【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

文字の大きさ
50 / 60
第二章 英雄の力

2ーおまけ② 疎まれる

しおりを挟む
 ルナは、兄である俺から見て、カチュアとエドナの嬢ちゃんのように、人を疑わない、お人好しの子だった。今でもお人好しだけど。

 いつからだろう。まだ幼い年頃なのに、人の闇を見るようになったのは?



【ルナ十歳。学生時代】

 帝都にある魔術学園。

 ルナが廊下ろうかを歩いていると。

「なあ、知っているか? アルヴスという男を?」
「ああ、何となく知っている。八騎将の側近そっきんだろ? 話題になっていたな」

 アルヴスの名前を聞いたルナは、廊下でアルヴスの話をしていた二人の男の子から隠れて、様子をうかがった。

(見る限る、貴族の子見たいですね)

「でも、そいつがどうしたんだ?」
「そいつ、何者だと思う? なんと、平民だよ、へ・い・み・ん」
「わぁ! マジかよ。話題になっていたから、どんなに凄い人かと思ったら平民かよ。その八騎将は見る目がないな」
「だろ? 貴族のたしなみを知らない平民が、何の苦労もせずに八騎将の側近になったんだぜ。許せねえよな?」
「本当だぜ」
「後、そのアルヴスとかいう奴、勇能力を所持していないんだぜ」
「マジかよ! 何の力もないのに、出世しやがったのかよ?」
「本当だよ。この魔術学院は平民も入学できるせいで、俺らは平民と一緒の空間で学ばないといけないんだぜ。そんな品の欠片もねぇ連中と一緒にいることに我慢しているのに、ひでえよな、そのアルヴスは」
「なんか、そいつの名前を言っていたら、口が臭くなりそうだ。貴族の俺らが臭くなったら、品が失われてしまうな」
「お前、言えているな! 本当に、あの平民は、どんな手を使って、出世したんだが。俺ら貴族は正々堂々と出世しているのにな」
「全くだな」
「「はぁ! はははははははははは!!」」

 二人の笑い声が廊下内に響き渡った。

「……」

 ルナは黙々もくもくと貴族の二人に見つからないように、その場から去っていった。



【ルナの家】

 魔術学院の講義を終え、家に帰るルナ。

「……ただいま」

 ルナは家のドアを開けて中に入っていた。

「ルナじゃないか?」
「兄様?」

 そこには、アルヴスが出迎えてくれた。

「珍しいですね。帰って来るなんて」
「シグマ様に、無理やり休暇を入れてくれたんだ。それも、明日から三日間も」
「……そうですか。……あの~兄様」
「何だ?」
「……無理をしないで下さいね」
「急にどうした? らしくないな」
「本当に何もないです」

 ルナは駆け足で、自分の部屋へ向かって行った。

「変なルナだな」



 ルナは自分の部屋のベットの上へ飛び込んでいった。

(兄様は、兄様なりに頑張っていたはずなのに、どうして、あんな陰口かげぐちを言われないといけないんですか? 兄様のこと何も知らないくせに!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...