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再び剣と刀が激突する。顔の近くで構えていた皇帝は突きを繰り出す。同じく顔の近くで構えていた夜神は、皇帝からの突きを弾き返し、手首を返して下からの袈裟斬りをする。
片手で突いた剣を弾かれてしまったが、直ぐに両手持ちに変えると、弾かられた状態からルードヴィッヒは水平に斬り込む。
けど、予測していたのか分からないが、下からの袈裟斬りの時に体を一旦、しゃがみ込ませ反動を利用して夜神は攻撃していた。
しゃがみ込んだ時と、剣の水平斬りが合わさり結果、夜神は無傷でいた。
「ちっっ!!」
刀の切っ先が剣を持つ皇帝の手首を斬り込む。だが、剣を持てないような致命傷にはならなかった。
互いが力を惜しむことなく、この激しい攻防戦を繰り広げる。
ガキィィ!!ガキィィィィィィ!!と、金属のぶつかる音や、二人の息遣い、地面を蹴りつける音や、踏み締める音、そして・・・・・・
「いい加減、諦めたらどうだ?」
「寝言をほざくなっ!!」
二人の言葉が、見ている者たちに伝わる。
「凪さん・・・・・・・」
庵は黙って見守る事だけしか出来なかった。鳥籠の鉄格子を掴み、顔を限界まで押し付けて、二人の命の殺り取りを見ることしか出来なかった。
あんなに傷ついて、あんなに辛そうなのに、元の世界に帰るために必死になっている。
あの時も同じでしたよね?大佐が帝國に初めて連れ去られた時も同じように、俺を庇って傷付いて、逃がしてくれましたよね?
あの時に、自分の無力を嘆きました。もっと、もっと力が欲しい。
大切な人を守れる力が欲しい。愛する人を悲しませない力が欲しいと・・・・・
そして、「ご先祖様の宝物」と言って、大切にしていた物の存在を思い出し、探し出した。
子供の時に見せてもらった時は、分からなくて祖父に聞いても「ご先祖様は外国人だったなのかな?」と言っていた。
けど、改めて見ると軍大学で学んでいた語学がそっくりそのまま使われていた。
吸血鬼達が公用語としている語学と一緒だった。背中が寒くなった。けど、何かのヒントになるのではと読み漁った。昔過ぎて解読に時間がかかり、その間に凪さんは皇帝に再び帝國に連れて行かれてしまった。
それを阻止したかったから、残された結晶化した「血の塊」の使用方法を解読して、使いこなした。
結果は惨敗だった。解読に時間がかかり、使いこなすことも出来ず、ただの時間稼ぎしか出来なかった。
己の無力を呪った。そして、戦いの場で皇帝に言われた、文献の解読を最後まで出来なかったことを嘆いた。
出来ていたらきっと違ったのかもしれない。だから、初めに解読を最後までした。
読んでいて悲しくなって、辛くなっていた。
自分の先祖の生い立ちが・・・・・・
そして、自分の体に流れる「血」が・・・・・・
そして、度々書かれていた「ルルワ」と言われる人物が、よく知っている人に似ていることも・・・・・・
けど、黙って何もなかったかのように生きていくのも辛くて、藤堂元帥や長谷部室長と色々と話をした。
あれで良かったのかと悩む事は今でもある。けど、居ても立っても居られくてな実行した。
沢山の人の手を、力を、権限を使った。
そして、出会えたのに、やっとの思いで出会えたのに・・・・・・そこにいたのは凪さんなのに、凪さんではなかった。
吸血鬼に無理やり作り変えられた凪さんだった。
けど、凪さんに変わりはなくて、けど、吸血鬼で・・・・・・頭の中がグシャグシャになった。鈍器で殴られたような痛みがあった。現実逃避したくなった。
けど、やっぱり凪さんで・・・・・・・凪さんだから・・・・・・・愛した人だから
けど、己の無力さを再び呪った。皇帝に「力」で挑んだが負けてしまい呆気なく捕まった。
凪さんも大怪我を負った。そして、文献に書いてあった以外の事を、自分達三人の先祖と、その生い立ち、生き方、最後と、絡まった糸がほぐされていくように解決していった。
出会ったばかりに運命の歯車が少しずつ動き出したのかは分からない。
けど、様々な要素が点と点であった。そして、その点と点が繋がり線になる。
線になったその先は、果たして何が待ち受けているのか分からない。
その出会いは運命だったのか?それとも宿命だったのか?そして、皇帝と凪さんの出会いもだ。皇帝との執着的な運命も宿命の一つだったのか?
分かっているのは血の記憶だけだ。その記憶を蘇らせるのは誰の体に流れている血なのか・・・・・
庵は奥歯を噛み締めた。歯が砕けるほどの力を入れて噛み締めた。
運命だろうが、宿命だろうが関係ない。今はこの局面をどう、乗り切るのかだ。
自分の全ての力を使っても乗り越えなくては・・・・
庵は静かに、傷つきながらも、運命なのか宿命なのか分からないモノに翻弄されながらも、抗い続ける夜神を見守った。
覚悟を決めたせいか、全ての動きがより鮮明に見える。
気持ちがいいほど、本当に気持ちがいいほど鮮明にだ。そして、刀が澌尽灰滅が庵君以外に力を貸してくれた。そして、その力は私と相性が良いらしい。蒼月や紅月と同じくらい、それ以上に力がみなぎる。
まるで、初めから力を貸す前提で与えられたような・・・・・不思議な感覚がする。
それは、私が吸血鬼になったせいかは分からないけど。
皇帝の繰り広げられる剣撃をかわし、払い、時として反撃する。
よく、剣撃を「雷」の文字を使って表現される。雷光、紫電一閃、雷霆の如く振り下ろすなど・・・・・
まさに、皇帝と夜神の間では激しい雷が降り注いでいた。
触れると、一瞬で命を落とす程の雷が・・・・・
だか、その雷も徐々に激しさが落ち着いてくる。最初は優位だった夜神だったが、皇帝の前ではその優位もただの気まぐれだったのかもしれない。
肩の傷を筆頭に、小さな傷が徐々に増えてくる。息も乱れ始めた。誰が見ても「限界」が来ていると分る。
反対に皇帝も息は乱れているが、夜神ほどではない。傷も太腿の傷以外はほぼない。
誰が見ても、優位で勝者になる事は間違い無い。
ガキィィィィィィ!!
刀と剣が混じり合う。優位を確証しているのが分る金色の瞳が、静かな湖畔の中に必死さを押し隠す赤い瞳を見下ろす。
「楽しかったよ?凪ちゃん。けど、もう、おしまい。これで終わりだよ」
「っぅぅ・・・・・・・」
鍔迫り合いだったが、皇帝が力を出して夜神を押し倒すように、腕に力を込めて押し出す。
足腰に限界が来始めてきた夜神は、それを踏ん張れる事は出来なくて倒れて、尻餅をついてしまう。
「しまっ・・・・・」「終わりだよ?」
絶望が過る。命の終わりではない。未来の見えない絶望の始まりに慄く。
皇帝の白刃が光を反射して輝き、振り下ろされる。
悦楽の顔をしたルードヴィッヒは全てを確信して、夜神を傷つけないように、けど、ある意味心には傷を残すように剣を振り下ろした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やっと、庵青年出てきました。そして、話の「あらすじ」で使用されている言葉を引用しつつ思ったことを述べてました。
「血の記憶」や「運命・宿命」など、オタク心をくすぐるパワーワード満載でお送りしてます。
そして、とうとう、決着がつきそうです。
片手で突いた剣を弾かれてしまったが、直ぐに両手持ちに変えると、弾かられた状態からルードヴィッヒは水平に斬り込む。
けど、予測していたのか分からないが、下からの袈裟斬りの時に体を一旦、しゃがみ込ませ反動を利用して夜神は攻撃していた。
しゃがみ込んだ時と、剣の水平斬りが合わさり結果、夜神は無傷でいた。
「ちっっ!!」
刀の切っ先が剣を持つ皇帝の手首を斬り込む。だが、剣を持てないような致命傷にはならなかった。
互いが力を惜しむことなく、この激しい攻防戦を繰り広げる。
ガキィィ!!ガキィィィィィィ!!と、金属のぶつかる音や、二人の息遣い、地面を蹴りつける音や、踏み締める音、そして・・・・・・
「いい加減、諦めたらどうだ?」
「寝言をほざくなっ!!」
二人の言葉が、見ている者たちに伝わる。
「凪さん・・・・・・・」
庵は黙って見守る事だけしか出来なかった。鳥籠の鉄格子を掴み、顔を限界まで押し付けて、二人の命の殺り取りを見ることしか出来なかった。
あんなに傷ついて、あんなに辛そうなのに、元の世界に帰るために必死になっている。
あの時も同じでしたよね?大佐が帝國に初めて連れ去られた時も同じように、俺を庇って傷付いて、逃がしてくれましたよね?
あの時に、自分の無力を嘆きました。もっと、もっと力が欲しい。
大切な人を守れる力が欲しい。愛する人を悲しませない力が欲しいと・・・・・
そして、「ご先祖様の宝物」と言って、大切にしていた物の存在を思い出し、探し出した。
子供の時に見せてもらった時は、分からなくて祖父に聞いても「ご先祖様は外国人だったなのかな?」と言っていた。
けど、改めて見ると軍大学で学んでいた語学がそっくりそのまま使われていた。
吸血鬼達が公用語としている語学と一緒だった。背中が寒くなった。けど、何かのヒントになるのではと読み漁った。昔過ぎて解読に時間がかかり、その間に凪さんは皇帝に再び帝國に連れて行かれてしまった。
それを阻止したかったから、残された結晶化した「血の塊」の使用方法を解読して、使いこなした。
結果は惨敗だった。解読に時間がかかり、使いこなすことも出来ず、ただの時間稼ぎしか出来なかった。
己の無力を呪った。そして、戦いの場で皇帝に言われた、文献の解読を最後まで出来なかったことを嘆いた。
出来ていたらきっと違ったのかもしれない。だから、初めに解読を最後までした。
読んでいて悲しくなって、辛くなっていた。
自分の先祖の生い立ちが・・・・・・
そして、自分の体に流れる「血」が・・・・・・
そして、度々書かれていた「ルルワ」と言われる人物が、よく知っている人に似ていることも・・・・・・
けど、黙って何もなかったかのように生きていくのも辛くて、藤堂元帥や長谷部室長と色々と話をした。
あれで良かったのかと悩む事は今でもある。けど、居ても立っても居られくてな実行した。
沢山の人の手を、力を、権限を使った。
そして、出会えたのに、やっとの思いで出会えたのに・・・・・・そこにいたのは凪さんなのに、凪さんではなかった。
吸血鬼に無理やり作り変えられた凪さんだった。
けど、凪さんに変わりはなくて、けど、吸血鬼で・・・・・・頭の中がグシャグシャになった。鈍器で殴られたような痛みがあった。現実逃避したくなった。
けど、やっぱり凪さんで・・・・・・・凪さんだから・・・・・・・愛した人だから
けど、己の無力さを再び呪った。皇帝に「力」で挑んだが負けてしまい呆気なく捕まった。
凪さんも大怪我を負った。そして、文献に書いてあった以外の事を、自分達三人の先祖と、その生い立ち、生き方、最後と、絡まった糸がほぐされていくように解決していった。
出会ったばかりに運命の歯車が少しずつ動き出したのかは分からない。
けど、様々な要素が点と点であった。そして、その点と点が繋がり線になる。
線になったその先は、果たして何が待ち受けているのか分からない。
その出会いは運命だったのか?それとも宿命だったのか?そして、皇帝と凪さんの出会いもだ。皇帝との執着的な運命も宿命の一つだったのか?
分かっているのは血の記憶だけだ。その記憶を蘇らせるのは誰の体に流れている血なのか・・・・・
庵は奥歯を噛み締めた。歯が砕けるほどの力を入れて噛み締めた。
運命だろうが、宿命だろうが関係ない。今はこの局面をどう、乗り切るのかだ。
自分の全ての力を使っても乗り越えなくては・・・・
庵は静かに、傷つきながらも、運命なのか宿命なのか分からないモノに翻弄されながらも、抗い続ける夜神を見守った。
覚悟を決めたせいか、全ての動きがより鮮明に見える。
気持ちがいいほど、本当に気持ちがいいほど鮮明にだ。そして、刀が澌尽灰滅が庵君以外に力を貸してくれた。そして、その力は私と相性が良いらしい。蒼月や紅月と同じくらい、それ以上に力がみなぎる。
まるで、初めから力を貸す前提で与えられたような・・・・・不思議な感覚がする。
それは、私が吸血鬼になったせいかは分からないけど。
皇帝の繰り広げられる剣撃をかわし、払い、時として反撃する。
よく、剣撃を「雷」の文字を使って表現される。雷光、紫電一閃、雷霆の如く振り下ろすなど・・・・・
まさに、皇帝と夜神の間では激しい雷が降り注いでいた。
触れると、一瞬で命を落とす程の雷が・・・・・
だか、その雷も徐々に激しさが落ち着いてくる。最初は優位だった夜神だったが、皇帝の前ではその優位もただの気まぐれだったのかもしれない。
肩の傷を筆頭に、小さな傷が徐々に増えてくる。息も乱れ始めた。誰が見ても「限界」が来ていると分る。
反対に皇帝も息は乱れているが、夜神ほどではない。傷も太腿の傷以外はほぼない。
誰が見ても、優位で勝者になる事は間違い無い。
ガキィィィィィィ!!
刀と剣が混じり合う。優位を確証しているのが分る金色の瞳が、静かな湖畔の中に必死さを押し隠す赤い瞳を見下ろす。
「楽しかったよ?凪ちゃん。けど、もう、おしまい。これで終わりだよ」
「っぅぅ・・・・・・・」
鍔迫り合いだったが、皇帝が力を出して夜神を押し倒すように、腕に力を込めて押し出す。
足腰に限界が来始めてきた夜神は、それを踏ん張れる事は出来なくて倒れて、尻餅をついてしまう。
「しまっ・・・・・」「終わりだよ?」
絶望が過る。命の終わりではない。未来の見えない絶望の始まりに慄く。
皇帝の白刃が光を反射して輝き、振り下ろされる。
悦楽の顔をしたルードヴィッヒは全てを確信して、夜神を傷つけないように、けど、ある意味心には傷を残すように剣を振り下ろした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やっと、庵青年出てきました。そして、話の「あらすじ」で使用されている言葉を引用しつつ思ったことを述べてました。
「血の記憶」や「運命・宿命」など、オタク心をくすぐるパワーワード満載でお送りしてます。
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