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アルファードの誕生日パーティー2
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「な、何回も謝ってますよぉ・・・」
音の方を見ると、ミラが蹲り、頬を摩っていた。
その前で、般若のような形相を浮かべた女性が仁王立ちしていた。
金糸の刺繍が施された民族衣装が怒りに震え、手にした扇が床を打つ音が、広間全体に響く。
周囲にいた者たちは息を呑み、誰ひとりとして声を出さない。
「なに・・・言っているのか・・・わかんないよ・・・」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ミラは何度も「ごめんなさい」
と謝罪を必死に繰り返していた。
だが、その謝罪の言葉が逆に女性の癇に障ったようで、怒号がさらに大きくなる。
怒りを孕んだ声は鋭く、まるで刃のように空気を裂いた。
周囲の空気が一気に緊張を帯び、女性の指がピシリとミラを指し示す。
その瞬間、合図のように従者たちが動き、ミラの周りを取り囲んだ。
「いやっ!!なによ、なにするのよ!!離して!!やだ!!」
恐怖に顔を引きつらせ、必死に抵抗するミラ。
だがその声は、重く冷たい沈黙の中に飲み込まれていく。
混乱の中で、ミラと目が合った。
「カ、カレン!?た、たすけて!!たすけてよ!!」
私の名に反応し、女性が驚きながらも弾かれたように私の側に来ると、何かを確認するように声をかけてきた。
私は静かにその言葉を聞き、短く微笑み、首を横に振った。
その仕草だけで、ミラは全てを悟ったかのように目を大きく見開き、泣き笑いのような声を上げた。
「ほ、ほら、ほら早く助けてよ!早く離しなさいよ!!」
何を勘違いしているのかわからない。
まるで、地獄に蜘蛛の糸が吊り下がったのを見つけたかのように、必死に縋りつこうとする。
私はただ、小さく息を吐いた。
「ミラ、あなたはここから追い出されるわ。私に何かできるわけないじゃない」
「なんで、何かしゃべってたでしょ!?助けてくれるんでしょ!?」
「助ける?そんな事言った?」
その時、慌ただしい足音とともに声が響く。
「カレン!?これはどういうことだ?」
「まぁ、ミラどうしたの!?」
アルファードがシルビアを伴って駆けつけてきた。
顔には焦りと疲労が滲み、額にはうっすらと汗が光る。
だが、その疲れの中に、今の状況への理解はまだ欠片もなかった。
この場の重さに気づいていながらも、何をすべきか掴みきれないまま、立ち尽くしていた。
「さあ、私は関係ありませんから、ご自分で聞かれたらどうかしら。アルファード様なら話せますよね」
自分でも驚くほど、冷たい声が出た。
アルファードは一瞬、信じられないように私を見たが、それでも王族としての義務を優先し、女性へと向き直る。
「シルビア早く助けてよぉ!」
「で、でも・・・」
シルビアは半泣きでおろおろしながら、ミラとアルファードの間を視線で往復する。
女性との交渉が始まり、ミラの拘束はいったん保留となったが、両腕は依然として掴まれたまま。
その光景に、シルビアでさえも自分の立場を悟ったようだった。
この舞踏会で、ようやくシルビアは知ったのだ。
己がどれだけ失態を重ねていたのか。
だが、気づくのがあまりにも遅かった。
結果として現れた亀裂は、
努力では取り戻せない。
努力は、
確かにあったのかもしれない。
けれど、
結果がマイナスならば、
それは無意味と同じ。
「待って!やだぁ!!」
ミラが必死に自国の言葉で叫んだ。
けれどその懇願は、聞こえていても、誰もが関わりたくなかった。
声を発する者はいなかった。
次の瞬間、彼女は容赦なく引きずられていった。
「や、やだ!!やだ!!シルビア助けてよ!!シルビア!!!」
「わ・・・・たくし・・・・」
震える声で、シルビアは自分のドレスの裾を握りしめることしかできなかった。
「カレン、どうにかできないか!?君なら、あの方と話せて、どうにかできるだろう!?」
アルファードの声が震えていた。
説得も、謝罪も、自分には不可能だと理解している声だった。
切実な表情に、
一瞬だけ胸が高鳴った。
勝った。
降り注ぐ想いに満たされた。
そんな己に自嘲の笑いを堪えた。
愚かなのは、
助けない私か、
それとも、
助けられないアルファードか。
どちらだろう。
けれど、答えはもう出ている。
私は首を傾げ、小さく笑った。
「けれどね、アルファード。既にこれは国交問題に発展しているわ」
目の前で裂けたのは一人の女の感情ではなく、国家間の均衡。
一つの挨拶の欠如が、王国の信頼を揺るがしたのだ。
その結果を出したのが、
あなたが選んだ、
シルビア。
そう、
本当の愛を選んだはずの彼女なのだ。
「私?私に何かできる訳がないわ。何度も言うけれど、私は元々低級貴族。運良くアルファード様の幼なじみだったから婚約者だった、その程度の存在よ。だったら同じ程度のシルビアなら、同じでしょ?」
「ムリ、ムリィ。だって、何喋ってるかわかりませんものぉ!」
半泣きで叫ぶシルビア。その姿は、滑稽なほどに幼稚だった。
「では、諦めるしかないんじゃない?さっきの方、言っていたわよ。この国に出す品物を減らすか、関税を増やすか、どちらがいいのか聞いてみて、と言っていたわ」
首を傾げ、言われた通りに告げると、アルファードの顔が固まった。
「え・・・?」
アルファードの顔から血の気が引く。
蒼白になりながら、私を睨みつけた。
「わかっているなら何故話をしてくれなかったんだ!?いや、なぜ止めてくれなかったんだ!?」
「止めることなどできなかったわ。すでにミラが怒りを買ってしまって、収拾がつかない状態になっていたわ」
「ミラが、何をしたっていうのよぉ!」
馬鹿な質問だわ。
なにかしたから、この結果になっているのに。
ねえ、アルファード。
知ってた?
関税を減らしていたのは、私の他愛もない会話の積み重ねだったのよ。
その会話のために、私はこの国を何度も勉強したわ。
「正式な挨拶ができていなかったのよ」
「そんな事でぇ?」
全く理解できないという顔をするシルビアに対し、アルファードはその場でよろけた。
「・・・また・・・」
小さく、己への悔恨を噛み殺すような声が漏れた。
「ちょぉっとぉ!!ミラもちゃんと挨拶できるわよぉ。そんな小さな事で!」
「小さなことでは無い!!挨拶がどれだけ大切か、カレンは理解していた!!」
アルファードの怒声が、静まり返った会場を裂いた。
その瞬間、楽団の音が途絶え、空気が一気に張り詰める。
誰もが動けず、呼吸すら忘れたようにその場に立ち尽くしていた。
私もまた、静かに目を細める。
ようやく気づいたのね。
あなたがどれほど私に頼っていたのか。
どれだけの外交の場を、
私がひとりで支えていたのかを。
そうよ、アルファード。
あなた一人では、
何も覚えられなかった。
私は、
あなたのために
必死に努力したのよ。
音の方を見ると、ミラが蹲り、頬を摩っていた。
その前で、般若のような形相を浮かべた女性が仁王立ちしていた。
金糸の刺繍が施された民族衣装が怒りに震え、手にした扇が床を打つ音が、広間全体に響く。
周囲にいた者たちは息を呑み、誰ひとりとして声を出さない。
「なに・・・言っているのか・・・わかんないよ・・・」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ミラは何度も「ごめんなさい」
と謝罪を必死に繰り返していた。
だが、その謝罪の言葉が逆に女性の癇に障ったようで、怒号がさらに大きくなる。
怒りを孕んだ声は鋭く、まるで刃のように空気を裂いた。
周囲の空気が一気に緊張を帯び、女性の指がピシリとミラを指し示す。
その瞬間、合図のように従者たちが動き、ミラの周りを取り囲んだ。
「いやっ!!なによ、なにするのよ!!離して!!やだ!!」
恐怖に顔を引きつらせ、必死に抵抗するミラ。
だがその声は、重く冷たい沈黙の中に飲み込まれていく。
混乱の中で、ミラと目が合った。
「カ、カレン!?た、たすけて!!たすけてよ!!」
私の名に反応し、女性が驚きながらも弾かれたように私の側に来ると、何かを確認するように声をかけてきた。
私は静かにその言葉を聞き、短く微笑み、首を横に振った。
その仕草だけで、ミラは全てを悟ったかのように目を大きく見開き、泣き笑いのような声を上げた。
「ほ、ほら、ほら早く助けてよ!早く離しなさいよ!!」
何を勘違いしているのかわからない。
まるで、地獄に蜘蛛の糸が吊り下がったのを見つけたかのように、必死に縋りつこうとする。
私はただ、小さく息を吐いた。
「ミラ、あなたはここから追い出されるわ。私に何かできるわけないじゃない」
「なんで、何かしゃべってたでしょ!?助けてくれるんでしょ!?」
「助ける?そんな事言った?」
その時、慌ただしい足音とともに声が響く。
「カレン!?これはどういうことだ?」
「まぁ、ミラどうしたの!?」
アルファードがシルビアを伴って駆けつけてきた。
顔には焦りと疲労が滲み、額にはうっすらと汗が光る。
だが、その疲れの中に、今の状況への理解はまだ欠片もなかった。
この場の重さに気づいていながらも、何をすべきか掴みきれないまま、立ち尽くしていた。
「さあ、私は関係ありませんから、ご自分で聞かれたらどうかしら。アルファード様なら話せますよね」
自分でも驚くほど、冷たい声が出た。
アルファードは一瞬、信じられないように私を見たが、それでも王族としての義務を優先し、女性へと向き直る。
「シルビア早く助けてよぉ!」
「で、でも・・・」
シルビアは半泣きでおろおろしながら、ミラとアルファードの間を視線で往復する。
女性との交渉が始まり、ミラの拘束はいったん保留となったが、両腕は依然として掴まれたまま。
その光景に、シルビアでさえも自分の立場を悟ったようだった。
この舞踏会で、ようやくシルビアは知ったのだ。
己がどれだけ失態を重ねていたのか。
だが、気づくのがあまりにも遅かった。
結果として現れた亀裂は、
努力では取り戻せない。
努力は、
確かにあったのかもしれない。
けれど、
結果がマイナスならば、
それは無意味と同じ。
「待って!やだぁ!!」
ミラが必死に自国の言葉で叫んだ。
けれどその懇願は、聞こえていても、誰もが関わりたくなかった。
声を発する者はいなかった。
次の瞬間、彼女は容赦なく引きずられていった。
「や、やだ!!やだ!!シルビア助けてよ!!シルビア!!!」
「わ・・・・たくし・・・・」
震える声で、シルビアは自分のドレスの裾を握りしめることしかできなかった。
「カレン、どうにかできないか!?君なら、あの方と話せて、どうにかできるだろう!?」
アルファードの声が震えていた。
説得も、謝罪も、自分には不可能だと理解している声だった。
切実な表情に、
一瞬だけ胸が高鳴った。
勝った。
降り注ぐ想いに満たされた。
そんな己に自嘲の笑いを堪えた。
愚かなのは、
助けない私か、
それとも、
助けられないアルファードか。
どちらだろう。
けれど、答えはもう出ている。
私は首を傾げ、小さく笑った。
「けれどね、アルファード。既にこれは国交問題に発展しているわ」
目の前で裂けたのは一人の女の感情ではなく、国家間の均衡。
一つの挨拶の欠如が、王国の信頼を揺るがしたのだ。
その結果を出したのが、
あなたが選んだ、
シルビア。
そう、
本当の愛を選んだはずの彼女なのだ。
「私?私に何かできる訳がないわ。何度も言うけれど、私は元々低級貴族。運良くアルファード様の幼なじみだったから婚約者だった、その程度の存在よ。だったら同じ程度のシルビアなら、同じでしょ?」
「ムリ、ムリィ。だって、何喋ってるかわかりませんものぉ!」
半泣きで叫ぶシルビア。その姿は、滑稽なほどに幼稚だった。
「では、諦めるしかないんじゃない?さっきの方、言っていたわよ。この国に出す品物を減らすか、関税を増やすか、どちらがいいのか聞いてみて、と言っていたわ」
首を傾げ、言われた通りに告げると、アルファードの顔が固まった。
「え・・・?」
アルファードの顔から血の気が引く。
蒼白になりながら、私を睨みつけた。
「わかっているなら何故話をしてくれなかったんだ!?いや、なぜ止めてくれなかったんだ!?」
「止めることなどできなかったわ。すでにミラが怒りを買ってしまって、収拾がつかない状態になっていたわ」
「ミラが、何をしたっていうのよぉ!」
馬鹿な質問だわ。
なにかしたから、この結果になっているのに。
ねえ、アルファード。
知ってた?
関税を減らしていたのは、私の他愛もない会話の積み重ねだったのよ。
その会話のために、私はこの国を何度も勉強したわ。
「正式な挨拶ができていなかったのよ」
「そんな事でぇ?」
全く理解できないという顔をするシルビアに対し、アルファードはその場でよろけた。
「・・・また・・・」
小さく、己への悔恨を噛み殺すような声が漏れた。
「ちょぉっとぉ!!ミラもちゃんと挨拶できるわよぉ。そんな小さな事で!」
「小さなことでは無い!!挨拶がどれだけ大切か、カレンは理解していた!!」
アルファードの怒声が、静まり返った会場を裂いた。
その瞬間、楽団の音が途絶え、空気が一気に張り詰める。
誰もが動けず、呼吸すら忘れたようにその場に立ち尽くしていた。
私もまた、静かに目を細める。
ようやく気づいたのね。
あなたがどれほど私に頼っていたのか。
どれだけの外交の場を、
私がひとりで支えていたのかを。
そうよ、アルファード。
あなた一人では、
何も覚えられなかった。
私は、
あなたのために
必死に努力したのよ。
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