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第三章
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今朝から昔みたいに、三人で一緒に登校する。
約束の場所である公園に行くと、丈一はもう待っていた。
「おはよう」
なんだか恥ずかしくて、はにかんでしまった私に、丈一は微笑んでくれる。
「おはよう。直人はまだみたいだ」
早朝の街は静かで、歩いている人もいない。
まるで世界にふたりきりになったみたいで、私はドキドキしてしまう。
「丈一が探偵団に参加するなんて、思わなかった」
「どうして?」
「なんか、子どもっぽいって言いそうだったから」
丈一はちょっと困った様子で、苦笑いをする。
「俺だけ先に、大人にならなきゃいけないわけ?」
「そういうわけじゃないけど」
「俺は何も変わってないし、変わるつもりもない」
「丈一の言いたいことはわかるよ。でも甲正学園に行くなら、やっぱり私とは住む世界が違うって言うか」
なんの疑問も持たず、地元の中学に進学する私と、将来を見据えている丈一。
私の受け取り方の問題かもしれないけど、どうしても遠く感じてしまう。
「真琴が反対なら、行かなくてもいい」
あんまり驚いてしまって、私は声が出なかった。
冗談、なのだろうか?
毎日何時間も、遊ぶ暇もなく勉強しているのに、受験しないだなんて。
「どういう、意味?」
「そのままの意味だよ。甲正学園は俺の希望って言うより、母さんの希望だし」
「でも、丈一はあんなに頑張ってるじゃない」
私の言葉に丈一は寂しく笑った。
その笑顔が切なくて、悲しくて、私はどう声を掛けたらいいかわからない。
「待たせたな!」
気まずい沈黙を破ったのは、直人の底抜けに明るい声だった。
私はどこかホッとして、直人に笑いかける。
「おはよう」
「うっす。丈一に昨日の話、しといてくれた?」
「え、あ、まだ」
すっかり忘れてた。
丈一があんなことを言い出すから……。
「んだよ、使えねーな」
直人は大げさにため息をつき、歩きながら昨日の出来事を手短に話す。
「弘樹が嘘をついている、ってことはないのか?」
話を聞いた丈一は、最初にそう言った。
疑うのはわからなくもない。私も最初は同じことを思った。
「そうは見えなかったよ。直人は?」
「オレも本当だと思う。まぁ今日サッカーボール調べりゃ、なんかわかるだろ」
「どうやって調べるんだ?」
丈一に聞かれた直人は、目を泳がせしどろもどろになる。
「それは、その、観察?」
直人が自信なさげに私を見るが、私だってどう調べればいいかなんてわからない。
私たちの様子を見ていた丈一は、何か心に決めたみたいに言った。
「俺も一緒に調べさせてくれ」
「え、塾があるんじゃないの?」
「今日はサボる」
丈一が即答したので、私も直人もびっくりして、目をぱちぱちとさせた。
「マジで?」「いいの?」
「よくはないけど、自分の目で確かめたいんだ」
優等生で、真面目を絵に描いたような丈一が、サボるなんて。
そんなにもこの事故のことが、気になるのだろうか。
「無理しなくても、私たちだけでなんとかするよ?」
「おぅ。調べる方法あるんだったら、教えてくれれば」
しかし丈一の決心は固いようだった。
まっすぐ前を向き、思い詰めた様子で口を開く。
「……実はあの事故から、母さんの様子がおかしいんだ」
「体調崩してる、って話?」
丈一は首を左右に振り、うつむいたまま言った。
「それだけじゃない。神経質になって、まるで何かに怯えてるみたいなんだ」
「丈一の受験のことで、ナーバスになってんじゃねーの」
「最初はそう思ったけど、多分違う。あの事故には、きっと裏がある」
難しい表情をする丈一には、私とは違うものが見えているのだろうか。
わからないけど、丈一がそこまで言うなら、本当に本気で調べてみなければならない気がした。
約束の場所である公園に行くと、丈一はもう待っていた。
「おはよう」
なんだか恥ずかしくて、はにかんでしまった私に、丈一は微笑んでくれる。
「おはよう。直人はまだみたいだ」
早朝の街は静かで、歩いている人もいない。
まるで世界にふたりきりになったみたいで、私はドキドキしてしまう。
「丈一が探偵団に参加するなんて、思わなかった」
「どうして?」
「なんか、子どもっぽいって言いそうだったから」
丈一はちょっと困った様子で、苦笑いをする。
「俺だけ先に、大人にならなきゃいけないわけ?」
「そういうわけじゃないけど」
「俺は何も変わってないし、変わるつもりもない」
「丈一の言いたいことはわかるよ。でも甲正学園に行くなら、やっぱり私とは住む世界が違うって言うか」
なんの疑問も持たず、地元の中学に進学する私と、将来を見据えている丈一。
私の受け取り方の問題かもしれないけど、どうしても遠く感じてしまう。
「真琴が反対なら、行かなくてもいい」
あんまり驚いてしまって、私は声が出なかった。
冗談、なのだろうか?
毎日何時間も、遊ぶ暇もなく勉強しているのに、受験しないだなんて。
「どういう、意味?」
「そのままの意味だよ。甲正学園は俺の希望って言うより、母さんの希望だし」
「でも、丈一はあんなに頑張ってるじゃない」
私の言葉に丈一は寂しく笑った。
その笑顔が切なくて、悲しくて、私はどう声を掛けたらいいかわからない。
「待たせたな!」
気まずい沈黙を破ったのは、直人の底抜けに明るい声だった。
私はどこかホッとして、直人に笑いかける。
「おはよう」
「うっす。丈一に昨日の話、しといてくれた?」
「え、あ、まだ」
すっかり忘れてた。
丈一があんなことを言い出すから……。
「んだよ、使えねーな」
直人は大げさにため息をつき、歩きながら昨日の出来事を手短に話す。
「弘樹が嘘をついている、ってことはないのか?」
話を聞いた丈一は、最初にそう言った。
疑うのはわからなくもない。私も最初は同じことを思った。
「そうは見えなかったよ。直人は?」
「オレも本当だと思う。まぁ今日サッカーボール調べりゃ、なんかわかるだろ」
「どうやって調べるんだ?」
丈一に聞かれた直人は、目を泳がせしどろもどろになる。
「それは、その、観察?」
直人が自信なさげに私を見るが、私だってどう調べればいいかなんてわからない。
私たちの様子を見ていた丈一は、何か心に決めたみたいに言った。
「俺も一緒に調べさせてくれ」
「え、塾があるんじゃないの?」
「今日はサボる」
丈一が即答したので、私も直人もびっくりして、目をぱちぱちとさせた。
「マジで?」「いいの?」
「よくはないけど、自分の目で確かめたいんだ」
優等生で、真面目を絵に描いたような丈一が、サボるなんて。
そんなにもこの事故のことが、気になるのだろうか。
「無理しなくても、私たちだけでなんとかするよ?」
「おぅ。調べる方法あるんだったら、教えてくれれば」
しかし丈一の決心は固いようだった。
まっすぐ前を向き、思い詰めた様子で口を開く。
「……実はあの事故から、母さんの様子がおかしいんだ」
「体調崩してる、って話?」
丈一は首を左右に振り、うつむいたまま言った。
「それだけじゃない。神経質になって、まるで何かに怯えてるみたいなんだ」
「丈一の受験のことで、ナーバスになってんじゃねーの」
「最初はそう思ったけど、多分違う。あの事故には、きっと裏がある」
難しい表情をする丈一には、私とは違うものが見えているのだろうか。
わからないけど、丈一がそこまで言うなら、本当に本気で調べてみなければならない気がした。
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