都会でひとり暮らしを始めたらダークエルフのメイドさんが付いてきたけどなにか質問あります?

黒巻雷鳴

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最終話 メイド・イン・ワンルーム

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 契約の都合上、入れ替えで新しいメイドさんが本日中にやって来るとの連絡を不動産屋さんから受ける。彼女も異世界からの派遣社員らしく、禁止事項もなんら変わりないそうだ。
 だからあたしは、きょうの残業を断り、定時で帰路についていた。一緒にひとつ屋根の下で暮らすんだし、やっぱ気になるよ。

(どんな女性ヒトなんだろ……)

 もう到着しているみたいで、玄関ドアの鍵は開いていた。
 それにこの香り……夕食の準備も終わっているのかな?
 深呼吸をひとつしてから、思いきってドアノブを握る。
 やっぱりもう一回深呼吸をしてから、今度こそドアを開けた。

「た、ただい──」
「お帰りなさいませ、御主人サマ」
「まっ?」

 帰宅したあたしを玄関で出迎えてくれたのは、褐色の肌をした銀髪の美女。ただし、性格はとても無愛想で、身体的ないちばんの特徴を述べるならば、耳の先が長く尖っていることだろう。
 彼女は俗にいうところのダークエルフで、身につけているのはサイズが小さ過ぎる黒地のメイド服と純白のピナフォア。短いスカートから伸びる健康的な太股には、白いガーターベルトで留められたおなじく白の網タイツがぴっちり装着されてもいた。
 なんで使用人がこんな扇情的な装いをしているのか、少なくとも、同性として意味がわからない。ううん、そもそも、元の世界へ帰ったはずの彼女がうちにいること自体が信じられなかった。

「先に夕食になされますか? それとも、お風呂に入りやがりますか?」
「いやいやいや! 先ずはどうしてここにいるのかを説明してよ!」
「……それをきいてどうする?」
「どうするもなにも、頭が混乱してて……って、え? お金が足りなかったの? 利子が増えててダメだったとか?」
「そうではない。単にこの仕事が気に入って戻ってきただけだ」
「気に入って…………たの?」
気になっている・・・・・・・と言ったほうが正しいのかもしれん。おまえを放ってはおけんからな」

 わたしを放っておけないって……そんなこといわれても、なんて返せばいいのか正解がわからないよ。

「……ねえ、ちなみにさ、今夜の夕飯って」
「タンドリーチキンでございます」
「微妙にバージョンアップ! カレーじゃないんだ!? そこはカレーじゃないんだ!?」

 ツッコミを入れつつ、上着を脱ぐ。
 それを当然のように受け取ってくれた彼女が、ハンガーに掛けてくれる。
 いつもとなにも変わらない、日常風景だ。

「ねえねえ。やっぱりさ、名前は教えてくれないんだよね?」

 着替えながら、最大の疑問をたずねる。
 気分を害して怒られるかなって思ったけど──。

「しつこいヤツだな。そこまで知りたいのなら教えてやらんでもないが……覚悟は出来ているんだろうな?」
「へ? 覚悟って?」
「我が部族の風習では、名前を教えることは新しく家族になるという意味がある」
「家族に? じゃあさ、教えてもらったら、あたしはどうなるの?」
「そうだな……わたしの妻にでも……いや、本当の主人・・になるのかな?」
「ひっ?! そ、そ、それって同性婚!? いやいやいや、いいです! 教えてくれなくて結構です!」

 結婚だなんて、そんな!
 まだあたしには荷が重すぎる……じゃなくて、女の子同士なのに、それはちょっとマズイってば!

「わたしの名前は……」

 けれども彼女は悪戯のつもりなのか、あたしに耳打ちをしてくる。

「うわーっ、ききたくない! ききたくないです、知らなくていいです!」

 両耳を塞ぎながら、狭いワンルームを逃げまわる。
 親に借金もしてるし、手取りもまだまだ少ないから、マジでほんと、結婚だなんて無理だってば!

「なにをいまさら……その気にさせておいて、それはなかろう!」

 そんなあたしを、新しい玩具オモチャを見つけた子供のような笑顔で彼女が追いまわす。
 こんなことになるのなら、名前をきいたり揉みタイムをするんじゃなかったって大後悔する。

 でもまあ……。

 こんな主従関係も悪くはないかなって、そうも思える。

 狭いながらも、楽しいわが家。

 そんなワンルーム生活は、まだまだ続きそうだ。








 都会でひとり暮らしを始めたらダークエルフのメイドさんが付いてきたけどなにか質問あります? ─完─

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