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第32話 虹色
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演劇部、部室。
例によって志麻がテーブルに肘をつき、顔の前で指を組むと、両手で口元を隠している。あのポーズだ。
「お前の考えている通りだ」
空を見据え、そう口にする。
「……私、何も考えてませんけど?」
雨歌は部室に入るなり言われた志麻の言葉に、そう返す。
「そりゃそうか」
志麻は絡めた指を解くと大きく伸びをする。
「ふぁぁ~、引退かぁ」
関東大会が終わり、三年生は引退となる。
地区大会では雨歌が代役を務めたアリス役だが、関東大会では元のキャストであった三浦加奈がアリスを演じた。他の部員からは「雨歌がやった方がいい」という意見も多く出たが、雨歌が拒否した。志麻も、正規のメンバーで胸を張って出よう! と助言し、一か月間の練習は今までにないほど、白熱したものとなっていた。
結果は惨敗。それは仕方のないことだ。
「あ、小暮監督から連絡来てたんだ。ほら、見て」
携帯の画面を差し出され、読む。そこには、舞台芸術学科で講師をしたとき使った映像が、生徒たちに衝撃をもたらしたと綴られていた。更には生徒のみならず、他の講師や映像系の仲間たちの間でも話題になっている、とのことだった。
「私が何もしなくても、雨歌への問い合わせがバンバン入ってくるのよ。小暮監督が宣伝部長みたいで、なんだか笑えるわ」
くくく、と悪どい声を上げる志麻。ひとしきり笑うと、ふと気付いたように、
「保住さんとこのオーディション、明日だよね?」
と訊ねる。
「うん」
保住は、出流のオーディションで名刺をもらった、広告代理店のエンタテイメント開発局課長である。あれから数日後には、オーディションのオファーが来た。交通広告用CMに雨歌を使いたいというもので、明日がその日だ。
「お父さんに一応確認したんだけど、あの広告代理店なら問題ないってさ。今、変な会社も多いからねぇ。こっちが損するような会社とは組みたくないし」
作ったばかりの芸能事務所であるにも拘らず、志麻は親の力を最大限使い、仕事を選んでいた。
そもそも雨歌はまだ高校生であり、「学業優先であること」が雨歌の父、順平から出された条件だ。
「私は行けないから、真広に行ってもらうね」
「志麻先輩、テストだっけ?」
「そ。模試」
三年生の秋。志麻は受験に向け忙しくなってきていた。オーディションくらい一人でも行けると言ったのだが、真広が「行く」と譲らなかったのだろうと推測する。マネージャーだの付き人だのと言いながら傍を離れないのは、単純に心配だからなのか、別の意図があるのか……。
「明日のオーディション受かったら、また露出が増えそうだね」
志麻がムフ、と顔をほころばせる。
交通広告用CMとは、いわゆる電車の車内モニターや、駅構内の大型ビジョン、屋外ビジョンで流されるCMである。音が入らないため、映像だけでインパクトを与えるようなものが多いのが特徴だ。雨歌には打って付けとも言える。
「受かったらって……そう簡単じゃないと思うけどね」
雨歌がそう言って口を尖らせる。
「でも、まぁ頑張ってくる」
「いい結果をお待ちしております」
志麻が真面目な顔でそう言い、、三つ指を突いてお辞儀をした。
◇
「雨歌さん入りまーす!」
声を掛けられ、スタジオに入る。中には、数十台のカメラが並ぶ。スタッフの数も相当だ。保住壬が雨歌を出迎え、
「よろしくね、雨歌さん」
と挨拶をする。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
雨歌が頭を下げると、グリーンバックの前に立っている人物が雨歌に向かって手を振った。
「雨歌ちゃん、久しぶり!」
ONAGAである。
「ご無沙汰してます」
ぺこりと会釈を返し、やり過ごす。
保住との仕事はこれで二度目だった。
前回の交通広告用CMが話題になり、今回は地上波でのCMに出ることになったのだが、経緯が少し特殊だ。交通広告用CMを見たONAGAが、自分のところに来ていたオファーの相手役として、雨歌を指名したのである。たまたまそれが保住の仕事だったこともあり、話が進んだ。というより、ONAGAはそれを承知の上で保住からのオファーを受けた可能性すらある。
「やっと一緒に仕事ができるね」
感無量、といった感じで迫るONAGAに対し、
「……そう、ですね?」
首を傾げる雨歌。
「……なんで疑問形?」
ONAGAが眉を寄せた。やはり、一筋縄ではいかないようだと、再確認する。
「じゃ、テストいきますよ~!」
監督の声が飛び、雨歌とONAGAがスタンバイを始める。
今回監督を務めるのは、あの日、保住と一緒にホールで雨歌の演技を見た、髭の男……半田重一だ。彼は舞台演出家だが、こんな風にCMの監督をすることもあるのだという。
半田が監督を務めるワイヤレスイヤホンのCMは、SF仕立てだ。グリーンバックでの芝居は初めてとなる雨歌は、何もない空間で、なにかがあるつもりで演技するという難しさを知った。しかも今回、初めてのガンアクションに臨む。銃など持ったこともない雨歌だが、何度も練習させてもらい、動きを体に叩き込んできた。
黒のタイトなコンバットスーツに黒のショートヘア。腰や太ももには小型の武器を装備している。
片やONAGAはグッとファンタジー寄りの姿をしていた。
コート風のジャケットにスリムパンツ、足元はロングブーツで、ボロボロの破れたマントをつけている。手にしているのは剣で、柄の部分には古代文字のようなものが書かれていた。ディテールにこだわったと言っているだけあって、細部まで凝った作りだ。
途中までは別撮りだ。
雨歌は、ONAGAの演技を見ながら、以前とは違うように感じた。細かい芝居が上手くなっているように思ったのである。
アクションに関しては、さすが運動神経がいいだけあって、申し分ないのはわかっていた。剣を振るっていても、その所作が美しい。
「じゃ、ここからは二人のシーンだね。二人ともよろしく!」
半田の声が響く。雨歌とONAGAが位置につく。
「俺、雨歌ちゃんには負けたくないから、演技の勉強、すげぇ頑張ってんだぜ」
背中合わせになると、ONAGAがそう呟いた。
やはりそうなのだ。初めて共演したあの時とは、明らかに変わった芝居。
雨歌はクスリと笑い、ONAGAに応える。
「それは……楽しみですね」
随分偉そうな言い方になったが、ONAGAへの返答は、「煽り」でいいような気がした。出流のオーディションに落ちた者同士である。これからも高め合っていければいい。そう思ったのだ。
「本番! 三・二・一」
カチンコが、鳴る――。
◇
パラレルワールドに飛ばされた、とある組織のバディである二人。
ワイヤレスイヤホンだけが二人を繋ぐ唯一の接点であり、お互いの声だけを頼りに、各々が敵と戦っていた。
映像は交互に切り替わる。
女は近未来の都市で敵と銃撃戦。壁際に転がり、相手からの攻撃を躱しては、銃を撃ちまくる。
男は廃墟の世界で竜を相手に剣を振るいながら飛び退り、走る。
互いに無言。息遣いだけが辺りに響き、緊迫感が増していく。
女がイヤホン越しに小声で呟く。
「まだそこにいる?」
男がその声をキャッチし、クッと唇を上げ、応えた。
「お前こそ」
その瞬間、音楽が流れる。曲は勿論、ENDだ。
映像が切り替わり、お互いが、武器を手にしたまま歩く姿がスローモーションになり映し出される。
目の前に大きな扉が現れ、二人の手がそれぞれの世界で、同じ扉に触れた。
「ここを越えたら……」
「……きっとまた、会える」
扉が開くと二人の姿が光に包まれ、映像が真っ白になった。
その瞬間、CM商品であるワイヤレスイヤホンが映し出され、二人の声が交差する。
『どんな世界でも、きっと繋がってる』
最後に背中合わせの二人が画面に映り、希望に満ちた強い瞳で、お互いの姿を探すかのように遠くを見つめる──。
◇
「雨歌、時間だぞ」
真広が声を掛ける。
「わかった。行ってくるね」
ONAGAとのCMは続編の話が出るほど人気になっている。物語性と二人の演技が評価され、商品であるイヤホンは男女がお揃いで持つと結ばれる、などという都市伝説まで飛び出す始末だ。
無論、真広は面白くない。しかし雨歌からお揃いのイヤホンをもらい、すぐに機嫌を直していた。
志麻は受験、受験と騒いでいた割に、学校からの推薦枠をちゃっかり手にし、既に進路を決めてしまっていた。今は雨歌のプロデュースに忙しい日々だ。
今日は深夜ドラマのオーディションに来ている。小暮からの推薦で話が舞い込んだのだった。小暮は相変わらず、雨歌の宣伝部長と化していた。
「俺のミューズ、今日も綺麗だ」
恥ずかしげもなくそう言って、真広が雨歌の手を握る。
「やめてってば、もぅ」
雨歌の手がするりと抜け出した。
初めてのドラマオーディション。ちょい役ではあるが、印象に残りそうな、いい役だった。深夜枠とはいえ、周りはベテラン勢が揃っている。雨歌にとっては有意義な撮影になるだろう。いつもより少し緊張しているのはそのせいなのか。
「緊張は解けたかな」
控室を出る雨歌の背中を見送り、ふふ、と真広が口元をほころばせた。
雨歌はあっという間に行ってしまった。次から次へと仕事が決まり始め、期待度ナンバーワンと言われるほどの勢いだ。
それでいい、と真広は思う。
少し迷いながらも、雨歌はスポットライトを浴びる楽しさを感じているはずだ。立ち止まりたくなったら、休めばいい。一度に、そんなに遠くへは行けないのだから……。
「俺が、雨歌の帰る場所だ」
ポツリ、呟く。
今日も彼女は、九つの色を身に纏い、嘘を味方につけるのだろう。
天性の才能を持ち、努力を惜しまない、役者というものに魅了された少女。
「9colors companyから来ました、雨歌です。よろしくお願いします!」
完
例によって志麻がテーブルに肘をつき、顔の前で指を組むと、両手で口元を隠している。あのポーズだ。
「お前の考えている通りだ」
空を見据え、そう口にする。
「……私、何も考えてませんけど?」
雨歌は部室に入るなり言われた志麻の言葉に、そう返す。
「そりゃそうか」
志麻は絡めた指を解くと大きく伸びをする。
「ふぁぁ~、引退かぁ」
関東大会が終わり、三年生は引退となる。
地区大会では雨歌が代役を務めたアリス役だが、関東大会では元のキャストであった三浦加奈がアリスを演じた。他の部員からは「雨歌がやった方がいい」という意見も多く出たが、雨歌が拒否した。志麻も、正規のメンバーで胸を張って出よう! と助言し、一か月間の練習は今までにないほど、白熱したものとなっていた。
結果は惨敗。それは仕方のないことだ。
「あ、小暮監督から連絡来てたんだ。ほら、見て」
携帯の画面を差し出され、読む。そこには、舞台芸術学科で講師をしたとき使った映像が、生徒たちに衝撃をもたらしたと綴られていた。更には生徒のみならず、他の講師や映像系の仲間たちの間でも話題になっている、とのことだった。
「私が何もしなくても、雨歌への問い合わせがバンバン入ってくるのよ。小暮監督が宣伝部長みたいで、なんだか笑えるわ」
くくく、と悪どい声を上げる志麻。ひとしきり笑うと、ふと気付いたように、
「保住さんとこのオーディション、明日だよね?」
と訊ねる。
「うん」
保住は、出流のオーディションで名刺をもらった、広告代理店のエンタテイメント開発局課長である。あれから数日後には、オーディションのオファーが来た。交通広告用CMに雨歌を使いたいというもので、明日がその日だ。
「お父さんに一応確認したんだけど、あの広告代理店なら問題ないってさ。今、変な会社も多いからねぇ。こっちが損するような会社とは組みたくないし」
作ったばかりの芸能事務所であるにも拘らず、志麻は親の力を最大限使い、仕事を選んでいた。
そもそも雨歌はまだ高校生であり、「学業優先であること」が雨歌の父、順平から出された条件だ。
「私は行けないから、真広に行ってもらうね」
「志麻先輩、テストだっけ?」
「そ。模試」
三年生の秋。志麻は受験に向け忙しくなってきていた。オーディションくらい一人でも行けると言ったのだが、真広が「行く」と譲らなかったのだろうと推測する。マネージャーだの付き人だのと言いながら傍を離れないのは、単純に心配だからなのか、別の意図があるのか……。
「明日のオーディション受かったら、また露出が増えそうだね」
志麻がムフ、と顔をほころばせる。
交通広告用CMとは、いわゆる電車の車内モニターや、駅構内の大型ビジョン、屋外ビジョンで流されるCMである。音が入らないため、映像だけでインパクトを与えるようなものが多いのが特徴だ。雨歌には打って付けとも言える。
「受かったらって……そう簡単じゃないと思うけどね」
雨歌がそう言って口を尖らせる。
「でも、まぁ頑張ってくる」
「いい結果をお待ちしております」
志麻が真面目な顔でそう言い、、三つ指を突いてお辞儀をした。
◇
「雨歌さん入りまーす!」
声を掛けられ、スタジオに入る。中には、数十台のカメラが並ぶ。スタッフの数も相当だ。保住壬が雨歌を出迎え、
「よろしくね、雨歌さん」
と挨拶をする。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
雨歌が頭を下げると、グリーンバックの前に立っている人物が雨歌に向かって手を振った。
「雨歌ちゃん、久しぶり!」
ONAGAである。
「ご無沙汰してます」
ぺこりと会釈を返し、やり過ごす。
保住との仕事はこれで二度目だった。
前回の交通広告用CMが話題になり、今回は地上波でのCMに出ることになったのだが、経緯が少し特殊だ。交通広告用CMを見たONAGAが、自分のところに来ていたオファーの相手役として、雨歌を指名したのである。たまたまそれが保住の仕事だったこともあり、話が進んだ。というより、ONAGAはそれを承知の上で保住からのオファーを受けた可能性すらある。
「やっと一緒に仕事ができるね」
感無量、といった感じで迫るONAGAに対し、
「……そう、ですね?」
首を傾げる雨歌。
「……なんで疑問形?」
ONAGAが眉を寄せた。やはり、一筋縄ではいかないようだと、再確認する。
「じゃ、テストいきますよ~!」
監督の声が飛び、雨歌とONAGAがスタンバイを始める。
今回監督を務めるのは、あの日、保住と一緒にホールで雨歌の演技を見た、髭の男……半田重一だ。彼は舞台演出家だが、こんな風にCMの監督をすることもあるのだという。
半田が監督を務めるワイヤレスイヤホンのCMは、SF仕立てだ。グリーンバックでの芝居は初めてとなる雨歌は、何もない空間で、なにかがあるつもりで演技するという難しさを知った。しかも今回、初めてのガンアクションに臨む。銃など持ったこともない雨歌だが、何度も練習させてもらい、動きを体に叩き込んできた。
黒のタイトなコンバットスーツに黒のショートヘア。腰や太ももには小型の武器を装備している。
片やONAGAはグッとファンタジー寄りの姿をしていた。
コート風のジャケットにスリムパンツ、足元はロングブーツで、ボロボロの破れたマントをつけている。手にしているのは剣で、柄の部分には古代文字のようなものが書かれていた。ディテールにこだわったと言っているだけあって、細部まで凝った作りだ。
途中までは別撮りだ。
雨歌は、ONAGAの演技を見ながら、以前とは違うように感じた。細かい芝居が上手くなっているように思ったのである。
アクションに関しては、さすが運動神経がいいだけあって、申し分ないのはわかっていた。剣を振るっていても、その所作が美しい。
「じゃ、ここからは二人のシーンだね。二人ともよろしく!」
半田の声が響く。雨歌とONAGAが位置につく。
「俺、雨歌ちゃんには負けたくないから、演技の勉強、すげぇ頑張ってんだぜ」
背中合わせになると、ONAGAがそう呟いた。
やはりそうなのだ。初めて共演したあの時とは、明らかに変わった芝居。
雨歌はクスリと笑い、ONAGAに応える。
「それは……楽しみですね」
随分偉そうな言い方になったが、ONAGAへの返答は、「煽り」でいいような気がした。出流のオーディションに落ちた者同士である。これからも高め合っていければいい。そう思ったのだ。
「本番! 三・二・一」
カチンコが、鳴る――。
◇
パラレルワールドに飛ばされた、とある組織のバディである二人。
ワイヤレスイヤホンだけが二人を繋ぐ唯一の接点であり、お互いの声だけを頼りに、各々が敵と戦っていた。
映像は交互に切り替わる。
女は近未来の都市で敵と銃撃戦。壁際に転がり、相手からの攻撃を躱しては、銃を撃ちまくる。
男は廃墟の世界で竜を相手に剣を振るいながら飛び退り、走る。
互いに無言。息遣いだけが辺りに響き、緊迫感が増していく。
女がイヤホン越しに小声で呟く。
「まだそこにいる?」
男がその声をキャッチし、クッと唇を上げ、応えた。
「お前こそ」
その瞬間、音楽が流れる。曲は勿論、ENDだ。
映像が切り替わり、お互いが、武器を手にしたまま歩く姿がスローモーションになり映し出される。
目の前に大きな扉が現れ、二人の手がそれぞれの世界で、同じ扉に触れた。
「ここを越えたら……」
「……きっとまた、会える」
扉が開くと二人の姿が光に包まれ、映像が真っ白になった。
その瞬間、CM商品であるワイヤレスイヤホンが映し出され、二人の声が交差する。
『どんな世界でも、きっと繋がってる』
最後に背中合わせの二人が画面に映り、希望に満ちた強い瞳で、お互いの姿を探すかのように遠くを見つめる──。
◇
「雨歌、時間だぞ」
真広が声を掛ける。
「わかった。行ってくるね」
ONAGAとのCMは続編の話が出るほど人気になっている。物語性と二人の演技が評価され、商品であるイヤホンは男女がお揃いで持つと結ばれる、などという都市伝説まで飛び出す始末だ。
無論、真広は面白くない。しかし雨歌からお揃いのイヤホンをもらい、すぐに機嫌を直していた。
志麻は受験、受験と騒いでいた割に、学校からの推薦枠をちゃっかり手にし、既に進路を決めてしまっていた。今は雨歌のプロデュースに忙しい日々だ。
今日は深夜ドラマのオーディションに来ている。小暮からの推薦で話が舞い込んだのだった。小暮は相変わらず、雨歌の宣伝部長と化していた。
「俺のミューズ、今日も綺麗だ」
恥ずかしげもなくそう言って、真広が雨歌の手を握る。
「やめてってば、もぅ」
雨歌の手がするりと抜け出した。
初めてのドラマオーディション。ちょい役ではあるが、印象に残りそうな、いい役だった。深夜枠とはいえ、周りはベテラン勢が揃っている。雨歌にとっては有意義な撮影になるだろう。いつもより少し緊張しているのはそのせいなのか。
「緊張は解けたかな」
控室を出る雨歌の背中を見送り、ふふ、と真広が口元をほころばせた。
雨歌はあっという間に行ってしまった。次から次へと仕事が決まり始め、期待度ナンバーワンと言われるほどの勢いだ。
それでいい、と真広は思う。
少し迷いながらも、雨歌はスポットライトを浴びる楽しさを感じているはずだ。立ち止まりたくなったら、休めばいい。一度に、そんなに遠くへは行けないのだから……。
「俺が、雨歌の帰る場所だ」
ポツリ、呟く。
今日も彼女は、九つの色を身に纏い、嘘を味方につけるのだろう。
天性の才能を持ち、努力を惜しまない、役者というものに魅了された少女。
「9colors companyから来ました、雨歌です。よろしくお願いします!」
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最後の展開すごく熱かったです!恋愛もどうなるのかドキドキしてました…!面白かったです!!
ありがとうございます!。゚(゚இωஇ゚)゚。
無事、コンテスト走り切りました~~~!
読んでいただき感謝です!!
まだまだ雨歌ちゃんの演技を見たい!と思ってしまった私はすでに彼女に魅了されてしまったのでしょう!!ファンクラブはどこですか!!!
アリガト(゚´Д`゚)゚。━━━ン!!!!
賞獲ったら続き書けるなぁぁぁ、とか思ってみたり~~~!
頑張れ、うちの雨歌~~!٩(๑>∀<๑)۶
完結おめでとうございます!
雨歌の演技、素晴らしかったです!
実際に現場にいるような感覚になりました!
フォォ――(⊙ω⊙)――ッ!♥
ありがとうございます~!!
なんやかんやで無事書き切れてホッとしてます!
あと、ここから先は野となれ山となれですww
コメントありがとうございました!!!✨