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第二章 英雄の力
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【アヴァルの街、宿屋の個室】
カチュア達はアヴァルの街に戻っていた。アルヴスは、本来の目的地であったタウロの街へ向かうには、遠いため、カチュア達と共に戻っていった。
カチュアとエドナは、ルナとアルヴスが来るのを宿屋の個室で待っていた。
そして、扉が開いた。
「お待たせしました」
扉からルナとアルヴスが部屋に入っていった。
しかし、二人が見た光景は。
「はうう……本当にすみません、カチュアさん。お手数を掛けちゃって。だけど、抜く時には、力を加減してくださいね」
「わかったわ~」
個室の床に穴が空いており、エドナの尻部分が、その穴にハマっていた。
それを抜こうと、カチュアがエドナの手を掴んでいた。
「これは、どうゆう状況なんだ?」
「あ! ルナちゃんと、ルナちゃんのお兄さんね~。エドナちゃん、ベットの上に座ろうとしたら~。滑って手前の床に落ちたのよ~。そして、今度は床が抜けて、今はお尻が穴にはまっちゃたのよ~」
(エドナさん、災難続きですね。エドナさんの生涯の破損額が半端じゃない額になりそうです)
「取り敢えず、助けようか。カチュアの嬢ちゃんは下がっていな。カチュアの嬢ちゃんがやると、また災難が続きそうだから」
「あら? そーなの~? じゃあ、頼もうかしら~」
「是非そうしてください」
(カチュアさんがエドナさんを手を引っ張って抜け出したら、今度は抜け出した勢いで、飛んだエドナが天井へ突っ込みそうだし)
何とか、エドナを床にできた穴から、救出に成功した。
(助けた拍子にで、また災難に遭わなくってよかったです)
「さてと、改めて、名乗らせてくれ。俺はルナの兄アルヴス。魔術研究員で帝国、八騎将のシグマ様に仕えるものだ」
「あっ~。ルナちゃんのお兄さんも、魔術研究員なのね~」
「シグマ様って、空の勇者と呼ばれる方ですよね。二十年前の戦いで悪帝を倒した八人の英雄の一人ですよね」
「エドナちゃん、空の勇者って、何かしら~?」
カチュアがエドナに尋ねる。
「子供でも知っている話なんだけどな。カチュアの嬢ちゃんは、あまり本とか読まないみたいだな」
「そーなのよ~。本を読むと、すぐに眠くなるのよ~」
『まあ、勉強が苦手とか言っているぐらいだからね』
「空の勇者は、空にある国から、来たと言われていらしい。歴史上に、現れた人々の恐怖である、厄災が現れるたびに、空の勇者が現れると言われている。悪帝も厄災とも、呼ばれるぐらいの存在だったんだ」
「空に国なんてあるの~? 本当にあったら、ロマンがあるわね~」
「普通はそう思いますよね? けど、実際のところは分かりません。昔から、空の国から来た、彼らのようなに者達を、空の勇者って呼んでいます。しかし、何で空にある国から、来たのかわからないのです。それに、空に国がある根拠はないのです。誰も行ったことがなければ、彼らが、空の国に戻った話もありません」
「あの~~。そろそろ本題に入ろうか~」
「あ! そうでした! 空の勇者の話で終わりそうな勢いでしたね」
「ルナから、君達のことを聞かせてもらった。確認にするために聞きくが、エドナの嬢ちゃんはライム村の住人か?」
ルナは、昨晩、カチュアと話していた内容を、この部屋に入る前にアルヴスに話していた。
「え? はいなんだよ!」
「わたし達が、村から出る時に来たのが、あなた達だったのかしら~?」
「カチュアさん。気づいていたんですね?」
「わたし達は、ヴァルダンの人だと思って、すぐに村から出たいたわ~」
(だから、報告書通り、村人の墓は立っていたのに、その墓を建っていた人の姿がなかったわけですね。ついでに、ヴァルダンの者の墓も建ていたんですね)
「つまり嬢ちゃん達は、ヴァルダンと戦ったって訳か」
「わたしは戦いを好きじゃないわ~。けど、あの時は、逃げ場がなかったから、戦うしかなかったわ~」
(ガイザックと戦っている時も、言っていました。あの戦闘力の高さで、戦いが嫌いって、言っても、説得力はない気がします。でも、現にガイザックに命を奪っていません。お顔は潰れていましたが、命を奪う戦はしていなかったです)
(でも、カチュアさんが本当にアレなら、戦うのが好きではないと言うなら、納得ができます。しかし、あれは伝説と言われている存在です。だけど、ルナの仮説は、その伝説の存在じゃなければ、結び付かないのです)
「話を戻そうか。正確には、ライム村へ向かったのは、シグマ様が所属する別部隊だ。村を襲ったのはヴァルダンの蛮族どもみたいだな」
「なんで、ヴァルダンがあたしの村を襲ったんですか?」
「襲われたのは、エドナの嬢ちゃんの村だけではない。他の村や街が、ヴァルダン軍に襲われたんだ」
「他の村でも、あたしの村みたいなことが起きていたんですか!?」
「ほんの一週間前だ。いきなりの侵入してきて、コルネリア内にある村のいくつかは壊滅していったんだ。今のところヴァルダンは一時撤退されているんだ。近々、我が帝国はヴァルダンの討伐に向かわれる予定だ」
「帝国軍の戦力はヴァルダンには遅れは取れないはずでした。しかし、今のヴァルダンはかなり手強いのです。報告では、謎の武器を所有しているとのことです」
『謎の武器? もしかして、生き物の死骸で作られたような武器のことではないのか? 盾とか、斧とか、持っていた奴いただろ?』
「……確か、不思議な武器を持っていた人がいたわ~。その武器から、とても危険な感じがしたのよ~」
「でも、その武器を持っていた人は、突然、ドラゴンになったんだよ」
「ドラゴンですって!?」 「ドラゴンだと!?」
ルナとアルヴスは驚いた顔をした。
「確かに、ドラゴンの遺体はあったが……」
「あら? お墓を掘ったの~? 余り、良い行為とは思えないわ~」
「仕方がないだろ。墓には、『ドラゴンになったヴァルダンの方』と書かれていたんだ。気になるだろ?」
(そういうば、ヴァルダンの連中のお墓も、ちゃんと建てたんだった)
「それよりも、人がドラゴンになったというのは、それは魔物化ですか?」
「魔物化?」
「魔物は元々人や動物が、魔の力を宿して姿を変えた姿なんです」
『まじか。人が別の姿に変わることがあるのかよ』
「多分、それなんだよ。あの~……人が魔物になることがあるんですか?」
「珍しい話ではないんだけど。初めは、人が魔物になるなんて、信じられないですよね」
『なんか、魔物になるのが一般的な言い方みたいだな。そんな頻繁に起きるのかよ。とんでもねぇ世界だな』
「原因は、主に魔石を摂取すると魔物になるのが有名な話です。しかし、それ以外でも魔物になるケースもあるんですよ。何故変わってしまうのかは、研究中なんです」
「魔石って~。あの、魔術を使うための~? あれは、そんなに危険なものなの~?」
「エドナさんは魔石を直接体内に触れると毒って知っていますよね?」
「うん。魔道鉱石で作られた魔道具を使わないといけないことは村長さんから何万回も話しを聞いているから知っているんだよ」
「あの~それ多過ぎるのでは?」
「村長さんは、あたしに対しては、物凄く過保護が発揮するんだよ。いつも同じ内容の話をしてくれているんだよ」
(どんだけ、心配症なのですか? その村長は。お母さんかなんかですか? あ! エドナさんにとってはライム村の人達は家族みたいなものね)
「恐らく、その武器は試作品で、魔石が埋め込まれているかもしれない。武器が壊れていたから断言はできないけど。まあ、試作品なために、何か誤作動を起こして魔物になっただろう。今はそれしか分からない」
アルヴスは頭をかきながらため息をつく。
「話が長くなってしまった。取り敢えず、ここまでにしよう」
「そうですね」
(それに、話が長過ぎて、カチュアさんが今でも寝そうじゃないかって、くらい、ウトウトし始めています。一応、頑張って寝ないようにはしていますね)
「エドナ殿には、辛い話をさせてしまい申し訳ない」
「気にしないで下さい。あたしは大丈夫なんだよ」
「……ところで、君達は旅をしているんだな?」
「はい」
「提案だが、どうしても、旅をしたいんだったら、セシル王国に向かったら」
「セシル王国って~? 国の名前でいいのかしら~?」
「村長さんから、聞いたことがあるんだよ。隣の国でしたよね?」
(きっと、それも、何千回も万回も話を聞かせれたんですね)
「ああ、ヴァルダンとは反対側の国だ。今は戦争中で国境を跨ぐのは危険だ」
「それでは出れないのかしら~?」
「国境から、出る時は、俺の部下が支援しよう。ただし、許可書を発行しないといけないから、それが来るまでは、ここで待機してくれ」
「本当ですか? ありがとうございます」
「それと」
アルヴスは突然、ルナの頭に手を乗せた。
「ルナも連れていってくれ」
「え? ちょっと! 兄様、急に何ですか!?」
「お前も、たまには、引きこもって研究作業してないで、外で体を動かしたら?」
「……まあ、丁度、試したい魔術はありますから、いいかなと思いますが」
(ルナはどちらかといいう、研究に没頭していきたいのですが、二人をほって置けません。……主に、エドナさんのことを知ってしまったから)
「なら、いいじゃないか。外で派手に、魔術の実践でもしてきてくれ」
(まったく、兄様は。でも、ルナを頼ってくれているのかな? いいえ、兄様の場合は……)
「そうしますよ。ルナの研究結果期待いてくださいね」
「そっか、じゃあ、お二人さんルナをよろしくな。まあ、結構面倒見がいいんだけどな、ちょっと目つきが悪くって、愛想がないのがな~」
「ちょっと! 兄様!」
「おっと、じゃあ、俺は帝都の保留所にガイザックを連れて行かないとだからこれで」
アルヴスは、逃げるように、部屋から出て行った。
「あ! 逃げた! 全く……兄様たら……」
「改めてよろしくね~」
カチュアはルナの両手を握る。
「ええとおお、あっ、はい……」
(まあ、いいかな。この二人は、今まで会った、ことがある人たちの中では、一番、信用できそうだし。それに、兄様も)
その夜。
【アヴァルの宿屋。ロビー】
ルナは宿屋の出入口へ向かうと、そこには、アルヴスが宿屋に入って来た。
「どうしたんですか? 兄様? こんな夜遅くに」
「ルナか。良い子は寝る時間だよ」
「ルナは、そこまで幼くありません! 窓から兄様の姿が見えたから、降りてきたんです」
「そっか、そっか。悪い、悪い」
「ガイザックを帝都まで連行していったのでは?」
「途中で、ベレクト殿に会ったんだ」
「ベレクトさんが?」
「はっはっはっ!!!」
突然、笑い声が響き渡った。
ベレクトが、ポーズを決めたうえで、笑いながら宿屋に入っていった。
「急に笑い声が聞こえたから、驚きましたよ。『はっはっはっ』さん」
「エドナさんと同じボケをしないで下さい」
「おやおや。考えるボケは一緒ってことか。親近感があるな」
「エドナさんは『天然』ですけど、兄様は『わざと』でしょ」
「手厳しいな」
「ところで、ベレクトさんは、何で、まだ街にいるんですか? 部隊を連れて、帝都へ向かったのでは?」
ベレクトはまた別のポーズを決めた。
「一度、帝都へ戻ったんだが、どうやら別部隊の隊長が戦死したようで連携取れていないようで、今私自ら向かっているのです」
「部隊を集めているって、ガロンはヴァルダンを攻める気か?」
ベレクトは、またまた別のポーズへ変えた。
「それは間違えないでしょ。しかし、よりにもよって、あの周辺の部隊も呼び出すなんて。また、シグマ様に頼まないといけませんな。シグマ様には申し訳ないです」
「何かあったのか?」
ベレクトは、謎のポーズを決めた。
「いつものことというか、あの辺は八騎将のゲブン様が領地を納めている土地。そのゲブン様は、こんな大変な時期に賭博場を開催する気なんです」
「まあ、今始まったことではないな」
「賭博用の魔物が脱走しなければいいのですが……おっと、長話をしてしまった。それでは、ガイザックは私が連行しますので」
「すまない。任せてしまって」
「はぁ、はぁ、はぁ。帝都へ戻るついでですよ。気にしないでください。それでは、私は、これで失礼するさらばだ!」
ベレクトはポーズを決めながら宿屋から出ていった。
「しかし、何であんな人が、あのガロンの下に就くんでしょうね」
「……こんな時期に、賭博ね~」
「兄様?」
「! 何だ!?」
「いいえ! 何でもないです! それよりも、兄様は何で、こんな夜中にまた宿に尋ねたんですか? ガイザックを連行する必要がなくなったから、サンプルの分析するために、真っ先にタウロの街へ向かったと思いますが……」
「これを渡しておこうと思ってね」
アルヴスは、手の平では収まらない程の大きさもある水色の石をルナに見せた。
「これは、シェルターですか? 魔力を通さない鉱石で、魔術を反射する唯一の鉱石ですよね?」
「勇能力を持った者の対抗手段の一つだ。勿論、魔物にもね。これを鍛治師に頼んでカチュアの嬢ちゃんの武器を作ってやれ。魔術を使えない彼女には、必要だろう」
「兄様にしては気が利きますね」
「俺が普段無礼な人間と思っていないか?」
「だって本当のことではないですか」
「手厳しい妹だな~」
「でも、ありがとうございます。カチュアさんには言っときますから」
「取り敢えず、重いから、これをルナの部屋に運んだら戻るな。シェルターを運ぶか、持っていく時は、カチュアの嬢ちゃんに頼みな」
「……はい」
シェルターと言われていた鉱石を運び終えると、アルヴスを見送るため、ルナは宿屋の出入口に向かっていた。
「それじゃ、二人をよろしくな。許可証用意したら部下くんに届けさせるからな」
「あの……兄様……」
「なんだ? 何かまだ話したい事あったけ?」
「……いいえ、何でもないです」
「そっか。じゃあ、俺は行くな」
アルヴスが宿屋から出て行った。
「……兄様。まさか、またゲブンに探りを入れに……」
カチュア達はアヴァルの街に戻っていた。アルヴスは、本来の目的地であったタウロの街へ向かうには、遠いため、カチュア達と共に戻っていった。
カチュアとエドナは、ルナとアルヴスが来るのを宿屋の個室で待っていた。
そして、扉が開いた。
「お待たせしました」
扉からルナとアルヴスが部屋に入っていった。
しかし、二人が見た光景は。
「はうう……本当にすみません、カチュアさん。お手数を掛けちゃって。だけど、抜く時には、力を加減してくださいね」
「わかったわ~」
個室の床に穴が空いており、エドナの尻部分が、その穴にハマっていた。
それを抜こうと、カチュアがエドナの手を掴んでいた。
「これは、どうゆう状況なんだ?」
「あ! ルナちゃんと、ルナちゃんのお兄さんね~。エドナちゃん、ベットの上に座ろうとしたら~。滑って手前の床に落ちたのよ~。そして、今度は床が抜けて、今はお尻が穴にはまっちゃたのよ~」
(エドナさん、災難続きですね。エドナさんの生涯の破損額が半端じゃない額になりそうです)
「取り敢えず、助けようか。カチュアの嬢ちゃんは下がっていな。カチュアの嬢ちゃんがやると、また災難が続きそうだから」
「あら? そーなの~? じゃあ、頼もうかしら~」
「是非そうしてください」
(カチュアさんがエドナさんを手を引っ張って抜け出したら、今度は抜け出した勢いで、飛んだエドナが天井へ突っ込みそうだし)
何とか、エドナを床にできた穴から、救出に成功した。
(助けた拍子にで、また災難に遭わなくってよかったです)
「さてと、改めて、名乗らせてくれ。俺はルナの兄アルヴス。魔術研究員で帝国、八騎将のシグマ様に仕えるものだ」
「あっ~。ルナちゃんのお兄さんも、魔術研究員なのね~」
「シグマ様って、空の勇者と呼ばれる方ですよね。二十年前の戦いで悪帝を倒した八人の英雄の一人ですよね」
「エドナちゃん、空の勇者って、何かしら~?」
カチュアがエドナに尋ねる。
「子供でも知っている話なんだけどな。カチュアの嬢ちゃんは、あまり本とか読まないみたいだな」
「そーなのよ~。本を読むと、すぐに眠くなるのよ~」
『まあ、勉強が苦手とか言っているぐらいだからね』
「空の勇者は、空にある国から、来たと言われていらしい。歴史上に、現れた人々の恐怖である、厄災が現れるたびに、空の勇者が現れると言われている。悪帝も厄災とも、呼ばれるぐらいの存在だったんだ」
「空に国なんてあるの~? 本当にあったら、ロマンがあるわね~」
「普通はそう思いますよね? けど、実際のところは分かりません。昔から、空の国から来た、彼らのようなに者達を、空の勇者って呼んでいます。しかし、何で空にある国から、来たのかわからないのです。それに、空に国がある根拠はないのです。誰も行ったことがなければ、彼らが、空の国に戻った話もありません」
「あの~~。そろそろ本題に入ろうか~」
「あ! そうでした! 空の勇者の話で終わりそうな勢いでしたね」
「ルナから、君達のことを聞かせてもらった。確認にするために聞きくが、エドナの嬢ちゃんはライム村の住人か?」
ルナは、昨晩、カチュアと話していた内容を、この部屋に入る前にアルヴスに話していた。
「え? はいなんだよ!」
「わたし達が、村から出る時に来たのが、あなた達だったのかしら~?」
「カチュアさん。気づいていたんですね?」
「わたし達は、ヴァルダンの人だと思って、すぐに村から出たいたわ~」
(だから、報告書通り、村人の墓は立っていたのに、その墓を建っていた人の姿がなかったわけですね。ついでに、ヴァルダンの者の墓も建ていたんですね)
「つまり嬢ちゃん達は、ヴァルダンと戦ったって訳か」
「わたしは戦いを好きじゃないわ~。けど、あの時は、逃げ場がなかったから、戦うしかなかったわ~」
(ガイザックと戦っている時も、言っていました。あの戦闘力の高さで、戦いが嫌いって、言っても、説得力はない気がします。でも、現にガイザックに命を奪っていません。お顔は潰れていましたが、命を奪う戦はしていなかったです)
(でも、カチュアさんが本当にアレなら、戦うのが好きではないと言うなら、納得ができます。しかし、あれは伝説と言われている存在です。だけど、ルナの仮説は、その伝説の存在じゃなければ、結び付かないのです)
「話を戻そうか。正確には、ライム村へ向かったのは、シグマ様が所属する別部隊だ。村を襲ったのはヴァルダンの蛮族どもみたいだな」
「なんで、ヴァルダンがあたしの村を襲ったんですか?」
「襲われたのは、エドナの嬢ちゃんの村だけではない。他の村や街が、ヴァルダン軍に襲われたんだ」
「他の村でも、あたしの村みたいなことが起きていたんですか!?」
「ほんの一週間前だ。いきなりの侵入してきて、コルネリア内にある村のいくつかは壊滅していったんだ。今のところヴァルダンは一時撤退されているんだ。近々、我が帝国はヴァルダンの討伐に向かわれる予定だ」
「帝国軍の戦力はヴァルダンには遅れは取れないはずでした。しかし、今のヴァルダンはかなり手強いのです。報告では、謎の武器を所有しているとのことです」
『謎の武器? もしかして、生き物の死骸で作られたような武器のことではないのか? 盾とか、斧とか、持っていた奴いただろ?』
「……確か、不思議な武器を持っていた人がいたわ~。その武器から、とても危険な感じがしたのよ~」
「でも、その武器を持っていた人は、突然、ドラゴンになったんだよ」
「ドラゴンですって!?」 「ドラゴンだと!?」
ルナとアルヴスは驚いた顔をした。
「確かに、ドラゴンの遺体はあったが……」
「あら? お墓を掘ったの~? 余り、良い行為とは思えないわ~」
「仕方がないだろ。墓には、『ドラゴンになったヴァルダンの方』と書かれていたんだ。気になるだろ?」
(そういうば、ヴァルダンの連中のお墓も、ちゃんと建てたんだった)
「それよりも、人がドラゴンになったというのは、それは魔物化ですか?」
「魔物化?」
「魔物は元々人や動物が、魔の力を宿して姿を変えた姿なんです」
『まじか。人が別の姿に変わることがあるのかよ』
「多分、それなんだよ。あの~……人が魔物になることがあるんですか?」
「珍しい話ではないんだけど。初めは、人が魔物になるなんて、信じられないですよね」
『なんか、魔物になるのが一般的な言い方みたいだな。そんな頻繁に起きるのかよ。とんでもねぇ世界だな』
「原因は、主に魔石を摂取すると魔物になるのが有名な話です。しかし、それ以外でも魔物になるケースもあるんですよ。何故変わってしまうのかは、研究中なんです」
「魔石って~。あの、魔術を使うための~? あれは、そんなに危険なものなの~?」
「エドナさんは魔石を直接体内に触れると毒って知っていますよね?」
「うん。魔道鉱石で作られた魔道具を使わないといけないことは村長さんから何万回も話しを聞いているから知っているんだよ」
「あの~それ多過ぎるのでは?」
「村長さんは、あたしに対しては、物凄く過保護が発揮するんだよ。いつも同じ内容の話をしてくれているんだよ」
(どんだけ、心配症なのですか? その村長は。お母さんかなんかですか? あ! エドナさんにとってはライム村の人達は家族みたいなものね)
「恐らく、その武器は試作品で、魔石が埋め込まれているかもしれない。武器が壊れていたから断言はできないけど。まあ、試作品なために、何か誤作動を起こして魔物になっただろう。今はそれしか分からない」
アルヴスは頭をかきながらため息をつく。
「話が長くなってしまった。取り敢えず、ここまでにしよう」
「そうですね」
(それに、話が長過ぎて、カチュアさんが今でも寝そうじゃないかって、くらい、ウトウトし始めています。一応、頑張って寝ないようにはしていますね)
「エドナ殿には、辛い話をさせてしまい申し訳ない」
「気にしないで下さい。あたしは大丈夫なんだよ」
「……ところで、君達は旅をしているんだな?」
「はい」
「提案だが、どうしても、旅をしたいんだったら、セシル王国に向かったら」
「セシル王国って~? 国の名前でいいのかしら~?」
「村長さんから、聞いたことがあるんだよ。隣の国でしたよね?」
(きっと、それも、何千回も万回も話を聞かせれたんですね)
「ああ、ヴァルダンとは反対側の国だ。今は戦争中で国境を跨ぐのは危険だ」
「それでは出れないのかしら~?」
「国境から、出る時は、俺の部下が支援しよう。ただし、許可書を発行しないといけないから、それが来るまでは、ここで待機してくれ」
「本当ですか? ありがとうございます」
「それと」
アルヴスは突然、ルナの頭に手を乗せた。
「ルナも連れていってくれ」
「え? ちょっと! 兄様、急に何ですか!?」
「お前も、たまには、引きこもって研究作業してないで、外で体を動かしたら?」
「……まあ、丁度、試したい魔術はありますから、いいかなと思いますが」
(ルナはどちらかといいう、研究に没頭していきたいのですが、二人をほって置けません。……主に、エドナさんのことを知ってしまったから)
「なら、いいじゃないか。外で派手に、魔術の実践でもしてきてくれ」
(まったく、兄様は。でも、ルナを頼ってくれているのかな? いいえ、兄様の場合は……)
「そうしますよ。ルナの研究結果期待いてくださいね」
「そっか、じゃあ、お二人さんルナをよろしくな。まあ、結構面倒見がいいんだけどな、ちょっと目つきが悪くって、愛想がないのがな~」
「ちょっと! 兄様!」
「おっと、じゃあ、俺は帝都の保留所にガイザックを連れて行かないとだからこれで」
アルヴスは、逃げるように、部屋から出て行った。
「あ! 逃げた! 全く……兄様たら……」
「改めてよろしくね~」
カチュアはルナの両手を握る。
「ええとおお、あっ、はい……」
(まあ、いいかな。この二人は、今まで会った、ことがある人たちの中では、一番、信用できそうだし。それに、兄様も)
その夜。
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「どうしたんですか? 兄様? こんな夜遅くに」
「ルナか。良い子は寝る時間だよ」
「ルナは、そこまで幼くありません! 窓から兄様の姿が見えたから、降りてきたんです」
「そっか、そっか。悪い、悪い」
「ガイザックを帝都まで連行していったのでは?」
「途中で、ベレクト殿に会ったんだ」
「ベレクトさんが?」
「はっはっはっ!!!」
突然、笑い声が響き渡った。
ベレクトが、ポーズを決めたうえで、笑いながら宿屋に入っていった。
「急に笑い声が聞こえたから、驚きましたよ。『はっはっはっ』さん」
「エドナさんと同じボケをしないで下さい」
「おやおや。考えるボケは一緒ってことか。親近感があるな」
「エドナさんは『天然』ですけど、兄様は『わざと』でしょ」
「手厳しいな」
「ところで、ベレクトさんは、何で、まだ街にいるんですか? 部隊を連れて、帝都へ向かったのでは?」
ベレクトはまた別のポーズを決めた。
「一度、帝都へ戻ったんだが、どうやら別部隊の隊長が戦死したようで連携取れていないようで、今私自ら向かっているのです」
「部隊を集めているって、ガロンはヴァルダンを攻める気か?」
ベレクトは、またまた別のポーズへ変えた。
「それは間違えないでしょ。しかし、よりにもよって、あの周辺の部隊も呼び出すなんて。また、シグマ様に頼まないといけませんな。シグマ様には申し訳ないです」
「何かあったのか?」
ベレクトは、謎のポーズを決めた。
「いつものことというか、あの辺は八騎将のゲブン様が領地を納めている土地。そのゲブン様は、こんな大変な時期に賭博場を開催する気なんです」
「まあ、今始まったことではないな」
「賭博用の魔物が脱走しなければいいのですが……おっと、長話をしてしまった。それでは、ガイザックは私が連行しますので」
「すまない。任せてしまって」
「はぁ、はぁ、はぁ。帝都へ戻るついでですよ。気にしないでください。それでは、私は、これで失礼するさらばだ!」
ベレクトはポーズを決めながら宿屋から出ていった。
「しかし、何であんな人が、あのガロンの下に就くんでしょうね」
「……こんな時期に、賭博ね~」
「兄様?」
「! 何だ!?」
「いいえ! 何でもないです! それよりも、兄様は何で、こんな夜中にまた宿に尋ねたんですか? ガイザックを連行する必要がなくなったから、サンプルの分析するために、真っ先にタウロの街へ向かったと思いますが……」
「これを渡しておこうと思ってね」
アルヴスは、手の平では収まらない程の大きさもある水色の石をルナに見せた。
「これは、シェルターですか? 魔力を通さない鉱石で、魔術を反射する唯一の鉱石ですよね?」
「勇能力を持った者の対抗手段の一つだ。勿論、魔物にもね。これを鍛治師に頼んでカチュアの嬢ちゃんの武器を作ってやれ。魔術を使えない彼女には、必要だろう」
「兄様にしては気が利きますね」
「俺が普段無礼な人間と思っていないか?」
「だって本当のことではないですか」
「手厳しい妹だな~」
「でも、ありがとうございます。カチュアさんには言っときますから」
「取り敢えず、重いから、これをルナの部屋に運んだら戻るな。シェルターを運ぶか、持っていく時は、カチュアの嬢ちゃんに頼みな」
「……はい」
シェルターと言われていた鉱石を運び終えると、アルヴスを見送るため、ルナは宿屋の出入口に向かっていた。
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「なんだ? 何かまだ話したい事あったけ?」
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