廃人は異世界で魔王に

暇人001

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#7 冒険者ベリアル

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「ここは……」

 ケイムに案内された場所は、酒場からほど近い場所にあった受付窓口のような物が複数箇所設置されているところだった。

「ここがクエストを見繕ってもらう時に来る場所でカウンターと呼ばれてます。カウンターで問い合わせれば管理人さんとすぐに対面できるかと思います」

 ケイムはそう言うと、何故か半歩下がり律儀に一礼し、顔を上げた。

 完全に上下関係が出来上がってしまっている。
 フィーナもフィーナで頼んでもいないのに自ら率先してクーガの手伝いをしている。

 この異様な光景にベリアルは少し戸惑いながらもカウンターにて管理人との対面を望んだ。

「すまない、ここの管理人に当たる人物がいれば呼んでくれないだろうか。酒場の件で少し話したいことがあるのだ」

 ベリアルは女性の受付係にそう言った。

「かしこまりました、少々お待ちください」

 受付嬢はべリアルの話を聞くなりお辞儀をしてすぐに人を呼びに向かった。

 しばらくして、受付嬢は窓口からではなく数ある受付窓口の最も左奥に設けられた扉から顔を出した。

「応接室にお呼びいたしました、どうぞ応接室へお入りください」

 扉を開け礼をする受付嬢、開かれた扉に吸い込まれるように足を進めるベリアル。

「手前から2番目の部屋が応接室となっております」

 受付嬢はそういうと、一礼し自分の持ち場へと戻った。

「アレだけの騒動があったにも関わらず冷静に対処しているところを見るに、これくらいの騒動は日常茶飯事という事だろうか……」

 1人でブツブツと考え事をしながら応接室までの短い距離を歩くベリアル。

「うむ……考えていてもわからん、そこも含めて話をすれば良いだけか」

 ベリアルはドアを3回ノックして中に入る。

 室内はとても質素で広さも並み程度でソファーが二つ置かれておりその間に長机が一つ備え付けられているだけだった。
 二つ置かれたソファーの左側に管理人らしき人物が座っていた。

「座っても構わないかな?」

 ベリアルはソファーに腰掛けた老人に向かってそう訊く

「もちろん」

 その返事を聞くなり、ベリアルは早々にソファーに腰掛け、話を始める。

「私の名前はベリアルと言う。ただの魔術師だ」

「私の名前はアーギラスと申す、冒険者組合を取り仕切るギルドマスターの職を務めさせていただいている者だ」

 アーギラスと名乗るこの男、真っ白な白髪を持ち、肌には無数のシワを作ったその老体には不釣り合いな程、勇ましく強さを感じさせる瞳を持っている。

「うむ、アーギラス殿がここを取り仕切る長という訳かな?」

「相違は無い」

「ココの施設の一つである、酒場の床の一部を破壊してしまったのだ。申し訳ない。主膳費が幾らかかるかわからないが可能な限りは支払おうと思っている」

「貴方が支払うのかね?先程何やら物音がしたため見に行ったのだが、ダーラが一方的に攻撃を仕掛けているようにしか見えなかったが……」

 どうやら、アーギラスは事件の一部始終を見ていたようだ。
 
 見ていたというならば話は早い、ベリアルは事件の顛末を事細かく説明した。

「ダーラという奴に少々喧嘩をふっかけられてな、それが発展して戦闘になってしまったという訳なのだ」

「なるほど。では、尚更貴方に非はないかと思うのだが?」

「うむ……しかし、一概に責任が無いとは言い切れないが……」

 ベリアルのその言葉にアーギラスは顎に手を添えながらこういった。

「うーん…… ではココで冒険者になって貰えれば、全てなかったことにしよう」

 冒険者になるということは、数多くのクエストをこなしていく必要があり、更には命の危険性すらあり得るという職種に就くという事だ。
 ベリアルは一瞬考える、だが結論は変わらなかった。

「承知した、今ここに冒険者になる宣言をしよう。それで今回のことは水に流して貰いたい」

 冒険者という職業を耳にしたベリアルはもとより、ソノ職業に就くつもりだったのである。

「おぉ!そうか!では早速今日から登録をしておこう。あとこれを渡しておく」

 アーギラスはそう言って、用意していたかのように、ポケットから取り出し、手渡してきたのは手のひらに収まるほどのサイズの分厚いカードのような物だった。

「これは?」

冒険者組合証明書ギルドカードと呼ばれている物で、中央に記されているBと言うのが冒険者をランク付けし評価したものになる。因みにランク分けは14段階に分けられていて、ベリアル君のBランクと言うのは中の中くらいだろうか、まぁこれを見てくれれば一目瞭然だと思うが」

 その言葉と同時にアーギラスは再び用意していたかのように、ポケットから折りたたんだ用紙を取り出して広げてみせた。

 その用紙には、冒険者のランク分けの順位等が書かれていた。
 ちなみに順位は以下の通りだ。

 F<E<D<C<C+<B<B+<A<A+<AA<AAA<S<SS<SSS


「なるほど、しかしどうして私がいきなりBランクの評価を受けているのだろうか?こう言うのはクエスト等の実績に従って引き上げられていく物なのでは無いのか?」

「確かに、ベリアル君の言う通りなのだが…… 君が打ちのめしたダーラはBランク冒険者なのだよ。それで先の戦闘を見た結果Bランクという評価をさせて貰った」

「そう言う事か、くだらん事を聞いてすまなかった」

「とんでもない」

「では、これで失礼する」

 ベリアルは短くそういい、部屋を後にした。

 応接室を出て、酒場の方に目をやると、戦闘によって吹き飛ばされていた椅子や机は元の配置に戻されており、床も決して綺麗とは言えないが、穴は塞がっていた。


「ベリアルさん、指示された通りに床にできた穴はしっかりと補強し塞ぎ終えました」

 クーガがベリアルの方を向いてそういう。

「うむ。では、今日のところはこれで帰るとしよう。そうだ、そこの受付嬢さん、明日もこの時間にココに来るとギルド長に伝えといてくれるかね?」

 ベリアルがそう言うと、受付嬢は窓口の向こう側で軽くお辞儀をし、承諾の意思を示した。
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