破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)

bakauke16mai

文字の大きさ
18 / 33
英雄と王女。学園まで1ヶ月

決闘の後で、**を

しおりを挟む
「此処は………?」



「気付いたか」



 微かな声でそう呟いたシュンに、俺はそう告げた。

 その声を聞き、顔を上げようとしたシュンは、その顔を苦痛に顰める。

 身体は再生した。しかし、痛みを感じない訳では無いのだ。



 見た目は万全の健康体だが、先ほどの闇に飲まれたダメージは今もシュンに蓄積されている。

 これを取り除くことも、今のシュンなら可能だろう。



「痛た。【回復】」



 光がシュンを包み、その痛みを癒しているのだろう。

 シュンの表情は、何処かスッキリとしたモノのように見える。

 そのまま起き上がり、シュンは俺を見た。

 俺の隣に立っている、リィナも、その視線に入ったのだろう。



 シュンの身体が、硬直した。

 目は見開かれ、その瞳には驚愕が占められている。



「どう、して…………だって、リィナは、でも……」



 呆然と何かを呟くシュンを見て、リィナはクスリと微笑んだ。

 花の咲いたようなその笑みに、シュンは思考を中断して見入り、その視線を釘付けにした。



「完全にベタ惚れだな」



「え?ああああ!!違う!!いや違わないか!?だって好きだし…ってああああ!!!」



「こりゃ、リィナも幸せだな」



「……ええっ!」



 1人で騒ぐシュンを見て、俺はそう言った。同意したリィナは、何処か嬉しげで、何よりも誇らしそうだった。



 _まあ、シュンも幸せを掴もうとしてるんだ。応援しなくてはな。



 頬が緩くなるのを感じながら、俺はシュンに告げた。



「シュン。リィナは、お前に捧げるために残してるそうだぞ」



「……………ッ!?!?!?!」



「あああああ!!それは言っちゃ駄目って!」



 意味を理解した途端、顔を真っ赤にするシュン。

 それと同じくらい顔を真っ赤にしたリィナが、必至に隠そうとするが、もう遅い。

 楽しい、と。そう感じた。



「ただな、シュン。お前、恋人でも無い人のを想像するのは変態だぞ?」



 一瞬で、沈黙がその場に降りた。

 シュンはさらに顔を真っ赤にして俯き、リィナも同じように下を俯いている。



 _この2人。本当に互いに好き過ぎじゃないか?



 そう思ってしまうくらいには、この雰囲気は微妙だった。

 やがて、顔を上げたシュンは、リィナの方を向いた。

 それに気付いたリィナもその顔を上げると、どうやら激しく恥ずかしかったらしく、その可愛らしい顔を沸騰したように赤く染めていた。



「あ、あのさ、リィナ」



「は、はひっ!」



 微妙に躊躇いながらもリィナを呼ぶと、緊張と恥ずかしさ故に上ずったリィナの声が返ってきた。

 それに、俺が苦笑していると、シュンは一歩、リィナに近づいた。



 2人の間を隔てる物は何も無く。その幅は手を伸ばせば触れられるほどだ。



 _まあ、あまり近い訳でも無いんだがな。



「リィナ。僕は、救世の勇者だ。世界を救い、民を守ることこそが僕の役目」



「…………………」



 シュンの自白を、リィナは黙って聞いていた。

 しかし、この場の雰囲気がかなり緊張したものに変化したことくらい、すぐに理解出来た。

 場の雰囲気が最高潮に膨れ上がり、俺も何かの高揚感を感じる。



「好きだ、リィナ。これから、くじけた時に、後悔した時に、間違えた時に、僕の傍にいて、支えてほしい。導いてほしい。だから、僕と、付き合ってください」



「ッ!!」



 気付くと、リィナの頬を、一筋の涙が伝っていた。

 その瞳に何が映っているのかは、俺には分からない。シュンになら、分かることかもしれない。



「…私は、嫉妬深い女です。すぐにヤキモチを焼きますし、我侭だって言います」



「えっ…………?」



 突然に始まったリィナの自白に、シュンは呆けた用な声を出した。

 しかし、リィナの口調が、雰囲気が、瞳が、何かの覚悟を持っているようで、その口を閉ざした。



「私だって、挫けたり、間違えたり、後悔したりもします。………だから、その時は、シュンが、私を支えてください。………私と、付き合ってください」



「ッ!……うん!」



 一拍置いてから、大きく、嬉しそうに、頷いたシュンは、その瞳に溜まる涙を流した。

 俺にも、少しだけシュンの過去についての知識はある。

 しかし、俺が想像しているよりも、きっと、辛い過去があったのだろう。



 最初、俺がシュンを親友を認めた時の、あの涙を流した瞳からは、それだけの感情が伝わってきた。きっと、今のリィナも、同じ感情を感じただろう。

 その気持ちを、考えを、思いを、どうやって包み込めるのかが、これからの試練だろう。



 恥ずかしそうで、何処か鋭い視線を送るシュンに頷いて、俺はその場を去った。

 これから先は、2人だけの、きっと、世界で最も尊いと感じる、秘密の時間なはずだ。

 その場に、俺は不要である。



 _さて、明日からは、観察か………………



 空を見上げると、既に暗闇が支配する寸前である。

 これから訪れる夜は、これから始まる朝は、きっと、以前では想像も出来なかった日々になるだろう。

 その中で、俺は、幸せを掴みたいと、心からそう思う。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

処理中です...