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第19話 アイドルだった私、本領を発揮する
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「本日、ここにおいでくださいました皆様に、心からの感謝を捧げます。次はマーメイドテイルで、曲は『ビアンカ』です」
スッと興奮を抑えるような静かな言い方で告げる。
さっきまでの熱を奪うように、弦が奏でる物悲しい旋律。
ビアンカ、はバラードだ。
ぶち上げたあとの、静寂。
ホールにいる全員が、舞台を見ている。何が始まるのか、今度は、何が、と。
*゜*・。.。・*゜*・。.。
私が見る夢は いつも
現実味のない モノクロの世界
そんな風に君が言うから 色をつけたくなったんだ
君に似合いそうな 優しい色を
空は青いのか?
月は出てるのか?
風は吹いているのか?
花は咲いているのか?
子供たちは笑っているのか?
時は流れ続けているのか?
今日という日は存在するのか?
君は生きているのか?
俺は何をしているのか?
何もわからなくなってしまった
誰といても どこにいても
幸せになんか 多分なれなくて
本当はみんな 自分を騙してるんだ
*゜*・。.。・*゜*・。.。
私が歌い上げるバラードの隣で、アイリーンが踊る。
自由な身体表現…そう、コンテンポラリーダンスである。
彼女の表現力はピカイチだ。大人の女のような切なげな表情も、愛らしく元気な少女の顔も、すべて表現出来る。
この曲では儚げな、優しい顔で舞う。
アイリーンの動きに、その指先に、皆が魅了される。
持っていかれる。
私ですら、危うい。
引っ張られないよう、私は私の「歌」を信じよう。
優しく、のびやかに、響け、響け!
*゜*・。.。・*゜*・。.。
君が見る夢に いつか
入り込んでみたい クレヨンを携え
そんな風に君に言ったら 悲しげに微笑んだよね
俺に向けられるのは いつもその顔
君を騙してでも 全部が夢でも
幸せだって 思わせたくて
本当はいつも 騙されたくて仕方ないんだ
騙してあげる 現実を見失うほどに
だからほら こっちにおいで
*゜*・。.。・*゜*・。.。
歌が終わり、伴奏がフェイドアウトし始めたその時、急に曲調が変わった。
アップテンポに、弦と管楽器が跳ねる!
私とアイリーンは舞台をくるくるとターンする。
一度離れてポーズを決め、また、近付く。
私は、アイリーンの。アイリーンは私の腰に結ばれたリボンを引っ張り合う。
シュルリ、
リボンがほどけ、私とアイリーンはスカートの裾を掴んだ。力任せに引っ張れば、スカートがパッと宙に舞った。そして、その下に仕込んでいた虹色のスカートがふわりと円を描き、新たなドレスが現れる。
早変わりの完成だ!
会場からおおお、という驚きの声が上がるのを聞き、反応の良さに思わず心の中でガッツポーズを作る。
「最後になりますがお聞きください、曲は『シンクロ』です!」
思い出深い、私のデビュー曲。
この世界でも初めて人前で歌ったのはこの曲だった。大好きな歌。
アイリーンと二人、伸びやかに、笑って、笑って。
楽しさに、はしゃいで、弾けて。
曲に、乗れ!!
*゜*・。.。・*゜*・。.。
新学期ってさ いつも憂鬱
変化に耐えられない 私たち
繊細だなんて 言う気はないけど
ナーバスな心 隠しきれずに
隣の席で いつもはしゃいでた
君はまるで 少年みたいだ
くだらない話を いつでも
特別みたいに 思っていたんだ
シンクロしたいよ 君の心に
透明な壁なんかもう いらないんだよ
シンクロしたいよ 君の体に
混ざりあって溶け合って分かり合えたなら
「失恋」とは言うけど、
「失愛」とは言わないだろう?
きっと愛は失ったりしないんだ、なんて
君はまるで 少年みたいだ
シンクロしたいよ 君の心に
離れ離れに いつかなっても
シンクロしたいよ 君の記憶に
同じ風景の中にいたんだって きっと覚えていて
忘れないで
覚えていて
*゜*・。.。・*゜*・。.。
わーっ! っと会場が盛り上がる。
あちこちから、手拍子が起こる。
この一体感。これこそが私の求めていたステージ!
そしてそれを、この場にいる全員にぶつけるんだ!
「さぁ、みなさん! 今度は皆さんの番ですよぉ! フロアに広がって、そう、広がって、踊りましょう! さぁ、手を取り合って、いっきますよ~!」
音楽は止まない。
私は声を張り上げて場を誘導する。
今、この高揚しきった感情を、この場にいる全員で共有するために。我がエイデル家主催パーティー、イチオシのダンスタイムへ!
円形の舞台を囲むように、ドレスの花が咲く。
踊れ!
咲き誇れ!
みんな、笑え!
知らない相手の手を取って、踊れ、踊れ!
ホールには、ランス、アルフレッドと踊りたいのであろうご令嬢が二人の周りを取り囲んでいた。デレ付きながらも、二人はうまく令嬢たちを捌き、順番にダンスを踊っている。
アイリーンも同じように、代わる代わる子息相手にダンスを披露していた。
若干揉めるような場面もありはしたが、そこはうまく往《い》なしてやり過ごすことに成功した。事前にトラブル回避術講座やっておいてよかったわ。
見れば、年配の伯爵方もダンスに興じているのが見える。
あは、マドラとシャルナも踊ってるじゃない! しかも結構楽しそう!?
私も群衆に交じるべく、舞台を降り、ダンスの輪に紛れ込んだ。
こうして、パーティーは大盛況で終わった。
この日のことが、更に広まり、エイデル家とマーメイドテイルの名は、界隈でどんどん有名になっていくのだった。
スッと興奮を抑えるような静かな言い方で告げる。
さっきまでの熱を奪うように、弦が奏でる物悲しい旋律。
ビアンカ、はバラードだ。
ぶち上げたあとの、静寂。
ホールにいる全員が、舞台を見ている。何が始まるのか、今度は、何が、と。
*゜*・。.。・*゜*・。.。
私が見る夢は いつも
現実味のない モノクロの世界
そんな風に君が言うから 色をつけたくなったんだ
君に似合いそうな 優しい色を
空は青いのか?
月は出てるのか?
風は吹いているのか?
花は咲いているのか?
子供たちは笑っているのか?
時は流れ続けているのか?
今日という日は存在するのか?
君は生きているのか?
俺は何をしているのか?
何もわからなくなってしまった
誰といても どこにいても
幸せになんか 多分なれなくて
本当はみんな 自分を騙してるんだ
*゜*・。.。・*゜*・。.。
私が歌い上げるバラードの隣で、アイリーンが踊る。
自由な身体表現…そう、コンテンポラリーダンスである。
彼女の表現力はピカイチだ。大人の女のような切なげな表情も、愛らしく元気な少女の顔も、すべて表現出来る。
この曲では儚げな、優しい顔で舞う。
アイリーンの動きに、その指先に、皆が魅了される。
持っていかれる。
私ですら、危うい。
引っ張られないよう、私は私の「歌」を信じよう。
優しく、のびやかに、響け、響け!
*゜*・。.。・*゜*・。.。
君が見る夢に いつか
入り込んでみたい クレヨンを携え
そんな風に君に言ったら 悲しげに微笑んだよね
俺に向けられるのは いつもその顔
君を騙してでも 全部が夢でも
幸せだって 思わせたくて
本当はいつも 騙されたくて仕方ないんだ
騙してあげる 現実を見失うほどに
だからほら こっちにおいで
*゜*・。.。・*゜*・。.。
歌が終わり、伴奏がフェイドアウトし始めたその時、急に曲調が変わった。
アップテンポに、弦と管楽器が跳ねる!
私とアイリーンは舞台をくるくるとターンする。
一度離れてポーズを決め、また、近付く。
私は、アイリーンの。アイリーンは私の腰に結ばれたリボンを引っ張り合う。
シュルリ、
リボンがほどけ、私とアイリーンはスカートの裾を掴んだ。力任せに引っ張れば、スカートがパッと宙に舞った。そして、その下に仕込んでいた虹色のスカートがふわりと円を描き、新たなドレスが現れる。
早変わりの完成だ!
会場からおおお、という驚きの声が上がるのを聞き、反応の良さに思わず心の中でガッツポーズを作る。
「最後になりますがお聞きください、曲は『シンクロ』です!」
思い出深い、私のデビュー曲。
この世界でも初めて人前で歌ったのはこの曲だった。大好きな歌。
アイリーンと二人、伸びやかに、笑って、笑って。
楽しさに、はしゃいで、弾けて。
曲に、乗れ!!
*゜*・。.。・*゜*・。.。
新学期ってさ いつも憂鬱
変化に耐えられない 私たち
繊細だなんて 言う気はないけど
ナーバスな心 隠しきれずに
隣の席で いつもはしゃいでた
君はまるで 少年みたいだ
くだらない話を いつでも
特別みたいに 思っていたんだ
シンクロしたいよ 君の心に
透明な壁なんかもう いらないんだよ
シンクロしたいよ 君の体に
混ざりあって溶け合って分かり合えたなら
「失恋」とは言うけど、
「失愛」とは言わないだろう?
きっと愛は失ったりしないんだ、なんて
君はまるで 少年みたいだ
シンクロしたいよ 君の心に
離れ離れに いつかなっても
シンクロしたいよ 君の記憶に
同じ風景の中にいたんだって きっと覚えていて
忘れないで
覚えていて
*゜*・。.。・*゜*・。.。
わーっ! っと会場が盛り上がる。
あちこちから、手拍子が起こる。
この一体感。これこそが私の求めていたステージ!
そしてそれを、この場にいる全員にぶつけるんだ!
「さぁ、みなさん! 今度は皆さんの番ですよぉ! フロアに広がって、そう、広がって、踊りましょう! さぁ、手を取り合って、いっきますよ~!」
音楽は止まない。
私は声を張り上げて場を誘導する。
今、この高揚しきった感情を、この場にいる全員で共有するために。我がエイデル家主催パーティー、イチオシのダンスタイムへ!
円形の舞台を囲むように、ドレスの花が咲く。
踊れ!
咲き誇れ!
みんな、笑え!
知らない相手の手を取って、踊れ、踊れ!
ホールには、ランス、アルフレッドと踊りたいのであろうご令嬢が二人の周りを取り囲んでいた。デレ付きながらも、二人はうまく令嬢たちを捌き、順番にダンスを踊っている。
アイリーンも同じように、代わる代わる子息相手にダンスを披露していた。
若干揉めるような場面もありはしたが、そこはうまく往《い》なしてやり過ごすことに成功した。事前にトラブル回避術講座やっておいてよかったわ。
見れば、年配の伯爵方もダンスに興じているのが見える。
あは、マドラとシャルナも踊ってるじゃない! しかも結構楽しそう!?
私も群衆に交じるべく、舞台を降り、ダンスの輪に紛れ込んだ。
こうして、パーティーは大盛況で終わった。
この日のことが、更に広まり、エイデル家とマーメイドテイルの名は、界隈でどんどん有名になっていくのだった。
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