闇千夜の系譜・櫻花の理(ことわり)〜鬼は永久(とわ)に最愛の女を探し彷徨う〜

和刀 蓮葵

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始まりは漆黒

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晴天の空から段々と太陽が沈む。黄金色や橙色が混ざった空からやがて、藍色や黒色が侵食していき、真っ黒な空に変わる。
所々、キラキラと光るのは金剛石ダイヤモンドを砕き、散りばめたようにも見える。

暗い空に変わった途端、周りは明かりを付け始める。ガス灯に明かりが灯り、光と影を作り始める。光あれば影があるように、表があれば裏があるように、我々の世界には表裏一体と呼ばれる言葉があるように、相即不離そうそくふりだ。

それは、人とあやかしも同じ。表に生きる人と、裏に生きる妖。
その逆も有り。但し、その逆は良きものとは言えない事もある。
人の助けをするものいれば、仇なすものもあり。
仇なすものは、調伏しなければならない。
そして、それをするのは「呪術師じゅじゅつし

呪術師の頂点に君臨する壬生雀院みぶじゃくいん家は、いつの頃か帝に仕え、ありとあらゆる災厄から、帝をこの、秀旭ノしゅうきょくの皇國こうこくを守り続けてきた。
時には死をも恐れる気概を持ち、命を落としても他の者が立ち上がり、影から守り続けてきた。
魑魅魍魎ちみもうりょう異類異形いるいいけいが蔓延るこの世界で。


人通りの多い道はガス灯の明かりで、昼間のような明るさと賑わいがある。だが、一歩、道を外すとそこは暗い世界。そして、一人の女性が暗い帳に身を隠し、じっと耐え忍ぶ。時の頃丑の刻真夜中の2~3時
白い狩衣に、紅の捻襠切袴ねじまちのきりばかま
艶のある長い鳥玉ぬばたま色の髪を一つに束ね、奉書紙と丈長で飾る。
線の細い体は、突風が吹けば飛んでしまいそうなほど儚い。
けど、瞳だけは意志の強さが濃く現れ、力強くある一点を見つめる。

すると、暗闇に紛れた道から歪んだ何が現れる。
その、歪みを見て女性は、長く細い息を吐いて、吸い込む。気持ちを落ち着かせて、集中する。
歪みはやがて人ならざるものを生み出す。

異形な体は人ならず。赤く染まった長い髪を四方にうねらせる。血走った目は獲物を狙う瞳。爛々と怪しげな光を灯す。
大きな手に、伸びた爪・・・・・・・・
之をあやかしと言わず何と呼ぶ?

巫女のような出で立ちの女性は懐から、白い絹の手袋をした手で、懐剣を取り出し鞘を抜く。そして、声高らかと叫ぶ。
「東海の神、名は阿明あめい、西海の神、名は祝良しゅくりょう、南海の神、名は巨乗きょうじょう、北海の神、名は愚強、四海の大神、百鬼を避け、凶災を蕩うはらう急々きゅうきゅう如律令にょりつりょう!!」
懐剣が仄かに淡く光るのを確認すると、編み上げブーツのつま先を踏み込むと、あやかしに向かって一直線に駆け抜けていく。

うねる髪を更にうねらせて、人ならざるものはその大きな手を振り下ろす。
女は冷静に攻撃を見極めて対処する。技も考えもない只の振り下ろしただけの攻撃。体をほんの少し反らして躱す。そして、淡く光る刃を、ただれた皮膚の腹に振り下ろす。
〈ウ゛ア゛ア゛ァ゛━━━━━━━〉
湿った気味の悪い耳障りな声を発する妖を見て、女は叫ぶ。

東雲しののめこう!」
すると、女の背後から闇夜を切り裂く様に、二人が生まれる。
一人は女
一人は男
けど、それもまた、人ならざるもの。

女は鴇色の唐衣に薄手の千早をまとい、紅切袴を履く。膝まである長い髪も鴇色で緩くうねり、邪魔にならぬ様に肩で緩く結ぶ。
耳は人の形をしておらず、小さな翼が生えており、それもまた、鴇色の羽。
赤い瞳は鳥のような瞳で鋭い。赤い唇は僅かに微笑み妖を見る。

男は大きな髑髏が描かれた深緋色こきひいろの着物を着流し、長くて白い首巻きをなびかせる。白銀色の髪は襟足に届くぐらいの長さで、そこからのぞく耳も鴇色の着物の女と同じく人にならず。獣の様な耳をしており白い毛で覆われている。猫のような瞳は軽薄そう形を変え、薄い唇から僅かに尖った犬歯が見える。

「待ちくたびれたぜ~」「御意」

二人の声が重なる。そして、鴇色の女はどこからともなく弓矢を取り出し、妖に向かって矢を放つ。
深緋色の男も腰に差していた刀を抜くと、矢と同じ様に妖に向かい走り出す。

矢は女を避けて、妖に刺さっていく。痛みで怯んだ隙に、男の刀が袈裟懸けに斬っていく。
〈あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!〉
湿って粘ついた断末魔と共に、人ならざるものは黒い塵の塊になり、辺りに散っていく。その塵は宵闇に紛れて見えなくなる。

「ありがとう。二人とも・・・・依頼の仕事は終わったから、屋敷に戻ろう」
「分かったよ。朔耶さくや
「はい。帰りましょう、朔耶様」

「朔耶」と呼ばれた女は懐剣を鞘に収め、再び懐にしまうと、歩き出す。その後を、二人が歩き出す。
静寂と共にある、漆黒の闇は静かに三人を飲み込んだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
少々長いですが、プロローグ的なものです。
これからヒロインとヒーローが出会い、物語が始まります。

時代的には明治・大正ぐらいの時代背景ですが、思いっ切りファンタジーです。
着物と洋装が混ざった時代。勿論、持ち物、建物、食事など混じっていった時代。
素敵ですよね。そんな、時代をバックに物語は進んでいきます。
是非とも、お楽しみください。そして、Rの話もガッツリありますので(どこで、出るのかは神のみぞ知る)お楽しみください。

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