破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)

bakauke16mai

文字の大きさ
25 / 33
英雄と王女。学園まで1ヶ月

破邪ノ英雄は、キスにて王女を(1)

しおりを挟む
 王都の街並みは、意外にも公爵領に似た規模しか無かった。
 代わりに、その賑わいは驚くべき規模ではある。

 行き交う人々の話し声で響き渡り、商店街は人で埋め尽くされている。

「人が多いな」

 思わずそんな呟きが漏れたとしても、しょうがないはずだ。

 _さて。依頼の場所は、王城だったか。

 1つ頷いてからそう考え、目前に聳える王城へと歩いて行った。
 もちろん、珍しい屋台が無いかは見ているが。

 _そうだな。子供だからと舐められて相手にされないのでは困るし。正装しておくか。

 そんなことを考えた俺は、すぐに行動に移した。
 派手過ぎず、だからといって舐められたりもしない服。

 _【邪法衣・アシュタロス】

 黒と蒼の光が俺を包み、その服装を変えていく。
 周囲の視線が集まるが、まぁ予想の範囲内である。

 黒のズボンに、黒のロングコートが身体に纏われた。
 その黒の中に、幾つか蒼の線が施され、さながら高級感を纏っている。

 _これが、神でもあれば嬉しいのだがな。

 そんな事を考えながら、騒ぎ始めた人々を無視して俺は道を歩き始めた。
 今度こそ、王城へ向かう。


 _巨大だな。そして、白いな。

 王城の目前へと辿り着いた俺は、それを見上げてそう思った。
 言わずもがな、城壁である。

 門の前には、3人の兵士が常駐しているようで、今は俺の姿を見て戸惑っているようだ。
 それくらい、雰囲気から伝わってくる。

 門を通ろうと近づくと、やはり仕事と意識しているのか、前へと立ちはだかった。

「すみません。身分を証明出来るモノと。用件を」

「ギルドカード」

 兵士の言葉に頷き、そう唱えると、俺の目前にギルドカードが浮遊した。
 それが、だんだんと回転し、兵士側に向けて一枚のパネルが展開される。

 ____
 Rank S×20
 職業 破邪ノ英雄
 依頼 第三王女より通達
 ____

「ほう。ランクが増加したか」

「なっ……!?!?!…………な……」

 それを見た兵士は、開いた口が塞がらないようで、そのまま放心していた。

「身分はこれで良いか?」

「………………え?あ、その通りで御座います。お通りください」

 先ほどまでと180度違う態度で、兵士はその場を退いた。
 その態度に多少の疑問は抱いたが、それよりも王城が気になったので、俺はそのまま素通りした。

 城内は、草花が植えられ、庭園に近い感覚になっているようだった。
 王城の扉までの舗装された道の両側に、一定間隔で花が植えられている。

 その中を、俺は悠々と歩いている。
 といっても、扉への道が長くて少しイラッとしているのは内緒だが。

「にしても、王城に来たのはこれで3度目か」

 以前の時代にも、2度だけ王城へとやってきたことがある。
 その時の王は、賢者という職業についており、その国はかなり栄えたはずだ。
 最後の終わりは、賢者の予知という技能により、技術発展により戦争を回避するために狂王を演じてたはずだ。

「懐かしいな」

 そんな事を呟きながら進み、やっと扉の前へと到着した。
 兵士が数人ほど見れたが、誰も俺を不審者とは思わないようだ。
 この服と、堂々としている姿のお陰だろう。

 ギィィィィィィィ~~~~~~

 扉は、俺が前に立つと同時に開いた。
 中に入って振り返っても誰もいないことから何かの仕掛けだろう。
 前へ振り向くと、視界一杯に豪華な装飾が映った。

 白い壁の至る場所に赤や金の装飾がされ、松明が一定間隔を照らしている。

「さて。まずは騎士団の訓練場に行くか」

 リサに聞いた話によると、第三王女は独りを寂しいと感じ、よく訓練場に向かっているらしい。
 そのため、まずはそこへ向かおうと考えているわけだ。

 王城の中がどうなっているのかは不明だが、目的の方向はすぐに分かった。
 気配察知の中に、大量の微反応が集まっている場所があるのだ。

 _ふむ。確かに人が塵の様だな。

 そう内心で呟きながら、王城の右側に向けて歩き始めた。

 _一応、透明化しておいた方が面倒にならないな。

「【透明】」

 不可視になった状態で歩くと、やはり通りかかる兵士には見えていないようだ。

 _以前なら、この程度の技量では村人くらいしか騙せなかったのにな。

 その通りで、以前から透明、正確には隠密系の技能はまったく伸ばしていないため、俺は暗殺や隠密は超が付く苦手としているのだ。
 勿論、本気でやろうと思えば世界中全てを騙すくらいは可能だが、それも面倒である。

 _そうか、この時代の兵士は以前の村人よりも弱いのだな。

 騎士団の方から感じる気配すら、村人に劣る可能性がある。
 この世界の住人は、もしかしたら亜竜すら災害級に指定しているだろう。
 あの程度、毎日の食卓に並ぶ家すらあったというのに。


 この時代の人々を見下し続けながら、俺は王城の中を進んでいった。
 第三王女の悲願が達成されるのは、もう少しのコトである。
 この後、何が起きるのかは、神(作者)のみぞ知る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...