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私が悪いだけじゃない~レティシア目線~
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「アリシア・エルメロワ。神託を偽り、聖女の名を騙った罪、そして真の聖女を陥れた罪。これらの行いに対し、正式に断罪を下す」
玉座の間に響く、王の重い声。
集まった民と神官たちの前で、アリシアは静かに膝をついていた。
その肩は震えていたけれど、私はそこに涙の色は見なかった。
あるのは、屈辱と、まだ、諦めきれない執念。
その時だった。
アリシアが顔を上げ、私を見た。
涙でにじんだ瞳に、確かにあった。
それは、悔いではない。
最後の、破滅的な攻撃の色だった。
「私だけが罪人だなんて、おかしいわよね、ラゼル様?」
空気が凍った。
「だって、私ひとりじゃ、あそこまでできるわけない。“聖女を失脚させる”って言い出したの、最初に動いたの、あなただったじゃない」
ラゼル様の顔から血の気が引いた。
陛下も、神官長、目を見開いて固まる。
私は、静かに目を細めた。
ようやく、来たのね。
そう、ね、
アリシア。
あなただけの罪、ではないわ。
「ねえ、覚えてるでしょう? ラゼル様。、私の部屋に来て、こう言ったじゃない。 “神託がおりたから、と言って王太子の自分に口出するのは邪魔でしかない。だから、彼女に落ちてもらうしかない”って言ったわよね?」
ざわっ、と民の間にどよめきが走った。
「それだけじゃないわ。神殿の神官長、あなたたちも私に加担してた。“本物の神託は、煩わしいだけだ”って、言ってたわよね?」
神官たちの顔が真っ青になる。
「記録の改ざん、証言の偽装、貴族たちの口封じ・・・全部、私ひとりじゃ無理だったわ。皆でやったのよ、皆で、私を“聖女”にしたんじゃない!!私だけが悪者じゃないわ!!」
断末魔のような声に、誰もが動けなかった。
その中で、私はただ、静かに口を開いた。
「・・・それでも、あなたが“演じ続けた”のよ、アリシア。神の声を聞かず、祈りすらせず、救いを求める者たちを切り捨てた」
アリシアは、悔しそうに唇を噛んだ。
「違う!!私は選ばれた!!聖女なのよ!!」」
ラゼル様は、その場で膝をついた。
神官長は言い逃れのように口を開くが、すでに民の視線が突き刺さっている。
「民よ、どうかお聞き届けください」
私は彼らに向き直った。
「彼女の罪は重い、けれど、彼女ひとりが犯したものではありません。嘘を信じた者、都合のために目を伏せた者、声を持たぬ者の信仰を利用した者。この王都は、長く、神の声よりも“都合”に仕えてきたのです。そうしてあなた方の中にも、私が聖女ではない、と知ると、罵倒の言葉を突いた方もおられるでしょう」
私の言葉が、波紋のように広がっていく。
「これから、すべてを正しましょう。神の名の下に、信仰の根を、今度こそ清めましょう。神は、心から懺悔をする者を、許されます」
アリシアが、ラゼル様を睨みつけたまま、崩れ落ちた。
彼女の叫びと共に崩れていくのは、
王都そのものの“偽りの信仰”だった。
私は振り返り、神殿の方へと歩き出す。
断罪は終わった。
けれど、始まりは、今からだ。
今度こそ、本物の祈りと光が、この国に根付くように。
それが、“本当に選ばれた者”の責務なのだから。
玉座の間に響く、王の重い声。
集まった民と神官たちの前で、アリシアは静かに膝をついていた。
その肩は震えていたけれど、私はそこに涙の色は見なかった。
あるのは、屈辱と、まだ、諦めきれない執念。
その時だった。
アリシアが顔を上げ、私を見た。
涙でにじんだ瞳に、確かにあった。
それは、悔いではない。
最後の、破滅的な攻撃の色だった。
「私だけが罪人だなんて、おかしいわよね、ラゼル様?」
空気が凍った。
「だって、私ひとりじゃ、あそこまでできるわけない。“聖女を失脚させる”って言い出したの、最初に動いたの、あなただったじゃない」
ラゼル様の顔から血の気が引いた。
陛下も、神官長、目を見開いて固まる。
私は、静かに目を細めた。
ようやく、来たのね。
そう、ね、
アリシア。
あなただけの罪、ではないわ。
「ねえ、覚えてるでしょう? ラゼル様。、私の部屋に来て、こう言ったじゃない。 “神託がおりたから、と言って王太子の自分に口出するのは邪魔でしかない。だから、彼女に落ちてもらうしかない”って言ったわよね?」
ざわっ、と民の間にどよめきが走った。
「それだけじゃないわ。神殿の神官長、あなたたちも私に加担してた。“本物の神託は、煩わしいだけだ”って、言ってたわよね?」
神官たちの顔が真っ青になる。
「記録の改ざん、証言の偽装、貴族たちの口封じ・・・全部、私ひとりじゃ無理だったわ。皆でやったのよ、皆で、私を“聖女”にしたんじゃない!!私だけが悪者じゃないわ!!」
断末魔のような声に、誰もが動けなかった。
その中で、私はただ、静かに口を開いた。
「・・・それでも、あなたが“演じ続けた”のよ、アリシア。神の声を聞かず、祈りすらせず、救いを求める者たちを切り捨てた」
アリシアは、悔しそうに唇を噛んだ。
「違う!!私は選ばれた!!聖女なのよ!!」」
ラゼル様は、その場で膝をついた。
神官長は言い逃れのように口を開くが、すでに民の視線が突き刺さっている。
「民よ、どうかお聞き届けください」
私は彼らに向き直った。
「彼女の罪は重い、けれど、彼女ひとりが犯したものではありません。嘘を信じた者、都合のために目を伏せた者、声を持たぬ者の信仰を利用した者。この王都は、長く、神の声よりも“都合”に仕えてきたのです。そうしてあなた方の中にも、私が聖女ではない、と知ると、罵倒の言葉を突いた方もおられるでしょう」
私の言葉が、波紋のように広がっていく。
「これから、すべてを正しましょう。神の名の下に、信仰の根を、今度こそ清めましょう。神は、心から懺悔をする者を、許されます」
アリシアが、ラゼル様を睨みつけたまま、崩れ落ちた。
彼女の叫びと共に崩れていくのは、
王都そのものの“偽りの信仰”だった。
私は振り返り、神殿の方へと歩き出す。
断罪は終わった。
けれど、始まりは、今からだ。
今度こそ、本物の祈りと光が、この国に根付くように。
それが、“本当に選ばれた者”の責務なのだから。
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