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謎の声が伝えてきたその他のルールも、参加者には一方的に不利だった。
自力での脱出を試みてはならない。
自傷行為の禁止。
お互いを傷つけるな。
いくら飢えても糞尿を口にしてはいけない。
共食いもダメ。
カップル成立は一対一のみ。
ただし、恋人を決めるための性交渉は、無制限で行なって構わない。
そして──不成立で省かれた者は、何人でも死ぬ。
わざわざ五人の女性を拉致した挙げ句、恋人同士になれだなんて意味がまるでわからない。ううん、そもそもこんな事をする犯人の気持ちや考えを常人に理解できるはずもないだろう。
「あのう……恋人同士って、なにをどうやって判定するんでしょうか?」
「知らねぇーよ! どうせ抱きあってキスでもしてりゃいいんだろ!」
氷見さんと同じく、判定基準についてわたしも疑問に思っていた。七海が言うように和やかなイメージで決まるのであれば、誰と一緒にカップルになるかだけを単純に決めればいい。
でも、そう簡単に終わってしまうゲームを犯罪を犯してまでするのだろうか? 少なくとも、わたしなら絶対にしない。
「キスして出れるなら、いますぐしてみない? わたしは全然構わないからさ。ね? 誰かしようよ」
黒神イソラのそんな提案に、誰からも賛同する返事はなかった。手っ取り早く結果を知るより、キスの〝やり損〟で終わってしまう可能性が高いと算段したに違いない。もちろん、わたしもするつもりはなかったけど。
「……イソラちゃん、隠しカメラや盗聴器があるのよ? そんなポーズだけの恋人ごっこじゃ、すぐに見破られて出してもらえないんじゃないかしら?」
「あのう、わたしも恭子さんの言うとおりだと思います。いろいろと突然過ぎて頭の中が混乱しちゃってて……そのう、上手く言えませんけど……ごめんなさい」
口癖なのか、氷見さんの誰に向けてのものなのかよくわからない謝罪の言葉を合図に、七海の深いため息が聞こえた。
やがて、ブツブツと独り言を始めたかと思えば、すぐに大声で不満をわめき散らかす。
「ああぁあああああああッ! クソ、クソ、クソッ! なんであたしがこんな目にあわなきゃなんねぇんだよ、おい!!」
壁を蹴るような激しい物音が何度も聞こえる。どうやら壁は床と違ってコンクリートじゃないみたい。
いっそこのまま壁を蹴破ってくれないかと心から願っていると、また一瞬だけ耳鳴りのような音が天井から聞こえ、謎の声がふたたび部屋中に響いた。
『ルール違反だ。ペナルティとして、おまえたち五人のなかで一人を平手打ちにしろ』
「えっ……平手打ちですって?」
「る、ルールでお互いを傷つけちゃダメだって言ってたじゃないですかぁ! こっ、この嘘つきぃぃぃ!」
ペナルティの発動よりも、珍しく氷見さんが声を荒らげて猛抗議しているのが意外だった。もしかして、自分が打たれると思っているのかもしれない。
内向的な性格の彼女は、わたしの偏見だけでいえば学校や職場とかでもいじめられる型だと思う。
そんな彼女だから、今回も自分が処罰の対象になると感じてしまい、ひどく怯えているのだろう。
『これは、おまえたちがルールを破った罰だ。おまえたち五人のなかで一人を平手打ちにしろ。繰り返す、おまえたち五人のなかで一人を平手打ちにしろ。さもなければゲームは中断され、酸素が無くなって窒息死するだけだぞ』
「なっ……クソッ!」
ドカッ!
「ちょっと、やめてよ!」
黒神イソラが戒める。
ドカッ!
直後に続いた七海のひと蹴りを最後に、室内が静まり返る。
と──
『10……9……8……』
カウントダウンが始まった。
自力での脱出を試みてはならない。
自傷行為の禁止。
お互いを傷つけるな。
いくら飢えても糞尿を口にしてはいけない。
共食いもダメ。
カップル成立は一対一のみ。
ただし、恋人を決めるための性交渉は、無制限で行なって構わない。
そして──不成立で省かれた者は、何人でも死ぬ。
わざわざ五人の女性を拉致した挙げ句、恋人同士になれだなんて意味がまるでわからない。ううん、そもそもこんな事をする犯人の気持ちや考えを常人に理解できるはずもないだろう。
「あのう……恋人同士って、なにをどうやって判定するんでしょうか?」
「知らねぇーよ! どうせ抱きあってキスでもしてりゃいいんだろ!」
氷見さんと同じく、判定基準についてわたしも疑問に思っていた。七海が言うように和やかなイメージで決まるのであれば、誰と一緒にカップルになるかだけを単純に決めればいい。
でも、そう簡単に終わってしまうゲームを犯罪を犯してまでするのだろうか? 少なくとも、わたしなら絶対にしない。
「キスして出れるなら、いますぐしてみない? わたしは全然構わないからさ。ね? 誰かしようよ」
黒神イソラのそんな提案に、誰からも賛同する返事はなかった。手っ取り早く結果を知るより、キスの〝やり損〟で終わってしまう可能性が高いと算段したに違いない。もちろん、わたしもするつもりはなかったけど。
「……イソラちゃん、隠しカメラや盗聴器があるのよ? そんなポーズだけの恋人ごっこじゃ、すぐに見破られて出してもらえないんじゃないかしら?」
「あのう、わたしも恭子さんの言うとおりだと思います。いろいろと突然過ぎて頭の中が混乱しちゃってて……そのう、上手く言えませんけど……ごめんなさい」
口癖なのか、氷見さんの誰に向けてのものなのかよくわからない謝罪の言葉を合図に、七海の深いため息が聞こえた。
やがて、ブツブツと独り言を始めたかと思えば、すぐに大声で不満をわめき散らかす。
「ああぁあああああああッ! クソ、クソ、クソッ! なんであたしがこんな目にあわなきゃなんねぇんだよ、おい!!」
壁を蹴るような激しい物音が何度も聞こえる。どうやら壁は床と違ってコンクリートじゃないみたい。
いっそこのまま壁を蹴破ってくれないかと心から願っていると、また一瞬だけ耳鳴りのような音が天井から聞こえ、謎の声がふたたび部屋中に響いた。
『ルール違反だ。ペナルティとして、おまえたち五人のなかで一人を平手打ちにしろ』
「えっ……平手打ちですって?」
「る、ルールでお互いを傷つけちゃダメだって言ってたじゃないですかぁ! こっ、この嘘つきぃぃぃ!」
ペナルティの発動よりも、珍しく氷見さんが声を荒らげて猛抗議しているのが意外だった。もしかして、自分が打たれると思っているのかもしれない。
内向的な性格の彼女は、わたしの偏見だけでいえば学校や職場とかでもいじめられる型だと思う。
そんな彼女だから、今回も自分が処罰の対象になると感じてしまい、ひどく怯えているのだろう。
『これは、おまえたちがルールを破った罰だ。おまえたち五人のなかで一人を平手打ちにしろ。繰り返す、おまえたち五人のなかで一人を平手打ちにしろ。さもなければゲームは中断され、酸素が無くなって窒息死するだけだぞ』
「なっ……クソッ!」
ドカッ!
「ちょっと、やめてよ!」
黒神イソラが戒める。
ドカッ!
直後に続いた七海のひと蹴りを最後に、室内が静まり返る。
と──
『10……9……8……』
カウントダウンが始まった。
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