ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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「こちら七海、目標通過地点到着。司令部、状況の変化等ありましたか?」
『こちら司令部。七海少佐の読み通り目標到着地点はBクラスとC・Dクラスのみです。Sクラスは今現在ゲートに向かっていると思います。迎撃しますか?』
「いや、遠隔操作でなにかされたら困るから今回は見逃してやる。但し、次回来た時は容赦なしだ」
『了解しました』
「目視で確認出来次第、又連絡する。こちらからは以上」
『了解しました。では速やかに作戦行動開始して下さい』
「了解!」
七海はインカムから司令部とやり取りをする。

こちらの読み通り、貴族はすぐに帰ってしまったのを聞くと、やはり夜神を帰すのが目的だと再確認する。
後は、状態が何処までかを確認しないと動くに動けない。目視で確認出来るのは、まだまだ先になりそうだ。

「やはり、虎の読み通りだったな。相変わらず頭が切れるな」
「あざーす。とりあえず礼は受け取るよ。それにしても悪趣味な奴らだよ。なんで、わざわざ拉致した場所に夜神を返却するかね?帝國貴族は悪趣味の塊なんかね?」
「知らないわよ。とりあえず目視出来るところまで行きましょう。庵君?大丈夫?」

式部はヘリに乗り込んでから、最低限の言葉しか喋らない庵が気になって声をかける。仲間の救出活動は初めての上、それが自分の教育係なら尚の事だろう。不安が大きいのかもしれない。
「すみません。大丈夫です。事があった場所にもう一度、行かないといけないと思うとなんだか・・・・・」
「大丈夫だ。庵学生、今度は第一室の人間と長谷部や藤堂がいる。その気の迷いが大惨事に繋がる。今は忘れて、Dクラスをどのように討伐するかだけ考えろ」
相澤は庵の不安を分かっていたが、あえて厳しい言葉を選んで庵に諭す。気の迷いがあるばかりに、大きなミスにつながるのは本当の事だからだ。
「すみません。相澤少佐!失言でした。Dクラスの討伐を、皆さんの足を引っ張る事なく出来る事だけを考えます」

庵は相澤の言葉にハッとして、自分が出来る最大限の事
━━━━Dクラスの討伐をどうするか・・・・

「庵青年。いつもの討伐と一緒だ。変に力が入ると失敗するぞ。緊張は大事だか、緊張しまくるのは逆に危険だ。分かったか?」
先頭を歩く七海が庵の方を見て、いつもの調子で話しかける。
「はい・・・・・すみません。学生の自分が夜神中佐の救出活動に参加するのも、本当はいいのかわからないのです」
「元帥が指名したのだからアリだろう?庵青年、気難しく考えるな」
七海は庵が悩むのも十分に分かっているが、それでは前に進まないと考え、アドバイをしょうと思ったが、知った場所に自分達がいるのを確認して足を止める。
「虎?どうしたの」
「ストップ!双眼鏡で確認するからまっていてくれ・・・」

手を合図に、全員の歩みを止めて、七海は双眼鏡で位置確認する。
双眼鏡の先には鷹の形をしたCクラスと、ムカデの形をしたDクラスがそれぞれの三体ずつ居るのが確認できた。そして地面には一人のBクラスと、鳥籠に入って両手をそれぞれ拘束されて、項垂れている人物を確認する。顔は見えないが、軍服を羽織っていて、その下は赤い下着のようなものが見える。長い髪は白色で、それを垂らしている。

髪の色で一瞬分からなかったが、子供の頃一度だけ見たことのある特徴的な色に、七海は双眼鏡を見ながら呟いていた
「見つけた・・・・・夜神がいる」
「本当か!生きているのか?無事なのか?」
「夜神中佐・・・・・・良かった」
七海の呟きに、全員が七海を見る。七海は一度双眼鏡から目を離し、皆を見るともう一度、双眼鏡を使って確認する。
「夜神を確認した。呼吸運動が見られるので、生きている。細かな欠損部位は不明だが、手足の欠損はない。これより救出活動に移行する!・・・・・・司令部!夜神を確認した!生存確認したのでこれより救出活動を開始する!」
七海はインカムを使って司令部に連絡する。
『こちら司令部、本作戦実行を許可する。第一に救出を目的とせよ。なお、不測の事態に対しては現場判断で対応するように。幸運を祈る』
「了解!」

七海は司令部と簡単なやりとををして、通信を終わらせると、地面に落ちている枝を拾って、丸を書き始める。皆は何事?となりその丸を見ていく。十二時・二時・四時・六時・八時・十時の位置に丸を書き込む。
「この位置にDとCクラスがいる。十二時と四時・八時方向に鷹のようなやつが、二時・六時・十時にムカデのようなものがいる。そして・・・・・この真ん中に夜神と、Bクラスがいる」
六つの丸を描いた真ん中に丸を二つの書くと、七海はその丸を枝でトントンと叩く。そこは夜神とBクラスがいるとされているのは場所だ。
「場所は分かった。この周りの割当はどうする?」
相澤が七海に尋ねる。七海は無精ひげを撫でてしばらく考え込むと十二時の丸に枝を刺して、順に割り振りをしていく
「十二時は飛行型だから相澤少佐で二時はムカデだから庵青年、四時は鷹で飛行型だから藤堂少佐。そして六時はムカデだから俺が行く。そしてそのまま夜神を救出する。八時は飛行型だから式部中尉で、最期の十時はムカデだから長谷部少佐で、そしてそのままBクラス討伐で。遠距離攻撃の相澤、藤堂は討伐したら、そのまま他の隊長の援護射撃をたのむ。特に庵青年のバッグアップを頼む。夜神が真ん中に居るから、真ん中に倒れ込まないように気をつけながらするように」
「「「了解!」」」
「一斉に攻撃するので相澤、藤堂の準備が出来次第、合図を。それまでに攻撃圏内に移動を完了する。けして悟られないように」
七海は立ち上がり、持っていた枝を捨てて、足で地面に書いていた丸に消していく。
「では、移動を始める」

七海を始め、「高位クラス武器保持者」はそれぞれの武器を開放して、相手に悟られないギリギリの所まで歩みを進めると七海が「待った!」をかける。自分達の視界でもはっきりと分かる所に七海の言っていた鷹とムカデの下位クラスがいる。そしてその真ん中には鳥籠の中に人が一人入っている。

髪の毛は白くなっていて、顔は力無く俯いていて、両手の拘束がなければ倒れていただろう。

庵は最初誰か分からなかったが、七海が「夜神」と言っていたので、その人が夜神中佐だと分かる。軍服に赤のスリップを着ていて、素足を晒している。普段なら考えられない服装に軽く目眩がする。

「いくら相手が下位クラスでも、油断するなよ。では実行する!!」
「「構え!!」」
「「抜刀!!」」
庵以外の全員が、高位クラスに力を宿して、それぞれの構え方で、自分が対処する相手に向かっていく。

庵も模擬武器を握りしめて、自分が割り当てられたDクラスのムカデに向かって走り出した。
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