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第一部 王国に召喚された魂約者
4.急展開に緊急事態!?ショート寸前な俺の思考回路!!
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「姉さん」と呼んだその男性は――どうやら、さっき俺に告白してきた残念美人の“兄”らしい。
ちなみに“残念美人”というのは、もちろん名前をまだ知らないあの銀髪美少女のことだ。美人なのに、言動がすべて残念。さっきも「子供が欲しい!」とか爆弾発言かましたし……。
追い打ちとばかりに実の姉からDVレベルの鉄拳制裁受けてるし……。
お兄さんも、お姉さんも同じ銀髪。光の角度によって淡く空色にも見える髪は、上質な絹の様に艶ややかで、どちらも見惚れるほど美しい。
色味はお兄さんのほうが濃いように感じる。姉は透き通るように明るい銀色で、夜空に溶ける星明かりを思わせる。対してお兄さんの銀は深みがあり、満月の光のように輝きを帯びている。
そんな二人の瞳はガーネットの様に紅い。姉はクールで射抜くような眼差しで、人を黙らせる迫力がある。お兄さんは柔らかな微笑みを浮かべているせいか、同じ紅い瞳でもどこか温かみを感じさせた。
……まぁ、外見の話はどうでもいい。問題はそこじゃない。
お兄さんはどうして溶岩の上に立ってるんですか??
靴、完全に溶岩に触れてますよね!? 熱くないんですか!? なんで燃えないんですか!?
……いや待て。よく見ると、足元からチロチロ火が立ってはいるみたいだ。
普通なら黒こげコースなのに……全然平気そうって、どんな素材だよその靴!?
……あぁ、はいはい、どうせ魔法ですよね。そうですか。
だって異世界だもんねここ!なんでも魔法で片付けられるよね!
俺の思考回路はもうショート寸前なのだが、そんな俺には気づいてもらえずお姉さんが小さく息を吐いた。
「ふむ、確かにこのままでは皆に申し訳がないのう。それに、いつまでも勇者たちをあのままにしておくわけにもいかぬしな」
そう言って、彼女はつま先で軽く地面をコツンと叩いた。
――瞬間。
真っ白な煙が結界のブワッと煮えたぎっていた溶岩池を覆うと、その端からみるみる白く凍りついていく。
ゴボゴボと泡立っていた赤黒い液体がすべて凍結し、真っ赤に染まっていた景色が一変。
そこに広がっていたのは、さっきまでとは真逆の世界だった。
「…………はい?」
俺の脳みそは完全に処理落ちした。
だってさっきまで地獄みたいな灼熱空間だったのが、つま先コツンで氷河期ですよ!?
もうさ思考放棄しても誰も文句言わないよね?冗談ぬきでさ!
だが驚きはまだ続く。
お姉さんが指を鳴らすと、氷がピシピシパキーンと砕け散り、空気に溶けるように氷の欠片は消えていき、煮えたぎっていた溶岩は完全に冷めて黒い床が現れた。
しかしそれだけでは終わらない。お姉さんがすっと手を掲げると、空間に黒い線がピーッと走り、そこが音もなく“クパァ”と開いた。まるで現実が裂けたみたいにその先は真っ暗な空間が広がっている。
「……え、なにこれ。バグ? 次元の裂け目?? 俺の知ってるゲームなら、絶対エラーメッセージ出るやつだよな?」
≪いや、空間魔法って線もあるのか?≫
そんなことを考えながら呆然と見ている俺をよそに、お姉さんはそこから小さな立体――ひし形の黒い物体を取り出し、掌に収めてぐっと握ると、それは黒曜石のようにきらめきを放つ。
次の瞬間、彼女はそれを足元に落とした。
カラン、と乾いた音を立てて転がるのかと思えば、そのひし形は地面に吸い込まれるようにして消え――そこ中心に淡い光が広がり、最初に俺たちが召喚された時の場所が再現された。
溶岩から岩の床に変わったことで見る影がなかったこの場所が元通り。魔法陣までもが丁寧に修復されていた。
「ふむ、これで問題なかろう」
お姉さんが涼しい顔で言い放つと、周囲がどよめいた。
「ありえん……こんなことが……」
「さすがは“賢竜姫”……」
「相も変わらずとんでもないもの作るねぇ」
兵士や神官らしき人々のざわめきが一気に広がる。だがその混乱を、銀髪のお兄さんが片手をすっと挙げただけで鎮めてしまった。
「皆、我が兄妹たちが騒がせてしまって申し訳ない。今回の件については、後日改めて説明させてほしい」
その声は場を包み込むように落ち着いていて、さっきお姉さんや残念美少女と接していた柔らかな雰囲気とは異なり、まるで王者のような貫禄を感じさせる。
だが、その威圧感はすぐにやわらぎ、ニコリと微笑むと――
「今は――勇者たちの件が、最優先だからね」
そう言ってこちらに視線を向けたお兄さんの瞳が、紅い光を宿して妖しくきらめいた。
――――
それから薄暗かったこの場所は、照明のような光に照らされ始め、広間の全容が見えてきた。
……そして俺は驚いた。
「え……? なにこの人口密度……」
この広間、思っていた以上に広い。
≪下手したら小さな舞踏会くらい開けるんじゃないか?≫
そう思いながら呆けていると、奥から威厳に満ちた声が響き渡った。
「異世界の勇者諸君。初対面でとんだ歓迎になってしまったが……まずは、諸君をこの地に迎えられたことを心より喜ばしく思う」
全員の視線が声の主へと集まる。
そこに立っていたのは、頭に王冠を載せた初老の男性――この国の国王だった。
こうして俺たちは、この国の王様から話を聞くことになった。
召喚されたこの場所で、そのまま続行である。
いやいや、俺の読んでるラノベだとこういう時って、王様の待つ謁見の間まで移動する展開じゃない?
……まあ、そうなったら絶対に赤城がうるさいし、正直助かるんだけどさ。
けして「遠くまで歩かなくて済んでよかった~」なんて楽できて喜んでるわけじゃない。うん、断じて違う。
ちなみに――残念美少女と、その姉と兄。
あの銀髪トリオはこの国の王族じゃないみたいだ。国王とは別の方向に歩いて行ったから、たぶんそうなんだろう。
≪あの兄妹ってホント何者だよ……?≫
しかも残念美少女は、顔を真っ赤に染めながら俺にウインクして去っていった。
……え、なに? それ、俺、勘違いしていいやつ? いやいや、どう考えても羞恥の産物だろ。
俺の人生に、そんな都合のいいイベントが起こるわけがない。
……でも――
≪ねぇ私、あなたとの子供が欲しい!≫
って言ってたしなぁ……。
そうしていると王の左右に、気品ある妃殿下、凛々しい表情の王子、姫が姿を表す――どこか頬を赤らめて。
……あー、はいはい。どうせ天条院に惚れたんでしょ。こういうテンプレは異世界でも健在なのね。
その天条院が一歩前に進み出る。背筋を伸ばし、堂々と声を上げた。
「歓迎してくださり、ありがとうございます! それで、一体ここはどこなのでしょうか?」
彼の声もよく通る。やっぱり陽キャの王道代表は、どんな世界でも輝いてやがる。
「この世界はヴァルグランデ。お主たちからすれば、まさしく“異世界”にあたる。そしてここは、その世界にあるセレディア王国の王城――“召喚の間”と呼ばれる場所だ」
国王の言葉に、俺たちは思わず息をのんだ。
後ろで羽里が、小さく「本当に……異世界なの?」とつぶやく。その震えは緊張か、それとも期待か。
だが、次の瞬間、静寂をぶち破る怒声が響いた。
「ふざけんじゃねぇ!! こんなの、ただの誘拐じゃねぇか!! さっさと俺たちを帰しやがれ!!」
赤城獅童だ。怒りに任せて拳を振り上げ、王に食ってかかろうとする。
「赤城、ここでそんなふうに言っても意味ないだろ」
天条院が冷静に制止する。だが赤城は鼻息を荒げて睨み返した。
「んだとコラ! やんのか!?」
「そういうことじゃない!」
「えっと、二人とも落ち着いて!」
柊と羽里が慌てて割って入る。場は一気にざわめき、兵士たちも一歩踏み出しかけた。
そんな空気の中、羽里が恐る恐る手を挙げる。
「あの……王様? 質問いいですか?」
「うむ、聞こう」
「……アタシたちは、帰ることができるんでしょうか?」
場が静まり返る。誰もが注目する中、国王はしばし目を閉じ、そして深く頷いた。
「それについては……申し訳なく思っている」
そう言って、王は――いや王族全員が頭を下げた。
「!!」
さすがに、広間全体がざわめいた。王だけでも驚きなのに王族全員なのだから。
臣下たちも想像していなかったのだろう。俺も思わず目を丸くする。
そんな中で柊が一歩前に進み、問いただした。
「ど、どういうことでしょうか……?」
王がゆっくりと顔を上げ、重々しい声で告げる。
「お主たちの世界と、このヴァルグランデとでは、“格”が違うのだ」
「格……?」
俺たちは顔を見合わせる。
「お主たちの世界は、我らの世界よりも上位にある。ゆえに――そちらからこちらへと境界に穴を開け、召喚することはできる。だが、我らからそちらへ渡ることは叶わぬのだ」
王は言葉を選ぶようにして続ける。
「たとえるなら……水の流れを想像してほしい。高きより低きへと流れる水。だがその流れを逆にすることは、常の理では叶わぬ。お主たちの召喚もまた、それと同じだ。こちらへは来れるが――帰る術はないのだ」
……静寂。
誰もが絶句した。
俺は心の中で叫ぶ。
――おいおいおい、マジかよ!?
ゲームやラノベなら「帰る方法を探す旅」が始まる展開だけど!? え、これ、ほんとに詰んでない!?
広間の空気は、重く沈み込んでいった。
ちなみに“残念美人”というのは、もちろん名前をまだ知らないあの銀髪美少女のことだ。美人なのに、言動がすべて残念。さっきも「子供が欲しい!」とか爆弾発言かましたし……。
追い打ちとばかりに実の姉からDVレベルの鉄拳制裁受けてるし……。
お兄さんも、お姉さんも同じ銀髪。光の角度によって淡く空色にも見える髪は、上質な絹の様に艶ややかで、どちらも見惚れるほど美しい。
色味はお兄さんのほうが濃いように感じる。姉は透き通るように明るい銀色で、夜空に溶ける星明かりを思わせる。対してお兄さんの銀は深みがあり、満月の光のように輝きを帯びている。
そんな二人の瞳はガーネットの様に紅い。姉はクールで射抜くような眼差しで、人を黙らせる迫力がある。お兄さんは柔らかな微笑みを浮かべているせいか、同じ紅い瞳でもどこか温かみを感じさせた。
……まぁ、外見の話はどうでもいい。問題はそこじゃない。
お兄さんはどうして溶岩の上に立ってるんですか??
靴、完全に溶岩に触れてますよね!? 熱くないんですか!? なんで燃えないんですか!?
……いや待て。よく見ると、足元からチロチロ火が立ってはいるみたいだ。
普通なら黒こげコースなのに……全然平気そうって、どんな素材だよその靴!?
……あぁ、はいはい、どうせ魔法ですよね。そうですか。
だって異世界だもんねここ!なんでも魔法で片付けられるよね!
俺の思考回路はもうショート寸前なのだが、そんな俺には気づいてもらえずお姉さんが小さく息を吐いた。
「ふむ、確かにこのままでは皆に申し訳がないのう。それに、いつまでも勇者たちをあのままにしておくわけにもいかぬしな」
そう言って、彼女はつま先で軽く地面をコツンと叩いた。
――瞬間。
真っ白な煙が結界のブワッと煮えたぎっていた溶岩池を覆うと、その端からみるみる白く凍りついていく。
ゴボゴボと泡立っていた赤黒い液体がすべて凍結し、真っ赤に染まっていた景色が一変。
そこに広がっていたのは、さっきまでとは真逆の世界だった。
「…………はい?」
俺の脳みそは完全に処理落ちした。
だってさっきまで地獄みたいな灼熱空間だったのが、つま先コツンで氷河期ですよ!?
もうさ思考放棄しても誰も文句言わないよね?冗談ぬきでさ!
だが驚きはまだ続く。
お姉さんが指を鳴らすと、氷がピシピシパキーンと砕け散り、空気に溶けるように氷の欠片は消えていき、煮えたぎっていた溶岩は完全に冷めて黒い床が現れた。
しかしそれだけでは終わらない。お姉さんがすっと手を掲げると、空間に黒い線がピーッと走り、そこが音もなく“クパァ”と開いた。まるで現実が裂けたみたいにその先は真っ暗な空間が広がっている。
「……え、なにこれ。バグ? 次元の裂け目?? 俺の知ってるゲームなら、絶対エラーメッセージ出るやつだよな?」
≪いや、空間魔法って線もあるのか?≫
そんなことを考えながら呆然と見ている俺をよそに、お姉さんはそこから小さな立体――ひし形の黒い物体を取り出し、掌に収めてぐっと握ると、それは黒曜石のようにきらめきを放つ。
次の瞬間、彼女はそれを足元に落とした。
カラン、と乾いた音を立てて転がるのかと思えば、そのひし形は地面に吸い込まれるようにして消え――そこ中心に淡い光が広がり、最初に俺たちが召喚された時の場所が再現された。
溶岩から岩の床に変わったことで見る影がなかったこの場所が元通り。魔法陣までもが丁寧に修復されていた。
「ふむ、これで問題なかろう」
お姉さんが涼しい顔で言い放つと、周囲がどよめいた。
「ありえん……こんなことが……」
「さすがは“賢竜姫”……」
「相も変わらずとんでもないもの作るねぇ」
兵士や神官らしき人々のざわめきが一気に広がる。だがその混乱を、銀髪のお兄さんが片手をすっと挙げただけで鎮めてしまった。
「皆、我が兄妹たちが騒がせてしまって申し訳ない。今回の件については、後日改めて説明させてほしい」
その声は場を包み込むように落ち着いていて、さっきお姉さんや残念美少女と接していた柔らかな雰囲気とは異なり、まるで王者のような貫禄を感じさせる。
だが、その威圧感はすぐにやわらぎ、ニコリと微笑むと――
「今は――勇者たちの件が、最優先だからね」
そう言ってこちらに視線を向けたお兄さんの瞳が、紅い光を宿して妖しくきらめいた。
――――
それから薄暗かったこの場所は、照明のような光に照らされ始め、広間の全容が見えてきた。
……そして俺は驚いた。
「え……? なにこの人口密度……」
この広間、思っていた以上に広い。
≪下手したら小さな舞踏会くらい開けるんじゃないか?≫
そう思いながら呆けていると、奥から威厳に満ちた声が響き渡った。
「異世界の勇者諸君。初対面でとんだ歓迎になってしまったが……まずは、諸君をこの地に迎えられたことを心より喜ばしく思う」
全員の視線が声の主へと集まる。
そこに立っていたのは、頭に王冠を載せた初老の男性――この国の国王だった。
こうして俺たちは、この国の王様から話を聞くことになった。
召喚されたこの場所で、そのまま続行である。
いやいや、俺の読んでるラノベだとこういう時って、王様の待つ謁見の間まで移動する展開じゃない?
……まあ、そうなったら絶対に赤城がうるさいし、正直助かるんだけどさ。
けして「遠くまで歩かなくて済んでよかった~」なんて楽できて喜んでるわけじゃない。うん、断じて違う。
ちなみに――残念美少女と、その姉と兄。
あの銀髪トリオはこの国の王族じゃないみたいだ。国王とは別の方向に歩いて行ったから、たぶんそうなんだろう。
≪あの兄妹ってホント何者だよ……?≫
しかも残念美少女は、顔を真っ赤に染めながら俺にウインクして去っていった。
……え、なに? それ、俺、勘違いしていいやつ? いやいや、どう考えても羞恥の産物だろ。
俺の人生に、そんな都合のいいイベントが起こるわけがない。
……でも――
≪ねぇ私、あなたとの子供が欲しい!≫
って言ってたしなぁ……。
そうしていると王の左右に、気品ある妃殿下、凛々しい表情の王子、姫が姿を表す――どこか頬を赤らめて。
……あー、はいはい。どうせ天条院に惚れたんでしょ。こういうテンプレは異世界でも健在なのね。
その天条院が一歩前に進み出る。背筋を伸ばし、堂々と声を上げた。
「歓迎してくださり、ありがとうございます! それで、一体ここはどこなのでしょうか?」
彼の声もよく通る。やっぱり陽キャの王道代表は、どんな世界でも輝いてやがる。
「この世界はヴァルグランデ。お主たちからすれば、まさしく“異世界”にあたる。そしてここは、その世界にあるセレディア王国の王城――“召喚の間”と呼ばれる場所だ」
国王の言葉に、俺たちは思わず息をのんだ。
後ろで羽里が、小さく「本当に……異世界なの?」とつぶやく。その震えは緊張か、それとも期待か。
だが、次の瞬間、静寂をぶち破る怒声が響いた。
「ふざけんじゃねぇ!! こんなの、ただの誘拐じゃねぇか!! さっさと俺たちを帰しやがれ!!」
赤城獅童だ。怒りに任せて拳を振り上げ、王に食ってかかろうとする。
「赤城、ここでそんなふうに言っても意味ないだろ」
天条院が冷静に制止する。だが赤城は鼻息を荒げて睨み返した。
「んだとコラ! やんのか!?」
「そういうことじゃない!」
「えっと、二人とも落ち着いて!」
柊と羽里が慌てて割って入る。場は一気にざわめき、兵士たちも一歩踏み出しかけた。
そんな空気の中、羽里が恐る恐る手を挙げる。
「あの……王様? 質問いいですか?」
「うむ、聞こう」
「……アタシたちは、帰ることができるんでしょうか?」
場が静まり返る。誰もが注目する中、国王はしばし目を閉じ、そして深く頷いた。
「それについては……申し訳なく思っている」
そう言って、王は――いや王族全員が頭を下げた。
「!!」
さすがに、広間全体がざわめいた。王だけでも驚きなのに王族全員なのだから。
臣下たちも想像していなかったのだろう。俺も思わず目を丸くする。
そんな中で柊が一歩前に進み、問いただした。
「ど、どういうことでしょうか……?」
王がゆっくりと顔を上げ、重々しい声で告げる。
「お主たちの世界と、このヴァルグランデとでは、“格”が違うのだ」
「格……?」
俺たちは顔を見合わせる。
「お主たちの世界は、我らの世界よりも上位にある。ゆえに――そちらからこちらへと境界に穴を開け、召喚することはできる。だが、我らからそちらへ渡ることは叶わぬのだ」
王は言葉を選ぶようにして続ける。
「たとえるなら……水の流れを想像してほしい。高きより低きへと流れる水。だがその流れを逆にすることは、常の理では叶わぬ。お主たちの召喚もまた、それと同じだ。こちらへは来れるが――帰る術はないのだ」
……静寂。
誰もが絶句した。
俺は心の中で叫ぶ。
――おいおいおい、マジかよ!?
ゲームやラノベなら「帰る方法を探す旅」が始まる展開だけど!? え、これ、ほんとに詰んでない!?
広間の空気は、重く沈み込んでいった。
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