6 / 54
6
しおりを挟む
あの後すぐに、エドモンドは屋敷を訪ねてきた彼の部下達に引きずられるようにして、王城に連れ去られていった。
夜には戻るとエドモンドが言うと、彼の部下達からは「どんだけ仕事が溜まっていると思っているんですか?」「夜どころか数日は帰れませんからね」「俺達だってねぇ、帰りたいんですからね!」と捲し立てられていたから、彼らの言葉を鵜呑みにするのならば今夜は屋敷に帰ってこれないのだろう。
(まさかあのエドモンドが仕事を休んでいただなんて)
王城で次期宰相候補のエドモンドをやっかむものは多い。如何に彼が優秀であろと、人当たりを良く振る舞おうと、彼が『公爵家の次男』だというだけで彼の実力が『親の七光り』だと吹聴されてしまう。
彼はそれを鼻で笑って「身をもって僕の優秀さを骨の髄まで分からせてやりますよ」と言って、その言葉通りに朝も昼も働き詰めだったからこそ、わたしのために休んでくれていたことが意外だった。
(今夜はわたし一人か……)
既にわたしは夕飯を終えて、お風呂にも入った。後は寝るだけなのだが、少しの間くらいエドモンドを待つべきなのだろうか?
チラリと部屋に一つしかないベッドに視線を落とす。
(このベッドで寝たら良いのかな?)
メイドに案内された部屋は、今までわたしが使っていた部屋ではなく、エドモンドの私室であった。だから今夜わたしが眠るとしたら、彼が普段使っているものだ。なんだかドキドキしてベッドから視線を外す。
彼の部屋はインテリアがほとんどなく、その代わりに壁一面もある大きな本棚には所狭しと云わんばかりに本が敷き詰められている。時間もあることだからと何冊か取ってみると、どれも専門的な内容でわたしには難しい。これでは暇を潰せそうにないなと思っていると、部屋の扉からノックの音が聞こえた。
「はい」
「……良かった。まだ起きていたのですね」
部屋を訪ねてきたのはエドモンドだった。彼は安堵した様子で胸を撫で下ろすと、真っ直ぐにわたしに近付く。
「ただいま、戻りました」
「お、おかえりなさい」
「ふふ。なんだか新婚さんみたいなやり取りですね」
「……まだ仕事があるのでは?」
思わぬ不意打ちに顔が赤くなりそうで、慌ててそっぽを向く。
「そんなもの休憩なしで終わらせてきましたよ」
「なんで、そんな無茶を……」
「だって約束したでしょう? 今夜には帰るって」
なんてないことのように言ってのけるが、彼の部下達も数日の泊まり込みを覚悟するほどの仕事量をこなしてきているのだ。
「……クマが濃くなっています。今日は早めに休んだらどうです?」
「そうですね。さすがに僕も疲れました。入浴を終えたら、フィオナと眠るとしましょう」
「え?」
どうやらわたしは墓穴を掘ってしまったらしい。
夜には戻るとエドモンドが言うと、彼の部下達からは「どんだけ仕事が溜まっていると思っているんですか?」「夜どころか数日は帰れませんからね」「俺達だってねぇ、帰りたいんですからね!」と捲し立てられていたから、彼らの言葉を鵜呑みにするのならば今夜は屋敷に帰ってこれないのだろう。
(まさかあのエドモンドが仕事を休んでいただなんて)
王城で次期宰相候補のエドモンドをやっかむものは多い。如何に彼が優秀であろと、人当たりを良く振る舞おうと、彼が『公爵家の次男』だというだけで彼の実力が『親の七光り』だと吹聴されてしまう。
彼はそれを鼻で笑って「身をもって僕の優秀さを骨の髄まで分からせてやりますよ」と言って、その言葉通りに朝も昼も働き詰めだったからこそ、わたしのために休んでくれていたことが意外だった。
(今夜はわたし一人か……)
既にわたしは夕飯を終えて、お風呂にも入った。後は寝るだけなのだが、少しの間くらいエドモンドを待つべきなのだろうか?
チラリと部屋に一つしかないベッドに視線を落とす。
(このベッドで寝たら良いのかな?)
メイドに案内された部屋は、今までわたしが使っていた部屋ではなく、エドモンドの私室であった。だから今夜わたしが眠るとしたら、彼が普段使っているものだ。なんだかドキドキしてベッドから視線を外す。
彼の部屋はインテリアがほとんどなく、その代わりに壁一面もある大きな本棚には所狭しと云わんばかりに本が敷き詰められている。時間もあることだからと何冊か取ってみると、どれも専門的な内容でわたしには難しい。これでは暇を潰せそうにないなと思っていると、部屋の扉からノックの音が聞こえた。
「はい」
「……良かった。まだ起きていたのですね」
部屋を訪ねてきたのはエドモンドだった。彼は安堵した様子で胸を撫で下ろすと、真っ直ぐにわたしに近付く。
「ただいま、戻りました」
「お、おかえりなさい」
「ふふ。なんだか新婚さんみたいなやり取りですね」
「……まだ仕事があるのでは?」
思わぬ不意打ちに顔が赤くなりそうで、慌ててそっぽを向く。
「そんなもの休憩なしで終わらせてきましたよ」
「なんで、そんな無茶を……」
「だって約束したでしょう? 今夜には帰るって」
なんてないことのように言ってのけるが、彼の部下達も数日の泊まり込みを覚悟するほどの仕事量をこなしてきているのだ。
「……クマが濃くなっています。今日は早めに休んだらどうです?」
「そうですね。さすがに僕も疲れました。入浴を終えたら、フィオナと眠るとしましょう」
「え?」
どうやらわたしは墓穴を掘ってしまったらしい。
26
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
お義兄様に一目惚れした!
よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。
なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。
仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。
そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。
クリステルはセドリックに一目惚れ。
けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。
クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。
ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。
その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら……
全38話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる