魔王とは戦わず国王を捕まえる

颯馬

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45話 大雨

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 次の日。リビングで昨日の報酬を受け取る。

「き、金貨600枚・・・。一応聞きます。他に何かなかったんですか?」
「ありませんでした。他の物では釣り合わないで、お金になりました」
「・・・有難くいただきます。分配するぞ」

「タクヤ。俺は受け取れないからな」
「分かってるよ。取り合ずアレアには金貨300枚で良いよな」
「半分もボクに渡す気!? こんなに受け取れないよ・・・」

「仕方がねぇだろ。アレアに半分渡せば、丁度割り切れるんだよ。アレアだけ報酬無しにするわけには、いかねぇだろ」
「だったらもう少し減らしてよ! こっちの金銭感覚が可笑しくなるよ!」
「んなもん知るか! サッサと受け取れ!」

 僕は強引に金貨300枚を、アレアに渡す。

「どうしよこれ・・・」
「金貨300枚あっても、旅ですぐに無くなるだろ。それにそれだけあれば、もっといい物が買えるな。例えばテントとか寝袋とか」
「・・・そっか。路銀として使えば良いんだ」

「気付けよ。僕たちは金貨100枚づつで平気か?」
「平気だ。アディシアも問題は無いそうだな」

 僕は2人に金貨100枚を渡す。僕は残った金貨100枚を、アイテムボックスに入れる。

「ではこれで次の所に行けますね。前にも言いましたが、サラバン村には四天王の1人がいます。その人に手紙を渡してください」
「はい。今までお世話になりました」
「色々楽しかったよ。魔王城まで頑張ってください」

 僕たちは立ち上がって、リビングから出てフルーリさんの家から出る。

「次はサラバン村か。ここから歩いて行くのか・・・」
「サラバン村行の馬車探せばいいだろ。何処かに馬車が乗り場があるだろ」
「なら探してみるか」

 僕たちは馬車の乗り場を探しに行く。何分か探していると、見つける。馭者にサラバン村に行く馬車を聞いて、サラバン村に行く馬車を教えてもらう。僕たちはそこまで行く。

「すみません。サラバン村に行く馬車は、ここで合ってますか?」
「合ってるぜ。兄さんらはサラバン村に行きたいのか?」
「はい。サラバン村にちょっと用事があるんです」

「物好きだなぁ。1人銀貨2枚だ」

 僕たちは銀貨2枚を出して、馭者に渡す。

「あいよ。もう少しで出発するから、もう乗った方が良いぞ」
「分かりました」

 僕たちは馬車に乗る。

「馬車に乗るのは初めてだな」
「そっちはもうほぼ無いんだったな。覚悟しとけよ。ケツが痛くなるからな」
「マジか・・・。何か柔らかい物あったか・・・?」

 僕はアイテムボックスに手を入れて、何か柔らかい物を探してみる。だがそれらしきものが無かった。

「何もねぇ・・・」
「耐えるしかないな」
「そろそろ出発するぜぇ。何か忘れもんはねぇか?」

「特に無いので、出発しても構いません」
「おう分かったぜ。じゃあ出発だ!」

 馭者の人が手綱で馬を叩き、馬を歩かせて馬車が動く。

「揺れる揺れる。馬車ってこんなに揺れるのか」
「これが馬車だ。初めての経験はどうだ?」
「何か酔いそうだなぁ・・・。船よりも触れてじゃねぇか?」

「船に乗った事あるの?」
「あるぜ。確か旅行に行く時だったな」
「旅行で船に乗って行くのか。兄さん貴族っぽい暮らしを、してるんじゃねぇか」

「あ、すみません。不愉快でしたか?」
「あぁ全然。人の人生にケチなんざぁつけねぇぜ」
「そうですか。ところで。この辺は何か魔物が出たり、盗賊が出たりしますか?」

「こっち側は中々でねぇな。何せあの街には四天王の1人がいるんだ、この辺の魔物は大体が狩られてる。盗賊は四天王が怖くて、中々出てこねぇ。出遭う時は出遭うがな。そういやぁ、街の近くに盗賊のアジトがあったって話があったな。すぐに騎士団が制圧したのを聞いたぜぇ」
「そうなんですか。僕たちは知りませんでしたよ」
「(実は知っているが。自分たちもアジトを潰しに行った事は、言えないな)」

「(盗賊が全員女性だった事は、言わない方が良いでしょう)」
「(アジトを見つけたのは、俺が攫われてやっと見つかったみたいだが。あんまり言わない方が良いよな)」
「(前からアジトがあってかなりの人が、捕まっていた事も言えないよね・・・)」

 喋れるわけがねぇよな。女盗賊のリーダーを黙らせたのは、オレとベラだって言う事を。フルーリさんたちは、外で囮をやっていた事も。

「―――あぁ? 急に曇って来たな・・・」
「あ、本当だ。雨降ってもそのまま進むの?」
「おうよ。ただあんまり強い雨が降って来たら、進めねぇな」

「そっかぁ~。でもそんなに強い雨なんて降らないよねぇ~」
「そうだな! このまま先に進むぜ!」

 馬車はそのまま先に進むが、曇って来て雨が降って来る。今降ってるのは小雨だが、時間が経つと大雨が降ってきた。このままでは進めないので、一旦森の中に入る。雨に濡れないように、ベラは結界を張る。

「見事に大雨が降って来たな。いつ雨が止むか分からねぇな」
「当分止まないかと。雨雲が多いので、明日も降っているかと」
「予想外の足止めだな。馬車も当分動けないだろうし、ここで野営をする事になるな」

「ごめん。ボクがあんなことを言ったから、きっと降って来たんだよ・・・」
「別にアレアを責めないって。天気の事なんて普通は分からないからな。こんな事もあるって」
「そうだぜ嬢ちゃん。天気はそう簡単に分からないんだぜ。誰も嬢ちゃんを責めないぜ」

「・・・ありがとう」

 こっちには気象予報士がいねぇのか。いれば大体が分かるんだがなぁ・・・。まぁ外れる時は外れるが。それにしても降ってるな。魔法で雨雲を何とか出来ねぇか?

「どうしたタクヤ。雨雲を見て。雨雲は食べれないぞ」
「食べねぇよ! 何で食べたそに見えるんだよ!」
「いや。じっくり見ていたから、ひょっとしたら食べたいと思ってな」

「とんでもねぇ勘違いをするんじゃねぇ・・・。僕は魔法であの雨雲を何とか出来ねぇかって、思ってたんだよ」
「あの雨雲をか? ・・・風魔法で雨雲を吹き飛ばすのか?」
「そうだな」

「・・・・・・その前に魔力が尽きるだろ。今日は野営と決まってるんだ。やるなら明日にしろ」
「だよなぁ。さてテントを張るか」

 僕とシルビアはテントを張り始める。
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