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第42話ルーン目線2
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早めに到着し、おじさんを捕まえ詳細を聞くつもりだった。
シャーリーの手紙のこと、養女の話、その真意を。
だが会場に足を踏み入れた瞬間、その目論見は崩れた。
おじさんは、すでに先に来ていて、しかも、誰か見知らぬ人物と、まるで上機嫌な子どものように笑い合っている。
この様子だと、やはり何も聞いていない。
胸の奥で、何かがストンと落ちた。
やっぱり、手紙の送り主はシャーリーだったんだ。
そうだ。
実家に送れば、金の匂いを嗅ぎつけたおじさんが、何をするか分からない。
だから、僕だけを、選んだ。
シャーリーは賢い。
僕しか、頼れないんだ。
父さんがすぐにおじさんを呼びに行き、邪魔にならないように端に集まった。
すでに会場は、多くの貴族たちで埋め尽くされている。
きらびやかなドレス、磨き上げられた礼服。
笑い声、低い囁き声、グラスの触れ合う澄んだ音。
だが、そのすべてが、どこか遠い知らない世界のようだった。
絢爛華麗すぎて、落ち着かない。
きっとシャーリーは怯えている。
早く探してあげないと。
それに、シャーサーに会って婚約解消を伝えないといけない。
だが、シャーサーは他の男性に声をかけられどこかに行ったとの事だった。
男性に人気があるのはいつもの事だが、僕という婚約者がいるのだから、もう少し自重すべきだ。
けれどもういい。
僕はシャーリーと婚約するんだ。
「やっと来たのか。我々は大分前から来て、だいぶ挨拶出来たぞ」
満足そうな顔で得意げに笑うおじさんに、父さんの顔色がますます悪くなった。
「そうなんですの。早く来たおかげで来られる方来られる方にご挨拶が出来て、素晴らしい事です」
おばさんが、嬉しそうに言う。
「まだ、イエーガー侯爵様にご挨拶が出来ていないんだ。奥におられるのだが、あそこは特別らしく警護が厳しくてな」
おじさんが、奥を指差す。
確かに、奥には、明らかに雰囲気の違う空間がある。
警護が立ち、選ばれた者しか入れないようになっている。
あそこに、シャーリーがいるのだろうか。
「でも、奥におられる方々は役職ばかりが、あら?奥様、お顔が優れませんね、どうされました?」
心配そうにおばさんが手を出したが、母さんは思い切り振り払った。
「・・・誰のせいだと思ってるの!?どうしてくれるのよ!!」
母さんの、あまりに悲痛な切れ切れの言葉に、やっと2人は、様子がおかしいと気づいた。
おじさんの笑顔が、消え、おばさんの顔が、強張った。
「なんだ、どうした?」
おじさんが、怪訝な顔をする。
「どうしただと!?お前、何故養女に出した事を言わなかった!?」
父さんが、低く唸るような声で言う。
「は?何故言う必要がある。我が家の事だ。それよりも、凄い金を払ってくれたぞ、あんな出来損ないのために」
おじさんが、笑いながらこともなげに言う。
その言葉に、兄さんの顔が歪み、僕を強く睨んできた。
「馬鹿か!誰に養女に出したのか調べたのか!!」
父さんの声が、大きくなる。
周りの視線が、こちらに向く。
「な、なんだよ、そんなに怒って。ああ、調べたよ。大した奴じゃなかった。シャーリーを愛人にしたかったんだろ」
「お前が言わせたのか!!その言葉を!!おかげで、私の家も目をつけられた!!」
ドンと、おじさんの肩を叩いた。
その音が、やけに大きく響く。
「な、何が・・・だ・・・?」
おじさんの顔が、青ざめ、血の気が、引いていく。
「誰に調べさせた!!どうせお前が適当に聞いただけだろ!!分かってるのか、ウインザー子爵様だ!!最後の英雄の、ウインザー子爵様だ!!」
水を打ったように静かになった。
生演奏が妙に耳に響き、母さんのまたすすり泣きが聞こえる。
周りの視線が、痛い。
刺すような、視線。
「・・・そんな訳ないだろ・・・?本当にそんな名前か?お前間違ってないか?」
「・・・本当に愚かだな・・・そこまで・・・お前の立場は・・・下がったのか・・・」
父さんは真っ白な顔で、よろりとふらつき、兄さんが、慌てて支えた。
「どういう意味だ、下がったとは!!親友とはいえ、同じ伯爵家だぞ!!」
おじさんの声が、会場に響いた。
でも、誰も反応しない。
まるで、聞こえていないかのように。
いや、聞こえているのに、無視している。
何故だろう?
父さんの言葉とその顔と、周りの疎外感に、不安に駆られた。
そして、この厳かで、格の違う会場に、まるで飲み込まれて、
消されてしまうような。
息が、詰まる。
いや、大丈夫だ。
僕がシャーリーと話をしたら、僕の家は大丈夫だ。
そうして二人で幸せになるんだ。
言い聞かせるが、何か、大きなものが、覆いかぶさってくる。
重い。
息が、苦しい。
その時だった。
ざわざわと声が上がった。
声の方を見ると、
シャーリー・・・だ・・・。
真っ赤なドレスを着こなし、年配の男性と、幼い男子と一緒に、まるで、別の世界に生きているような・・・高貴な空気をまとっていた。
美しい。
見たこともないほど、美しい。
あれが、シャーリー?
あの、いつもおどおどしていた、シャーリー?
信じられない。
「・・・まさか・・・」
おじさんの呻くような声が聞こえ、母さんは、とうとう蹲ってしまった。
気品に満ちた微笑みを、声をかける相手に向けながら、ウインザー子爵様の子としての敬いを感じる対応に、目の前が真っ暗になった。
ガンガンと頭が痛くなる。
愛人。
なんと下世話な、誤った思い込みだったのだろう。
あれは、令嬢だ。
本物の、上級貴族令嬢だ。
遠のくシャーリーに、縋る気持ちが募ってきた。
待って。
待ってよ、シャーリー。
僕はここにいる。
僕は・・・
僕は・・・
許してもらえるのだろうか・・・・?
両足を蠢く何かが掴み、引きずり込むような、
ゾッと、背筋が凍った。
「なんて約束をしたんだ!!」
父さんの言葉に、はっとした。
「お前・・・それは・・・その書面は・・・なんて・・・馬鹿な事を・・・」
はっきりとした拒絶を感じる声で、父さんは、首を振りながら、おじさんからゆっくり離れた。
まるで、疫病神から逃げるように。
一歩、また一歩。
「待て、待ってくれ!私は何も悪くない!シャーリーが、あんな出来損ないが、まさかウインザー子爵様の養女になるなんて!」
おじさんが、父さんの腕を掴む。
必死に。
「離せ!!お前とは、もう関わりたくない!!」
父さんが、振り払う。
「待ってくれ!!親友だろ!!助けてくれ!!」
「親友?笑わせるな。お前のせいで、私の家まで巻き込まれたんだぞ!!」
「知らなかったんだ!!}
「行くぞ。サヴォワ家とは断絶する。ルーン、お前の婚約はない。それよりも、お前は、シャーリーに許しを乞え!!何をしてもだ!!」
父さんが、僕を見る。
その目は、絶望と怒りで満ちていた。
そして、諦めも。
「・・・はい・・・」
そう答えるだけで必死だった。
喉はカラカラで、体は重くなっていく。
足が、震え、立っているのが、やっと。
とりあえず、奥へ行きシャーリーに声をかけたかったが、なかなかそうもいかなかった。
警護もいるが、煌びやかな世界に馴染んでいるシャーリーに足が震える。
あれが、本当にシャーリー?
僕が知っている、シャーリー?
やっと、声をかけられる場所に来たが、荘厳とした空気に圧倒される。
その中で見たこともない姿で微笑み、馴染むシャーリーが、まるで永遠に届かない、
遠い存在に見えた。
このまま踵を返したい。
いなかった、
会えなかった、
と言えばいいんじゃないか?
不穏な感情が、押し寄せる。
怖い。
怖い。
でも、違う。
シャーリーは僕を待っている。
そう、あれは無理して笑っているんだ。
だってあんな幸せそうなお顔見たことない。
あんなに輝いている姿、見たことない。
でも、違う。
きっと、無理しているんだ。
そうだ、そうに決まっている。
必死に奮い立たせ声を出した。
「・・・シャーリー!!」
振り返る、シャーリー。
その瞬間、時が止まったような気がした。
「・・・ルーン」
その呼び方と、顔を見た瞬間、絶望に気が狂いそうだった。
冷たい。
冷たい目。
僕を見る目が、冷たい。
まるで、他人を見るような。
いや、他人以下。
嫌悪。
拒絶。
そんな目で、僕を見ている。
シャーリー。
シャーリー。
違う。
そんな目で、僕を見ないで。
お願いだから。
後で聞いた話だが、おじさんはウインザー子爵様と書面を交わし、お互い関わり合いを持たないよう、もし、何かあれば、それぞれの娘を土下座させる、とサインをしたとの事だった。
何もかもが最悪だった。
シャーリーの手紙のこと、養女の話、その真意を。
だが会場に足を踏み入れた瞬間、その目論見は崩れた。
おじさんは、すでに先に来ていて、しかも、誰か見知らぬ人物と、まるで上機嫌な子どものように笑い合っている。
この様子だと、やはり何も聞いていない。
胸の奥で、何かがストンと落ちた。
やっぱり、手紙の送り主はシャーリーだったんだ。
そうだ。
実家に送れば、金の匂いを嗅ぎつけたおじさんが、何をするか分からない。
だから、僕だけを、選んだ。
シャーリーは賢い。
僕しか、頼れないんだ。
父さんがすぐにおじさんを呼びに行き、邪魔にならないように端に集まった。
すでに会場は、多くの貴族たちで埋め尽くされている。
きらびやかなドレス、磨き上げられた礼服。
笑い声、低い囁き声、グラスの触れ合う澄んだ音。
だが、そのすべてが、どこか遠い知らない世界のようだった。
絢爛華麗すぎて、落ち着かない。
きっとシャーリーは怯えている。
早く探してあげないと。
それに、シャーサーに会って婚約解消を伝えないといけない。
だが、シャーサーは他の男性に声をかけられどこかに行ったとの事だった。
男性に人気があるのはいつもの事だが、僕という婚約者がいるのだから、もう少し自重すべきだ。
けれどもういい。
僕はシャーリーと婚約するんだ。
「やっと来たのか。我々は大分前から来て、だいぶ挨拶出来たぞ」
満足そうな顔で得意げに笑うおじさんに、父さんの顔色がますます悪くなった。
「そうなんですの。早く来たおかげで来られる方来られる方にご挨拶が出来て、素晴らしい事です」
おばさんが、嬉しそうに言う。
「まだ、イエーガー侯爵様にご挨拶が出来ていないんだ。奥におられるのだが、あそこは特別らしく警護が厳しくてな」
おじさんが、奥を指差す。
確かに、奥には、明らかに雰囲気の違う空間がある。
警護が立ち、選ばれた者しか入れないようになっている。
あそこに、シャーリーがいるのだろうか。
「でも、奥におられる方々は役職ばかりが、あら?奥様、お顔が優れませんね、どうされました?」
心配そうにおばさんが手を出したが、母さんは思い切り振り払った。
「・・・誰のせいだと思ってるの!?どうしてくれるのよ!!」
母さんの、あまりに悲痛な切れ切れの言葉に、やっと2人は、様子がおかしいと気づいた。
おじさんの笑顔が、消え、おばさんの顔が、強張った。
「なんだ、どうした?」
おじさんが、怪訝な顔をする。
「どうしただと!?お前、何故養女に出した事を言わなかった!?」
父さんが、低く唸るような声で言う。
「は?何故言う必要がある。我が家の事だ。それよりも、凄い金を払ってくれたぞ、あんな出来損ないのために」
おじさんが、笑いながらこともなげに言う。
その言葉に、兄さんの顔が歪み、僕を強く睨んできた。
「馬鹿か!誰に養女に出したのか調べたのか!!」
父さんの声が、大きくなる。
周りの視線が、こちらに向く。
「な、なんだよ、そんなに怒って。ああ、調べたよ。大した奴じゃなかった。シャーリーを愛人にしたかったんだろ」
「お前が言わせたのか!!その言葉を!!おかげで、私の家も目をつけられた!!」
ドンと、おじさんの肩を叩いた。
その音が、やけに大きく響く。
「な、何が・・・だ・・・?」
おじさんの顔が、青ざめ、血の気が、引いていく。
「誰に調べさせた!!どうせお前が適当に聞いただけだろ!!分かってるのか、ウインザー子爵様だ!!最後の英雄の、ウインザー子爵様だ!!」
水を打ったように静かになった。
生演奏が妙に耳に響き、母さんのまたすすり泣きが聞こえる。
周りの視線が、痛い。
刺すような、視線。
「・・・そんな訳ないだろ・・・?本当にそんな名前か?お前間違ってないか?」
「・・・本当に愚かだな・・・そこまで・・・お前の立場は・・・下がったのか・・・」
父さんは真っ白な顔で、よろりとふらつき、兄さんが、慌てて支えた。
「どういう意味だ、下がったとは!!親友とはいえ、同じ伯爵家だぞ!!」
おじさんの声が、会場に響いた。
でも、誰も反応しない。
まるで、聞こえていないかのように。
いや、聞こえているのに、無視している。
何故だろう?
父さんの言葉とその顔と、周りの疎外感に、不安に駆られた。
そして、この厳かで、格の違う会場に、まるで飲み込まれて、
消されてしまうような。
息が、詰まる。
いや、大丈夫だ。
僕がシャーリーと話をしたら、僕の家は大丈夫だ。
そうして二人で幸せになるんだ。
言い聞かせるが、何か、大きなものが、覆いかぶさってくる。
重い。
息が、苦しい。
その時だった。
ざわざわと声が上がった。
声の方を見ると、
シャーリー・・・だ・・・。
真っ赤なドレスを着こなし、年配の男性と、幼い男子と一緒に、まるで、別の世界に生きているような・・・高貴な空気をまとっていた。
美しい。
見たこともないほど、美しい。
あれが、シャーリー?
あの、いつもおどおどしていた、シャーリー?
信じられない。
「・・・まさか・・・」
おじさんの呻くような声が聞こえ、母さんは、とうとう蹲ってしまった。
気品に満ちた微笑みを、声をかける相手に向けながら、ウインザー子爵様の子としての敬いを感じる対応に、目の前が真っ暗になった。
ガンガンと頭が痛くなる。
愛人。
なんと下世話な、誤った思い込みだったのだろう。
あれは、令嬢だ。
本物の、上級貴族令嬢だ。
遠のくシャーリーに、縋る気持ちが募ってきた。
待って。
待ってよ、シャーリー。
僕はここにいる。
僕は・・・
僕は・・・
許してもらえるのだろうか・・・・?
両足を蠢く何かが掴み、引きずり込むような、
ゾッと、背筋が凍った。
「なんて約束をしたんだ!!」
父さんの言葉に、はっとした。
「お前・・・それは・・・その書面は・・・なんて・・・馬鹿な事を・・・」
はっきりとした拒絶を感じる声で、父さんは、首を振りながら、おじさんからゆっくり離れた。
まるで、疫病神から逃げるように。
一歩、また一歩。
「待て、待ってくれ!私は何も悪くない!シャーリーが、あんな出来損ないが、まさかウインザー子爵様の養女になるなんて!」
おじさんが、父さんの腕を掴む。
必死に。
「離せ!!お前とは、もう関わりたくない!!」
父さんが、振り払う。
「待ってくれ!!親友だろ!!助けてくれ!!」
「親友?笑わせるな。お前のせいで、私の家まで巻き込まれたんだぞ!!」
「知らなかったんだ!!}
「行くぞ。サヴォワ家とは断絶する。ルーン、お前の婚約はない。それよりも、お前は、シャーリーに許しを乞え!!何をしてもだ!!」
父さんが、僕を見る。
その目は、絶望と怒りで満ちていた。
そして、諦めも。
「・・・はい・・・」
そう答えるだけで必死だった。
喉はカラカラで、体は重くなっていく。
足が、震え、立っているのが、やっと。
とりあえず、奥へ行きシャーリーに声をかけたかったが、なかなかそうもいかなかった。
警護もいるが、煌びやかな世界に馴染んでいるシャーリーに足が震える。
あれが、本当にシャーリー?
僕が知っている、シャーリー?
やっと、声をかけられる場所に来たが、荘厳とした空気に圧倒される。
その中で見たこともない姿で微笑み、馴染むシャーリーが、まるで永遠に届かない、
遠い存在に見えた。
このまま踵を返したい。
いなかった、
会えなかった、
と言えばいいんじゃないか?
不穏な感情が、押し寄せる。
怖い。
怖い。
でも、違う。
シャーリーは僕を待っている。
そう、あれは無理して笑っているんだ。
だってあんな幸せそうなお顔見たことない。
あんなに輝いている姿、見たことない。
でも、違う。
きっと、無理しているんだ。
そうだ、そうに決まっている。
必死に奮い立たせ声を出した。
「・・・シャーリー!!」
振り返る、シャーリー。
その瞬間、時が止まったような気がした。
「・・・ルーン」
その呼び方と、顔を見た瞬間、絶望に気が狂いそうだった。
冷たい。
冷たい目。
僕を見る目が、冷たい。
まるで、他人を見るような。
いや、他人以下。
嫌悪。
拒絶。
そんな目で、僕を見ている。
シャーリー。
シャーリー。
違う。
そんな目で、僕を見ないで。
お願いだから。
後で聞いた話だが、おじさんはウインザー子爵様と書面を交わし、お互い関わり合いを持たないよう、もし、何かあれば、それぞれの娘を土下座させる、とサインをしたとの事だった。
何もかもが最悪だった。
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