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53.
「……かいぜるさま、すき」
小さな声。
けれど、はっきりと届いた。
⸻
「…………」
カイゼルは、動かなかった。
いや――動けなかった。
思考が、一瞬止まる。
目の前には、少しだけ頬を赤くしたエアリス。
言った本人は。
言ったことの重さを、どこまで分かっているのか。
ただ、まっすぐに見上げてくる。
「……」
胸の奥が、じわりと熱くなる。
戦場でも。
どんな報告でも。
揺れたことのない場所が――
確かに、揺れた。
⸻
「……そうか」
ようやく出た言葉は、短い。
だが。
声は、いつもより少しだけ低かった。
エアリスは、少しだけ不安そうに首を傾げる。
(……あ)
その反応で気づく。
(……これでは、伝わらない)
「……来い」
短く言う。
エアリスが一歩近づく。
そのまま――
手首をそっと取る。
びくっと震えるが、逃げない。
「……」
カイゼルは少しだけ迷ってから。
その手を――
包むように握る。
「……っ」
エアリスの目が大きくなる。
はじめて手を繋がれた。
「……私もだ」
低く、はっきりと。
エアリスの目を見て言う。
「……?」
一瞬、理解が追いつかない顔。
それでも。
少しずつ。
言葉の意味が染みていく。
「……す、き」
小さく、復唱するように。
「……ああ」
短く頷くカイゼル。
沈黙。
でも――
さっきまでとは違う。
少しだけ、あたたかい沈黙。
⸻
「……帰るぞ」
そのまま、手を離さない。
エアリスは驚きながらも――
ぎゅっと、少しだけ握り返す。
「……!」
カイゼルの指が、わずかに強くなる。
来た時と同じ馬。
だが――
今は少し違う。
「……しっかり掴まっていろ」
エアリスはこくりと頷く。
そのまま、カイゼルの服を掴む。
……だけではなく。
さっき繋いだ手。
名残のように、少しだけ触れる。
「……」
何も言わないカイゼル。
だが、手綱を握る手とは反対の手が――
ほんのわずか、後ろに下がる。
触れられる距離に。
風が吹く。
夏の、やわらかい風。
揺れる緑。
沈みかける夕日。
「……」
エアリスは、そっと目を閉じる。
(……すき)
さっき言った言葉。
初めて、自分の口で言えた。
怖くなかった。
逃げなかった。
そして――
返ってきた。
「……かいぜるさま」
ぽつり。
呼ぶ。
「どうした」
すぐに返ってくる声。
「……すき」
今度は、さっきより少しだけ自然に。
カイゼルは、一瞬だけ目を閉じる。
(……参ったな)
心の中で、そう呟く。
「……あまり、何度も言うな」
低い声。
「……?」
不思議そうなエアリス。
そのまま少しだけ振り返りるカイゼル。
「……こんなにも自分が持たないとは…」
「……?」
意味は分からない。
そのまま。
二人は、並んで帰っていく。
手の温もりを、残したまま。
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みんなの感想(11件)
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尊いよ‼ぅっっっっああ!私の萌えツボに、ささぅーぅーーぅーーーーぅぅる
……これでは、伝わらない
カイゼル様!最高です👏👏
エアリスの無自覚な思いが先に形になって皆を守ってて、読んでてじんわり涙出て来たよ
声が出てよかった(TдT)