で泣いているのか分からない。そんなに初夜が楽しみだったのか、って聞かれると違う。なぜだかは分からないけど胸が破裂しそうなくらい苦しくて、流れる涙が止まらない。ぎゅっと胸元を握りしめた。自分が嫌になる。私なんかいなきゃよかった。ぷわりと涙が膨れ上がりポトポトと頬が濡れた。

「エルサ様」

 フリーダが戻ってきた。そして驚いた顔を私に向け、ハンカチを渡してくれた。私がハンカチで目元をポンポンと叩いている間に、ホットミルクを作ってくれた。

「旦那様から寝室には来るようにとのお申し付けです」
「え? でも私今日……」
「手は出さない、と約束させましたので」

 にこにこと笑うフリーダ、強い。頼もしい。とりあえずお母さんがくれたペンダントを外し、引き出しに仕舞ってから寝室に向かった。そうするしか無いから。
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