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第二章 英雄の力
2-16 認められない
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「くそがぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!! ふざけやがってぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!」
ガイザック再びは無詠唱の魔術での火の玉を何発も放ったが、カチュアは火の玉を華麗に躱わしたり、大剣で火の玉を受け止めたりした。
三十発以上も連続で放っているが、カチュアには一発すら当たらなかった。
(魔術のパターンがワンパターン過ぎます。どうやら、ガイザックは魔術の威力を頼りの戦法で、魔術の技術はないようですね)
しばらくすると攻撃が止まり、ガイザックは「ハアー、ハアー」と息を切らしていた。
(無詠唱でも、何回も魔術を、使えば体力は消耗するんですね)
一方でカチュアは息を切らすどころか、のほほーんとした表情も崩れることはなかった。
「くそぉ! くそぉ! くそぉぉぉぉぉ!!!」
再び、大剣で攻撃を仕掛けてきた。
カキィーーーン!! カキィーーーン!! カキィーーーン!!
カチュアの大剣がガイザックの大剣を受け止めていった。
(ガイザックの剣技が段々と荒々しくなっています。まるで、怒りの感情のままに、剣を振っているだけのように見えます)
「くそぉ、くそぉ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!! 俺の攻撃を受け止めやがってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ガッシ!!!
カチュアは隙を見て、ガイザックの武器を持っている右手の手首を掴み、ガイザックを投げ飛ばした。
ガイザックは地面に叩きつけられ、転がっていった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!! 熱い! 熱い! 熱いぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!」
止まったらと思ったが、地面に寝そべっている、ガイザックは騒ぎながら右側方向に転がったり、左側方向に転がったりを繰り返していた。
「あの人、今『熱い』って、言わなかったですか?」
「……奴の右手を見て見ろ」
「手?」
ガイザックの右手手首から煙が出ていた。
「煙が出ている? あれ? 確か、あそこは、さつき、カチュアさんが掴んだところですよね?」
(ということは、あのガイザックの火傷はカチュアさんの仕業ですか? でも、カチュアさんが火をつけた素振りはなかったです。じゃあ。魔術を? いいえ、使っていたら魔力を感じるはず。そもそも、カチュアさんは魔術が使えないって言っていました。じゃあ、あの煙は何故発生したんですか?)
「くそぉーーーーー!! もう、女だからって、容赦しねぇよ!!!」
立ち上がったガイザックは両手を上げ、その間から火の玉が出現した。それもかなり大きい。
「あの人、あんなに、カチュアさんに対して、セクハラ発言をしてきたのに、今ではその行為が見られなくなりました。どうしてでしょうか?」
「奴は、勇能力の力で、思うがままに手に入れてきたんだろな。しかし、思い通りにならなくってむしゃくしゃしてきたんだろうな?」
「そういうものですか?」
「色んな奴がいるってことだ。人を相手にするのは難しいんだよ。ルナも分かる時が来るさ」
「ふぅーーーーん。……何気に、子供扱いしたのは気のせいでしょうか?」
「気のせいだ」
(しかし、ルナには、ガイザックが怒り狂う前と後で人格が変わったようにも見えます。気のせいでしょうか?)
「……あれ?」
「どうしたルナ?」
「なんか、あの火の魔術から魔力の流れが乱れているように感じるんです」
「乱れ?」
ドカァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーン!!!
「え!?」
突然、火の玉が爆発した。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!?」
爆炎の中から体中に火傷を負ったガイザックが出て来た。
(もう、何がなんだか)
「くそぉぉぉぉぉぉーーー!! 何でだよーーー!!?」
ガイザックは再び、大剣を手に取り、カチュアに攻撃を仕掛ける。
やはり、カチュアはガイザックの攻撃を躱していく。
その光景を凝視していたアルヴスは。
「不味いな。あの嬢ちゃん」
「不味いって何がですか? カチュアさんが優勢では?」
「表情をよく見ろ」
カチュアの表情は、苦しそうな表情をしていた。
「あの顔つきは、明らかに体力消耗ではなく、精神的なダメージを受けているように見える」
「でも、ガイザックは精神攻撃をしていないような……」
カチュアは一旦ガイザックから離れた。その後に深呼吸をした。そして。
「もう、いいかげんにしないと、怒るわよ~~~!!」
突然、大きいな声を出した。
(のんびり屋のカチュアさんでも、大きいな声が出せるんですね。というか、カチュアさんでも怒るんですね。その顔は、あまり、怒っているようには、見えませんですけど)
そうしている間に、大剣を構えたガイザックがカチュアの元に近づいてきた。ガイザックはカチュア目掛けて、剣を振り下ろすが、カチュアは剣を振るい、ガイザックの剣に当てる。ガイザックの大剣は空高く飛ばした。
「俺の剣がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わたしは戦うのは好きじゃないのに~~~!! もう、わからずや~~~!!」
バッコォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーン!!!
カチュアはガイザックの顔面を思い切り殴りつける。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガイザックは後ろの方に吹き飛ばされていった。地面に着地ししばらく転がってから止まった。
アルヴスは倒れたガイザックの元へ歩いて向かった。
アルヴスの怪我を負った左足は、膝を曲げ、その膝から地までの長さの、岩でできた棒が生えていた。その岩でできた棒は、まるで松葉杖のようなだ。
(取り敢えず、これで、足代わりにはできるな)
アルヴスは、倒れているガイザックの顔を眺めた。
「おい! 顔面潰れているぞ!」
「殺さないよう、力をできるだけ弱めたつもりよ~。わたし、本気を出し過ぎると、殺しちゃうのよ~」
「『殺さないように』って、これ、完全に両方失目しているぞ、これ。さらに鼻の骨が砕けているし、首の骨も折れているぞ。いや、それどころか、全身の骨が砕けている。生きているのが不思議なくらいだ……」
アルヴスはガイザックの怪我をじーと眺めていた。ガイザックの顔から煙が出ていた。
「君は何者だ? 奴は力が弱い方ではあるが、勇能力の持ち主。それなのに障壁は一撃で壊すし、身体強化で高めていたのに遅れを取らない……君は、見た感じ、勇能力を持っていないのに」
「さっきも言ったわよ~。カチュアよ~」
「名前を聞いてるわけではないんだがな。……まあ、いいか」
「いいんですか? 兄様?」
「今は置いておく。それよりも、ありがとうな。助かったよ。しかし、改めて容姿と戦う姿を見ていると、伝説の女将軍の血縁かと思う程だ」
「よく言われるわ~」
「あのー。ガイザックを倒しましたし、そろそろ戻りませんか? 皆さん心配しています」
「そうだな。取り敢えず、ガイザックに拘束術を掛けておくから、活躍してくれたお嬢さんを休めといてくれ」
アルヴスの手元には鎖の様な物が出現した。
「でも、兄様、足が……」
「ルナはまだ拘束術を使えないだろ? なら、俺に任せてくれ。拘束術を掛けるぐらいだから、心配するな」
「……わかりました。無理しないでくださいね」
カチュアは腰を下ろして、休んでいた。
(ガイザックの潰れた顔を見ると煙が出ていました。さっき、カチュアさんがガイザックの腕を掴んだ時と同じですね。でも、なんで、カチュアさんに触れられたガイザックから、煙が出てきたんでしょうか? ルナが触れられても煙はでなかったです。そう言えば、ギルドで揉めた男の人にも、振れていたけど、煙は出なかったです。何か違いがあるのでしょうか?)
「それにしても、ヴァルダンとかいう国だっけ? その将といい。ガイザックといい。自分の力を否定されるとあんなに怒り狂うものかしら?」
カチュアが、ぼそっと口を開いた。
「カチュアさん、どうしたんですか?」
「いや、ナギだ」
カチュアの瞳の色が赤くなっている。
「ナギさんでしたか。さっき、何か言っていましたか?」
「今のは、大きいな独り言よ。表に出るつもりはなかったがつい出てしまったようだ」
「はあ~。そうですか。……ほんと、あなた方は何者ですか?」
「私達は互い何者かは知らない。でも、カチュアは気にしていない様だけど」
「も~それはなんなのよー」
いつの間にか、カチュアの瞳の色が蒼色へ元に戻っていた。
「私からも聞いていい?」
また、瞳の色が赤になっている。
(ということはナギさんね。なんか、忙しそうな体質ですね)
「答えられる範囲なら」
「あなたは、私の存在に気づいていたようだけど、何で?」
「カチュアさんから、魔道具を装備していないのに、魔力の流れを感じたからです」
「魔力?」
「魔術を使うためのエネルギー原です。魔力は自然の一部で、濃度は低いですが空気中に蔓延《まんえん》しているんです」
「空気中? それじゃあ、何で魔道具を身に付けないと、魔術は使えないんだ。その辺に蔓延していたら、使えるのでは?」
「空気中に蔓延している魔力と、魔力が凝縮してできた魔石では、性質が異なるのです。魔術を使うために必要なのは魔石です」
「あくまで、空気に蔓延している魔力は空気の様なものか。その、魔力の流れっていうものは、誰でも感じることが出来るの?」
「いいえ、生まれつきの特技のよなものです。兄様が言うには、億に一の確率でその特技を持てるそうです。今のところは、ルナしかいないそうです」
「その魔力の流れは魔道具からしか感じないのか?」
「正確には核になっている魔石です。後は勇能力を持って者から感じます。それと、魔術関連を使うと感じます。例えば自力で付けた火には感じないですけど、魔術で作った火には魔力を感じます」
「もしかして、私がカチュアの中にいるのは……」
「カチュアさんの中から魔力を感じられたのは、魔術を使った痕跡があったからです。つまり、カチュアさんの中にいるのは、魔術関連ですね」
「成程ね。ところで、人の中に入る魔術に心当たりはある?」
「ありますよ。大分前ですが、本で読んだことあります。確か……」
「あ! それはまた、後にしてくれないかしら。意識が無くなりそうだから」
「そうですか、わかりました」
カチュアの瞳の色が蒼色に戻った。
「ナギちゃん。お休みの様ね~」
「おーい。こっちは、終わったぜ!」
手を振りながら、カチュア達を呼ぶアルヴス。
「あ! 今行きまーす、兄様!」
ガイザック再びは無詠唱の魔術での火の玉を何発も放ったが、カチュアは火の玉を華麗に躱わしたり、大剣で火の玉を受け止めたりした。
三十発以上も連続で放っているが、カチュアには一発すら当たらなかった。
(魔術のパターンがワンパターン過ぎます。どうやら、ガイザックは魔術の威力を頼りの戦法で、魔術の技術はないようですね)
しばらくすると攻撃が止まり、ガイザックは「ハアー、ハアー」と息を切らしていた。
(無詠唱でも、何回も魔術を、使えば体力は消耗するんですね)
一方でカチュアは息を切らすどころか、のほほーんとした表情も崩れることはなかった。
「くそぉ! くそぉ! くそぉぉぉぉぉ!!!」
再び、大剣で攻撃を仕掛けてきた。
カキィーーーン!! カキィーーーン!! カキィーーーン!!
カチュアの大剣がガイザックの大剣を受け止めていった。
(ガイザックの剣技が段々と荒々しくなっています。まるで、怒りの感情のままに、剣を振っているだけのように見えます)
「くそぉ、くそぉ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!! 俺の攻撃を受け止めやがってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ガッシ!!!
カチュアは隙を見て、ガイザックの武器を持っている右手の手首を掴み、ガイザックを投げ飛ばした。
ガイザックは地面に叩きつけられ、転がっていった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!! 熱い! 熱い! 熱いぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!」
止まったらと思ったが、地面に寝そべっている、ガイザックは騒ぎながら右側方向に転がったり、左側方向に転がったりを繰り返していた。
「あの人、今『熱い』って、言わなかったですか?」
「……奴の右手を見て見ろ」
「手?」
ガイザックの右手手首から煙が出ていた。
「煙が出ている? あれ? 確か、あそこは、さつき、カチュアさんが掴んだところですよね?」
(ということは、あのガイザックの火傷はカチュアさんの仕業ですか? でも、カチュアさんが火をつけた素振りはなかったです。じゃあ。魔術を? いいえ、使っていたら魔力を感じるはず。そもそも、カチュアさんは魔術が使えないって言っていました。じゃあ、あの煙は何故発生したんですか?)
「くそぉーーーーー!! もう、女だからって、容赦しねぇよ!!!」
立ち上がったガイザックは両手を上げ、その間から火の玉が出現した。それもかなり大きい。
「あの人、あんなに、カチュアさんに対して、セクハラ発言をしてきたのに、今ではその行為が見られなくなりました。どうしてでしょうか?」
「奴は、勇能力の力で、思うがままに手に入れてきたんだろな。しかし、思い通りにならなくってむしゃくしゃしてきたんだろうな?」
「そういうものですか?」
「色んな奴がいるってことだ。人を相手にするのは難しいんだよ。ルナも分かる時が来るさ」
「ふぅーーーーん。……何気に、子供扱いしたのは気のせいでしょうか?」
「気のせいだ」
(しかし、ルナには、ガイザックが怒り狂う前と後で人格が変わったようにも見えます。気のせいでしょうか?)
「……あれ?」
「どうしたルナ?」
「なんか、あの火の魔術から魔力の流れが乱れているように感じるんです」
「乱れ?」
ドカァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーン!!!
「え!?」
突然、火の玉が爆発した。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!?」
爆炎の中から体中に火傷を負ったガイザックが出て来た。
(もう、何がなんだか)
「くそぉぉぉぉぉぉーーー!! 何でだよーーー!!?」
ガイザックは再び、大剣を手に取り、カチュアに攻撃を仕掛ける。
やはり、カチュアはガイザックの攻撃を躱していく。
その光景を凝視していたアルヴスは。
「不味いな。あの嬢ちゃん」
「不味いって何がですか? カチュアさんが優勢では?」
「表情をよく見ろ」
カチュアの表情は、苦しそうな表情をしていた。
「あの顔つきは、明らかに体力消耗ではなく、精神的なダメージを受けているように見える」
「でも、ガイザックは精神攻撃をしていないような……」
カチュアは一旦ガイザックから離れた。その後に深呼吸をした。そして。
「もう、いいかげんにしないと、怒るわよ~~~!!」
突然、大きいな声を出した。
(のんびり屋のカチュアさんでも、大きいな声が出せるんですね。というか、カチュアさんでも怒るんですね。その顔は、あまり、怒っているようには、見えませんですけど)
そうしている間に、大剣を構えたガイザックがカチュアの元に近づいてきた。ガイザックはカチュア目掛けて、剣を振り下ろすが、カチュアは剣を振るい、ガイザックの剣に当てる。ガイザックの大剣は空高く飛ばした。
「俺の剣がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わたしは戦うのは好きじゃないのに~~~!! もう、わからずや~~~!!」
バッコォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーン!!!
カチュアはガイザックの顔面を思い切り殴りつける。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガイザックは後ろの方に吹き飛ばされていった。地面に着地ししばらく転がってから止まった。
アルヴスは倒れたガイザックの元へ歩いて向かった。
アルヴスの怪我を負った左足は、膝を曲げ、その膝から地までの長さの、岩でできた棒が生えていた。その岩でできた棒は、まるで松葉杖のようなだ。
(取り敢えず、これで、足代わりにはできるな)
アルヴスは、倒れているガイザックの顔を眺めた。
「おい! 顔面潰れているぞ!」
「殺さないよう、力をできるだけ弱めたつもりよ~。わたし、本気を出し過ぎると、殺しちゃうのよ~」
「『殺さないように』って、これ、完全に両方失目しているぞ、これ。さらに鼻の骨が砕けているし、首の骨も折れているぞ。いや、それどころか、全身の骨が砕けている。生きているのが不思議なくらいだ……」
アルヴスはガイザックの怪我をじーと眺めていた。ガイザックの顔から煙が出ていた。
「君は何者だ? 奴は力が弱い方ではあるが、勇能力の持ち主。それなのに障壁は一撃で壊すし、身体強化で高めていたのに遅れを取らない……君は、見た感じ、勇能力を持っていないのに」
「さっきも言ったわよ~。カチュアよ~」
「名前を聞いてるわけではないんだがな。……まあ、いいか」
「いいんですか? 兄様?」
「今は置いておく。それよりも、ありがとうな。助かったよ。しかし、改めて容姿と戦う姿を見ていると、伝説の女将軍の血縁かと思う程だ」
「よく言われるわ~」
「あのー。ガイザックを倒しましたし、そろそろ戻りませんか? 皆さん心配しています」
「そうだな。取り敢えず、ガイザックに拘束術を掛けておくから、活躍してくれたお嬢さんを休めといてくれ」
アルヴスの手元には鎖の様な物が出現した。
「でも、兄様、足が……」
「ルナはまだ拘束術を使えないだろ? なら、俺に任せてくれ。拘束術を掛けるぐらいだから、心配するな」
「……わかりました。無理しないでくださいね」
カチュアは腰を下ろして、休んでいた。
(ガイザックの潰れた顔を見ると煙が出ていました。さっき、カチュアさんがガイザックの腕を掴んだ時と同じですね。でも、なんで、カチュアさんに触れられたガイザックから、煙が出てきたんでしょうか? ルナが触れられても煙はでなかったです。そう言えば、ギルドで揉めた男の人にも、振れていたけど、煙は出なかったです。何か違いがあるのでしょうか?)
「それにしても、ヴァルダンとかいう国だっけ? その将といい。ガイザックといい。自分の力を否定されるとあんなに怒り狂うものかしら?」
カチュアが、ぼそっと口を開いた。
「カチュアさん、どうしたんですか?」
「いや、ナギだ」
カチュアの瞳の色が赤くなっている。
「ナギさんでしたか。さっき、何か言っていましたか?」
「今のは、大きいな独り言よ。表に出るつもりはなかったがつい出てしまったようだ」
「はあ~。そうですか。……ほんと、あなた方は何者ですか?」
「私達は互い何者かは知らない。でも、カチュアは気にしていない様だけど」
「も~それはなんなのよー」
いつの間にか、カチュアの瞳の色が蒼色へ元に戻っていた。
「私からも聞いていい?」
また、瞳の色が赤になっている。
(ということはナギさんね。なんか、忙しそうな体質ですね)
「答えられる範囲なら」
「あなたは、私の存在に気づいていたようだけど、何で?」
「カチュアさんから、魔道具を装備していないのに、魔力の流れを感じたからです」
「魔力?」
「魔術を使うためのエネルギー原です。魔力は自然の一部で、濃度は低いですが空気中に蔓延《まんえん》しているんです」
「空気中? それじゃあ、何で魔道具を身に付けないと、魔術は使えないんだ。その辺に蔓延していたら、使えるのでは?」
「空気中に蔓延している魔力と、魔力が凝縮してできた魔石では、性質が異なるのです。魔術を使うために必要なのは魔石です」
「あくまで、空気に蔓延している魔力は空気の様なものか。その、魔力の流れっていうものは、誰でも感じることが出来るの?」
「いいえ、生まれつきの特技のよなものです。兄様が言うには、億に一の確率でその特技を持てるそうです。今のところは、ルナしかいないそうです」
「その魔力の流れは魔道具からしか感じないのか?」
「正確には核になっている魔石です。後は勇能力を持って者から感じます。それと、魔術関連を使うと感じます。例えば自力で付けた火には感じないですけど、魔術で作った火には魔力を感じます」
「もしかして、私がカチュアの中にいるのは……」
「カチュアさんの中から魔力を感じられたのは、魔術を使った痕跡があったからです。つまり、カチュアさんの中にいるのは、魔術関連ですね」
「成程ね。ところで、人の中に入る魔術に心当たりはある?」
「ありますよ。大分前ですが、本で読んだことあります。確か……」
「あ! それはまた、後にしてくれないかしら。意識が無くなりそうだから」
「そうですか、わかりました」
カチュアの瞳の色が蒼色に戻った。
「ナギちゃん。お休みの様ね~」
「おーい。こっちは、終わったぜ!」
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