ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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ある日の昼下り、藤堂元帥に呼び出され庵君と向かう。
長谷部室長曰く「一悶着ありそうな声だった」と言われ、身構えている。

扉をノックして入室すると、客用のソファにスーツを着た男性と、向かい合うような形で藤堂元帥が座って難しい顔をしている。

「遅くなりました。夜神・庵二名、藤堂元帥からの召喚により参りました」
敬礼して、挨拶するとそれに応えるように藤堂元帥も敬礼する。
「馳せ参じてくれてありがとう。早速で悪いが庵伍長の今後の討伐任務についてだ」
ソファを進められ、コの字型に配置させれているソファの一人用に座る。
悪いけど、庵君は立ってもらう。この場では仕方がない。

「先に、紹介しておく。この方は「吸血鬼殲滅部隊日本支部監査局」の人で局長の本條 一志ほんじょう かずし殿だ」

吸血鬼殲滅部隊日本支部監査局・・・・・・私達、軍の間では「上層部」と言っている国側の組織だ。我々、特殊な軍を「監査」する為の組織だが、その中身は色々と謎が多い。
実際、藤堂元帥と何度も衝突しているし、イタリア軍の演習の時にベルナルディ中佐の言葉も気になる。

なぜ、その国側のそれも「局長」が今いるのか分からない。

「藤堂元帥。庵伍長の話でしたが、先に局長の対応をされたほうがいいのでは?我々は時間を見て再度こちらに参ります」
庵君の討伐と上層部は関係ない。なら、我々はお邪魔なのでは?
そう思ったが、藤堂元帥は何故か難しい顔のまま首を横に振る。

「夜神大佐。その件につきましては私の方から説明させていただきます」
割って入ってきたのは上層部の局長だった。
「本條局長?」
長谷部室長達より幾分若いと思うが、本心の見えない笑みを浮べて話してくる姿は何故か歳よりも上に見える。

「我々の軍は常に人手不足なのはご存知ですよね?」
「えぇ、知ってます」
一般に知られてない組織のうえ、入隊するのも勧誘や家系的な者ばかりだ。その為人数は少ない。
「そして、我々の武器である「高位クラス武器」を扱える人間は更に少ない」
「はい」
武器が特殊なのも、さらにその武器は意志を持ち使い手を選ぶ。その為「高位クラス武器」を使用する人間は、少ない人数の軍の中でも更に少ない。

「我が国はゲートが二箇所ある為、常に驚異に晒されている。出現率も他の国を圧倒する程の高さ。そちらもご存知ですよね?」
全部で十一あるゲートのうち、第一ゲートと第十一ゲートの二つが日本には存在し、他の国よりも出現も討伐も圧倒的に多い。常に驚異に晒されている。それは間違いない。

「ここまで言えば分かると思いますが、少ない軍人、他の国より多い討伐・・・・そして、圧倒的に少ない「高位クラス武器」の使い手・・・・・」

理屈は分かる。けど、やめて欲しい。庵君にはまだ早すぎる!

「なら、使い手として認められた庵伍長の実践投与を早めにするのは当たり前でしょう?力を身に着けたのなら、それを行使するのは当たり前ですよ?我々は遊びをしてるのではない」
「お待ち下さい!!本條局長の言い分も理解してます。ですが、今の庵伍長の力では死ににいくようなもの。実力を無視して投与する気はありません!!」

やめて!やめて!庵君にはまだ早い。私からこれ以上大切な人を奪わないで!!

夜神は藤堂元帥の顔の意味を理解した。だから、ずっと難しい顔だったのかと。その顔を作っていた理由はこれだったのかと。

「夜神大佐・・・・・軍最強と言われてるのだから、強くなる方法を幾らかご存知なのでは?それにこれは国の意向で、既に決定済み。ここまで言えば分かりますよね?今月中には庵伍長のAクラス討伐任務を遂行して下さい。拒否はありません」
「なっ!既に決定されているだと?!」
これには藤堂元帥も初耳だったようで驚いていた
「お待ち下さい!!国は生きられる人間を殺すのですか?」
「夜神大佐!!言い方が・・・・」
頭に血が登っていた夜神に、取り繕う事は無理だった。
「大佐。ここでの失言を問いただす気はありません。確か、庵伍長は大佐の隊の人間でしたね。隊員が大切なのは分かりますが、我々が守るのは国民です。そこは理解してますよね?」

理解してる。してるけど・・・・・・
「もちろん、しております。ですが実力がない人間にいきなりの、高位クラスの討伐は・・・・」
「なら、あなたと一緒に討伐すればいいのでは?先程も言いましたが遊びではないんですよ?それに、あなたの隊は二人だけのは隊ですよね?なら配分とかもしやすいでしょう?」

冷ややかな目線を夜神と庵に向ける本條局長は、ソファの背もたれに体を預けて「ふぅ━━」と、わざと大きなため息をする。
「庵伍長。君はどう思うのですか?折角「高位クラス武器」を手にしたんだ。早く使いたいと思うだろう?」
本條局長は更に冷めた目をして言ってくる。

庵も常に思っていたことだ。いつになったら自分は討伐出来るのか?いつになったら夜神大佐の手助けが出来るのかと。
折角、「高位クラス武器」を所持出来ることになったが、まだまだBクラス止まり。
だが、自分の実力は自分が一番理解もしている。Aクラス討伐は生半可な実力では敵わないことも。
それは、学生の時に散々見せられ続けてこられたから理解している。

「発言しても宜しいでしょうか?」
「私が許可します。どうぞ?」
庵の言葉に本條局長が応える。夜神はバッ!と、後ろを振り返る。その顔は今にも泣きそうな程不安でいっぱいの顔をしていた。
そんな顔をさせてしまった事に少し罪悪感を覚える。
「「高位クラス武器」を所持することになったからには、いつかは高位クラスの討伐することも考えてます。そして、自分の実力を重々に承知した上での発言です。私は機会を頂けるのであれば、それに応えたいと思う所存です」
「庵伍長!!」
「大佐、お静かに」
「・・・・・応えたいと思ってます。ですが、まだまだ足手まといでもあります。そして、所属している隊の隊長に判断を委ねたいと思います。一番理解をしているのは誰でもない隊の隊長だと思いますので」

「・・・・・・甘い考えですね。結局は人任せなんですね?まーそれでも構いません。ですが、国によって既に決められてます。庵伍長の討伐任務は変わりありません。それがいつになるかはあちらの出方次第ですが・・・・・それまでに仕上げて下さい。私からは以上です」

そう言ってスッと、立ち上がると部屋を出ようとする本條局長に夜神は声をかける。
「私は納得出来ません!新人隊員に高位クラスの討伐など!いったい何をお考えなのですか?」
「末端の隊員が何を叫ぼうと決定は決定です。それがいくら夜神大佐であろうとね。それでは私も暇ではないので」

顔も見ずに、夜神達に背中を向けるとそのまま部屋を出ていく本條局長に、夜神も藤堂元帥もやり切れない視線を向けていた。

いったい何がしたいのか?どう、扱いたいのか?分からないことばかりだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

すご━━く嫌われてほしくて見下し口調で登場させました。本條局長。この方はこれからもこの口調で話していくんだろうな?きっと軍から嫌われている事間違いなしな人です(笑)

そして、庵伍長はどうなるんでしょうか?
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