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「朝か・・・・・・」
カーテンから差し込む光を見て、夜神はベッドから体を起こす。
決戦前夜の士気を高めたいのか、この日を過ぎたら一生、隣には居続けると知っているからか、今日だけは一緒に眠ることはなかった。
「別々で」と言っていた時の皇帝の顔は、本当に楽しそうで愉悦していた。
目を細め、唇は上を向き、声は弾んでいた。
けど、それでも構わなかった。ある意味、最高のコンディションで望めるのなら。
女性主人を意識した部屋は、全体的に優しさと威厳の雰囲気がある。
けど、この寝室は豪奢でありながら優しい雰囲気であり、先程まで眠っていたベッドは、あの忌々しい部屋のベッドよりは一回り小さいが、それでも十分な大きさがある。
フリルのシーツカバーや、桜色がアクセントのベッドライナーなど女性を意識している。
隣に不快な存在がいないだけで、こんなにも気持ちの良い朝を迎えたのは本当にありがたい。
夜神は起き上がるとベッド脇に置いていたガウンを羽織ると寝室を出て行く。
そして、気持ちを切り替えるためにお風呂に入る。
熱いお湯を頭から浴び、石鹸で洗い流せば気持ちのモヤモヤも流れるような気がしたからだ。
お風呂が終わると身支度を終わらせる。本来なら侍女が最初から最後までしていたが、全てを断っていた。「気持ちを高めたい」からと、もっともらしい理由をつけていたが、ただ単に煩わしいからだ。気持ちも勿論あるが、それ以上に自分の世話をされるのが嫌だからだ。
洗顔した顔に化粧水等を振りかけ、髪を乾かしていく。
全てが終わると、着ていた寝屋着を再び脱いでいく。そして、白い箱の蓋を持ち上げる。
この箱は皇帝がこの日の為に用意した「衣装」だ。
動きやすさを求めて皇帝に用意させた。
確かに動きやすさ重視に間違いないこの服は、よく目にしていた服だ。
白いシャツに白いズボン、黒い長靴、繊細な白いレースのクラバットに、赤い薔薇が彫られたカメオのクラバットリング。
そして、赤い上着は知っている形だった。
それは近衛兵の騎士服だった。それも式典等に着用する、多少の豪奢さがある物だ。
赤い騎士服を着用しているのはごく一部の騎士だけだ。
女性だけで構成された騎士で、主に女性貴族の護衛を目的としている騎士だ。夜神も何度か目にしている。
騎士服は男性の近衛兵と同じだが、色が違う。白を主にした男性と、赤を主にした女性。
体の線を拾い上げる為か、タイトに作られているのも特徴だ。
最初に見た時には、どこまで私を追い詰めたいのかっ!と、憤っていたが諦めた。
いちいち、反応していたら身が持たない。諦めることを覚えた方がダメージも少ないと学習した。
上着以外は、有り難く着用させてもらい、上着は肩から掛けるだけに留めようと思った。
流石に袖を通すのは躊躇った。騎士とはある意味軍人のようなもの。
同じ職種(この言い方で合っているのか分からないが)の者としての躊躇いがあったからだ。
ソファに座り、隣に上着を置くと背中を背もたれに預ける。
後は時間になるまで、心を落ち着かせる為に瞑想でもするつもりだ。
けど、不思議と落ち着いている。
モニター越しに宣戦布告されてから、上層部に隔離され、再び軍に戻り残りの日数を過ごしていた時も落ち着いていたと思っていた。
けど、その時以上に落ち着いている。きっと、あの時は未来の見えない自分がいたからかもしれない。
でも、これは違う。もう、未来は見えている。散々、悩んで自分で決めたから覚悟も違う。
「助けると決めたから・・・・・」
そう、「助ける」と決めたから・・・・・・
消えそうな、けど、意志の強さはある声で夜神は呟いて、赤い目を閉じた。
「待っていたよ、凪ちゃん。?なんで上着は肩に掛けてるの?まぁ、似合っているからいいけどね」
侍女長の後ろから現れた夜神を見て、ルードヴィッヒは愉悦した笑みをしていた。
今日で白黒つくのが嬉しくて、今日で煩わしい事がなくなり、永遠にこの手に閉じ込めることが出来るから笑った。
夜神と帝國で最初に剣を交えた場所━━━━近衛騎士の鍛錬場で、ルードヴィッヒは愛剣を携えて待っていた。
横には宰相であるローレンツと、夜神をこの世界に連れてくる時に使用した鳥籠。
その鳥籠には髭を剃り、風呂に入り、清潔な服を着た庵が閉じ込められていた。
その庵も、夜神が来るまではルードヴィッヒをなるべく見ないよう顔を背けていたが、夜神が現れた途端、そちらだけを凝視する。
「凪さん・・・・・・」
夜神の姿を見てボソッと呟いて、鳥籠の牢を掴む。逃げられないと分かっているせいか、体の拘束はなく、ただ、閉じ込められているだけの状態だ。
「はっはは・・・・そこで凪ちゃんが負ける姿を指をくわえて見ていればいい。そして、己の弱さを思い知れ!王弟の末裔よ」
ルードヴィッヒの楽しそうな声が庵の頭上からする。
「くぅ・・・・・・」
指をくわえて見るのも、己が弱いのも全部本当なだけにぐうの音も出ない。けど・・・・・
「凪さんは負けたりしない。皇帝に勝つ。絶対に勝つ!」
「威勢だけは一人前だな・・・・・まぁ、いい。ローレンツ!後は任せたよ。私は最後の我儘に付き合うからね?」
庵を侮蔑的な眼差しで蔑み、見下ろしていたが、表情が一変で変わる。
強者で余裕のある顔に戻り、ローレンツを見る。
「はい。心ゆくまで白いお嬢さんの我儘に付き合って下さい。出来れば我儘はこれで最後だと教えて下さい。準備するのも大変ですからね・・・・」
やれやれ・・・・・そんな感じで話しをするローレンツに、笑ってルードヴィッヒは答えた。
「準備は本当にありがとう。勿論、しっかりと教え込むよ?我儘はこれで最後だとね?」
再び庵を見て仄暗い瞳で笑うと、マントを翻して歩きだす。
目的は夜神を最高の舞台まで案内して、互いに剣を握り、戦う為・・・・・
そして、完膚無きまでに叩き潰し、心をへし折り、二度と飛べなくする為に・・・・
「さぁ、最後の我儘だ。思う存分にやり合おうじゃないか・・・・・」
そして、私の腕に閉じ込められて、絶望し、狂ったように泣き叫び、後悔するがいい・・・・・
己の巻いた種は己で刈り取れよ?
カーテンから差し込む光を見て、夜神はベッドから体を起こす。
決戦前夜の士気を高めたいのか、この日を過ぎたら一生、隣には居続けると知っているからか、今日だけは一緒に眠ることはなかった。
「別々で」と言っていた時の皇帝の顔は、本当に楽しそうで愉悦していた。
目を細め、唇は上を向き、声は弾んでいた。
けど、それでも構わなかった。ある意味、最高のコンディションで望めるのなら。
女性主人を意識した部屋は、全体的に優しさと威厳の雰囲気がある。
けど、この寝室は豪奢でありながら優しい雰囲気であり、先程まで眠っていたベッドは、あの忌々しい部屋のベッドよりは一回り小さいが、それでも十分な大きさがある。
フリルのシーツカバーや、桜色がアクセントのベッドライナーなど女性を意識している。
隣に不快な存在がいないだけで、こんなにも気持ちの良い朝を迎えたのは本当にありがたい。
夜神は起き上がるとベッド脇に置いていたガウンを羽織ると寝室を出て行く。
そして、気持ちを切り替えるためにお風呂に入る。
熱いお湯を頭から浴び、石鹸で洗い流せば気持ちのモヤモヤも流れるような気がしたからだ。
お風呂が終わると身支度を終わらせる。本来なら侍女が最初から最後までしていたが、全てを断っていた。「気持ちを高めたい」からと、もっともらしい理由をつけていたが、ただ単に煩わしいからだ。気持ちも勿論あるが、それ以上に自分の世話をされるのが嫌だからだ。
洗顔した顔に化粧水等を振りかけ、髪を乾かしていく。
全てが終わると、着ていた寝屋着を再び脱いでいく。そして、白い箱の蓋を持ち上げる。
この箱は皇帝がこの日の為に用意した「衣装」だ。
動きやすさを求めて皇帝に用意させた。
確かに動きやすさ重視に間違いないこの服は、よく目にしていた服だ。
白いシャツに白いズボン、黒い長靴、繊細な白いレースのクラバットに、赤い薔薇が彫られたカメオのクラバットリング。
そして、赤い上着は知っている形だった。
それは近衛兵の騎士服だった。それも式典等に着用する、多少の豪奢さがある物だ。
赤い騎士服を着用しているのはごく一部の騎士だけだ。
女性だけで構成された騎士で、主に女性貴族の護衛を目的としている騎士だ。夜神も何度か目にしている。
騎士服は男性の近衛兵と同じだが、色が違う。白を主にした男性と、赤を主にした女性。
体の線を拾い上げる為か、タイトに作られているのも特徴だ。
最初に見た時には、どこまで私を追い詰めたいのかっ!と、憤っていたが諦めた。
いちいち、反応していたら身が持たない。諦めることを覚えた方がダメージも少ないと学習した。
上着以外は、有り難く着用させてもらい、上着は肩から掛けるだけに留めようと思った。
流石に袖を通すのは躊躇った。騎士とはある意味軍人のようなもの。
同じ職種(この言い方で合っているのか分からないが)の者としての躊躇いがあったからだ。
ソファに座り、隣に上着を置くと背中を背もたれに預ける。
後は時間になるまで、心を落ち着かせる為に瞑想でもするつもりだ。
けど、不思議と落ち着いている。
モニター越しに宣戦布告されてから、上層部に隔離され、再び軍に戻り残りの日数を過ごしていた時も落ち着いていたと思っていた。
けど、その時以上に落ち着いている。きっと、あの時は未来の見えない自分がいたからかもしれない。
でも、これは違う。もう、未来は見えている。散々、悩んで自分で決めたから覚悟も違う。
「助けると決めたから・・・・・」
そう、「助ける」と決めたから・・・・・・
消えそうな、けど、意志の強さはある声で夜神は呟いて、赤い目を閉じた。
「待っていたよ、凪ちゃん。?なんで上着は肩に掛けてるの?まぁ、似合っているからいいけどね」
侍女長の後ろから現れた夜神を見て、ルードヴィッヒは愉悦した笑みをしていた。
今日で白黒つくのが嬉しくて、今日で煩わしい事がなくなり、永遠にこの手に閉じ込めることが出来るから笑った。
夜神と帝國で最初に剣を交えた場所━━━━近衛騎士の鍛錬場で、ルードヴィッヒは愛剣を携えて待っていた。
横には宰相であるローレンツと、夜神をこの世界に連れてくる時に使用した鳥籠。
その鳥籠には髭を剃り、風呂に入り、清潔な服を着た庵が閉じ込められていた。
その庵も、夜神が来るまではルードヴィッヒをなるべく見ないよう顔を背けていたが、夜神が現れた途端、そちらだけを凝視する。
「凪さん・・・・・・」
夜神の姿を見てボソッと呟いて、鳥籠の牢を掴む。逃げられないと分かっているせいか、体の拘束はなく、ただ、閉じ込められているだけの状態だ。
「はっはは・・・・そこで凪ちゃんが負ける姿を指をくわえて見ていればいい。そして、己の弱さを思い知れ!王弟の末裔よ」
ルードヴィッヒの楽しそうな声が庵の頭上からする。
「くぅ・・・・・・」
指をくわえて見るのも、己が弱いのも全部本当なだけにぐうの音も出ない。けど・・・・・
「凪さんは負けたりしない。皇帝に勝つ。絶対に勝つ!」
「威勢だけは一人前だな・・・・・まぁ、いい。ローレンツ!後は任せたよ。私は最後の我儘に付き合うからね?」
庵を侮蔑的な眼差しで蔑み、見下ろしていたが、表情が一変で変わる。
強者で余裕のある顔に戻り、ローレンツを見る。
「はい。心ゆくまで白いお嬢さんの我儘に付き合って下さい。出来れば我儘はこれで最後だと教えて下さい。準備するのも大変ですからね・・・・」
やれやれ・・・・・そんな感じで話しをするローレンツに、笑ってルードヴィッヒは答えた。
「準備は本当にありがとう。勿論、しっかりと教え込むよ?我儘はこれで最後だとね?」
再び庵を見て仄暗い瞳で笑うと、マントを翻して歩きだす。
目的は夜神を最高の舞台まで案内して、互いに剣を握り、戦う為・・・・・
そして、完膚無きまでに叩き潰し、心をへし折り、二度と飛べなくする為に・・・・
「さぁ、最後の我儘だ。思う存分にやり合おうじゃないか・・・・・」
そして、私の腕に閉じ込められて、絶望し、狂ったように泣き叫び、後悔するがいい・・・・・
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