19 / 33
英雄と王女。学園まで1ヶ月
学園への基準値(4)~令嬢の1日~
しおりを挟む
シュンとリィナが恋人になってから一週間が経った。
その間、2人を周辺に周知したり、ステファニーに報告したりと、色々と動いていた。
結果として、学園への期日が迫ってきている訳である。
公爵家の次女であるリィナの朝は早い。
いや、最近になって早くに起きるようになった。
理由は単純だ。
少しだけ期待したような、嬉しそうな足取りで廊下を進んだリィナは、1つの扉の前で立ち止まり、中へと入った。
扉の先には、1つのベッドがあり、その上で1人の少年が気持ち良さそうに眠っていた。
時刻は、朝食の時間よりも前。
ちょうど、この時間に起きると心地良く朝食に迎える、と言われている時間帯だ。
リィナは、眠っている少年、シュンに近づき、その耳元に口を近づけた。
「シュンさん。朝ですよ」
「~~~っん~~~んん~~?」
甘く、蕩けるような声音で告げたリィナが顔を離すと、シュンは眠そうな雰囲気を隠そうともせずに瞳を開いた。これが、愛の力というものなのだろうか。
そう。これこそが、リィナが最近早くに起きるようになった理由だ。
シュンを、自分という目覚ましで起こしてあげるという。
シュンもそれにすっかり甘えているため、段々とシュンの日常生活がリィナ無しでは無理になってきている予感がする。
起き上がったシュンが着替え終わるまでは部屋の前で待ち、出て来たシュンと一緒にリィナは食堂へ向かった。
途中、2人の関係は既に周知しているので、メイドや執事に微笑ましい目で見守られていた。
食堂の食事でさえ、シュンはリィナに甘えている。
「はい。あ~ん♪」
「あ~ん♪」
リィナからの料理を、嬉しそうに食べたシュン。
_もう、片方がいなくなったら生きられないんじゃないか?
そう考えずにはいられない。
食事が終わると、シュンとリィナは一旦の別れを迎える。
毎度、その度にリィナとシュンはキスをしているのだが、それはこの機会にするべきものなのだろうか。
別れたリィナは、そのまま中庭に向かって歩き出した。
以前は、この道中からシュンと俺の決闘に勃発したが、これからはそれも無い。
規則正しい窓と日差しを浴びながら、中庭に到着した。
「…レイさん。お願いします」
「ん?あ、ああ」
リィナの声が掛かったことにより、俺も観察だけの状態は終了だ。
リィナに頼まれているのは、<魔法を覚える>ことだ。
普段なら、何十年も掛かる可能性のある、そんな面倒な事はしないのだが、今回は奇跡的に、リィナには魔法の才能があった。
「じゃあ、何時も通りに……【防壁】」
「はい。『回れ回れ その種は火 その花は火薬 咲き誇れ 紅の花よ_【火炎花】』」
リィナがそう唱えると、赤い粒子が手の平へと集まってきた。
それが、段々と球体へと姿を変貌させる。
「行け」
そうリィナが呟くと同時に、球体は放出された。
空中で炎を纏い、魔力をその内側に押し込める。
その球体が、的である壁に衝突した瞬間。爆発が起きた。
_これは、成長が早いな。
それを見てそう思った俺だが、リィナは少し不安の混ざった顔で此方を見ていた。
「大丈夫。これが本来の威力だ。今までは、リィナが無意識に魔力を抑えていたからだ」
「ッなら!」
「ああ。充分に合格だ」
それを告げると、リィナは花が咲いたように喜び、笑顔になった。
常人なら10年は掛かるような工程を、僅か1週間程度で覚えてしまうこの才能は異常だが、それも当然だ。
勇者であるシュンの血が混じっているのだから。
その高過ぎる魔力融合度が取り込まれ、リィナも魔法を簡単に使えるようになっているのだ。
それからは、夕方まで、リィナの魔法の練習は続いた。
「お帰りなさい。シュンさん」
「ただいま!レイも、ありがとうね!」
まだ終わるには早いが、リィナなら短時間で覚えられる上に、もっと大事なことがあったからだ。
そう。シュンが返ってきたのである。
そこからは、リィナとシュンの、ただただ甘い時間が流れていくだけであった。
_まあ、これが正常だからな。
その空間が、甘過ぎて数人のメイドが気絶したというのは、余談だろう。
また、ステファニーも引き攣った笑みをしていた、というのも、余談だ。
その間、2人を周辺に周知したり、ステファニーに報告したりと、色々と動いていた。
結果として、学園への期日が迫ってきている訳である。
公爵家の次女であるリィナの朝は早い。
いや、最近になって早くに起きるようになった。
理由は単純だ。
少しだけ期待したような、嬉しそうな足取りで廊下を進んだリィナは、1つの扉の前で立ち止まり、中へと入った。
扉の先には、1つのベッドがあり、その上で1人の少年が気持ち良さそうに眠っていた。
時刻は、朝食の時間よりも前。
ちょうど、この時間に起きると心地良く朝食に迎える、と言われている時間帯だ。
リィナは、眠っている少年、シュンに近づき、その耳元に口を近づけた。
「シュンさん。朝ですよ」
「~~~っん~~~んん~~?」
甘く、蕩けるような声音で告げたリィナが顔を離すと、シュンは眠そうな雰囲気を隠そうともせずに瞳を開いた。これが、愛の力というものなのだろうか。
そう。これこそが、リィナが最近早くに起きるようになった理由だ。
シュンを、自分という目覚ましで起こしてあげるという。
シュンもそれにすっかり甘えているため、段々とシュンの日常生活がリィナ無しでは無理になってきている予感がする。
起き上がったシュンが着替え終わるまでは部屋の前で待ち、出て来たシュンと一緒にリィナは食堂へ向かった。
途中、2人の関係は既に周知しているので、メイドや執事に微笑ましい目で見守られていた。
食堂の食事でさえ、シュンはリィナに甘えている。
「はい。あ~ん♪」
「あ~ん♪」
リィナからの料理を、嬉しそうに食べたシュン。
_もう、片方がいなくなったら生きられないんじゃないか?
そう考えずにはいられない。
食事が終わると、シュンとリィナは一旦の別れを迎える。
毎度、その度にリィナとシュンはキスをしているのだが、それはこの機会にするべきものなのだろうか。
別れたリィナは、そのまま中庭に向かって歩き出した。
以前は、この道中からシュンと俺の決闘に勃発したが、これからはそれも無い。
規則正しい窓と日差しを浴びながら、中庭に到着した。
「…レイさん。お願いします」
「ん?あ、ああ」
リィナの声が掛かったことにより、俺も観察だけの状態は終了だ。
リィナに頼まれているのは、<魔法を覚える>ことだ。
普段なら、何十年も掛かる可能性のある、そんな面倒な事はしないのだが、今回は奇跡的に、リィナには魔法の才能があった。
「じゃあ、何時も通りに……【防壁】」
「はい。『回れ回れ その種は火 その花は火薬 咲き誇れ 紅の花よ_【火炎花】』」
リィナがそう唱えると、赤い粒子が手の平へと集まってきた。
それが、段々と球体へと姿を変貌させる。
「行け」
そうリィナが呟くと同時に、球体は放出された。
空中で炎を纏い、魔力をその内側に押し込める。
その球体が、的である壁に衝突した瞬間。爆発が起きた。
_これは、成長が早いな。
それを見てそう思った俺だが、リィナは少し不安の混ざった顔で此方を見ていた。
「大丈夫。これが本来の威力だ。今までは、リィナが無意識に魔力を抑えていたからだ」
「ッなら!」
「ああ。充分に合格だ」
それを告げると、リィナは花が咲いたように喜び、笑顔になった。
常人なら10年は掛かるような工程を、僅か1週間程度で覚えてしまうこの才能は異常だが、それも当然だ。
勇者であるシュンの血が混じっているのだから。
その高過ぎる魔力融合度が取り込まれ、リィナも魔法を簡単に使えるようになっているのだ。
それからは、夕方まで、リィナの魔法の練習は続いた。
「お帰りなさい。シュンさん」
「ただいま!レイも、ありがとうね!」
まだ終わるには早いが、リィナなら短時間で覚えられる上に、もっと大事なことがあったからだ。
そう。シュンが返ってきたのである。
そこからは、リィナとシュンの、ただただ甘い時間が流れていくだけであった。
_まあ、これが正常だからな。
その空間が、甘過ぎて数人のメイドが気絶したというのは、余談だろう。
また、ステファニーも引き攣った笑みをしていた、というのも、余談だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる