国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件

にわ冬莉

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アイドルだった私、夢はいつまでも

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 私の名は、リーシャ・エイデル。
 元々の名は水城乃亜《みずきのあ》。

 アイドルグループ「マーメイドテイル」で活動していた私は、シートルファンの男に刺され、目が覚めたらこの世界にいた。

 私は歌が好き。ダンスが好き。

 それは、何度生まれ変わってもきっと変わらない……。



「はいはい、ランス様のそのキメ顔はもっとにこやかに! そうです! アルフレッドは自分のパートじゃない時にだらけないで!」

 私は何故か、男性デュオのプロデュースをしている。


「生地はこんな感じでいいと思うの。で、ここにスリットと、そう、レースはあしらってもいいけどあまりごたつかない方がスッキリして綺麗ね。え? 早替え用に? うーん、そうしたら、ここで切り替えたらどうかな?」

 私は何故か、ノアという名のブランドを立ち上げドレスのデザインをしている。


「次の曲はこんなイメージでいきたいと思ってるの。そうね、テンポはバラード調で、途中から変調するってどうかしら?」

 私は何故か、出来もしない作詞や作曲、編曲を手掛けている。


「次のパーティ? お父様、そんなにパーティーばかり開いていてはお仕事に差し支えます! え? ダリル伯爵家で? ええ、お手伝いするのは構いませんが…、」

 私は何故か、貴族の方々のパーティーに呼ばれることが多くなった。出演依頼だ。時々はプロデュースをしてほしいと言われることも。


 結婚の申し込みは相変わらず多い。でもすべて父、エイデル伯爵が断っていた。
『リーシャをめとる…独占するということは、リーシャの公演を楽しみにしているすべての人間を敵に回すことになるが、それでもいいか?』
 と脅しを(?)かけているらしい。

 今や私のファンは子爵、伯爵だけではなく公爵などにも広く存在する。下手に手を出せば、お家騒動に発展する可能性があるというわけだ。大袈裟だけど。
 ま、父のマドラは私を思ってというより、今エイデル家がとんでもなく潤っていることの方に重きを置いているのだろうけど。
 どうやら私の婚期は遅れそうだ。


 そして、なにより私の行なった中でも一番功績を称えられたのは、下着の開発だった。これが、ご令嬢方だけに留まらず、ご婦人たちの間で大流行り!
 スポーツブラだけではなく、私、盛りブラも作ったのよね。それが、ちょっと形の崩れてきた熟女…じゃない、淑女の皆様方に大バズり! 形が綺麗になる上、苦しくもないとあって売れに売れている。

 さすがに私、手が回らなくなったので、下着のデザインや販売に関しては早々に継母シャルナに渡してしまったのだ。
 彼女、社交界ではそれなりに友人も多いようで、何人か気の知れた奥方たちでグループを作り、楽しくやっているみたい。

『淑女の身だしなみは下着から』

 なんてキャッチコピーまで作ったらしいわ。

 なにより、熱中するものが出来たおかげで、くだらない嫉妬や嫌がらせも一切なくなった。今ではビジネスパートナーみたいな関係性なんだから、面白いわよね。

 アイリーンも、然り。

 私に向けられていた敵意はどこへやら、今では私を師と仰ぎ(?)アイドル街道まっしぐらなのだ。今では良きパートナー、兼、私の補佐役までやってくれる。とても心強い存在。



 私がこの世界に転生して、もう半年が過ぎていた。

 あっという間の半年だった。戸惑いも多かったし、わからないことも、未だ解決していないこともある。けど、もう、どうでもいい。とにかく、私は今までと同じように努力を続けるまでだ。

 国民的スターになること。
 それが私の夢。


*****

「それでは今から、第一回、マーメイドテイル新メンバーオーディションを始めたいと思います」

 屋敷には、ざっと数えて五十人弱のご令嬢たちが緊張の面持ちで集まってきていた。

 私とアイリーンは、社交界において一躍有名な姉妹になっていたし、実際社交界に引っ張りだこで、超多忙な毎日だった。私たちを目にする人が増えれば、いつかはこうなる気がしていた。つまり、

『私もやりたい』

 と手を上げるご令嬢たちが現れはじめた、ということ。そして実際に応募者が多数集まったことで、私はオーディションすることを考えたのだ。

 アイドルの条件は、家柄ではない。どんなにお金を積まれても、素質がない子を入れるつもりはなかった。だからこその、一斉公開オーディションだ。

「みなさん、事前に振り付けは覚えてきてくださいましたね? 今から何人かずつ踊っていただきます。合格者だけが次の試験へ進むことが出来ます。いいですか、実力勝負ですからね!」

 何度も繰り返したのは、家柄や地位で選ぶことはしません、ということ。お金が解決してくれるって思われちゃ心外だし、私が作りたいグループはそんなんじゃないからね。

「お姉様!」
 アイリーンが私の隣に付く。
「じゃ、始めましょうか」

 私の合図をきっかけに、オーディションが始まった。



*****

 会場はいっぱいの人で溢れている。

 今日はパーティーではなく、コンサートだ。
 マーメイドテイルの話が広まり、一度見てみたいと町人たちが屋敷に押し掛けたのをきっかけに、最近、屋敷を解放し始めた。パーティーだと街の人たちが入れないから、時々はこうしてコンサートを開く。

 私が初めて歌った、あの「赤い金魚亭」のマスターも、時々顔を出してくれている。私が伯爵令嬢だって知って、かなり驚いてたみたいだけど。

 今日、新しくメンバーに加わった子がデビューする。これで六人。
 メンバーになりたいと申し出る子は後を絶たないから、別グループ作らないとダメかも……なんてことも考え始めた。

 シートルも、今はイケメン五人組だ。
 ランスがしっかり引っ張ってくれているみたいで、こちらも上手くいっている。
 若い女の子だけでなく、淑女の皆様や、男性ファンもいたりする。あちこち呼ばれることも多くなり、そのうち遠征なんか始まってしまいそうな勢いだった。いわゆる、地方コンサートってやつ? さすがにそれはやりすぎかな?


 私はメンバーたちの顔を見、スッと手を出す。私の手に、皆が手を重ねた。

「マーメイドテイル~!」
『ゲット、ウォーター!!』

 水を得た魚。

 まさに、歌とダンスは私を生かしてくれる力の源でることに間違いはない。

 拍手が、押し寄せる波のように響き渡る。
 私は背筋を伸ばす。


 さあ、開演時間だ!


~Fin~
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ririka
2025.05.08 ririka

以前こちらのお話の、長いものを読ませていただきました。
とても面白かったです!
こちらもコンパクトで読みやすかったです。
やはりこの世界観好きです。
なんか元気出るんですよね。

2025.05.08 にわ冬莉

ワーイヽ(゚∀゚ヽ 三 ノ゚∀゚)ノワーイ
そう言っていただけると嬉しいです!!✨

殺伐としたことの多い世の中で、少しでも
「元気になれた」「面白かった」
と仰っていただけるようなお話を頑張って書きたいです!!
ありがとうございます!。゚(゚இωஇ゚)゚。

解除

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