魔王とは戦わず国王を捕まえる

颯馬

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50話 四季

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 畑仕事が終わり、僕たちはフランさんの家に帰る。ベラたちを待っていると戻って来る。

「どうやら終わったようね。はい。これが報酬よ」

 テーブルの上にフランさんの指輪と、銀貨200枚置かれる。

「何か報酬で銀貨が出てくるのが、久しぶりの気がするよ」
「そうだな。今まで金貨が出て来ていたかな。何かホッとするよな」
「金貨とか出されると、こっちの金銭感覚が狂うから止めてほしいな」

「報酬でそんな文句を言うの初めて見たわ・・・。銀貨200枚じゃなく、金貨200枚に変えようかしら」
「勘弁してください・・・」
「冗談よ。もう仕事は無いから、旅立つならいつでも旅立ってもいいわよ」

「意外と少ないんだな。まだ3つくらいは、あるんじゃないかと思ったが」
「残りは全部書類だけよ。なに書類も手伝ってくれるの?」
「お断りだな。全く知らないも物をやるつもりは無い」

「ならこれで終わりよ。とりあえず。今日は泊って行く?」
「そうですね。今日は泊って行きます」

 フランさんは人を呼ぶ。リビングに人が来て、僕たちはその人に付いて行く。客間に着いたら僕たちは少し休憩をして、残った時間は各自自由に過ごす。

 次の日。身支度を済ませたら、フランさんたちが見送りに来る。

「気を付けて行きなさい。砂漠と山を超えるのは、中々骨が折れるわよ」
「そのようですね。では僕たちはこれで」

 僕たちは村を出て、魔王城に向かう。先ずは砂漠を超える。

「砂漠かぁ・・・。初めて行くな」
「タクヤの所には砂漠が無いのか?」
「ボクが住んでいる所には、砂漠はまずねぇな。他の国ならあるな。そもそも砂漠は暑い場所にあるだろ。僕がいる所は季節がころころ変わるからなぁ」

「四季でしたね。確か春夏秋冬でしたね」
「そう。何ヶ月経てば季節が変わるんだよ。季節が変わるから、衣替えが大変なんだぜ・・・」
「それは大変だね。ボクたちはそんな事無いから、分からないね」

「そっちはどうなんだ。ずっと暖かいのか、それともずっと寒いのか?」
「暖かいぜ。と言うよい良い感じと言えばいいかな。寒すぎず暑すぎずって感じだな」
「羨ましいな。シルビアたちが住んでいる王国はどうなんだ?」

「タクヤがいる世界で言うなら、夏と冬が短いな。春と秋が長いな」
「それも羨ましいな。雪とか見た事あるのか?」
「雪? あるよ。あの白くて冷たいものでしょ。アレで何かを作るのって楽しいんだよねぇ~」

「雪だるまを作る事もあるのかよ。ってかアルセルたちがいる里は、雪でも降るのか?」
「魔法を使ってな。あの時は寒かったなぁ。凍えて死ぬかと思ったぜ・・・」
「だろうな。そんな服で寒さを凌げるわけねぇだろ」

「次やる時は、ちゃんと寒さ対策をしないとね」
「次もやるのかよ・・・。シルビアはどうなんだ?」
「自分は遠征に行った時に、雪山を登ったな。アレは大変だった・・・。病気になる人が出てくるわ、食料が尽きかけるわ、寒いわ。かなりキツイ遠征だった・・・」

「ちゃんと防寒対策をしてから行けよ。よく生きて帰って来れたな」
「自分もそう思っている。あのまま死んでいても可笑しくないからな」
「雪山での遠征・・・。確かスノーゴーレムの討伐でしたよね」

「そうだ。その雪山で大量のスノーゴーレムが確認されたからな。討伐も大変だったな」
「・・・なぁこれから行く山は確か北の方だよな。雪山はどっちにあるんだ?」
「東の方にあるぞ。先に言っておくが、お前がいる所と一緒にするなよ。あの山は常に雪まみれだからな」

「はぁ何か不思議な山だなぁ~」

 確かこっちも何かそんな山あったよな。名前は忘れたけど。

「そっちはあるのか?」
「あると思うが。名前が思い出せねぇ・・・」
「そうか。そっちは普通に山登りとかするのか?」

「趣味でやる人もいれば、それを仕事にしている人もいるな。山に登るなら準備をちゃんとしねぇとな。・・・この格好じゃあ駄目だな」
「そうなの? ボクたちはこの格好で山を登った事あるけど」
「よく生きていたな・・・。いやそんなに高い山じゃないのか」

「死ぬなんて大げさなだな。シルビアみたいに雪山だったら死ぬかもしれないけど、その辺の山じゃあそう簡単には死なないぜ」
「アルセル。お前本当に山を甘く見るなよ。マジで死ぬぞ」
「はいはい。それよりも砂漠の方が先だろ。どうやって超えるんだ?」

「歩いて行くより、飛んで行きます。特に砂漠で何かを探す訳でも無いので」
「そうなるよねぇ~。暑さ対策どうしよっか?」
「そうだな。とりあえずフードを被って、太陽の光を遮断した方が良いだろ」

「フード付きのマントてあったかな」
「僕は持って無いぞ」
「自分は予備を持っている。砂漠に着いたら貸す」

「ワリィな」
「後は水だよね。まぁ水は魔法で出せば飲めるから良いよね」
「飲んでも大丈夫なのか? 魔法だから魔力の塊みたいなもんだろ」

「大丈夫だよ。飲む用の魔法だから。いつも飲んでたでしょ」
「マジかよ・・・。とりあえず、飲み水問題が解決するな」
「後は食料だよな。途中で尽きたら洒落にならないぞ」

「その辺の魔物を狩ればいいかと。とにかく砂漠まで行きましょうか」

 僕たちは砂漠まで歩いて行く。
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