【R18】牝騎士は仇敵に抱かれる夢を見るか ――誇り高き誓いが、快楽に溺れて蕩ける夜

いろは杏⛄️

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堕としの序章 前編

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 空気が、妙に甘ったるい。

 ――熱い。

 意識の淵から這い上がるように、ラグリナはゆっくりと瞼を開けた。

 そこは、昨夜と同じ地下牢。黒石の壁、魔力封鎖の刻印、天井から吊るされた鎖。そして――全身を包む、じっとりとした汗。

(また、香り……あの毒のせい……?)

 薄く揺れる紫煙の残り香が、彼女の鼻腔をくすぐる。微細でありながら、嗅ぎ続けるだけで身体の奥が火照ってくるような奇妙な感覚。

 両腕は鎖に吊られ、拘束衣の胸元は汗で濡れ、肌にぴたりと張り付いていた。

 ゆっくりと胸を上下させるだけで、布越しに乳房の尖りが擦れ――

「あっ……」

 自分でも、予想していなかった。喉の奥から、微かな吐息が漏れたのだ。

 反射的に唇を噛む。

 その小さな声が、まるで誰かに聞かれたかのような羞恥を連れてきた。

(違う……これは、身体の反応。私は……感じてなど……)

 そう、言い聞かせたかった。だが、事実として感じてしまっていることは、肌が正直に教えてくる。

 胸の先端は硬く、布地の擦過で疼くような甘い刺激が波紋のように広がっている。脚の付け根も妙に火照っており、拘束されたまま動かせぬ太腿の奥が、じんわりと濡れているのが分かる。

 冷たくあるはずの石床に、熱い身体が晒されている。なのに、凍えるどころか、汗ばむ肌がますます自らを追い詰めていく。

(動くたび、擦れる……擦れるたび、意識が……)

 ラグリナは無意識に腰をずらそうとした。

 その瞬間――股布が、やや強めに秘部を押し当ててきた。

「っく……!」

 硬い鉄鎖がカチャリと鳴る。

 乳房も張ってきた。鎖骨のあたりに滲む汗が胸の谷間へと流れ、ちろちろと伝い落ちていく。その軌跡が布の下で敏感になった乳首に触れたのか、ビクリと跳ねるように震えが走る。

 知らず、脚を引き寄せようとしてしまったが、鉄枷がそれを許さない。

(こんな……こんなものに……負けてたまるか)

 精神は抵抗している。怒りもある。屈辱もある。

 だが、肉体だけが――違う反応を見せている。理性と感覚が、まったく別の方向へ進んでいく。

 まるで他人の身体になってしまったかのように。

「ザイグル……っ、こんな細工……!」

 叫ぼうとした声も、途中で喉が詰まり、囁きのようにかすれてしまった。

 熱い。熱いのだ。顔ではなく、胸でもなく、腹でもなく――脚の奥の、女の部分が、まるで求めるように疼いていた。

(誰にも……触れられていないのに……どうして……?)

 ラグリナの心は揺れていた。

 快楽ではなく、反発のために叫びたかったはずなのに。羞恥を誇りで押し潰すつもりだったのに。なのにその声すら、上手く出せないほど、自分の身体は今――熱にやられていた。

 まるで、期待しているように。

 何かが、来るのを。

     * * *

 視界が――揺れた。

 まぶたの裏が、淡い光で満たされていく。霧のように、夢のように。

 鎖に吊られた肉体は現実にあって、だが意識だけが、どこか異なる場所へ引きずられていく。

 音が変わった。あの、冷たい牢の静寂ではない。懐かしい、暖かな、音。

 ――高貴なる城の回廊。絹をすべるような足音。灯りの香油の匂い。王家の象徴が織られた天蓋付きの寝台。

 ラグリナはその中にいた。

 身体は横たわり、銀糸の薄衣をまとっている。夢の中の彼女には、鎖も拘束もない。ただ、熱に浮かされるように柔らかな寝台に沈んでいる。

 そこに、ふわりと姿を現す一人の女性。

「……おやすみなさい、ラグリナ」

 それは――フェンリル王国最後の王女。かつての主君。
 その笑みは、記憶にある優雅さそのままで、けれど何かが決定的に違っていた。

 その手が、ラグリナの額に触れた瞬間からだ。違和が波紋のように広がっていく。

「あなた、頑張りすぎなのよ。身体が……こんなに熱くなってる」

「お、おうじょ、さま……? な、なぜ……」

 問いかける唇は乾いて震えた。王女の指先が頬から耳元をなぞり、鎖骨へとすべり落ちる。

「わたくしね、ずっと見てたの。あなたが剣を振るう姿、誰より誇り高くて、美しくて」

 その手が、薄衣の胸元をするりと剥いだ。

 あらわになった乳房。張りと丸みを帯びたそれは、汗ばみ、薄く上気していた。夢の中のラグリナには羞恥も抗う意志もあるはずだったのに、腕は動かない。口も上手く開かない。

「だめ……それは……っ」

「大丈夫。わたくしが気持ちよくしてあげる。誓いも、義務も、全部忘れて――ただ、女の子として、受け入れて?」

 王女の唇が、そっと乳首に触れた。最初は優しく吸い上げるように、次に舌先で転がすように。

「やぁ……っ、あ、んっ……!」

 声が、出た。

 夢だ。これは夢だと、分かっているのに。

 柔らかい唇。生温かい舌。まるでずっと憧れていた誰かに抱きしめられているような、安心と背徳が入り混じった感覚。

(違う……これは、偽物……王女様が、こんなことをするはずが……!)

 だが――快感は本物だった。

 腰の奥が疼き、脚の付け根が熱を持ち、全身が触れられることに溶かされていく。

 王女の手が腹部を這い、下腹を優しく押さえた。指が布越しに、秘部へ触れようとした瞬間――

「やめ、やめて……っ!」

 叫ぼうとしたが、口が震えただけだった。

 夢の中の王女は、目を細めて微笑む。

「あなたは、悦んでいいの。わたくしが許すから」

 その言葉とともに、下着の布がゆっくりと引き下ろされる。

 露わになった秘所。汗と体液で濡れそぼったそこへ、王女の指先が触れる。撫でる。なぞる。広げる。

「あぁっ……あ、ああ……っ!」

 脳髄の奥が震える。

 もう、誤魔化せない。感じている。心とは裏腹に、身体が、指を求めている。

 夢の中で、ラグリナは完全に受け身の女にされていた。

 敬愛していた主君の手で、誇りと快楽を引き裂かれて。

 そのとき――現実の彼女の身体も、微かに震えていた。

 太腿をわずかに擦り寄せ、無意識のうちに秘所に熱を集め、浅く腰を揺らしている。

 現実の世界では、誰も触れていない。

 だが、ラグリナは夢の中で――確かに、触れられていた。
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