ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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内勤勤務も残り十日となった日、朝礼が終わり、仕事をはじめようとしていた夜神に、長谷部室長は声をかける
「夜神、藤堂元帥から帯刀の許可が出た。武器保管庫に保管してある自分の武器を引き取るように」
「了解しました」

軍に復帰してから、「蒼月・紅月」を帯刀することは許されなかったが、やっと許可が降りた。腰周りに重みがなくて、心許なく不安だったが、やっと安心出来ると思うと自然と笑顔になる。

「夜神大佐、凄く嬉しそうね」
「もちろん。凄く嬉しいに決まってるよ。式部中尉」
嬉しそうな顔を見せた夜神に、式部は「良かったね」と笑顔で返す。

そうして、足取り軽く保管庫に行って、一ヶ月振りに二振りの日本刀と懐剣、そして簪が帰ってきた。それらを手に取ると、武器も再開できたことを喜んでいるのか「キィ━━━━」と鳴く。意思を持つ武器だからだろう。
意思があるのだから、感情もある。その為、まるで人間のように再開を喜んでいるのだ。

そうして、腰に差して第一室に戻っていく夜神が廊下を歩いているが、興味のある視線や、コソコソ話は既になくなっていた。
常に堂々とした、立ち居振る舞いで、周りの人と接してきたのだ。
周りも夜神の身に起きたことは、詳しくは知らないが、帝國に拉致されて、帰ってきたときには心身が衰弱していたのだ。
吸血鬼に「白目の魔女」と言われ、目の敵にされる存在の夜神だ。何かしらの事があったと誰もが思うだろう。

帰っ来てきてくれた喜びや、やはり最強の軍人は格が違うと、尊敬の眼差しもあるが、中にはもしかしたら・・・・と、うがった見方をしている人間がいるのもたしかで、口には出さないが、視線で語る人間もいる。

理解しているが、人の感情など千差万別。すべてが自分に肯定的な感情を持っているとは思ってない。否定的な人間に蔑まされないように、堂々としていたのだ。そして、その結果普段と変わらない日常を手に入れたのだ。

「先生のおかげかな?」
小声で呟いて、伏し目がちな表情をして廊下を歩いていく。そんな表情を見た、向かい側から歩いて来た者達は、何故か顔を赤くして、小走りで夜神を通り抜けていく。
「なんで走っていったのかな?」

自分の表情が与える影響など、一切理解してない発言を呟いて、夜神は「第一室」と書かれた扉をノックして部屋に入っていった。

「おかえりなさい。帯刀出来たんですね。なんか、その姿を見て安心しましたよ」
「ありがとう。庵君!なんかずっと腰回りが軽かったけど、やっと慣れた重みを感じて安心したの。嬉しい」
本当に嬉しそうな表情を庵に向けて、青い柄巻きの「蒼月」に手を置く

「今日は久しぶりに「円舞」でもしょうと思ってるんだよね」
「なんですか、「円舞」って?」
聞き慣れない言葉を聞いて、庵は夜神に問いかける
「う~ん・・・・・二刀流の型を舞いながら確かめていく事かなぁ?円を描くように移動するから「円舞」と言ったり、もう一つは、蝋燭を円状に配置して火を消さないようにしながら、蝋燭だけを斬ったり、戻したりしていく稽古方法も「円舞」と言ったりするんだよね」

夜神の説明に納得するものと、理解出来ないものがあるが、とりあえず「円舞」は凄いものが見れるのだけは理解する庵だった。
それだけ凄いものが見られるなら、是非とも見てみたい。型も気になるが、蝋燭の稽古方法がとてつもなく、気になってしまう。

「夜神大佐。自分も見学してもいいでしょうか?」
「いいけど、つまらないと思うよ?」
「そんな事ないです。色々な流派を見て、勉強するのはいい経験だと思いますので。あと蝋燭の稽古方法が凄く気になるのですが、それを見せて貰うことは出来ますか?」
「蝋燭の方の「円舞」?いいよ。じゃ、そっちの方で「蒼月・紅月」の手慣らしをしょうかなぁ」

庵から学びたいと言ってきたので、それを止めることは成長を止めることになるので、それだけは遠慮したい夜神は、庵の申し出に快く快諾していく。
勿論、快諾の許可を貰った庵も、嬉しそうにしながら返事をする。

「ありがとうございます。何時頃しますか?場所は?」
「午後からかな?書類と庵君の体術の稽古をするから。場所は・・・・・第二剣道場かなぁ?あそこは個人練習の場所だから」
「分かりました。楽しみにしてます。あっ、そろそろトレーニングに行ってきます!!」

庵は時計を見て、今日の課程を思い出し、夜神の稽古を見ることを約束して部屋を出て行った。
夜神も、そんな庵の後ろ姿を見て微笑む。

最近は、勉強に稽古に意欲的な姿を見せる庵が、好ましくもあった。
剣道場で約束した日から、確実に変わっていったのだ。後期のテストで一位を取ることが互いの目標になり、その為には教えることは、全て教えようと思う夜神と、あらゆる事を吸収して勉強していく庵なのだ。

目標達成の為、互いが惜しみなく力を発揮していくことが、嬉しくて、好ましくて微笑む。

「夜神、なんか嬉しそうだなぁ~~庵青年に稽古の見学されるのがそんなに嬉しのか?」
七海はいつもの様に、無精ひげを撫でながら夜神を見る。
「そうだね。積極的に学ぼうとする庵君の姿勢が嬉しくて・・・・・今日の「円舞」はかなり気合を入れないと、庵君に失礼だね!」
「なら、気合を入れやすいようにしてやろうか?」
「何、考えているの?虎次郎」
七海の何かを企んでいる言い方に、若干引き気味になった夜神が七海を見る。
そこには、あきらかに何かを企んでいる七海が居て、「フッ、フーフー」と笑っている
「変なことしないでよね。したらシメるよ。この前ベルナルディ中佐の時より強めにするからね」

ベルナルディ中佐との不可解なやり取りを、七海に問いただしたら、やはり二人の悪巧みだと判明した時は、「討伐任務に復帰する為」と有無を言わさず総合道場まで連れていき、何度か飛ばしてシメたのだった。

「今度も変な悪巧みしたら、壁と床と友達になってもらうから!!」
「友達かぁー・・・・・遠慮する!!けど、緊張持って、良い稽古になると思うんだけどなぁーとりあえず俺が場所と時間押さえといてやるよ。感謝しろよー」
「待って!!なんで虎次郎が進めてるの?!自分の仕事しなさいよ!演習の指揮者でしょう!」
「夜神が居るから大丈夫!!」
「ふざけないで!私はあくまで補助なの!指揮者は虎次郎でしょう!」

七海はウンウンと、頷いて道場を抑えるために電話をしていく。
それを見ていた夜神は「も~~う!!」となりながらも、何かを諦めたのか、ため息をして自分の机に向う。

一連のやり取りを見ていた、式部と相澤は互いで顔を見合わせて、「ハァー」とため息を同じタイミングでする。

お祭り男━━━七海はニヤニヤしながら、無精ひげを撫でて、作戦を練っていく。
いつものように確実で、安全な方法でこの作戦を成功させるために、頭をフル回転していくのであった。
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