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1話 探検家
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東の空に太陽がゆっくりと昇っていく。
日の光が豊かな曲線を描いた丘陵を淡いオレンジ色に染める。
その丘の上にある小さな木組みの家には、一人の男の子と一匹の犬が暮らしている。
一日の始まりを告げる暖かな光は、家の中に音もなく差し込む。
古びた家の二階の部屋で男の子と犬は眠りこみ、寝息を立てている。
彼らの周りには大量の本と古代道具がバラバラと散らかっている。
二階、一階、どうやら地下にも部屋があるらしいその家は、男の子の住処であり宝物のような場所であった。
東の空が明るく照らされ、彼らの目覚めのときは近づいてきているようだ。
男の子の名前はロン。
犬の名前はレトリー。
彼らが住む国では、10万を超える人々が生活をしている。
国の周りは高い石壁で囲まれ、太陽の光はその壁の向こう側から差し込む。壁から外の世界に出るには、大きな正門から出て行くしかない。
しかし、“称号をもつ者”以外は門をくぐることは許されない。
正門から大きな道がまっすぐに伸びている。その先をずっと歩いた場所にある建物が、この国の「大王」が住む城である。国民は「大王」を敬い、従い、忠実に日々の仕事に取り組んでいる。
城下町では商店が立ち並び、商人たちが自家製の野菜や果物、生活用品などを販売している。商人の中には壁の外からやってきたものもいて、他の国との交易があることもうかがえる。
「ロン、いるか」彼の家の扉をノックする少年がいる。だが彼はまだ目を覚まさない。
くそ、あいつと言いながら少年はロンの家の裏側へと回る。少年が着ている衣服や靴の汚れがひどく、貧しい生活をしていることがわかる。少年は家の外壁に取り付けられた木枠に足をかけて二階へと上り、窓を叩く。
「ロン、起きろ。今日は試験日だろ!」少年の声と窓を叩く音で、やっと彼の身体がのそっと動く。犬のレトリーがいち早く少年に気づき、小さく吠える。
レトリーに試験のことは分からないが、ここ最近彼がずっと緊張していたことを知っている。きっと今日がその大事な日に違いない、と彼の顔にふさふさと伸びた茶色の体毛をこすりつけた。
「ん・・・。レトリー、今日は早いな・・・」ロンは眠たげな眼をこすりながら、身体を起こす。そして少年の姿を見つけると、
「あれ、おはよ、セイム」と言う。
「なに呑気なことを言っているんだ、早く支度しろ!」と少年が窓の外で叫ぶが、窓が分厚く設計されているので、中まで音がいまいち届かない。
「セイム、なんか怒ってる?どしたんだろね、レトリー」そう言いながら美しく整えられた茶色の毛並みを撫でると、レトリーが気持ち良さそうに鳴く。よしよし、と言いながら壁にかかったカレンダーに目を向ける。
十月二十一日 「探検家」試験日 赤丸
大きく黒字で文字が書かれていて、「探検家」という職業、あるいは資格の試験日だということがわかる。赤く囲われた丸印ははとても重要な日だということを意味していた。
「・・・あっ!」ロンはやっと試験のことを思い出し、セイムの方に両手を合わせる。急いで準備をしなくては、と彼はベッドから飛びおきて部屋からバタバタと出て行った。
日の光が豊かな曲線を描いた丘陵を淡いオレンジ色に染める。
その丘の上にある小さな木組みの家には、一人の男の子と一匹の犬が暮らしている。
一日の始まりを告げる暖かな光は、家の中に音もなく差し込む。
古びた家の二階の部屋で男の子と犬は眠りこみ、寝息を立てている。
彼らの周りには大量の本と古代道具がバラバラと散らかっている。
二階、一階、どうやら地下にも部屋があるらしいその家は、男の子の住処であり宝物のような場所であった。
東の空が明るく照らされ、彼らの目覚めのときは近づいてきているようだ。
男の子の名前はロン。
犬の名前はレトリー。
彼らが住む国では、10万を超える人々が生活をしている。
国の周りは高い石壁で囲まれ、太陽の光はその壁の向こう側から差し込む。壁から外の世界に出るには、大きな正門から出て行くしかない。
しかし、“称号をもつ者”以外は門をくぐることは許されない。
正門から大きな道がまっすぐに伸びている。その先をずっと歩いた場所にある建物が、この国の「大王」が住む城である。国民は「大王」を敬い、従い、忠実に日々の仕事に取り組んでいる。
城下町では商店が立ち並び、商人たちが自家製の野菜や果物、生活用品などを販売している。商人の中には壁の外からやってきたものもいて、他の国との交易があることもうかがえる。
「ロン、いるか」彼の家の扉をノックする少年がいる。だが彼はまだ目を覚まさない。
くそ、あいつと言いながら少年はロンの家の裏側へと回る。少年が着ている衣服や靴の汚れがひどく、貧しい生活をしていることがわかる。少年は家の外壁に取り付けられた木枠に足をかけて二階へと上り、窓を叩く。
「ロン、起きろ。今日は試験日だろ!」少年の声と窓を叩く音で、やっと彼の身体がのそっと動く。犬のレトリーがいち早く少年に気づき、小さく吠える。
レトリーに試験のことは分からないが、ここ最近彼がずっと緊張していたことを知っている。きっと今日がその大事な日に違いない、と彼の顔にふさふさと伸びた茶色の体毛をこすりつけた。
「ん・・・。レトリー、今日は早いな・・・」ロンは眠たげな眼をこすりながら、身体を起こす。そして少年の姿を見つけると、
「あれ、おはよ、セイム」と言う。
「なに呑気なことを言っているんだ、早く支度しろ!」と少年が窓の外で叫ぶが、窓が分厚く設計されているので、中まで音がいまいち届かない。
「セイム、なんか怒ってる?どしたんだろね、レトリー」そう言いながら美しく整えられた茶色の毛並みを撫でると、レトリーが気持ち良さそうに鳴く。よしよし、と言いながら壁にかかったカレンダーに目を向ける。
十月二十一日 「探検家」試験日 赤丸
大きく黒字で文字が書かれていて、「探検家」という職業、あるいは資格の試験日だということがわかる。赤く囲われた丸印ははとても重要な日だということを意味していた。
「・・・あっ!」ロンはやっと試験のことを思い出し、セイムの方に両手を合わせる。急いで準備をしなくては、と彼はベッドから飛びおきて部屋からバタバタと出て行った。
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