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つながった縁
しおりを挟む「あった! ありましたよっ! メギネラがいっぱいっ!! 良かったぁっ。これでなんとか最低限の材料は確保できそうですね」
やっと探し当てたそれに、ミリィは大きな声でオーランドを呼び寄せた。
「本当かっ!? ミリィ、他の者たちも呼んできてくれ。皆で手分けして採取するぞっ!!」
「はいっ!!」
すでに材料となるメギネラは尽きていた。それを補うためにせっせと見つけたメギネラを採取していると――。カサリ、という物音に、ミリィははっと振り向いた。
「……こんなところで何してんだ?」
ひとりの少年が立っていた。その視線が、ミリィがちょうど手にしていたメギネラに注がれている。
「もしかして……あんたたち、ランドルフ様の知り合い??」
少年の口から出たまさかの名前に、ミリィは目を丸くした。
「えっ!! あなた、ランドルフ様を知ってるの!?」
「そりゃあ知ってるさ! ランドルフ様に俺たちの村は助けられたんだからなっ!! 流行病から助けてくれた大恩人だよ!! その時くれた薬が、そのメギネラって薬草からできるんだって……」
「ええええっ!? ランドルフ様が……あなたたちの村を?」
騒ぎを聞きつけて、オーランドたちも集まってきた。すると少年がまじまじとオーランドを見つめ、叫んだ。
「ああぁぁぁぁっ!! あんたたちって、もしかしてオーランドっていう天才薬学者とランドルフ様の婚約者さんかっ!? そのふたりが、この薬を作ったってランドルフ様が言ってたんだっ……!」
思わずオーランドと顔を見合わせこくりとうなずくと、少年の顔がみるみる輝いた。そして嬉しそうにぴょんぴょん飛び上がると。
「ならさっ!! ふたりとも今から俺たちの村にきなよ! メギネラならこの森のどこに生えてるか俺、知ってる!! 村の皆総出で採れば、すぐ集まるよ!! 皆あんたたちにお礼を言いたいと思うしっ」
願ってもない申し出に、ミリィは目をきらめかせた。
「本当っ!? オーランド様っ。ここは時間もないことですしお願いしてみませんかっ?? これでもランドルフ様がつないでくれた縁ですしっ!!」
オーランドはなぜか少々むっとした顔を一瞬浮かべたものの、うなずいた。
「なら……頼むとするか。実は急いで薬を作らなきゃならないんだ」
「任せてくれよっ。なんなら薬を作る手伝いだって任せて!! あ、それと俺はジングっていうんだ! よろしくなっ!」
こうしてミリィとオーランドは、不思議な縁に導かれるようにジングの村へと向かった。
「いやはや、これもなにかの引き合せなのでしょうな。大恩人の頼みですからなっ。メギネラの採取は我々にお任せくださいっ! それを待つ間、薬を作る手伝いを残った者が引き受けます! なんなりとお申し付けください」
事情を聞いた村人たちは歓喜して、二つ返事で手伝いを了承してくれた。
「じゃあ皆!! さっき話したみたいに手分けしてメギネラを探してくれよなっ!! 大急ぎで頼むよっ。あ、あと皆は薬を作る手伝いをよろしくなっ!!」
そう言うとジングは村人たちを取りまとめ、さっさと森へと出ていった。
ジングの言った通りそれから一時間もしないうちに山のようなメギネラが集まり出し、その間に残った村人たちが製薬に励んでくれた。その甲斐あって薬はあっという間に完成したのだった。
「よし! これだけあれば町ひとつ分くらいにはなるだろう!」
「はいっ!!」
ミリィはオーランドと顔を見合わせ、大きくうなずいた。
なんだか不思議な力がわいていくる気がしていた。皆で力を合わせれば、どんなこんなんだって乗り越えられる――、そんな気が。こんな奇跡が起きたのもきっとランドルフが縁をつないでくれたからだ。
(ランドルフ様がこの先にいる……! やっとここまできたんだわ……)
ランドルフが待つ王都近くの町までは、あと少し。できあがったばかりの薬をすぐに届け、病に苦しんでいる人たちを一刻も早く助けなければ。
ミリィは決意を新たに拳をぐっと握りしめた。オーランドもまたぐっと口元を引き締め、うなずいた。
「じゃあそろそろ行くか……!! ミリィ」
「はいっ!! オーランド様!! ……では皆さん、この度は本当にありがとうございましたっ!! ジングも本当にありがとうっ!! 助かったわっ」
そうにっこりとジングに笑いかければ、ジングは照れ臭そうに笑った。
「ランドルフ様がさ、絶対に助けられるって信じたからこの薬は生まれたんだって言ってた。きっとうまくいくって希望を信じなきゃ、何もできないって!! 俺、その時思ったんだっ。俺もそんなふうに希望を信じて突き進める奴になろうって!! 将来、オーランド様みたいな薬学者になろうって!!」
「ジング、あなた薬学者になりたいの!? ひょっとしてオーランド様に憧れて??」
ジングは目をキラキラと輝かせこっくりとうなずいた。
「そうだっ!! だからさ、オーランド様! ことが落ち着いたら、俺をあんたの弟子にしてくれっ。俺この辺の森は誰よりも詳しい自信あるしさ! 植物だって大好きなんだっ!! だからきっといい弟子になれると思うんだっ」
「は……?? いや、私は弟子を取る気は……。そもそも学者に弟子って……」
オーランドが目を丸くした。でもほめられてまんざらでもないのだろう。どこか照れ臭そうな顔のオーランドがなんだかおかしくて、ミリィはクスクスと笑い声をこぼした。
「だからきっと戻ってきてくれよな!! 俺、待ってるからさっ!!」
こうして村人たちにあたたかく見送られながら、ミリィたち一行はランドルフが待つ町へと向かったのだった。「絶対にそのうち弟子にしてもらうからな、忘れるなよ!」と叫ぶジングを残して――。
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