限界突破サマーデイズ  ~ふたりぼっちの恋獄篇~

黒巻雷鳴

文字の大きさ
1 / 1

限界突破サマーデイズ  ~ふたりぼっちの恋獄篇~

しおりを挟む
 身体が熱っぽい。
 息が、胸が、心が苦しい。
 この部屋のエアコン設定は、暑がりのわたしに合わせてくれているから快適なはずなんだけど、さっきからずっと、喉が渇いて仕方がない。
 なんだろう……やっぱ緊張かな?
 渇きすぎちゃって、つばきを飲むと痛みすら感じちゃう。
 すぐ眼の前では、同級生クラスメイト星空セイラが水着に生着替え中で、それをわたしが正座をして見守っているといった、謎のシチュが休日のお昼前に展開されていた。

「アハハ、ふたりきりだけとさー、なんか恥ずかしいよねー」

 わたしが愛用しているスポブラ・ショーツとは次元違いの、とってもキュートでガーリーなフリル付きのブラジャーとショーツが、惜し気もなくピンク色の絨毯の上に落とされてゆく。
 もう飲み込めるものは無い。
 いや、ある。感嘆のため息が。
 ほどよい大きさのたわわな乳房、まだ生え揃ってはいない小悪魔的な魅力を放つ黒い繁み。そのアンバランス加減が、未成熟な少女の裸体を猥褻な特級芸術品へと変えてしまい、わたしの眠っていた欲情をこれでもかと容赦なく刺激する。

 同性でも関係ない。
 セイラが欲しい。
 欲しいものは、欲しい。
 だけど、出来ない。
 セイラに嫌われたくないから──

「どうかな……?」

 訊かなくても、わかってるくせに。
 かわいいよ、セイラ。いますぐ抱きしめて、その桜色の唇を奪いたい。

「うーん、ちょっと過激かもね。わたし的には〝無い〟かな」

 平静を装って感想を述べる。
 でもウソはついてない。わたしだけに見せてくれるなら構わないけれど、ほかの人間には見られたくないよ。とくに、男どもには。

「えー? これで過激……なんだ。んー、どうしよう……もう返品できないよね?」
「うん。あっ、でもさぁー、貸し切りのプールとかプライベートビーチなら着れるし。あと、露天風呂が付いてる部屋に泊まった時にとか」
「露天風呂? ああー! はいはいはい、彼氏との旅行でね!」

 彼氏──そのパワーワードに心臓を撃ち抜かれる。
 けれどもすぐ、

「でもさー、温泉旅行に連れてってくれる彼氏を見つけるまえに、コレ着れなくなってない?」

 そう笑顔で話してくれたから、なんとか一命は救われた。

「あははは……大丈夫っしょ……」

 本当は、海も温泉旅行もふたりで行きたい。
 残りの人生だって、共に手を取り合って過ごしたい。
 けれども、言えない。言えないよ。
 こんなに好きなのに……愛しているのに……それが言葉に出来ない……伝えてしまうと失いそうで怖い……怖いよ……

「ねえ、やっぱこの水着、ダメかな?」
「…………」
「ん? どしたん? そんなに怖い顔して?」
「あ……あのね、セイラ──」
「きゃっ?!」

 彼女の名前を呼びながら立ち上がったわたしは、足が痺れてバランスを崩してしまい、セイラを押し倒す格好でふたり一緒にベッドへと倒れた。

「ちょっと、もー! 重いから早くどいてよ!」
「……足が痺れちゃってるから、もう少しだけこのままでいさせて……お願い……」

 アクシデントとはいえ、想い人と重なれたよろこびに身体と心が震える。
 そして、その感情は涙となって頬を伝い流れて落ちた。
 ああ、そうだ。
 やっぱり大好きなんだ。
 こんなにも大好きなんだ、わたし。

「え、もしかして泣いてるの? 意味がわかんないんですけど」
「うん……泣いてるよ…………あのね、セイラ……わたしセイラのことがね……」

 身体が熱っぽい。
 息が、胸が、心が苦しい。
 この部屋のエアコン設定は、暑がりのわたしに合わせてくれているから快適なはずなんだけど、さっきからずっと、喉が渇いて仕方がない。







しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

遺産は奪わせない

広川朔二
ライト文芸
十年にわたり母の介護を担ってきた幸司。だが母の死後、疎遠だった兄と姉は勝手に相続手続きを進め、さらには署名を偽造して幸司の遺産を奪おうとする。しかし、母が残していた公正証書遺言と介護記録が真実を明らかにする――。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...