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第三章 翼を持つ者
3ー4 呑気に本を読む
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一方、カチュアとエドナは。
「ふぁ~~~。よく寝たわ~~~」
カチュアは呑気に寝ていました。
カチュアの大きな欠伸が、この部屋全体に響き渡っていった。
「あ! おはよ~エドナちゃん~」
エドナは既に起きてはいたが、こちらも呑気に本を読んでいた。
「あ! カチュアさん。おはようなんだよ。今、十三時だよ」
「あら? あらら~?」
『「あらら」じゃ、ねぇよ! 「おはよう」の挨拶する時間帯過ぎているじゃないか!』
(カチュアが寝ている間、私も視界が暗くなるんだ。だから、私が起きたくってもカチュアが起きてくれなければ、視界が明るくならないんだ)
「あれ~。エドナちゃんは、本読んでいるのかしら~?」
「そうなんだよ。ルナちゃんから、借りたんだよ。英雄譚の『四英雄記』という、『蒼炎伝説』が広がった後に起こった、厄災との戦いを描いた話なんだよ」
「そー言えば、エドナちゃんは本読むの好きだったわね~」
「はい! やっと、これの続きが読めたんだよ。続きが読みたかったんだよ」
「あら~? 前に読んだことがあるの?」
「実は、以前、あたしも、この本を持っていたんだよ。だけど、今は持っていないんだよ」
「途中で読むの飽きたの~?」
『無関心な、あんたと違って、エドナは好奇心旺盛だから、それはないだろ?』
(……多分)
「も~。酷いわ~。ナギちゃん」
「あたしが読めなかったのは、村にいた頃に、家で本を持っていた状態で、転んじゃったんだよ。その弾みで、本を離しちゃったんだよ。さらに、その本は窓ガラスを割って外へ跳び出ちゃったんだよ。さらに、さらに、隣の家である村長さんの家の窓ガラスも割って、家の中に入ちゃったんだよ。肝心の本は、ドアさんが作っていた、シチューの入った鍋の中に落ちちゃったんだよ。そして、本はシチュー塗れになって、ダメにしちゃったんだよ。はうう……」
(何とか装置みたいな展開だね。ドジから生まれた)
「だから、四英雄記は途中までしか、読むことができなかったんだよ。ルナちゃんが、偶々持っていたから、借りて、続きを読んでいるんだよ」
「良かったわね~。続きが読めて~。わたしは英雄伝説の殆どは読んだことはないのよ~。でも、聞いたことはあるわ~。確か、『四英雄記』は、当時の暗黒時代と言われる程の厄災が現れて、四人の英雄が、その当時の厄災を倒したって、お話だったような~?」
「そうなんだよ。勇者バルング、聖女ティア、弓聖ヒスイ、賢者サリナ。この四人の英雄が、当時の厄災を討ち滅ぼしたんだよ。確か、この四人も、二十年前の悪帝を討ち取った英雄の方々同様に、四人共、空の勇者と呼ばれていたんだって」
「……聖女ティアに、賢者サリナ……ねぇ」
カチュアの瞳の色が赤くなっていた。
「あれ? ナギさんだよね? どうしたんですか? 急に出て来て、ビックリしたんだよ」
「いや、何でない……」
(何で、表に出れたか、自分も分かっていない。でも、丁度いいか。カチュアは英雄譚に関して興味ないらしいから、聞けないことはがあるからな)
「その四人は、空の勇者と呼ばれていたような事を、言っていたみたいだけど、空の勇者の『空』を、そのまま捉えたら、空の国から来たの? それとも、『空』って、何かに例えているのかな?」
「あたしも、詳しくは分からないんだよ。この本によると、事故で空の国から来たことしか書かれていないんだよ」
「そのまま、空から来た人達なんだね。『空の国から来た』としか書かれていないのに、『来た』という断言する記述がないことに、ツッコミどころはあるけど、まあいいや。それで、その空の勇者と呼ばれている人達が厄災と呼ばれる存在を討ち取ったんだっけ?」
「うん。空から降りた時に、四人の仲間である二人と、逸れたらしいんだよ。その二人を探していたら、厄災との戦いに巻き込まれたらしいことが、書いてあるんだよ」
「探す、ついでに世界を救ったってことでいいの? とんだ、とばっちりだな。……前から、気になっていたんだけど。その、厄災って何だ?」
「厄災は、英雄譚を読んでいたら、何度も記されているんだよ。だけど……う~~ん……あたし自身、よく分からないんだよ。ただ、その時代に現れる、人類の敵の呼び名ぐらいしか、書かれていないんだよ」
「まあ、厄災と呼ばれるぐらいの存在だから、そういう認識か……」
「その厄災に、なんかあるんですか? ナギさんの記憶に関わる何かを?」
「いや……聞いて見ただけだ」
(まあ、引っ掛かっていることは、確かだ)
「……その~話が変わるんだけど、エドナが今読んでいるのが、『四英雄記』って言うんだよね。その前の、戦いが『蒼炎伝説』という、カチュアと同じ、蒼い髪と瞳を持つ女性が出てくる話で、いいんだね?」
(話が変わり過ぎだけど、今気になっているのは『蒼炎伝説』の方だから)
「うん、そうなんだよ。女将軍シェリア。色んな呼び方があるんだよ。『蒼姫』とか『蒼炎のシェリア』とか」
「『蒼炎伝説』って、やっぱり、その時代にも厄災と呼ばれる存在がいたの?」
「そうなんだよ。名前は確か……メリオダスっていうんだよ。『蒼炎伝説』は、伝説の女将軍シェリアと、当時の厄災と呼ばれている、義理のお兄さんのメリオダスの戦いなんだよ」
「ちょっと待って! 義理とはいえ、兄と妹との戦だったのか!?」
「本だと、そう書かれているんだよ」
「義理の兄妹の戦いか。何か引っかかるね。……容姿のことは、よく聞くけど、そのシェリアって、何者? それに、そのメリオダスも」
「えっ~とお……、確か……」
エドナが、本の内容を、必死に思い出そうとしていたところに。
部屋の扉が開いた。そこから、眼鏡を掛けたルナが入って来た。
「シェリアとメリオダスの二人は、同じ孤児院育ちで、由緒ある貴族に、二人同時に引き取ったって、伝われているんですよ」
「あ! ルナちゃんだ! あれ? ルナちゃんって、眼鏡掛けていたっけ?」
「先程まで本を読んでいたんです」
「孤児院育ちか……。ん? 二人は実の兄妹ではないんでしょ? 何で、二人同時に引き取ったんだ? 普通はしないんじゃないのか?」
「あれ? そういう、ものなんですか?」
「普通なら。ですが、二人はそれぞれ、メリオダスは魔術、シェリアは剣術の才能の持ち主で、その才能を買われたそうです。二人が当時、メリオダスが九歳で、シェリアは六歳ぐらいね。お互い、幼いながらも、大人顔負けの実力を持っていたそうです」
「二人は、勇能力の持ち主だったのか?」
「メリオダスはそうです。けど、シェリアは勇能力を持っていなかったそうですよ。だけど、本当か、どうかは分かりませんですけど、シェリアは勇能力を持った将軍クラスの者と稽古した時は、圧勝したそうですよ。そう、此間のカチュアさんのように」
「信じられない。私もガイザックとの戦いを見ていたけど、あれはカチュアが化け物過ぎただけで、相手がカチュア以外ならガイザックに苦戦していると思うよ。それぐらい手強かったよ、勇能力の持ち主は。つまり、そのシェリアも化け物並みに強かったってことか」
「化け物って、酷いわ~」
「そうですね……。話を戻しますが、二人が、それぞれ、十八、十五歳になった頃には、メリオダスは魔術研究者の第一責任者となったんです。当時、魔術革命と呼ばれるくらい、魔術が発展した時代だったんです。シェリアは、若くして騎士団団長の任意を就いていたんです」
「この辺は、よく読んでいても、凄さが分からないんだよ。イマイチ、ピンと来ないんだよ」
「でも、それだけ、凄い二人が、なんで争ったんだ? ここまでの話を聞いている限り、争う理由なんて、なかったはずだが」
「それは分からないです。ただ、メリオダスは突然、人が変わってしまったことしか……」
「あたしが読んだ英雄譚には、メリオダスが厄災と呼ばれる程の、人格へと変わってしまった経由は、記されていなかったんだよ。『蒼炎伝説』の記された本は、シェリア視点に書かれている本なんだよ」
「あら? そーなの~?」
いつの間にか、カチュアの瞳の色が蒼色に戻っていた。今、喋ったのは、カチュアだ。
「あれ? カチュアさん? いつの間にか、元に戻っているんだよ。ナギさんは?」
『長い時間、喋っていたら疲れた。私は休むね。会話は聞けるから』
「ナギちゃんなら、疲れてちゃったみたいだわ~。でも、話は聞いているって」
「カチュアさんは、ナギさんが表に出ている時、カチュアには意識があるんですか?」
「喋れなくなるぐらいで、普通に体は動かせられるわ~」
「……都合良すぎないですか?」
「そーなの~?」
「ところで、カチュアさん、エドナさん」
ルナの猫のよな細い目が、さらに細くなった。
「どーしたの~? ルナちゃん? そんな怖い顔をして?」
ルナは、大きく息を吐いた。
「『どーしたの~? ルナちゃん?』じゃないですよ。何か、忘れていることありますか?」
「ん? ……そう言えば、何かを、忘れている気がするんだよ。とても、大切なことを。う~ん……思い出せないんだよ!」
「それなら、きっと、気のせいだわ~」
「そっか、気のせい何だね! 何だ、ビックリしたんだよ!」
「んなわけないですよ! 待ち合わせ時間は十時ですよ。もう、三時間も遅刻ですよ。ルナは二人が中々来ないから、向いに来たんですよ!」
「待ち合わせって……」
カチュアとエドナは揃って考え込んでしまった。
そして。
「「あ」」
二人沿って、声を上げた。
「思い出したんだよ。そう言えば、今日、セシル王国に向かうんだったんだよ」
ルナは、また大きなため息を付いた。
「やっぱり、忘れていたんですね。先日、通行許可書を受け取ったから、即刻行こうとしていたのは、お二人だったのに」
「はうう……。ごめんなさい」
「ルナもお二方が来るのを、本を読みながら待っていたのが悪かったですから、お互い様です。それよりも、カチュアさんの被服が出来ましたので、着替えてください」
「分かったわ~」
(というよりか、ルナが被服を直接届けてついでに、起こせばよかったんですね。何で、そこまで頭が回らなかったですか? ルナは? 疲れているんでしょうか? 夜の三時まで、魔術の研究をしていたから)
「ふぁ~~~。よく寝たわ~~~」
カチュアは呑気に寝ていました。
カチュアの大きな欠伸が、この部屋全体に響き渡っていった。
「あ! おはよ~エドナちゃん~」
エドナは既に起きてはいたが、こちらも呑気に本を読んでいた。
「あ! カチュアさん。おはようなんだよ。今、十三時だよ」
「あら? あらら~?」
『「あらら」じゃ、ねぇよ! 「おはよう」の挨拶する時間帯過ぎているじゃないか!』
(カチュアが寝ている間、私も視界が暗くなるんだ。だから、私が起きたくってもカチュアが起きてくれなければ、視界が明るくならないんだ)
「あれ~。エドナちゃんは、本読んでいるのかしら~?」
「そうなんだよ。ルナちゃんから、借りたんだよ。英雄譚の『四英雄記』という、『蒼炎伝説』が広がった後に起こった、厄災との戦いを描いた話なんだよ」
「そー言えば、エドナちゃんは本読むの好きだったわね~」
「はい! やっと、これの続きが読めたんだよ。続きが読みたかったんだよ」
「あら~? 前に読んだことがあるの?」
「実は、以前、あたしも、この本を持っていたんだよ。だけど、今は持っていないんだよ」
「途中で読むの飽きたの~?」
『無関心な、あんたと違って、エドナは好奇心旺盛だから、それはないだろ?』
(……多分)
「も~。酷いわ~。ナギちゃん」
「あたしが読めなかったのは、村にいた頃に、家で本を持っていた状態で、転んじゃったんだよ。その弾みで、本を離しちゃったんだよ。さらに、その本は窓ガラスを割って外へ跳び出ちゃったんだよ。さらに、さらに、隣の家である村長さんの家の窓ガラスも割って、家の中に入ちゃったんだよ。肝心の本は、ドアさんが作っていた、シチューの入った鍋の中に落ちちゃったんだよ。そして、本はシチュー塗れになって、ダメにしちゃったんだよ。はうう……」
(何とか装置みたいな展開だね。ドジから生まれた)
「だから、四英雄記は途中までしか、読むことができなかったんだよ。ルナちゃんが、偶々持っていたから、借りて、続きを読んでいるんだよ」
「良かったわね~。続きが読めて~。わたしは英雄伝説の殆どは読んだことはないのよ~。でも、聞いたことはあるわ~。確か、『四英雄記』は、当時の暗黒時代と言われる程の厄災が現れて、四人の英雄が、その当時の厄災を倒したって、お話だったような~?」
「そうなんだよ。勇者バルング、聖女ティア、弓聖ヒスイ、賢者サリナ。この四人の英雄が、当時の厄災を討ち滅ぼしたんだよ。確か、この四人も、二十年前の悪帝を討ち取った英雄の方々同様に、四人共、空の勇者と呼ばれていたんだって」
「……聖女ティアに、賢者サリナ……ねぇ」
カチュアの瞳の色が赤くなっていた。
「あれ? ナギさんだよね? どうしたんですか? 急に出て来て、ビックリしたんだよ」
「いや、何でない……」
(何で、表に出れたか、自分も分かっていない。でも、丁度いいか。カチュアは英雄譚に関して興味ないらしいから、聞けないことはがあるからな)
「その四人は、空の勇者と呼ばれていたような事を、言っていたみたいだけど、空の勇者の『空』を、そのまま捉えたら、空の国から来たの? それとも、『空』って、何かに例えているのかな?」
「あたしも、詳しくは分からないんだよ。この本によると、事故で空の国から来たことしか書かれていないんだよ」
「そのまま、空から来た人達なんだね。『空の国から来た』としか書かれていないのに、『来た』という断言する記述がないことに、ツッコミどころはあるけど、まあいいや。それで、その空の勇者と呼ばれている人達が厄災と呼ばれる存在を討ち取ったんだっけ?」
「うん。空から降りた時に、四人の仲間である二人と、逸れたらしいんだよ。その二人を探していたら、厄災との戦いに巻き込まれたらしいことが、書いてあるんだよ」
「探す、ついでに世界を救ったってことでいいの? とんだ、とばっちりだな。……前から、気になっていたんだけど。その、厄災って何だ?」
「厄災は、英雄譚を読んでいたら、何度も記されているんだよ。だけど……う~~ん……あたし自身、よく分からないんだよ。ただ、その時代に現れる、人類の敵の呼び名ぐらいしか、書かれていないんだよ」
「まあ、厄災と呼ばれるぐらいの存在だから、そういう認識か……」
「その厄災に、なんかあるんですか? ナギさんの記憶に関わる何かを?」
「いや……聞いて見ただけだ」
(まあ、引っ掛かっていることは、確かだ)
「……その~話が変わるんだけど、エドナが今読んでいるのが、『四英雄記』って言うんだよね。その前の、戦いが『蒼炎伝説』という、カチュアと同じ、蒼い髪と瞳を持つ女性が出てくる話で、いいんだね?」
(話が変わり過ぎだけど、今気になっているのは『蒼炎伝説』の方だから)
「うん、そうなんだよ。女将軍シェリア。色んな呼び方があるんだよ。『蒼姫』とか『蒼炎のシェリア』とか」
「『蒼炎伝説』って、やっぱり、その時代にも厄災と呼ばれる存在がいたの?」
「そうなんだよ。名前は確か……メリオダスっていうんだよ。『蒼炎伝説』は、伝説の女将軍シェリアと、当時の厄災と呼ばれている、義理のお兄さんのメリオダスの戦いなんだよ」
「ちょっと待って! 義理とはいえ、兄と妹との戦だったのか!?」
「本だと、そう書かれているんだよ」
「義理の兄妹の戦いか。何か引っかかるね。……容姿のことは、よく聞くけど、そのシェリアって、何者? それに、そのメリオダスも」
「えっ~とお……、確か……」
エドナが、本の内容を、必死に思い出そうとしていたところに。
部屋の扉が開いた。そこから、眼鏡を掛けたルナが入って来た。
「シェリアとメリオダスの二人は、同じ孤児院育ちで、由緒ある貴族に、二人同時に引き取ったって、伝われているんですよ」
「あ! ルナちゃんだ! あれ? ルナちゃんって、眼鏡掛けていたっけ?」
「先程まで本を読んでいたんです」
「孤児院育ちか……。ん? 二人は実の兄妹ではないんでしょ? 何で、二人同時に引き取ったんだ? 普通はしないんじゃないのか?」
「あれ? そういう、ものなんですか?」
「普通なら。ですが、二人はそれぞれ、メリオダスは魔術、シェリアは剣術の才能の持ち主で、その才能を買われたそうです。二人が当時、メリオダスが九歳で、シェリアは六歳ぐらいね。お互い、幼いながらも、大人顔負けの実力を持っていたそうです」
「二人は、勇能力の持ち主だったのか?」
「メリオダスはそうです。けど、シェリアは勇能力を持っていなかったそうですよ。だけど、本当か、どうかは分かりませんですけど、シェリアは勇能力を持った将軍クラスの者と稽古した時は、圧勝したそうですよ。そう、此間のカチュアさんのように」
「信じられない。私もガイザックとの戦いを見ていたけど、あれはカチュアが化け物過ぎただけで、相手がカチュア以外ならガイザックに苦戦していると思うよ。それぐらい手強かったよ、勇能力の持ち主は。つまり、そのシェリアも化け物並みに強かったってことか」
「化け物って、酷いわ~」
「そうですね……。話を戻しますが、二人が、それぞれ、十八、十五歳になった頃には、メリオダスは魔術研究者の第一責任者となったんです。当時、魔術革命と呼ばれるくらい、魔術が発展した時代だったんです。シェリアは、若くして騎士団団長の任意を就いていたんです」
「この辺は、よく読んでいても、凄さが分からないんだよ。イマイチ、ピンと来ないんだよ」
「でも、それだけ、凄い二人が、なんで争ったんだ? ここまでの話を聞いている限り、争う理由なんて、なかったはずだが」
「それは分からないです。ただ、メリオダスは突然、人が変わってしまったことしか……」
「あたしが読んだ英雄譚には、メリオダスが厄災と呼ばれる程の、人格へと変わってしまった経由は、記されていなかったんだよ。『蒼炎伝説』の記された本は、シェリア視点に書かれている本なんだよ」
「あら? そーなの~?」
いつの間にか、カチュアの瞳の色が蒼色に戻っていた。今、喋ったのは、カチュアだ。
「あれ? カチュアさん? いつの間にか、元に戻っているんだよ。ナギさんは?」
『長い時間、喋っていたら疲れた。私は休むね。会話は聞けるから』
「ナギちゃんなら、疲れてちゃったみたいだわ~。でも、話は聞いているって」
「カチュアさんは、ナギさんが表に出ている時、カチュアには意識があるんですか?」
「喋れなくなるぐらいで、普通に体は動かせられるわ~」
「……都合良すぎないですか?」
「そーなの~?」
「ところで、カチュアさん、エドナさん」
ルナの猫のよな細い目が、さらに細くなった。
「どーしたの~? ルナちゃん? そんな怖い顔をして?」
ルナは、大きく息を吐いた。
「『どーしたの~? ルナちゃん?』じゃないですよ。何か、忘れていることありますか?」
「ん? ……そう言えば、何かを、忘れている気がするんだよ。とても、大切なことを。う~ん……思い出せないんだよ!」
「それなら、きっと、気のせいだわ~」
「そっか、気のせい何だね! 何だ、ビックリしたんだよ!」
「んなわけないですよ! 待ち合わせ時間は十時ですよ。もう、三時間も遅刻ですよ。ルナは二人が中々来ないから、向いに来たんですよ!」
「待ち合わせって……」
カチュアとエドナは揃って考え込んでしまった。
そして。
「「あ」」
二人沿って、声を上げた。
「思い出したんだよ。そう言えば、今日、セシル王国に向かうんだったんだよ」
ルナは、また大きなため息を付いた。
「やっぱり、忘れていたんですね。先日、通行許可書を受け取ったから、即刻行こうとしていたのは、お二人だったのに」
「はうう……。ごめんなさい」
「ルナもお二方が来るのを、本を読みながら待っていたのが悪かったですから、お互い様です。それよりも、カチュアさんの被服が出来ましたので、着替えてください」
「分かったわ~」
(というよりか、ルナが被服を直接届けてついでに、起こせばよかったんですね。何で、そこまで頭が回らなかったですか? ルナは? 疲れているんでしょうか? 夜の三時まで、魔術の研究をしていたから)
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