蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十一章 ヘルディアの傭兵

11ー9 メリアパート

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 翌朝。砦の外で戦闘準備を終えた俺達。

 すぐに出発したいところだけど。まだ、起きない二人がいるんです。

「おはよーなんだよ」

 砦から寝起きのエドナという子供が出てきた。目開いていないじゃない。

 ドーーーン!!!

 寝ぼけているから、転んだんじゃない。

「おはよー、じゃないよ! もうお昼だよ!」

 大声で叫んでいたのに全然起きなかったんだよこの二人は。噂をすればもう一人も砦から出てきたわ。

「おはよ~」
「だから、もうお昼だって!」

 砦から寝起きのカチュアが出てきた。こっちも目開いていないじゃない。

「全く! あなた達、本当に戦いを止める気あるの?」
「メリアだって、寝起きは毎回寝ぐせが凄いじゃない。あれはもはや、アートだよ。あれを直すのに時間が掛ったじゃない」
「ぐっ」

 痛いところ付かれた。俺はクセ毛が酷く、髪に硬化する魔術を使えば、ミノタロスの角みたいになるぐらい、はねてしまう。自分で髪をとかしても、何故か、酷くなってしまう。だから、毎回、アニーに溶かしてもらっている。情けない。

「じゃあ、早速、奴らのアジアを探しに……」

 アニーが一歩歩き出したところで、お目目がパッチリと開いたカチュアが声を掛けた。

「あなたは何か隠してないかしら~?」
「何のこと?」
「あなたの感情は読みにくいけど、隠しごとをしているのは確かだわ~」
「まさか!」
「反乱軍のアジトを突き止めたよ」
「それを先に言え!」
「いや~、突き止めたのが、ついさっきなんだよ。探索しようとした、逆方向だったよ。カチュア達が寝坊してくれたおかげで、無駄足にならなくって済んだよ」
「まあ、いいか。それじゃあ、向かうぜ!」
「その前に、ごはんが食べたいわ~」
「あたしもだよ!」

 二人同時に腹の虫を鳴らす。

 この二人、寝坊したから、まだ食事していなかったんだ。

 腹減ったわりには、空腹で目が覚めなかったのか? それとも、空腹になったから、今時間に起きたのか?

「移動しながら、食べよう」
「あーしも、お腹すいたしー」
「あんたは、ついさっき食べたばかりだろ!? 残念だけど、カチュアとエドナ分しかないよ」
「じゃあー、あーしは、非常食でも食べるしー」

 そう言うとギルティは、俺の愛馬はじーと、見つめ始めた。非常食って……。

「だから、やめろ!」「だから、やめなさい!」



 敵を本拠中ということだけあって、警備は分厚いな。

「ところで、これから、どーするの~?」
「カチュア。しっかりしてくださいよ」

 全く、とても戦いを止めようと動く者とは思えないな。あれ? 戦いを止めって?

「どうしよ? 反乱軍のアジトを見つけたけど。この後どうするの? 全員、ボコボコにすればいいの?」
「取り敢えず、首謀者を捕まえたら」
「ん? 捕まえて、どーするの~」
「組織のリーダーさえ、捕まえたら、組織自体崩れますし、停戦を交渉もできます。無駄な争いをしないであれば、首謀者を捕まえるのかいいかと」
「そっか~、分かったわ~」

 方針は決まったが。

「さて、ここから、どう攻めるか」

 とても、数人が侵入できるとは思えないな。

「このまま突っ込むッス」
「姫様とは思えない程の無謀だ」
「あんたも似たような者でしょ」

「ん~。ルナちゃん、何かいい案ある?」
「何で、ルナに聞くの? ここは、一番年上のソフィアさんの意見を」
「え? 私なら、一人で行けますよ」

「わたしも一人でも、行けるけど、ルナちゃんに止められそうだから~」
「ああ……そうですよね」

 ため息を吐くルナ。苦労人かな?

「やはり、少人数で攻めるなら奇襲でしょうね。ここは魔術による奇襲でその隙に乗り込むの」
「それしかないか」


「ここはやっぱり、エドナさんの魔術で」
「何で、あたしなの?」

「実践は味方がいないところで」
「あたしの魔術が失敗する前提なの?」
「良い方向で失敗するからいいじゃないか」
「はうう。魔術ならルナちゃんだって」
「あんまり、見せびらかしたくないんです」
「テメーは此間、派手に魔術をかましたのでは?」

「変態皇女も強力な魔術を使えますよね?」
「皇女に向かって口が悪いな。スイレンも災害レベルの魔術を」
「どうでも、いいから、誰か早くやりなよー」

 敵陣なのに、何で口論になっているのよ。

「あんたら、いつもこうなの?」
「楽しいでしょ?」
「緊張感なさ過ぎだろ」

 掴みどころのない、情報通にさえ、呆れてしまう。

 すると、カチュアが両手手の平を重ねた。何かを閃いたような仕草だ。

「じゃあ、皆んな一斉に使ったら、どーかしら~?」

 笑顔でとんでもないことを口走っているよ! 

「面白そうだな」
「やるんだよ」

 魔術の使える、エドナ、ルナ、ユミル、マリン、スイレンが一斉に魔術を繰り出した。

「マジか」

 地獄絵だな。史上最の奇襲攻撃だ。

 エドナは空目掛けて、数本の矢を放った。やがて、矢は雨のように降り注いだ。地面に着地した矢は何故か、爆発している。

 ルナはルナで、色んな属性魔術をすたすらかます。目が怖いんだ。まるで、ストレスを盛大に発散しているようだ。
 
 スイレンとユミルは広範囲の水系の魔術をかましている。大洪水引き起こしているじゃない。
 
 マリンは正面に展開された魔法陣から黒い槍を出現させ、敵目掛けて放たれる。

 もはや、奇襲レベルじゃない。

 てか、これ。戦争だったら、砦ごと、破壊すれば勝利だよね、これ。

「じゃあ、行こ~」
「え? あ! うん」

 さすがに愛馬は連れて行かないから、置いていくしかないか。……目を離している間にギルティに食べらたりしないかな?
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