[完]聖女の真実と偽りの冠

さち姫

文字の大きさ
19 / 20

私が悪いだけじゃない~レティシア目線~

しおりを挟む
「アリシア・エルメロワ。神託を偽り、聖女の名を騙った罪、そして真の聖女を陥れた罪。これらの行いに対し、正式に断罪を下す」

玉座の間に響く、王の重い声。

集まった民と神官たちの前で、アリシアは静かに膝をついていた。

その肩は震えていたけれど、私はそこに涙の色は見なかった。

あるのは、屈辱と、まだ、諦めきれない執念。

その時だった。

アリシアが顔を上げ、私を見た。

涙でにじんだ瞳に、確かにあった。

それは、悔いではない。

最後の、破滅的な攻撃の色だった。

「私だけが罪人だなんて、おかしいわよね、ラゼル様?」

空気が凍った。

「だって、私ひとりじゃ、あそこまでできるわけない。“聖女を失脚させる”って言い出したの、最初に動いたの、あなただったじゃない」

ラゼル様の顔から血の気が引いた。

陛下も、神官長、目を見開いて固まる。

私は、静かに目を細めた。

ようやく、来たのね。

そう、ね、

アリシア。

あなただけの罪、ではないわ。

「ねえ、覚えてるでしょう? ラゼル様。、私の部屋に来て、こう言ったじゃない。 “神託がおりたから、と言って王太子の自分に口出するのは邪魔でしかない。だから、彼女に落ちてもらうしかない”って言ったわよね?」

ざわっ、と民の間にどよめきが走った。

「それだけじゃないわ。神殿の神官長、あなたたちも私に加担してた。“本物の神託は、煩わしいだけだ”って、言ってたわよね?」

神官たちの顔が真っ青になる。

「記録の改ざん、証言の偽装、貴族たちの口封じ・・・全部、私ひとりじゃ無理だったわ。皆でやったのよ、皆で、私を“聖女”にしたんじゃない!!私だけが悪者じゃないわ!!」

断末魔のような声に、誰もが動けなかった。

その中で、私はただ、静かに口を開いた。

「・・・それでも、あなたが“演じ続けた”のよ、アリシア。神の声を聞かず、祈りすらせず、救いを求める者たちを切り捨てた」

アリシアは、悔しそうに唇を噛んだ。

「違う!!私は選ばれた!!聖女なのよ!!」」

ラゼル様は、その場で膝をついた。

神官長は言い逃れのように口を開くが、すでに民の視線が突き刺さっている。

「民よ、どうかお聞き届けください」

私は彼らに向き直った。

「彼女の罪は重い、けれど、彼女ひとりが犯したものではありません。嘘を信じた者、都合のために目を伏せた者、声を持たぬ者の信仰を利用した者。この王都は、長く、神の声よりも“都合”に仕えてきたのです。そうしてあなた方の中にも、私が聖女ではない、と知ると、罵倒の言葉を突いた方もおられるでしょう」

私の言葉が、波紋のように広がっていく。

「これから、すべてを正しましょう。神の名の下に、信仰の根を、今度こそ清めましょう。神は、心から懺悔をする者を、許されます」

アリシアが、ラゼル様を睨みつけたまま、崩れ落ちた。

彼女の叫びと共に崩れていくのは、

王都そのものの“偽りの信仰”だった。

私は振り返り、神殿の方へと歩き出す。

断罪は終わった。

けれど、始まりは、今からだ。

今度こそ、本物の祈りと光が、この国に根付くように。

それが、“本当に選ばれた者”の責務なのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

後悔などしていない

青葉めいこ
恋愛
誰も、わたくしのこの気持ちを理解できないだろう。 理解されなくてもいい。 この想い(愛)は、わたくしだけのものだ。 この話は、皇太子妃(後に皇后)、皇后、公爵令息、王女、皇帝による一人語りです。最初は皇太子妃だけの一人語りの一話完結にする予定でしたが、皇太子妃以外の一人語りも思いついて書いたので短編にしました。 小説家になろうとも投稿しています。

醜いと蔑んだ相手は隣国の美姫

音爽(ネソウ)
恋愛
爛れた皮膚の治癒を試みる王女は身分を隠して隣国へ渡り遊学していた。 そんな事情を知らない子爵家の子息は「醜い」と言って蔑む。しかし、心優しいその弟は……

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

「嘘つき」と決めつけられた私が幸せになるまで

梨丸
ファンタジー
 -この世界は、精霊が見え、触れ合える聖女によって支えられている- 私の村で、私の双子の妹は聖女として祭り上げられている。 私も精霊と触れ合うことができるのに、誰も信じてはくれない。 家族にも、村の人にも「嘘つき」と決めつけられた。 これはそんな私が、幸せになるまでの物語。 主な登場人物 ルーシー・ルーベルク  双子の姉で本作の主人公 リリー・ルーベルク   ルーシーの双子の妹 アンナ         ルーシーの初めてできた友達 番外編では、ルーシーの妹、リリー目線で話が進みます。 番外編を読んでみると、リリーの印象がガラリと変わります。読んでいただけると、幸いです。 10/20 改行が多くて読みにくいことに気づいたので修正いたしました。

無気力聖女は永眠したい

だましだまし
恋愛
結婚は縁が無かったけれど村の教会で修道女として慕われ満足な生涯を終え……たはずだったのに! まさに天に召されるってタイミングで、いや、天に召されたのは召されたの? 神様にやり直しを要求されました。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...