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第一章 蒼髪の少女
1-13 生き残る。ただそれだけを考えて
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ヴァルダン王国。
コルネリア帝国の東側に位置する砂漠の国。さらに東へ進むと、『死の砂漠』と呼ばれる一度足を踏み入れたら生きて帰れないと言われる砂漠も存在していた。
ヴァルダンは国境を越え、他国の街や村を襲っているため、他国からは蛮族と呼ばれていた。
ヴァルダン軍は大軍だが、兵一人一人の質は悪い。そのため、数では勝っているものの、コルネリア帝国軍に返り討ちにされてしまっていた。そんな国が何故、コルネリア国内にある村を襲ったのか?
【壊滅したライム村】
カチュアとエドナは戦いの準備を整え、村出入口近くの瓦礫に隠れ、様子を窺う。
(酷いことをする連中だ。エドナは辛いだろうね。いつものと変わらない日常を送っていたのに、帰ってきたら、家族同然の方々が殺されてしまうなんて。そのうえ、村の人達を殺した者達と戦わないといけないなんて。辛い、辛過ぎるだろう。エドナが)
しばらく、様子を窺っていたら。
「はうう。見たことがない服装をした人達が、村の方へ向かってくるんだよ。剣と言った武器も持っているけど、あの人達がヴァルダンの人達かな?」
「見えたのかしら~?」
「見えたんだよ! 何十人かは、いるんだよ!」
『来たか。でも、私には見えないな。カチュアは?』
「ん? うん……わたしも見えるわ~」
カチュアとエドナは視力がいいため、遠くの景色は見てる様子。
(あれ? 森から出て、村まで着いた距離は約五百メートル位で、その間にあるのは平地。まだ見えていないということは、村を襲ったであろう連中は、現在、約五百メートル内には、まだいないということか。私視点、連中はまだ森の中か。と言うことは、この子ら、樹木が密集している森の中まで、見えているってことだよね? この二人、視力良過ぎないか? いや、それよりも)
『何で、あなたの中にいるのに、視力は共用していないの? おかしいだろ?』
「不思議なこともあるのね~」
『本当に不思議だね』
「それじゃ~、わたしが前に出るね~。エドナちゃんはどこか隠れながら、弓で援護をお願いね~」
「大丈夫なんですか? お一人で?」
「こういうのは慣れているの~。だから、だいじょぶよ~」
『慣れているって、どんな過酷な生き方しているんだよ。あんたは?』
「そうなんですね……あたしは……あたしは……」
エドナの足が震えている。
(無理もない。誰でも怖くなるだろう。それに、平凡に生きてきた女の子には残酷すぎる現実だ)
「……怖いかしら~?」
「はうう! え~と……その……」
「……急所を狙わらなくっていいのわよ~」
「え?」
「下手したら、殺し合いになるのよ~。わたし達は、戦うつもりはなくっても相手は戦うつもりよ~。でも、エドナちゃんは、いきなりのことで覚悟もまだできていなわよね~」
「う、うん……」
「それでも、エドナちゃんは、エドナちゃん自身を守らないと~」
「! カチュアさん」
「覚悟はなくたって、いいわ~。だけど、自分自身を守らなくっちゃいけないわ~。だから、相手の命を狙わらなくっていいのから、戦わないと、エドナちゃんが殺されるわ~。村を襲った人達のために、エドナちゃんが犠牲になる必要なんてないわ~。だから、自分の命を大切にしてね~」
「う、うん。ありがとうなんだよ! カチュアさん」
カチュアの勇気づけで次第に、エドナの震えていた足が収まった
(エドナを勇気づけるカチュアが逞しく見えてきた。のんびりとしたカチュアとのギャップ差が凄まじい)
笑顔とは、言えないがエドナの表情は穏やかになっていた。
「あ~! エドナちゃん離れて~! 来たわよ~」
「え!?」
『私の目でも、見えてきた』
森の中から次々と人の姿が現われた。
(あれがヴァルダンとかいう、国から来た連中かな? 見た感じ王国の兵士と言うよりも民族衣装に近い格好だ。民族衣装って言われても説明できないけど、なんかこういった、ところで使うと、しっくりくる。民族いや、この村を壊滅させたのが奴らなら、民族というよりも蛮族と呼ぶべきか)
ヴァルダン兵は、二十人以上はいるだろう。
(てか、多くない? カチュアとエドナだけで、対処できるのか?)
エドナはカチュアの指示で、壊れた家の瓦礫の影へ、隠れていった。
そして、カチュアは隠れもせず、ヴァルダン兵の前に堂々と姿を現した。
「村に戻ってくる輩がいると思ったが、娘か……」
ヴァルダン兵が近づいてきた。そして、徐々に鼻息が荒くなってきている。
(なんか、発情した猿見たいな顔しているんだけど)
「おい! 見ろよ! あれ!」
「おっ! おっぱいがでかい!!」
「それにも、関わらず、お腹周りや、腕に足が細ーーい!!」
「しかも、すげー美人だ!!」
「うひょー! 生きて捕らえましょう!」
「戦い続きで欲求が溜まっていたんだ! だが、この村には、その欲求を満たしてくれそうな子はいなかったな」
「でも、気を付けろよ! ヴァタ様は、無慈悲な方だ。女子供関係なく仕留めに行く。こちらへ向かって来る前に、手駒にしないとだ」
(うわー、もの凄く分かりやすく興奮しているよ、この発情期猿たち。こんな発情期猿達だが、この村を襲った奴らで間違いなさそうね)
「気持ちは、はあはあ! わからなくはないが、はあはあ! 我々はコルネリアに、はあはあ! 勝つための任務があることは、はあはあ! 忘れるな! はあはあ! 将軍殿は、はあはあ! もうすぐここに、はあはあ! 来られるぞ! はあはあ!」
会話の途中、途中に、荒しく息を吐く。
(喝をいれているようだが、カチュアのボディに興奮して、全然聞き取れないんだが。スケベ心、丸出しだな)
「あなた達が、この村を襲ったのかしら~?」
スケベらに堂々と問い出すカチュア。
「ああ、そうだ。はあはあ! 痛い目に会いたくなければ、はあはあ! できれば、はあはあ! メリオダスが、はあはあ! 残した禁書が、はあはあ! いいのだが、はあはあ! そう簡単にはないか。はあはあ! それ以外に、はあはあ! 我々の力を、はあはあ! 増幅できるものであれば、はあはあ! 何でもいい、はあはあ! それを、はあはあ! 渡してもらおうか、はあはあ!」
(聞き取りずれえよ!! 喋るなら、ちゃんと喋ろよ!)
未だ興奮して、会話の途中、途中に荒い息を吐くヴァルダン兵。
(何とか、聞き取れたことは、メリオダスの禁書を求めているようだ。メリオダスって誰だよ? つまり、その禁書っていうのが、それが奴らの目的ってことか? いや、「力を増幅できるもの」って言っていたけど。世は戦力強化が目的ってことかな?)
「う~ん……、ないわよ~」
「はあ、は~あ~、はあ、嘘をつくなよ~はあはあ! はあ~~はあ、はあ」
笑いながら、荒々しく息をする。
(いや、嘘は付いていないよ。そもそも、カチュアはこの村の住人じゃないから。エドナなら知っているのかな?)
「……そもそも、『きんしょ』って、なに~?」
(あ~、まずは、そこからか。私もわからないわ。意味は知ってけど、どんなのかは知らない。まあ、奴らの目的は、力に関するものらしいから、それ関連だろうね)
「仕方がない、はあはあ! お主を捕らえる、までだ! はあはあ!」
(なんか、すごーく、シリアスな場面なのに、カチュアのデカ過ぎる乳に興奮して、獣の顔になっているよ。こんな奴らに村を壊滅させられるなんて、村の人達がかわいそうだな。いや、誰が相手でも、人殺しは良くないが)
「引いた方がいいわよ~。あなた達。死んじゃう前にね~」
『いや、カチュア。この戦力差に、何、強者のように振舞わっているんだ?』
「おいおい! はあはあ! 強がるなよ! はあはあ! この戦力差で勝てると思うなんて、はあはあ! 随分と世間知らずのお嬢ちゃんだね。はあはあ! それに、こちらも、はあはあ! 引くっていう選択肢はないんだよ。はあはあ!」
(やばい。段々と息が荒くなってきている。今にでも、カチュアに襲い掛かりそうだ)
「……引かないのね? 来るなら、仕方がないわ~。手加減しないわよ~」
『だから何で、強者振るんだよ?』
カチュアは、束になっている鞘から、一本の剣を抜いた。
「なるべく綺麗な肌を傷つけるなよ。はあはあ!」
変態獣の顔をしたヴァルダン兵は、徐々にカチュアのいる方へ向かっていっている。今にでも、襲いかかってきそうだ。
『カチュア! 一人で平気なのか? お前の体狙いだよ』
「だいじょぶよ~。わたし、負けないわよ~」
『だからどこに、その自信があるんだが……』
「どうすれば、退いてくれるのかな?」
『こういう時は、戦う気をなくすのが一番じゃないか? 例えば、圧倒的な力の差を見せつけるとか』
「それでいきましょ~」
『どうやって、それを見せつけるんだよ?』
「こーするのよ~~。そ~~れ~~~」
のんびりとした掛け声と共に、カチュアは剣の先端を地面に付けながら左側から右側へと薙ぎ払った。
シューーーーーン!!! ドドドドドドドドドドドドドッ!!!
「うわわわわ!!」と叫びながら、ヴァルダン兵達は、吹き飛ばされていた。
一瞬何が起きたが分からなかった。
それは、さっき地面を薙ぎ払った時、衝撃波を起こしたようだ。その衝撃波が土砂の波を発生させ、迎え来るヴァルダン兵を飲み込んでいった。
『てっ! 衝撃波起こせるって! どんだけ、力を振り絞れば、起こせるんだよ!』
しかし、こんな力を出したために、カチュアの持っていた剣はというと。
「やっぱり、地面に着けるのは、だめ見たいだわ~」
カチュアの剣が折れてしまう。カチュアは折れた剣を捨て、別の鞘に納めている剣を抜き出す。
一方、ヴァルダン兵はというと。
「な! なななななななななななななな、なんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「魔術じゃないことは確かだ?」
「それって、自力で剣で薙ぎ払って、地面をえぐったことになるぞ!」
「もしかして、勇能力か?」
「これって、不味い奴を敵に回したのでは!!」
「気を付けろ! ただのデカパイ女ではないぞ!」
滅茶苦茶、動揺してざわつくヴァルダン兵達。
(発情した猿の顔から、きっちりとした顔になった。さすがに、あれを見たら、命の方が大事と思うよね)
「て! 撤退した方がいいのでは?」
「バカ! 王は敗北を許さない! ここで生き残っても、制裁を喰らってしまう!」
「手加減したら、俺らが死ぬぞ! 勿体ないが、あの女を殺すぞ!!」
ヴァルダン兵達は一斉に武器を構え始めた。しかし、足元は「プルプル」と震えていた。
「あら? 引いてくれないのね~」
『奴らの口振りから、逃げ場はないみたいだね。偉い方の命令みたいだ。奴らはその命令には逆らえないみたいだ』
「そーなの~? その偉い人は、人を何だ思っているのかしら?」
『兵なんて、ゴミ当然と思っているのでは?』
「酷いわ~」
『気持ちは分かるが、前を見ろ。逃げ場のない奴らが、起こす行動なんて決まっているから』
ヴァルダン兵が、一斉にカチュアを襲い掛かってきた。
(ヴァルダン兵は武器をしっかりと構えている限り、カチュアはもう排除対象になってしまった見たいだ)
『次々と来るよ!!』
「だいじょぶよ~」
『だから、どこに自信があるんだよ!?』
いつの間にか、ヴァルダン兵に囲まれてしまったカチュア。
(これ本当に、大丈夫なのか?)
「貰ったぁぁぁ!!!」
カチュアの背後から、カチュア目掛けて武器を振り下ろそうとしているヴァルダン兵が。
シュン! ドーーーーン!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
カチュアに不意を突こうとしたヴァルダン兵が、逆にカチュアに蹴り飛ばされてしまった。
実は、ヴァルダン兵の背後からの攻撃を、後ろを振り向かずに躱しつつ、そのヴァルダン兵の背後に、素早く周り、蹴り飛ばした。
「掛かれ! 掛かれ!」
どんどんと、ヴァルダン兵達が、カチュアに攻撃を仕掛けてきた。
しかし、まるで、未来が見えているかのように、華麗に躱していく。
攻撃を躱しながら、相手を剣で斬りつけていく。しかし、カチュアの戦い方は、命を奪うためではない。斬りつけるというが、急所は狙わず、敵の動きを封じられるぐらいの、深手を追わせる。そういった中で、カチュアの剣も六、七本も壊れてしまう。
(なんで、あんなデカい乳を持っていながら、こんなに身軽に動けるんだよ? 大きな胸はハンデにはならないのか?)
だが、なるべく、命を狙わないとしても、数十人相手にしていたら余裕がなくなってしまう。
「隙ありだ!」
カチュアの左横から、ヴァルダン兵が剣で斬りかけようとした。
シュパーーーーーン!!!
カチュアを斬りかけようとした、ヴァルダン兵の両腕がなくなっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!! 腕が……腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
カチュアの右手は血で染まっていた。
そう、カチュアの手によって、両腕を切断したものだ。ただ、切断させたのは剣ではなく手刀だ。
「本当に、なんだよ!? あの女は!? 化け物か!?」
「どうするんだよ!?」
兵達はオロオロし始める。獣の顔から、絶望の顔へ大変身してしまう。
(圧倒的な力を見せつけられたから、大混乱し始めたな。ここで引いてくれたらいいのだが)
コルネリア帝国の東側に位置する砂漠の国。さらに東へ進むと、『死の砂漠』と呼ばれる一度足を踏み入れたら生きて帰れないと言われる砂漠も存在していた。
ヴァルダンは国境を越え、他国の街や村を襲っているため、他国からは蛮族と呼ばれていた。
ヴァルダン軍は大軍だが、兵一人一人の質は悪い。そのため、数では勝っているものの、コルネリア帝国軍に返り討ちにされてしまっていた。そんな国が何故、コルネリア国内にある村を襲ったのか?
【壊滅したライム村】
カチュアとエドナは戦いの準備を整え、村出入口近くの瓦礫に隠れ、様子を窺う。
(酷いことをする連中だ。エドナは辛いだろうね。いつものと変わらない日常を送っていたのに、帰ってきたら、家族同然の方々が殺されてしまうなんて。そのうえ、村の人達を殺した者達と戦わないといけないなんて。辛い、辛過ぎるだろう。エドナが)
しばらく、様子を窺っていたら。
「はうう。見たことがない服装をした人達が、村の方へ向かってくるんだよ。剣と言った武器も持っているけど、あの人達がヴァルダンの人達かな?」
「見えたのかしら~?」
「見えたんだよ! 何十人かは、いるんだよ!」
『来たか。でも、私には見えないな。カチュアは?』
「ん? うん……わたしも見えるわ~」
カチュアとエドナは視力がいいため、遠くの景色は見てる様子。
(あれ? 森から出て、村まで着いた距離は約五百メートル位で、その間にあるのは平地。まだ見えていないということは、村を襲ったであろう連中は、現在、約五百メートル内には、まだいないということか。私視点、連中はまだ森の中か。と言うことは、この子ら、樹木が密集している森の中まで、見えているってことだよね? この二人、視力良過ぎないか? いや、それよりも)
『何で、あなたの中にいるのに、視力は共用していないの? おかしいだろ?』
「不思議なこともあるのね~」
『本当に不思議だね』
「それじゃ~、わたしが前に出るね~。エドナちゃんはどこか隠れながら、弓で援護をお願いね~」
「大丈夫なんですか? お一人で?」
「こういうのは慣れているの~。だから、だいじょぶよ~」
『慣れているって、どんな過酷な生き方しているんだよ。あんたは?』
「そうなんですね……あたしは……あたしは……」
エドナの足が震えている。
(無理もない。誰でも怖くなるだろう。それに、平凡に生きてきた女の子には残酷すぎる現実だ)
「……怖いかしら~?」
「はうう! え~と……その……」
「……急所を狙わらなくっていいのわよ~」
「え?」
「下手したら、殺し合いになるのよ~。わたし達は、戦うつもりはなくっても相手は戦うつもりよ~。でも、エドナちゃんは、いきなりのことで覚悟もまだできていなわよね~」
「う、うん……」
「それでも、エドナちゃんは、エドナちゃん自身を守らないと~」
「! カチュアさん」
「覚悟はなくたって、いいわ~。だけど、自分自身を守らなくっちゃいけないわ~。だから、相手の命を狙わらなくっていいのから、戦わないと、エドナちゃんが殺されるわ~。村を襲った人達のために、エドナちゃんが犠牲になる必要なんてないわ~。だから、自分の命を大切にしてね~」
「う、うん。ありがとうなんだよ! カチュアさん」
カチュアの勇気づけで次第に、エドナの震えていた足が収まった
(エドナを勇気づけるカチュアが逞しく見えてきた。のんびりとしたカチュアとのギャップ差が凄まじい)
笑顔とは、言えないがエドナの表情は穏やかになっていた。
「あ~! エドナちゃん離れて~! 来たわよ~」
「え!?」
『私の目でも、見えてきた』
森の中から次々と人の姿が現われた。
(あれがヴァルダンとかいう、国から来た連中かな? 見た感じ王国の兵士と言うよりも民族衣装に近い格好だ。民族衣装って言われても説明できないけど、なんかこういった、ところで使うと、しっくりくる。民族いや、この村を壊滅させたのが奴らなら、民族というよりも蛮族と呼ぶべきか)
ヴァルダン兵は、二十人以上はいるだろう。
(てか、多くない? カチュアとエドナだけで、対処できるのか?)
エドナはカチュアの指示で、壊れた家の瓦礫の影へ、隠れていった。
そして、カチュアは隠れもせず、ヴァルダン兵の前に堂々と姿を現した。
「村に戻ってくる輩がいると思ったが、娘か……」
ヴァルダン兵が近づいてきた。そして、徐々に鼻息が荒くなってきている。
(なんか、発情した猿見たいな顔しているんだけど)
「おい! 見ろよ! あれ!」
「おっ! おっぱいがでかい!!」
「それにも、関わらず、お腹周りや、腕に足が細ーーい!!」
「しかも、すげー美人だ!!」
「うひょー! 生きて捕らえましょう!」
「戦い続きで欲求が溜まっていたんだ! だが、この村には、その欲求を満たしてくれそうな子はいなかったな」
「でも、気を付けろよ! ヴァタ様は、無慈悲な方だ。女子供関係なく仕留めに行く。こちらへ向かって来る前に、手駒にしないとだ」
(うわー、もの凄く分かりやすく興奮しているよ、この発情期猿たち。こんな発情期猿達だが、この村を襲った奴らで間違いなさそうね)
「気持ちは、はあはあ! わからなくはないが、はあはあ! 我々はコルネリアに、はあはあ! 勝つための任務があることは、はあはあ! 忘れるな! はあはあ! 将軍殿は、はあはあ! もうすぐここに、はあはあ! 来られるぞ! はあはあ!」
会話の途中、途中に、荒しく息を吐く。
(喝をいれているようだが、カチュアのボディに興奮して、全然聞き取れないんだが。スケベ心、丸出しだな)
「あなた達が、この村を襲ったのかしら~?」
スケベらに堂々と問い出すカチュア。
「ああ、そうだ。はあはあ! 痛い目に会いたくなければ、はあはあ! できれば、はあはあ! メリオダスが、はあはあ! 残した禁書が、はあはあ! いいのだが、はあはあ! そう簡単にはないか。はあはあ! それ以外に、はあはあ! 我々の力を、はあはあ! 増幅できるものであれば、はあはあ! 何でもいい、はあはあ! それを、はあはあ! 渡してもらおうか、はあはあ!」
(聞き取りずれえよ!! 喋るなら、ちゃんと喋ろよ!)
未だ興奮して、会話の途中、途中に荒い息を吐くヴァルダン兵。
(何とか、聞き取れたことは、メリオダスの禁書を求めているようだ。メリオダスって誰だよ? つまり、その禁書っていうのが、それが奴らの目的ってことか? いや、「力を増幅できるもの」って言っていたけど。世は戦力強化が目的ってことかな?)
「う~ん……、ないわよ~」
「はあ、は~あ~、はあ、嘘をつくなよ~はあはあ! はあ~~はあ、はあ」
笑いながら、荒々しく息をする。
(いや、嘘は付いていないよ。そもそも、カチュアはこの村の住人じゃないから。エドナなら知っているのかな?)
「……そもそも、『きんしょ』って、なに~?」
(あ~、まずは、そこからか。私もわからないわ。意味は知ってけど、どんなのかは知らない。まあ、奴らの目的は、力に関するものらしいから、それ関連だろうね)
「仕方がない、はあはあ! お主を捕らえる、までだ! はあはあ!」
(なんか、すごーく、シリアスな場面なのに、カチュアのデカ過ぎる乳に興奮して、獣の顔になっているよ。こんな奴らに村を壊滅させられるなんて、村の人達がかわいそうだな。いや、誰が相手でも、人殺しは良くないが)
「引いた方がいいわよ~。あなた達。死んじゃう前にね~」
『いや、カチュア。この戦力差に、何、強者のように振舞わっているんだ?』
「おいおい! はあはあ! 強がるなよ! はあはあ! この戦力差で勝てると思うなんて、はあはあ! 随分と世間知らずのお嬢ちゃんだね。はあはあ! それに、こちらも、はあはあ! 引くっていう選択肢はないんだよ。はあはあ!」
(やばい。段々と息が荒くなってきている。今にでも、カチュアに襲い掛かりそうだ)
「……引かないのね? 来るなら、仕方がないわ~。手加減しないわよ~」
『だから何で、強者振るんだよ?』
カチュアは、束になっている鞘から、一本の剣を抜いた。
「なるべく綺麗な肌を傷つけるなよ。はあはあ!」
変態獣の顔をしたヴァルダン兵は、徐々にカチュアのいる方へ向かっていっている。今にでも、襲いかかってきそうだ。
『カチュア! 一人で平気なのか? お前の体狙いだよ』
「だいじょぶよ~。わたし、負けないわよ~」
『だからどこに、その自信があるんだが……』
「どうすれば、退いてくれるのかな?」
『こういう時は、戦う気をなくすのが一番じゃないか? 例えば、圧倒的な力の差を見せつけるとか』
「それでいきましょ~」
『どうやって、それを見せつけるんだよ?』
「こーするのよ~~。そ~~れ~~~」
のんびりとした掛け声と共に、カチュアは剣の先端を地面に付けながら左側から右側へと薙ぎ払った。
シューーーーーン!!! ドドドドドドドドドドドドドッ!!!
「うわわわわ!!」と叫びながら、ヴァルダン兵達は、吹き飛ばされていた。
一瞬何が起きたが分からなかった。
それは、さっき地面を薙ぎ払った時、衝撃波を起こしたようだ。その衝撃波が土砂の波を発生させ、迎え来るヴァルダン兵を飲み込んでいった。
『てっ! 衝撃波起こせるって! どんだけ、力を振り絞れば、起こせるんだよ!』
しかし、こんな力を出したために、カチュアの持っていた剣はというと。
「やっぱり、地面に着けるのは、だめ見たいだわ~」
カチュアの剣が折れてしまう。カチュアは折れた剣を捨て、別の鞘に納めている剣を抜き出す。
一方、ヴァルダン兵はというと。
「な! なななななななななななななな、なんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「魔術じゃないことは確かだ?」
「それって、自力で剣で薙ぎ払って、地面をえぐったことになるぞ!」
「もしかして、勇能力か?」
「これって、不味い奴を敵に回したのでは!!」
「気を付けろ! ただのデカパイ女ではないぞ!」
滅茶苦茶、動揺してざわつくヴァルダン兵達。
(発情した猿の顔から、きっちりとした顔になった。さすがに、あれを見たら、命の方が大事と思うよね)
「て! 撤退した方がいいのでは?」
「バカ! 王は敗北を許さない! ここで生き残っても、制裁を喰らってしまう!」
「手加減したら、俺らが死ぬぞ! 勿体ないが、あの女を殺すぞ!!」
ヴァルダン兵達は一斉に武器を構え始めた。しかし、足元は「プルプル」と震えていた。
「あら? 引いてくれないのね~」
『奴らの口振りから、逃げ場はないみたいだね。偉い方の命令みたいだ。奴らはその命令には逆らえないみたいだ』
「そーなの~? その偉い人は、人を何だ思っているのかしら?」
『兵なんて、ゴミ当然と思っているのでは?』
「酷いわ~」
『気持ちは分かるが、前を見ろ。逃げ場のない奴らが、起こす行動なんて決まっているから』
ヴァルダン兵が、一斉にカチュアを襲い掛かってきた。
(ヴァルダン兵は武器をしっかりと構えている限り、カチュアはもう排除対象になってしまった見たいだ)
『次々と来るよ!!』
「だいじょぶよ~」
『だから、どこに自信があるんだよ!?』
いつの間にか、ヴァルダン兵に囲まれてしまったカチュア。
(これ本当に、大丈夫なのか?)
「貰ったぁぁぁ!!!」
カチュアの背後から、カチュア目掛けて武器を振り下ろそうとしているヴァルダン兵が。
シュン! ドーーーーン!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
カチュアに不意を突こうとしたヴァルダン兵が、逆にカチュアに蹴り飛ばされてしまった。
実は、ヴァルダン兵の背後からの攻撃を、後ろを振り向かずに躱しつつ、そのヴァルダン兵の背後に、素早く周り、蹴り飛ばした。
「掛かれ! 掛かれ!」
どんどんと、ヴァルダン兵達が、カチュアに攻撃を仕掛けてきた。
しかし、まるで、未来が見えているかのように、華麗に躱していく。
攻撃を躱しながら、相手を剣で斬りつけていく。しかし、カチュアの戦い方は、命を奪うためではない。斬りつけるというが、急所は狙わず、敵の動きを封じられるぐらいの、深手を追わせる。そういった中で、カチュアの剣も六、七本も壊れてしまう。
(なんで、あんなデカい乳を持っていながら、こんなに身軽に動けるんだよ? 大きな胸はハンデにはならないのか?)
だが、なるべく、命を狙わないとしても、数十人相手にしていたら余裕がなくなってしまう。
「隙ありだ!」
カチュアの左横から、ヴァルダン兵が剣で斬りかけようとした。
シュパーーーーーン!!!
カチュアを斬りかけようとした、ヴァルダン兵の両腕がなくなっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!! 腕が……腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
カチュアの右手は血で染まっていた。
そう、カチュアの手によって、両腕を切断したものだ。ただ、切断させたのは剣ではなく手刀だ。
「本当に、なんだよ!? あの女は!? 化け物か!?」
「どうするんだよ!?」
兵達はオロオロし始める。獣の顔から、絶望の顔へ大変身してしまう。
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